著者
平井 誠 北橋 忠宏
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.79(1986-NL-058), pp.1-8, 1986-11-21

本稿では、「XのY」という形態の名詞句と連体修飾を統一的な枠組みで捉らえることを目的として、両者を同一の基準で分類し、「の」と連体修飾の解析を行なう際に必要となる辞書情報について言及する。「XのY」という名詞句は極めて頻繁に使用されうえに、その意味も多様である。従って、言語解析の立場からは「の」の意味の決定が1つの大きな問題であり、その意味の適切な分類が必要である。これを分類する一方法は、「XのY」を関係節(形容詞節)と被修飾名詞から成る連体修飾の短縮形かあるいは単文の短縮形と考え、連体修飾の分類に基づいた分類を行なうことである。本稿では連体修飾を、1)関係節と被修飾名詞の意味的な関係および2)連体修飾句全体が何を指示するかの2点から、格要素型、関数型、isa型、推論型、および間接限定型の5種類に分類する。次いで、この分類基準を利用することにより、「の」の意味が6種類に分類できることを示す。最後に、この分類を用いて「の」と連体修飾を解析する際に必要となる名詞や動詞の意味情報(辞書情報)を各カテゴリー別にまとめる。
著者
松岡 裕之 池澤 恒孝 服部 隆太 富田 博之 平井 誠
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集
巻号頁・発行日
vol.60, pp.78, 2008

蚊は吸血に先立って皮膚に唾液を注入する。唾液中に存在する血管拡張物資により血管が拡張すると,口吻を差し込み吸血を開始する。ワクチン効果のある蛋白を蚊の唾液腺に発現させておけば,吸血のときその蛋白が被吸血動物に注入されるので,その動物(ヒト)はその蛋白に対する抗体を持つようになる。この発想はFlying syringe と呼ばれ20年前から構想はあったが実現してこなかった。昨今,蚊においても遺伝子導入が可能となってきており,唾液腺に特異的に発現する蛋白のプロモーターを使うことで,唾液腺に外来性の蛋白を発現できる可能性が出て来た。一方我々は,マラリアのワクチン候補蛋白のひとつとして,スポロゾイト表面蛋白(CSP)を提唱している。マラリア原虫におけるCSPはスポロゾイトの表面に豊富に発現している蛋白である。我々はこのCSPのほぼ全長をコードする遺伝子をハマダラカ(<I>Anopheles stephensi</I>)唾液腺特異的蛋白のプロモーター下流に組込み,トランスポーザブルエレメント<I>Piggyback</I>に挟み込んで産卵直後のハマダラカ卵に注射した。レポーター蛋白として緑色蛍光蛋白(GFP)も組込んでおき,これを指標として遺伝子組換えを起こしているハマダラカを選別し,系統化した。これまでに数系統の遺伝子導入ハマダラカを得た。これら数系統の蚊の唾液腺を抗原とし,抗CSP抗体を使ってELISAを実施したところ,CSPを発現していると思われる系統が見つかった。最も発現量の多い蚊系統では1個体の唾液腺中に10ng程度のCSPが産生されていると推定された。このCSP発現蚊群に,繰り返しマウスを吸血させたところ,マウスにおいて抗唾液腺抗体は上昇したものの,抗CSP抗体は産生されて来なかった。唾液腺細胞で産生されたCSPの,唾液への分泌が不良であることが原因であると考えている。
著者
高野 敦子 平井 誠 北橋 忠宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLC, 言語理解とコミュニケーション
巻号頁・発行日
vol.95, no.29, pp.25-32, 1995-05-12
被引用文献数
2 1

我々は,ユーザが自然言語を用いてシステムと対話することによってデータベースから情報を検索するためのユーザフレンドリーなインタフェースの提供を目指している.そのための基礎技術の1つとして,本研究ではユーザの検索文に対する協調的な応答生成手法を提案する.我々は,既に対話一般を対象として,質問文に対して協調的な応答を生成するモデルを提案している.そこで,ユーザの検索文を質問文と捉え,そのモデルをデータベース検索という観点から再構成することによって協調的な応答生成手法を示す.本手法では,検索者の意図を考慮することにより,検索の失敗への対応含めてより検索者の目的に合った応答の実現を図る.また,検索者の意図の実現や心理的要素を考慮して検索者にとって有用な情報を付加した応答を生成する.
著者
平井 誠
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.289-309, 1999-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
38
被引用文献数
3 3

