著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.49-83,

1945年2月から3月にかけてのマニラ戦における日本軍の残虐行為はよく知られている。しかしその中で日本軍がマニラの中心にあるエルミタ地区の女性たち数百人をベイビューホテルとその近くのアパートメントに監禁し、数日にわたって日本兵たちが次々と強かんを繰り返した事件は有名であるにもかかわらずまったく研究がない。米軍は事件直後に100人以上の関係者から尋問調書をとり、膨大な捜査報告書を残しており、そこから事件の全体像を明らかにした。同時に日本軍の史料はほとんど残っていないが、関連する日本軍部隊について検討し、他の残虐行為との関連を検討したうえで組織的な犯罪であったことを示した。
著者
神林 博史
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.452-467, 2005-09-30 (Released:2010-01-29)
参考文献数
30
被引用文献数
1 2

調査票調査では, 広い意味での政治的態度に関する質問において「わからない」 (don't know=DK) という回答が発生しやすいことが知られている.DK回答は通常の場合, 欠損値として処理され, 分析の対象とはならない.一方で, 政冶意識におけるDK回答は回答者の政治に対する消極性を示す重要な情報であるとの可能性が指摘されてきた.この見解が正しければ, DK回答と実際の政治的行動との間に関連が予想される.全国規模のパネル調査データを用いた分析の結果, DK回答の多い回答者は政冶行動に参加しない傾向があることが明らかになった.
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.37, pp.51-77, 2004-07

本稿では連合国の戦争犯罪政策の形成過程について、連合国戦争犯罪委員会に焦点をあて、同時に連合国の中小国の動向、役割に注意し、かつイギリスとアメリカ政府の動向を合わせて分析する。枢軸国による残虐行為に対してどのように対処するのかという問題を扱うために連合国戦争犯罪委員会が設置された。委員会は従来の戦争犯罪概念を超える事態に対処すべく法的理論的に検討をすすめ、国際法廷によって犯罪者を処罰する方針を示した。だがそれはイギリスの反対で潰された。その一方、委員会の議論は米陸軍内で継承されアメリカのイニシアティブにより主要戦犯を国際法廷で裁く方式が取り入れられていった。委員会における議論はその後に定式化される「人道に対する罪」や「平和に対する罪」に繋がるものであり、理論的にも一定の役割を果たすことになった。だが当初の国際協調的な方向から米主導型に変化し、そのことが戦犯裁判のあり方に大きな問題を残すことになった。
著者
川勝 忍 小林 良太 林 博史
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.849-856, 2015-10-15

はじめに 1994年,LundとManchesterのグループにより16),前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia;FTD)の臨床的および神経病理学的診断特徴が発表されて以降,その臨床研究や病態解明に関する研究が大きく進展し,現在では進行性非流暢性失語(progressive nonfluent aphasia;PNFA)と意味性認知症(semantic dementia;SD),前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration;FTLD)として全体の概念がまとめられている4)。それ以前より,我が国では,FTDの原型であるピック病について,ドイツ精神医学の流れを汲む神経病理を専門とする精神科医が,アルツハイマー病との対比を含めて注目してきた。2006年のtransactive response DNA-binding protein 43kDa(TDP-43)の発見により,FTLDは,蓄積する異常蛋白の種類によって,疾患分類が明確化され,タウ蛋白が蓄積するタイプ(FTLD-tau)とユビキチンのちにTDP-43が蓄積するタイプ(FTLD-UまたはFTLD-TDP)の2つが大部分を占めることが分かってきた。そして,TDP-43は,FTLDと筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis;ALS)とに共通して蓄積する蛋白であり,これらの疾患が連続する1つのスペクトラムをなしており2),運動ニューロン疾患(motor neuron disease;MND)を伴う前頭側頭型認知症(FTD-MND)はその中心に位置する重要な疾患であり,日本の研究者がその病態解明に果たした役割が大きい。FTD-MNDは,臨床的にも精神医学と神経内科学に跨がる境界領域であり早期診断が難しい疾患である。認知機能障害や行動異常に目を奪われている間に,筋萎縮,嚥下障害へと急速に進行してから初めて気付かされることも多い。予後としてもいずれ呼吸筋麻痺にて死に至るため,正しい診断が不可欠である。また,FTDの場合と同様に,FTD-MNDでもFTD症状が,うつ状態,躁状態,心気症状などとして扱われてしまう可能性もある。ここでは,FTD-MNDについて現在の知見を概説し,典型例を呈示して診断の注意点について述べたい。
著者
林 博史
出版者
関東学院大学経済学部教養学会||カントウ ガクイン ダイガク ケイザイ ガクブ キョウヨウ ガッカイ||The Society of Liberal Arts Kanto Gakuin University
雑誌
自然・人間・社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.36, pp.1-42, 2004-01

