著者
柳原 純夫 仲村 成貴 後藤 洋三 山本 幸 柿本 竜治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_564-I_574, 2021 (Released:2021-07-22)
参考文献数
4

熊本地震直後の社会基盤設備の応急復旧での地元建設会社の初動対応の実態把握と課題抽出を目的とし,ヒアリング及びアンケート調査を実施した.調査結果と課題は次の通り.(1) 地震後の初動対応に遅れや混乱が発生した.協定内容の改善が必要である.(2) 対応工事の必要資源の不足が発生した.防災計画等での考慮が必要である.(3) 建設会社が実施した応急復旧工事における,費用清算面の問題はなかったが,施工数量の確定や支払処理の円滑化が課題として残った.(4) 応急復旧作業時は作業安全レベルが低下していた.地震後の工事を対象とした安全教育システムの確立が急務である.(5) 事故発生時には「公務災害補償」と同等の補償の適用を望む回答が大半を占めた.法律面を含めた補償制度面の対応が必要である.
著者
山本 一敏 後藤 洋三 柿本 竜治 山本 幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集A1(構造・地震工学) (ISSN:21854653)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.I_589-I_602, 2021 (Released:2021-07-22)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

2016年熊本地震の被災地自治体の技術職員に実施したインタビューとアンケート結果から,地震発生時の応急復旧と地元建設業とコンサルタントへの支援要請の実態を調査した.技術職員の不足や技術と経験が不十分である等の理由から2/3程度の施設で被災規模の把握に2週間以上を要していた.BCPや震災対策マニュアルの作成と訓練,管理施設の資料の整備,外部への支援要請などが不十分だった自治体もあり,限られた技術職員で社会インフラ施設の機能を迅速に回復するためには,これらの改善が必要である.
著者
柿本 竜治 黒肥地 雄太
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.75, no.5, pp.I_117-I_127, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

本研究では,熊本県が実施した熊本地震の災害対応に係る調査の「課題が生じた点」のテキストデータを分析し,熊本県庁で生じた課題を整理分類するとともに,時系列的に災害対応状況を整理し,どの段階で課題が生じているかを把握する.包括的に課題を把握した後に,災害の応急復旧に深く関わった土木部の動きに着目し,初動の災害対応活動に生じた課題を把握する.さらに,災害応急復旧の現場が直面した課題の把握にあたり,実際に業務にあたった行政技術職員および建設業者にヒアリング調査を実施し課題を抽出する.本研究では,階層的に課題を把握していくことで,災害時の応急対応に生じた共通の課題を探り出し,迅速な災害対応を可能にする応急復旧体制の構築に寄与する知見を得ることを目的とする.
著者
吉田 護 柿本 竜治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.7, pp.22-00210, 2023 (Released:2023-07-20)
参考文献数
41

本研究では,避難行動と関連する変数群の因果関係をDAG(Directed Acyclic Graph)を用いて構造化し,構築したDAGに基づいて,令和2年7月豪雨で被災した熊本県人吉市の住民を対象に避難行動調査を実施,避難の備えや災害関連情報の取得による避難行動への因果効果を推計した.結果として,避難の備えの中で,居住地の浸水想定の認識や指定緊急避難場所までの道のりの確認,避難行動計画の検討が早期の立退避難に寄与していたことが明らかとなった.また,災害関連情報の中では,防災河川・気象情報や避難情報の取得による避難行動への因果効果は確認されなかったが,早期の呼びかけ情報の取得は立退避難に大きく寄与していたことが明らかとなった.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.I_57-I_68, 2017 (Released:2017-12-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない」という自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.このパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,防護行動を促すことが難しいことを意味する.これまでに,防護意図や防護行動の促進および阻害要因を抽出する研究は数多く行われているが,抽出された要因が防護意図や防護行動に与える影響は結果が異なっている.そこで本研究では,リスク認知のパラドックスの解消に向けて,同じ質問項目内容のアンケート調査を6地区で行い,個人の減災行動の地域性や共通性を検証した.その結果,非常持ち出し品の備えを促す上で,リスク認知改善よりむしろ反応コストに関する対処評価認知の改善が地域に共通して有効であることが示唆された.
著者
柿本 竜治 上野 靖晃 吉田 護
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.I_51-I_63, 2016 (Released:2016-12-23)
参考文献数
70
被引用文献数
2 6

「自然災害に対するリスク認知が高くても,そのリスクへの防護行動を取らない.」といった自然災害リスク認知のパラドックスの存在が指摘されている.自然災害リスク認知のパラドックスの存在は,自然災害リスクの認知を向上させるだけでは,そのリスクへの防護行動を促すことが難しいことを意味する.そこで,本研究では,既往研究の中に見られる自然災害リスク認知や減災意識と防護行動との乖離の要因を抽出し,自然災害リスク認知パラドックスの存在を確認する.そして,防護動機理論の枠組みを援用して,研究の視点や枠組みを整理することを通じて,個人の自発的な減災行動の包括的な理解を促すことを目的とする.また,同時に阿蘇市および南阿蘇村で実施された予防的避難の実行状況と自然災害への意識の分析から意識と行動の乖離の要因を探る.
著者
柿本 竜治 吉田 護
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.843-850, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

