著者
松岡 裕之 緒方 規男
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.203-207, 2013-12-25 (Released:2014-06-25)
参考文献数
18

マウスを麻酔して2群に分け,一群には二酸化塩素のスプレーを他の一群には水のスプレーを噴霧したのち,マラリア感染蚊自由に吸血させた.二酸化塩素をスプレーしたマウスに対しては101匹の蚊のうち6匹が吸血した (5.9%) だけで、マウスの感染は13頭中1頭のみ (7.7%) であった.水をスプレーしたマウスに対しては蚊88匹のうち42匹が吸血し (47.7%), マラリア感染は11頭中6頭 (54.5%) であった.二酸化塩素スプレー群は有意差をもって吸血率 (p<0.01)・マラリア感染率 (p<0.05) の低下が見られた.次に両端をメッシュで覆ったチューブの中に蚊を入れ,チューブの片方は空気のみを含むケージに,反対側は二酸化塩素を含むケージに差し込んで,蚊がどちらの側に偏在するか調べた.Anopheles stephensi, Aedes albopictusおよびCulex pipiens pallensの3種蚊とも0.03 ppm以上の二酸化塩素濃度において反対側(空気側)に偏在した.二酸化塩素は蚊に対する忌避作用があるといえた.
著者
清水 基之 田中 英夫 高橋 佑紀 古賀 義孝 瀧口 俊一 大木元 繁 稲葉 静代 松岡 裕之 宮島 有果 高木 剛 入江 ふじこ 伴場 啓人 吉見 富洋 鈴木 智之 荒木 勇雄 白井 千香 松本 小百合 柴田 敏之 永井 仁美 藤田 利枝 緒方 剛
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.271-277, 2023-08-31 (Released:2023-09-21)
参考文献数
22

目的:日本の新型コロナウイルス第6波オミクロン株陽性者の致命率を算出し,これを第5波デルタ株陽性者と比較する.方法:2022年1月に7県3中核市3保健所で新型コロナウイルス感染症と診断され届出られた40歳以上の21,821人を,当時の国内での変異型流行状況からオミクロン株陽性者とみなし,対象者とした.死亡事実の把握は,感染症法に基づく死亡届によるpassive follow up法を用いた.2021年8月~9月にCOVID-19と診断された16,320人を当時の国内での変異株流行状況からデルタ株陽性者とみなし,同じ方法で算出した致命率と比較した.結果:オミクロン株陽性者の30日致命率は,40歳代0.026%(95%信頼区間:0.00%~0.061%),50歳代0.021%(0.00%~0.061%),60歳代0.14%(0.00%~0.27%),70歳代0.74%(0.37%~1.12%),80歳代2.77%(1.84%~3.70%),90歳代以上5.18%(3.38%~6.99%)であった.デルタ株陽性者の致命率との年齢階級別比は,0.21,0.079,0.18,0.36,0.49,0.59となり,40歳代から80歳代のオミクロン株陽性者の30日致命率は,デルタ株陽性者のそれに比べて有意に低かった.また,2020年の40歳以上の総人口を基準人口とした両株の陽性者における年齢調整致命率比は0.42(95%信頼区間:0.40-0.45)と,オミクロン株陽性者の致命率が有意に低値を示した.結論:日本の50歳以上90歳未満のCOVID-19第6波オミクロン株陽性者の致命率は,第5波デルタ株陽性者に比べて有意に低値であった.
著者
松岡 裕之 池澤 恒孝 服部 隆太 富田 博之 平井 誠
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.78, 2008

蚊は吸血に先立って皮膚に唾液を注入する。唾液中に存在する血管拡張物資により血管が拡張すると,口吻を差し込み吸血を開始する。ワクチン効果のある蛋白を蚊の唾液腺に発現させておけば,吸血のときその蛋白が被吸血動物に注入されるので,その動物(ヒト)はその蛋白に対する抗体を持つようになる。この発想はFlying syringe と呼ばれ20年前から構想はあったが実現してこなかった。昨今,蚊においても遺伝子導入が可能となってきており,唾液腺に特異的に発現する蛋白のプロモーターを使うことで,唾液腺に外来性の蛋白を発現できる可能性が出て来た。一方我々は,マラリアのワクチン候補蛋白のひとつとして,スポロゾイト表面蛋白(CSP)を提唱している。マラリア原虫におけるCSPはスポロゾイトの表面に豊富に発現している蛋白である。我々はこのCSPのほぼ全長をコードする遺伝子をハマダラカ(<I>Anopheles stephensi</I>)唾液腺特異的蛋白のプロモーター下流に組込み,トランスポーザブルエレメント<I>Piggyback</I>に挟み込んで産卵直後のハマダラカ卵に注射した。レポーター蛋白として緑色蛍光蛋白(GFP)も組込んでおき,これを指標として遺伝子組換えを起こしているハマダラカを選別し,系統化した。これまでに数系統の遺伝子導入ハマダラカを得た。これら数系統の蚊の唾液腺を抗原とし,抗CSP抗体を使ってELISAを実施したところ,CSPを発現していると思われる系統が見つかった。最も発現量の多い蚊系統では1個体の唾液腺中に10ng程度のCSPが産生されていると推定された。このCSP発現蚊群に,繰り返しマウスを吸血させたところ,マウスにおいて抗唾液腺抗体は上昇したものの,抗CSP抗体は産生されて来なかった。唾液腺細胞で産生されたCSPの,唾液への分泌が不良であることが原因であると考えている。
著者
松岡 裕之 緒方 規男
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.203-207, 2013