本稿では連合国の戦争犯罪政策の形成過程について、連合国戦争犯罪委員会に焦点をあて、同時に連合国の中小国の動向、役割に注意し、かつイギリスとアメリカ政府の動向を合わせて分析する。枢軸国による残虐行為に対してどのように対処するのかという問題を扱うために連合国戦争犯罪委員会が設置された。委員会は従来の戦争犯罪概念を超える事態に対処すべく法的理論的に検討をすすめ、国際法廷によって犯罪者を処罰する方針を示した。だがそれはイギリスの反対で潰された。その一方、委員会の議論は米陸軍内で継承されアメリカのイニシアティブにより主要戦犯を国際法廷で裁く方式が取り入れられていった。委員会における議論はその後に定式化される「人道に対する罪」や「平和に対する罪」に繋がるものであり、理論的にも一定の役割を果たすことになった。だが当初の国際協調的な方向から米主導型に変化し、そのことが戦犯裁判のあり方に大きな問題を残すことになった。
著者
林 博史
出版者
青木書店
雑誌
歴史学研究 (ISSN:03869237)
巻号頁・発行日
no.541, pp.p1-16, 1985-05
著者
中野 聡 吉田 裕 宮地 尚子 林 博史 永井 均 笠原 十九司 ハーバート ビックス リカルド ホセ リディア ホセ ヤン ダーチン フロレンティーノ ロダオ マイケル サルマン アウグスト エスピリトゥ 戸谷 由麻 ロリ ワット 寺見 元恵 荒沢 千賀子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