大都市郊外地域における高齢者の転入移動の特性を明らかにするために,本稿は東京の郊外地域に位置する埼玉県所沢市への高齢者転入移動を移動者個人のレベルから分析し,移動の類型および移動の要因について考察を行つた.アンケート調査および聞取り調査によって得られた112件の高齢者転入移動の事例を検討した結果,以下の点が明らかとなった.高齢者転入移動を随伴移動者別に検討すると,移動者の属性,移動理由,移動パターンに差異が認められた。また,高齢者が主体的に行う「同居志向型」,「近居志向型」および子供世帯に随伴して行う「随伴型」という三つの移動の類型が見出だされた.「同居志向型」は70歳以上の女性に顕著であり,単独で子供世帯の下へ移動する.「近居志向型」は60歳代の比較的若い時期に夫婦で子供世帯の居住地の近隣に移動していた.三つの類型とも,とくに移動先の決定に際して子供世帯の影響を強く受けていた.親である高齢者とその子供の関係が,大都市郊外地域への高齢者転入移動と密接に関係していると結論される.
著者
菅野 峰明 平井 誠
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.80, 2006 (Released:2006-05-18)

1.はじめに アメリカ合衆国のフロリダ州は第二次世界大戦後、北東部や中西部から暖かい気候を求める高齢者の流入が続き、高齢者率の高い州として知られるようになった。フロリダ州において65歳以上の人口が全人口に占める比率は16.8%(2004年)であり、全米の州の中で最も高齢者比率が高い。フロリダ州への1995_から_2000年の国内純人口移動60.7万人のうち、14.9万人が65歳以上の高齢者であり、全体の24.6%を高齢者が占めた。これらの高齢者の流入は、退職した人々が余生を温和な気候の地域で送るため、と説明されてきた。ところが、最近の高齢者の移動を見ると、伝統的に高齢者が定住することの多かった東海岸の南部よりも西海岸に人口移動率の高い郡が見られるようになった.フロリダ半島の西海岸地域には高齢者のための新しく開発されたリタイアメント・コミュニティが多い。そこで、高齢者が居住地としてフロリダ州の西海岸のリタイアメント・コミュニティを選択する要因を明らかにするために2004年9月と2005年9月にフロリダ州タンパ・セントピーターズバーグ都市圏において実地調査を行った。2.リタイアメント・コミュニティ 1960年にアリゾナ州フェニックス市郊外に建設されたサン・シティの成功により、フロリダ州でもリタイアメント・コミュニティが多数建設されるようになった。リタイアメント・コミュニティの規模は数十戸から数千戸まで規模は様々であるが、住民に対するサービスとして、ゴルフコース、テニスコート、屋内外プール、サウナ、エアロビクスの部屋、室内トレーニング場等を備え、さらに日常の生活を支援する建物の中に図書館、インターネットに接続できるコンピュータールームを備えているところもある。新しいリタイアメント・コミュニティはゲーテッド・コミュニティとなっており、防犯態勢が整備されている。 タンパ都市圏内にあるリタイアメント・コミュニティのサン・シティ・センターで付属施設、コミュニティ内のクラブ活動等の調査と住民を対象にしたアンケート調査を行った。サン・シティ・センターは1961年に建設が始まり、現在では7,500世帯、約13,000人が居住している。住民へのアンケートの結果、このリタイアメント・コミュニティを選択した理由として一番多かったのは、温暖な気候(72%)、次いでフロリダのライフスタイル(71%)、犯罪の少なさと安全性(34%)、生活費の安さ(26%)、親類への近さ(24%)と続き、これまで言われてきたことが裏付けられた(第1表)。かつてフロリダ州で高齢者比率が多かったマイアミ大都市圏では高齢者の純移動率が減少に転じてしまった。これは、フロリダ州の南東部から半島西部への高齢者の移動のためである。それはヒスパニック系が増加し、犯罪率の高いマイアミ大都市圏から安全性の高い半島西部のリタイアメント・コミュニティへの移動と関係している。この移動はさらに、大都市圏におけるアパートやコンドミニアムの居住から戸建て中心のリタイアメント・コミュニティへの移動ということにもなる。
著者
平井 誠 北橋 忠宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.240-249, 1987-03-15
被引用文献数
1