マウスを麻酔して2群に分け,一群には二酸化塩素のスプレーを他の一群には水のスプレーを噴霧したのち,マラリア感染蚊自由に吸血させた.二酸化塩素をスプレーしたマウスに対しては101匹の蚊のうち6匹が吸血した (5.9%) だけで、マウスの感染は13頭中1頭のみ (7.7%) であった.水をスプレーしたマウスに対しては蚊88匹のうち42匹が吸血し (47.7%), マラリア感染は11頭中6頭 (54.5%) であった.二酸化塩素スプレー群は有意差をもって吸血率 (<i>p</i><0.01)・マラリア感染率 (<i>p</i><0.05) の低下が見られた.次に両端をメッシュで覆ったチューブの中に蚊を入れ,チューブの片方は空気のみを含むケージに,反対側は二酸化塩素を含むケージに差し込んで,蚊がどちらの側に偏在するか調べた.<i>Anopheles stephensi</i>, <i>Aedes albopictus</i>および<i>Culex pipiens pallens</i>の3種蚊とも0.03 ppm以上の二酸化塩素濃度において反対側(空気側)に偏在した.二酸化塩素は蚊に対する忌避作用があるといえた.
著者
松岡 裕之
出版者
日本医事新報社
雑誌
日本医事新報 (ISSN:03859215)
巻号頁・発行日
no.3945, pp.55-57, 1999-12-04
著者
Mohamad REZA 山本 大介 松岡 裕之
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.67-71, 2013-06-15 (Released:2014-01-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

蚊幼虫の生物学的制御のため蚊幼虫捕食性の魚を導入する方法はこれまでも実施されてきた.我々は低濃度の銅を蚊幼虫に作用させると,魚に捕食され易いことを見いだしている.メダカ(Oryzias latipes)は日本国産であるがその近縁種は世界各国に棲息している.我々は,ハマダラカ幼虫の生存能力を低下させるものの,メダカの生存には影響のない銅濃度を検討した.銅濃度0.26 ppm に暴露すると,ハマダラカ幼虫は潜水能力が減少しメダカに容易に捕食されるが,メダカはこの濃度において健常に生存できることを確かめた.このことから我々は,蚊幼虫捕食性の魚を導入することに加え,蚊幼虫の棲息する限られた場所に低濃度の銅イオンを散布することが有用であると考えている.
著者
REZA Mohamad 山本 大介 松岡 裕之
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.217-222, 2012
被引用文献数
6

ハマダラカ (<i>Anopheles stephensi</i>) 幼虫を低濃度の銅イオンにさらし,これを死亡させる濃度を探索するため,異なる濃度の銅イオン環境で飼育し,動きが悪くなる個体,死亡する個体を観察した.幼虫を1.2 ppmまたは2.4 ppmの銅イオン環境下で飼育したところ,1週間で半数以上が死亡した.0.6 ppmの飼育では,死亡はしないものの動きが悪くなり,成長が遅くなることが観察された.捕食性の魚であるグッピーに与えたところ,0.6 ppm銅イオン処理幼虫群は,無処理幼虫群に比べ,有意に短時間でグッピーに捕食された.ヒトの飲料水に許容される銅イオン濃度の上限は1 ppmであるため,ヒトとボウフラに対する銅イオンの毒性の差を利用して新たなハマダラカ幼虫対策が期待できる.
著者
村主 節雄 原田 正和 佐々 学 石井 明 板野 一男 松岡 裕之
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.33-39, 1989
被引用文献数
3 4

岡山県の児島湖において, ライトトラップによるユスリカ科昆虫についての調査を行った。まず1985年7月8日より9日に5カ所において予備調査を行った。その結果, 好適地点を決め, 1985年7月より1986年12月までの周年調査を行った。各月の平均採集数の年間合計は41,669匹(雄15,795匹;雌25,874匹)であった。15属21種のユスリカが採集され, 主要種およびその採集数はそれぞれ, Polypedilum arundinetum (14,254), Parachironomus arcuatus (5,234), Microchironomus ishii (4,622), Tanytarsus oyamai (4,057), Chironomus kiiensis (3,004), Tanypus punctipennis (2,490), Pentapedilum tigrinum (2,349), Polypedilum masudai (1,577), Polypedilum nubifer (980), Dicrotendipes niveicaudus (962), Cricotopus sylvestris (936), and Tokunaga-yusurika akamusi (526)であった。多くの成虫は6&acd;9月に採集されたが, 冬期に採集される数種, さらに春と秋に発生数が2峰を示すLimnophyes hudsoniがみられた。