第2次世界大戦末期の「マニラ戦(1945年2月3日. 3月3日)」の実像と記憶を学際的・総合的に検討し、さらにその研究成果を国際研究集会などにより公開・社会還元することにより、日・比・米など関係諸国間で戦争の過去をめぐり「より質の高い対話と和解」を可能にする学術基盤の整備を推進した。
著者
西園 昌久 高橋 流里子 対馬 節子 松永 智子 福屋 靖子 土屋 滋 大貫 稔 高橋 美智 浅野 ふみぢ 小松崎 房枝 鈴木 小津江 平山 清武 中田 福市 鈴木 信 壁島 あや子 名嘉 幸一 鵜飼 照喜 福永 康継 浪川 昭子 高田 みつ子 岩渕 勉 森脇 浩一 加藤 謙二 早川 邦弘 森岡 信行 津田 司 平野 寛 渡辺 洋一郎 伴 信太郎 木戸 友幸 木下 清二 山田 寛保 福原 俊一 北井 暁子 小泉 俊三 今中 孝信 柏原 貞夫 渡辺 晃 俣野 一郎 村上 穆 柴崎 信吾 加畑 治 西崎 統 大宮 彬男 岩崎 徹也 奥宮 暁子 鈴木 妙 貝森 則子 大橋 ミツ 川井 浩 石川 友衛 加世田 正和 宮澤 多恵子 古賀 知行 西川 眞八 桜井 勇 三宅 史郎 北野 周作 竹洞 勝 北郷 朝衛 橋本 信也 斉藤 宣彦 石田 清 畑尾 正彦 平川 顕名 山本 浩司 庄村 東洋 島田 恒治 前川 喜平 久保 浩一 鈴木 勝 今中 雄一 木内 貴弘 朝倉 由加利 荻原 典和 若松 弘之 石崎 達郎 後藤 敏 田中 智之 小林 泰一郎 宮下 政子 飯田 年保 奥山 尚 中川 米造 永田 勝太郎 池見 酉次郎 村山 良介 河野 友信 G. S. Wagner 伊藤 幸郎 中村 多恵子 内田 玲子 永留 てる子 石原 敏子 河原 照子 石原 満子 平山 正実 中野 康平 鴨下 重彦 大道 久 中村 晃 倉光 秀麿 織畑 秀夫 鈴木 忠 馬渕 原吾 木村 恒人 大地 哲郎 宮崎 保 松嶋 喬 桜田 恵右 西尾 利一 森 忠三 宮森 正 奥野 正孝 江尻 崇 前沢 政次 大川 藤夫 関口 忠司 吉新 通康 岡田 正資 池田 博 釜野 安昭 高畠 由隆 高山 千史 吉村 望 小田 利通 川崎 孝一 堀 原一 山根 至二 小森 亮 小林 建一 田中 直樹 国府田 守雄 高橋 宣胖 島田 甚五郎 丸地 信弘 松田 正己 永井 友二郎 向平 淳 中嶌 義麿 鎮西 忠信 岡田 究 赤澤 淳平 大西 勝也 後藤 淳郎 下浦 範輔 上田 武 川西 正広 山室 隆夫 岡部 保 鳥居 有人 日向野 晃一 田宮 幸一 菅野 二郎 黒川 一郎 恩村 雄太 青木 高志 宮田 亮 高野 純一 藤井 正三 武内 恵輔 南須原 浩一 佐々木 亨 浜向 賢司 本田 麺康 中川 昌一 小松 作蔵 東 匡伸 小野寺 壮吉 土谷 茂樹 岡 国臣 那須 郁夫 有田 清三郎 斎藤 泰一 清水 強 真島 英信 村岡 亮 梅田 典嗣 下条 ゑみ 松枝 啓 林 茂樹 森 一博 星野 恵津夫 正田 良介 黒沢 進 大和 滋 丸山 稔之 織田 敏次 千先 康二 田中 勧 瓜生田 曜造 尾形 利郎 細田 四郎 上田 智 尾島 昭次 大鐘 稔彦 小倉 脩 林 博史 島 澄夫 小池 晃 笹岡 俊邦 磯村 孝二 岩崎 栄 鈴木 荘一 吉崎 正義 平田 耕造
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-173, 1984-06-25 (Released:2011-08-11)
著者
神林 博史
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
vol.101, pp.11-36, 2018-03-28 (Released:2021-12-01)
参考文献数
33

