著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然人間社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.51-77,

本稿では連合国の戦争犯罪政策の形成過程について、連合国戦争犯罪委員会に焦点をあて、同時に連合国の中小国の動向、役割に注意し、かつイギリスとアメリカ政府の動向を合わせて分析する。枢軸国による残虐行為に対してどのように対処するのかという問題を扱うために連合国戦争犯罪委員会が設置された。委員会は従来の戦争犯罪概念を超える事態に対処すべく法的理論的に検討をすすめ、国際法廷によって犯罪者を処罰する方針を示した。だがそれはイギリスの反対で潰された。その一方、委員会の議論は米陸軍内で継承されアメリカのイニシアティブにより主要戦犯を国際法廷で裁く方式が取り入れられていった。委員会における議論はその後に定式化される「人道に対する罪」や「平和に対する罪」に繋がるものであり、理論的にも一定の役割を果たすことになった。だが当初の国際協調的な方向から米主導型に変化し、そのことが戦犯裁判のあり方に大きな問題を残すことになった。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.48, pp.69-95, 2010-01

マニラ戦はフィリピンにおける日本軍のイメージを決定づける重要な事件である。しかし日本では戦闘経過についての研究はあるが、そこで日本軍が住民に対しておこなったことの研究はほとんどない。資料が散逸していることが大きな理由として挙げられる。そこで米軍に押収され英訳された資料や日本に残っている資料を丁寧に拾い出し、日本軍の住民観や住民対策を明らかにしようとしたのが本稿である。これによって日本軍の行為が偶発的なものではなく、組織的意図的なものであることが明確になり、マニラだけでなくフィリピン各地の日本軍に共通して見られることも明らかにした。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部・経営学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
vol.64, pp.1-28,

米国の第2 次世界大戦への参戦直前に締結された「米国への基地貸与に関する英米協定」によって、米国は英国に対して駆逐艦50 隻を引き渡す代わりに、英国がいくつかの自治領と植民地の土地を米軍基地のために99年間貸与することとなった。これに基づいて英国は、自治領だったニューファンドランドのほかに植民地であったバミューダ、バハマ、ジャマイカ、アンティグア、セントルシア、トリニダード、英領ギアナの土地を提供した。この協定では刑事裁判権について派遣国だけでなく受入国の裁判権も認め、競合裁判権の仕組みが採用された。しかしニューファンドランドでは一定の裁判権を行使したが、カリブ海植民地においてはほとんど裁判権を放棄した。その違いを生み出した最大の要因は英当局の人種主義であった。この米軍駐留地における刑事裁判権行使の差別の構造はNATO 地位協定締結後にも継続していく。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 : 関東学院大学経済学部総合学術論叢 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.54, pp.51-70, 2013-01

対日戦犯裁判の打ち切りのイニシアティブをとったのはニュージーランドだった。ニュージーランドは東京裁判に判事と検察官を送り込み、日本占領にも参加したが、東京裁判におけるアメリカ人首席検察官の訴追指揮のまずさや不必要に長期化する裁判の現実を前に、自らはBC級戦犯をおこなっていなかったニュージーランドが戦犯裁判終結を提起していった。その結果、極東委員会での「勧告」決議となり、対日戦犯裁判は終結を迎えることになる。
著者
林 博史 小野沢 あかね 吉見 義明 兼子 歩
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

日本軍「慰安婦」制度と米軍の性売買政策・性暴力の比較研究をおこなうことを目的として本研究をおこなった。米国や英国などの公文書館や図書館などにおいて、関連史料を多数収集することができた。また各国の研究者との研究交流をおこない、研究協力のネットワークも作ることができた。こうした研究活動を通じて、日本軍のケースと米軍のケースについてその相違についてかなり把握できるようになってきた。同時に、日本軍「慰安婦」制度を世界史のなかで位置づけるためには日米比較だけでは不十分であり、欧州や韓国を含めて国際比較が必要であることも強く認識するようになった。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然人間社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.3-16,