「平成30年7月豪雨」では,西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害,土砂災害が発生し,死者・行方不明者232人の甚大な災害となった.気象庁から注意報や警報,市町村から避難勧告や避難指示など様々な情報が発信されたが,多くの避難遅れが発生した.豪雨時の避難遅れの一つの要因として,住民の災害対応に状況認識の失敗が推察される.災害時の状況認識の失敗には,人々の避難行動の意思決定のための災害情報や周辺環境に対する認知的な限界の存在があろう.そこで,本研究では2018年7月の西日本豪災害で被災した地域を対象に避難に関するアンケート調査を行い,気象情報,避難情報の取得から豪雨時の避難行動までの流れを「思考の負荷が低く,直観的,自動的ですばやく行動に結びつくシステム1」と「意識的思考を駆使し,負荷が高く,分析的で論理的なシステム2」を考慮したフレームに整理することを目的とする.具体的には,気象情報や避難情報の取得から避難まで流れを,防護動機理論に基づいて整理するとともに,そこにヒューリスティックな意思決定の一つである自然主義的意思決定の考え方,その中の状況認識理論を援用する.
著者
曽篠 恭裕 宮田 昭 柿本 竜治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_141-I_154, 2018

本研究では,海外の災害対応における,国際赤十字の仮設診療所資機材の輸送の改善に向けた示唆を得ることを目的として,災害の種類,被災地の地理的特徴,輸送の所要日数,診療活動の開始日,輸送された救援資機材の使用状況に注目して,過去の資機材輸送の比較分析を行った.その結果,突発災害対応において,救援資機材が到着する空港におけるボトルネックや,陸路の寸断による小型機,ヘリコプターを用いた優先する物資の輸送が発生していた.本研究を通じて,今後の資機材輸送の改善に向けて,災害の種類に応じた資機材輸送,梱包の小型軽量化,災害の種類に応じた資機材の選定,輸送資機材の標準化と事前備蓄,国際支援受入国による資機材輸送支援が課題であることが明らかとなった.
著者
柿本 竜治 溝上 章志
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.373-378, 2005
被引用文献数
1

平成14年の道路運送法の改正により、バス路線の需給調整規制の廃止とともに地方バス補助制度も改定された。これにより、これまでの内部補助を前提とした事業者への補助措置ではなく、生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた。補助金投入に際し、従来、路線を評価する指標として営業係数や輸送密度が用いられてきたが、これらの指標による評価には営業費用を最小にする投入や産出がなされているかという企業努力は不問としている。そこで本研究では、生産性と集客性で構成される「企業努力面」と、公共性と収支性で構成される「経営・環境面」とにより路線を分類し、さらに運行サービス水準等の路線の特性による主成分分析を行い、路線改善策の抽出する方法の提案を行った。この方法により、公的補助投入対象路線を効率的に絞り込むことが出来るとともに、補助対象外の路線を維持するための具体的な改善策を示すことが出来た。
著者
柿本 竜治 吉田 護
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1086-1093, 2019-10-25 (Released:2019-11-06)
参考文献数
14

行政が災害への備えを如何に行っても広域に大規模な災害が発生した場合,行政の災害対応能力に限度があることは明らかであり,災害発生初期段階では,自助や共助による災害対応が必要であろう.したがって,地域の災害時の対応力を向上させることは不可欠である.そこで,本研究では,2016年熊本地震による影響の大きかった熊本市の自主防災組織を対象に,熊本地震前の自主防災組織の災害への備えや訓練の状況と熊本地震時の災害支援活動の状況をアンケート調査し,両者の関係を分析した.そして,自主防災組織の災害時の対応力が高った自主防災組織の特徴や特性を明らかにし,自主防災組織の災害時の対応力を向上させるための方策を探った.結果として,日頃の災害への備えが,災害時の対応力に繋がっており,地域による災害への備えの充実は不可欠であることを明らかにした.また,自主防災組織の災害への備えの取り組みに影響している要因を分析したところ,すべての取り組みにおいて,組織体制の整備が重要であることが示された.
著者
柿本 竜治
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画. 別冊, 都市計画論文集 = City planning review. Special issue, Papers on city planning (ISSN:09131280)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.817-822, 2008-10-15
参考文献数
19
被引用文献数
1