本研究の目的は、現代日本における地位不安、すなわち社会経済的地位についての不安の特徴を計量的に明らかにすることである。地位不安は、不平等が人びとの健康や問題行動に影響する際の媒介変数として社会疫学で近年注目されており、社会学的な応用の価値が高いと考えられる。しかし、地位不安がどのような性質を有しているかについて、日本での実証研究の蓄積は乏しい。本稿では一九九五年と二〇一五年に実施された全国規模の社会調査データを用いて地位不安(地位競争不安、地位喪失不安、現状維持指向)と社会経済的地位の関係を分析した。分析の結果、(一)地位不安の分布は二十年間で大きく変化していない、(二)地位不安と社会経済的地位の関連は総じて弱い、(三)地位不安と社会経済的地位の関連も二十年間で大きく変化していない、の三点が明らかになった。これらの結果は、二〇〇〇年代後半以降の格差・不平等問題への社会的関心の高まりを考えると予想外であり、社会経済的地位と地位不安を結びつけるメカニズムをより詳しく検討することが必要である。
著者
西園 昌久 高橋 流里子 対馬 節子 松永 智子 福屋 靖子 土屋 滋 大貫 稔 高橋 美智 浅野 ふみぢ 小松崎 房枝 鈴木 小津江 平山 清武 中田 福市 鈴木 信 壁島 あや子 名嘉 幸一 鵜飼 照喜 福永 康継 浪川 昭子 高田 みつ子 岩渕 勉 森脇 浩一 加藤 謙二 早川 邦弘 森岡 信行 津田 司 平野 寛 渡辺 洋一郎 伴 信太郎 木戸 友幸 木下 清二 山田 寛保 福原 俊一 北井 暁子 小泉 俊三 今中 孝信 柏原 貞夫 渡辺 晃 俣野 一郎 村上 穆 柴崎 信吾 加畑 治 西崎 統 大宮 彬男 岩崎 徹也 奥宮 暁子 鈴木 妙 貝森 則子 大橋 ミツ 川井 浩 石川 友衛 加世田 正和 宮澤 多恵子 古賀 知行 西川 眞八 桜井 勇 三宅 史郎 北野 周作 竹洞 勝 北郷 朝衛 橋本 信也 斉藤 宣彦 石田 清 畑尾 正彦 平川 顕名 山本 浩司 庄村 東洋 島田 恒治 前川 喜平 久保 浩一 鈴木 勝 今中 雄一 木内 貴弘 朝倉 由加利 荻原 典和 若松 弘之 石崎 達郎 後藤 敏 田中 智之 小林 泰一郎 宮下 政子 飯田 年保 奥山 尚 中川 米造 永田 勝太郎 池見 酉次郎 村山 良介 河野 友信 Wagner G. S. 伊藤 幸郎 中村 多恵子 内田 玲子 永留 てる子 石原 敏子 河原 照子 石原 満子 平山 正実 中野 康平 鴨下 重彦 大道 久 中村 晃 倉光 秀麿 織畑 秀夫 鈴木 忠 馬渕 原吾 木村 恒人 大地 哲郎 宮崎 保 松嶋 喬 桜田 恵右 西尾 利一 森 忠三 宮森 正 奥野 正孝 江尻 崇 前沢 政次 大川 藤夫 関口 忠司 吉新 通康 岡田 正資 池田 博 釜野 安昭 高畠 由隆 高山 千史 吉村 望 小田 利通 川崎 孝一 堀 原一 山根 至二 小森 亮 小林 建一 田中 直樹 国府田 守雄 高橋 宣胖 島田 甚五郎 丸地 信弘 松田 正己 永井 友二郎 向平 淳 中嶌 義麿 鎮西 忠信 岡田 究 赤澤 淳平 大西 勝也 後藤 淳郎 下浦 範輔 上田 武 川西 正広 山室 隆夫 岡部 保 鳥居 有人 日向野 晃一 田宮 幸一 菅野 二郎 黒川 一郎 恩村 雄太 青木 高志 宮田 亮 高野 純一 藤井 正三 武内 恵輔 南須原 浩一 佐々木 亨 浜向 賢司 本田 麺康 中川 昌一 小松 作蔵 東 匡伸 小野寺 壮吉 土谷 茂樹 岡 国臣 那須 郁夫 有田 清三郎 斎藤 泰一 清水 強 真島 英信 村岡 亮 梅田 典嗣 下条 ゑみ 松枝 啓 林 茂樹 森 一博 星野 恵津夫 正田 良介 黒沢 進 大和 滋 丸山 稔之 織田 敏次 千先 康二 田中 勧 瓜生田 曜造 尾形 利郎 細田 四郎 上田 智 尾島 昭次 大鐘 稔彦 小倉 脩 林 博史 島 澄夫 小池 晃 笹岡 俊邦 磯村 孝二 岩崎 栄 鈴木 荘一 吉崎 正義 平田 耕造
出版者
Japan Society for Medical Education
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.145-173, 1984
著者
林 博史
雑誌
自然人間社会 (ISSN:0918807X)
巻号頁・発行日
no.40, pp.1-31,

1942年2月にシンガポールで日本軍がおこなった華僑粛清事件は、アジア太平洋戦争期における日本軍の代表的な残虐行為としてよく知られている。シンガポールでは体験記や資料集が数多く刊行され、日本側の関係者の証言もある程度は出されているが、この事件の全容を解明した信頼できる研究が日本にもシンガポールにもない。そうした中で本稿は、この粛清事件の全体の概要を、日本側の動きと要因を中心に明らかにする。まず粛清の命令・実施要領の作成・実施過程を日本側資料によって明らかにする。また日本軍の構成、華僑政策の特徴など背景について分析し、定説がなく議論となっている犠牲者数の検討、粛清をおこなった理由について検討する。シンガポール華僑粛清が、シンガポール占領前から計画された華僑に対する強硬策の一つであり、長期にわたる中国への侵略戦争のうえになされた残虐行為であると結論づけている。