第2次世界大戦において心理戦は重要視され、特にアメリカは日本兵捕虜への尋問や没収した文書の分析を通じて、日本人の意識分析をおこなった。その際の重要なテーマの一つが日本人の天皇観であった。本稿は、アメリカの戦時情報局海外士気分析部臨時国際情報サービスが作成した『日本の天皇』と題されたレポートを手がかりに、戦中の日本人が自らのアイデンティティと天皇をどのように重ね合わせていたのかを分析したものである。その結果、個々人が自らの願望を天皇に投影させ、自らの考えの正しさの根拠を天皇に託するというあり方を明らかにし、そうしたあり方が天皇の戦争責任追及がなされなかった一因としてあり、さらに今日にいたるまで日本人の主体形成上の大きな問題となっていることを指摘している。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.45, pp.51-67, 2008-07

アジア太平洋戦争において、アメリカは対日戦を進めていく上で、日本人の意識分析をおこない、それを心理戦に活用していった。そこでの分析は、戦闘を有利に進めるためだけでなく、戦後の対日占領政策とも密接に関連するものであった。そのために戦闘のなかで捕獲した捕虜の意識分析をおこなっていたが、サイパン戦の結果、米軍は初めて多数の日本民間人を収容し、民間人の意識分析をおこなうことができた。その調査報告書の全文を翻訳し紹介する。この報告書の内容は、まだ予備的な内容で十分に深められているとは言えないが、民間人が米軍への投降を拒む理由が、けっして愛国的な熱情や天皇への崇拝などではなく、米軍に捕まると殺されるか拷問されることへの恐怖であることがはっきりと示されている。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学
雑誌
自然人間社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.53-66, 2001-01-31
著者
伊香 俊哉 永井 均 林 博史 芝 健介 内海 愛子 福永 美和子 粟屋 憲太郎 高取 由紀 宋 志勇 戸谷 由麻
出版者
都留文科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の主な目的は、第2次大戦後の連合国による対日対独戦犯裁判を解明するための資料調査・収集である。調査・収集は日本、中国、台湾、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フィリピン各国の公文書館や図書館など約30ヵ所で実施した。また日本、中国、フィリピンではヒアリング調査も実施した。収集資料の成果は資料紹介・論文・著書として発表されている。戦犯裁判研究の国際交流のため2014年にドイツ研究者とワークショップを開催した。
著者
林 博史
出版者
日本平和委員会
雑誌
平和運動 (ISSN:13408135)
巻号頁・発行日
no.517, pp.4-18, 2014-03
著者
神林 博史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.68, pp.147-168, 2000
被引用文献数
5
著者
林 博史 藤目 ゆき 秋林 こずえ
出版者
関東学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

アメリカやイギリスなどで多くの米軍関係資料を収集するとともに、基地問題に取り組んでいる諸団体の聞き取りや資料収集をおこなうことができた。また日本国内や韓国など共同で基地の現地調査も実施し、韓国の研究者や、日本国内で基地を抱えている地域の地元研究者などとのネットワーク作りも進めることができた。共同研究者がそれぞれ多くの研究成果を発表し、米軍による性暴力ならびに性売買の歴史と現状について新たな研究を付け加えることができた。
著者
粟屋 憲太郎 伊香 俊哉 内海 愛子 林 博史 永井 均
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

第2次世界大戦において日独が行った数多くの残虐行為に対し、連合国はそれをどのように認識し、対処しようとしたのか。これまで個別分散化していた戦犯裁判研究を総合的に明らかにするため、大戦初期の連合国による戦争犯罪認識の形成過程から戦犯処罰方式の決定に至るまでの過程、さらに対日戦犯裁判政策の形成・実施・修正・終了のプロセスを全体的に明らかにすることを目指し、連合国による対日戦犯裁判政策に関する政策文書を収集・分析した。