計算機による日本語文解析には動詞の表層格構造が広く用いられているが その際の主要な問題点として 1)名詞句内の多様な助詞表現をいかに格構造記述に吸収し 文解析に利用するか 2)助動詞および補助用言によって惹起される表層格構造の変化にどう対応するか という2点が挙げられる.1)については 名詞句の構文的特性を一組の格助詞で表現された表層格と助詞列から一意的に決まる"格の強度"という2属性で表現した.格助詞を含まない名詞句に 格助詞で表現された表層格を与えるために 係助詞と副助詞に対してそれらが代行可能な格助詞を"潜在格"として付与した.これにより 表層格構造が格助詞だけで記述可能になるとともに 単文の形態的制限を格構造に反映することが可能になった.2)に関しては 助動詞「させる られる たい できる」 補助用言「もらう する おく やすい」等について格変化の様式を決定する構文的および意味的特性を整理し 各々に対応する格構造変換規則としてまとめるとともに一般的な用言句の表層格構造を自立語用言の格構造から生成する手続きを示した.格変化の様式を決定する要因は1)格構造に含まれる格の種類 2)意志性 3)「移動 変化 発生 消滅」という観点からみた動詞の概念的構造 4)動詞の格要素間の関係(因果関係 物理的関係 パラメータ的関係) 5)格要素の有生無生の別である.
著者
平井 誠也 竹中 郁子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.144-154, 1995-12-10 (Released:2017-07-20)

本研究は, 子どもにおける描面行動の発達的変化を明らかにしようとする試みである。4歳児, 5歳児, 6歳児, 7歳児, 8歳児, 9歳児とも, それぞれ同一の3種類の課題を与えられた。最初は一組のカードの中から, 彼らが最も円筒形を表していると思う線画を選択することであり, 第二は, 彼らが最も描きたいと思う円筒形を表した線画を選択することであり, 最後は, 円筒形をクレヨン (幼児) または鉛筆 (児童) で描くことであった。3種類の課題のうち, 認知課題は最も簡単な課題であり, 5歳から6歳にかけて急激な発達を示した。次に困難だったのは構想課題であり, 6歳から7歳で急激な発達があった。描画課題は最も困難で, 9歳児の30%しか遠近画法によって円筒型を描画することができないことが示された。幼児および児童の円筒形の描画が認知一構想 (プランニング) 一描画の3つの過程を中心として, その関係が分析され, 発達的に考察された。
著者
田辺 和裄 平井 誠 本間 一 堀井 俊宏 美田 敏宏 中村 昇太
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

本研究では、DNAポリメラーゼδの校正機能を欠損させることによって高頻度に突然変異を発生するネズミマラリア原虫Plasmodiumberghei(ミューテーター原虫)を用い、原虫の進化を予測する進化モデル実験系の構築を目指した。ミューテーター原虫に生じた変異をゲノムワイドに解析した結果、変異率は対照原虫よりも75-100倍上昇していた。また、サルファ剤耐性試験の結果から、ミューテーター原虫は薬剤耐性の予測を可能にする新たな研究手法となり得ることが明らかになった。
著者
平井 誠 北橋 忠宏
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.27, no.9, pp.892-899, 1986-09-15
被引用文献数
1

日本語解析システムMARION-IVにおける名飼と用言の辞書情報および単文内の必須格要素と自由格要素の一解析手法を述べる.名詞の意味は 独立した二つの概念階層と6種類のリンクによる意味ネットワークを用いて記述している.概念階層は「具象 - 抽象」を基本分類とし 対象の客観的性質の記述に重点を置いたものと「自然 - 人工」および「操作性」を基本とし 人間と対象との関係に重点を置いたものである.意味リンクは「対象 - 属性 部分 - 全体」等の一般に周知の関係のほかに 「対象 - 提供物」を示すPROVIDEリンクを導入した.用言の構文および意味特性は 意志性(可制御性) アスペクト素性 移動性 作用性 格構造 格要素の意味規定等によって記述している.移動性は移動 変化 存在 発生 消滅を表す動詞の構造的記述であり 作用性は格要素間の因果関係の構造的記述である.必須格要素の解析は 格構造と名詞句内の助詞列の照合および名詞の意味記述を用いた格要素の意味調査により行っている.態変換は助動詞等に付加した規則で行っている.自由格要素は (1)事象間関係 (2)事象あるいは格要素の属性値 (3)意味的名詞並列に分類している.(1)は意志性とアスペクト素性を用いて解析している.(2)は意味ネットワークの探索により解析している.その際 事象(用言)の持つ属性は移動性や作用性から決定している.(3)は名詞間のリンクに基づいた概念的距離を用いて解析している.