乗合バス事業では、2002年に需給調整規制が撤廃された。一方、貸切バス事業では乗合バス事業に先駆け2000年に同様の規制緩和を行った。ここで、2年間という時間差を設けた狙いの1つは、貸切バス市場へ参入した民間企業を乗合バス市場へ段階的に参入させることであった。これにより、事業者間の競争が促進され、バス事業全体の活性化につながるはずであったが、貸切バス事業者から乗合バス事業への新規参入は関東のような都市部で僅かに見られただけである。そこで、本研究では、2000年の貸切バスの需給調整規制撤廃、2001年の地方バス補助制度改正、および2002年の乗合バスの需給調整規制撤廃といった一連のバス事業に関する制度変更の影響が考慮可能な費用関数を推定し、乗合バスサービスの生産構造の地域差や制度変更の影響を検証することを目的とする。結果として、バスのサービスの生産構造には地域差があること、貸切バス事業者のコミュニティバスへの参入とう潜在的競争圧力が、費用効率を悪くさせていることなどが分った。
著者
山本 幸 柿本 竜治 山田 文彦
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.553-558, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究の目的は、筆者ら提案する災害リスクマネジメントのフレームの汎用性を検証することにある。山都町菅地区での山間地域の防災力向上への取り組みにPDCAサイクルに基づく災害リスクマネジメントのフレームを適用することで、8回に亘る継続的なWSと2回の避難訓練の運営を効率的に行うことが出来た。また、PDCAサイクルを巡回させることで、防災学習の取り組み内容を地域全体の防災から災害時要援護者の支援へとスムーズに発展させることが出来た。WSを通して、地域の災害リスクの認知、世帯カルテの整備、災害時要援護者の確認、地域のソーシャル・ネットワークの確認が行われ、災害時に地域や行政が特に配慮しておくべき世帯等が絞られた。避難訓練を通して、地域の防災連絡体制の強化と集落間の協力関係の強化が図られ、避難時間が40分短縮されるなどの効果が見られた。また、WSでの議論により、地域ニーズと地域特性に応じた雨量観測システムと安否確認システムが構築され、実装された。最後に、本取り組みを通じて、地域防災学習のWSを継続していくにあたっての留意点を明らかにした。
著者
柿本 竜治 金 華永 吉田 護 藤見 俊夫
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.321-326, 2014
被引用文献数
4

本研究は,予防的避難の阻害要因と促進要因を探ることを目的とする.そこで,阿蘇市および南阿蘇で行った避難意識に関するアンケート調査を用いて,防護動機理論に基づいて避難の意識構造分析を行った.その結果,阻害要因は,避難移動や避難所で過ごすこと等の負担,すなわち,避難行動を起こすことに伴う負担感であることが分かった.一方,促進要因となっているのは,どれくらいの確率で被災するか,どの程度の被害かといった自然災害に対する脅威であることが分かった.さらに,熊本市龍田地区の北部九州豪雨災害時の避難行動の調査結果を用いて,災害に対する不安度モデルを推定した.災害に対する不安度モデルの推定結果より,災害が差し迫っていない早い時間の避難の呼び掛けでも避難を促す効果があることが分かった.
著者
山田 文彦 柿本 竜治 山本 幸 迫 大介 岡 裕二 大本 照憲
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.25-43, 2008-05-31
被引用文献数
3

Risk Communication using the continual workshops on flood risk management was proposed and implemented to enhance the capability of community flood risk mitigation. As for the case study, risk communication for flood due to heavy rain and river flooding was implemented at Kosen town-community in Kumamoto City. The variability of workshop participants consciousness for flood risk mitigation was investigated based on the questionnaire survey. Fundamental data of residents' evacuation for flood was obtained and analyzed by conducting the evacuation drill for virtual flood scenario. Implementation of risk communication for flood was found to be effective for enhancement of residuals' consciousness for both self-reliance and mutual aid in community flood risk mitigation.
著者
柿本 竜治 溝上 章志
出版者
熊本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

1.路線別バス事業経営評価手法の開発平成14年の道路運送法の改正により,バス路線の需給調整規制の廃止とともに地方バス補助制度も改定された.これにより,これまで内部補助を前提としていた事業者への補助措置ではなく,生活交通確保のために地域にとって必要な路線に対する路線毎の補助制度に改められた.補助金投入に際し,従来,路線を評価する指標として営業係数や輸送密度が用いられてきたが,これらの指標による評価には営業費用を最小にする投入や産出がなされているかという企業努力は不問としている.そこで本研究では,生産性と集客性で構成される「企業努力面」と,公共性と収支性で構成される「経営・環境面」とにより路線を分類し,さらに運行サービス水準等の路線の特性による主成分分析を行い,路線改善策を抽出する方法の提案を行なった.この方法により,公的補助投入対象路線を効率的に絞り込むことが出来るとともに,補助対象外の路線を維持するための具体的な改善策を示すことが出来た.2.路線別特性評価に基づくバス路線網再編手法本研究は,バス輸送の持つ平均生産性構造と実績費用とを比較することによる当該路線の生産効率性,および路線沿線の潜在需要と実際に獲得した乗車人員との比較による潜在需要の顕在化可能性という2つの視点から,バス路線別の特性評価を行なう方法を提案したものである.さらに,この特性評価法による路線の分類,および分類された路線を改善する合理的でシステマティックな路線再編方策を示す.熊本都市圏を対象として汎用交通需要パッケージの一つであるJICASTRADAを利用し,この路線分類別改善方策にしたがったバス路線網の再編を試みた.再編バス路線網に対して交通需要予測を行なった後路線別,および路線網全体の乗車人員や営業係数などについて効果分析を行い,本手法の実用可能性と有用性を検証した.