著者
樋口 亮介
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 = Keio law journal (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.40, pp.177-213, 2018-02

はじめに 1. 本稿の検討課題 2. 検討順序一 日本法の状況 1. 従来の議論 2. 量刑理論に基づく裁判例の分類 3. 検討を深めるための素材の選択二 アメリカの議論状況 1. 量刑実務の状況 2. 理論的検討を行う学説の紹介三 不遇な生育歴が責任非難に与える影響 1. 応報理念の基礎に遡った基礎づけ 2. 具体的な考慮方法 3. 死刑選択判断における考慮の必要性おわりに原田國男教授・三上威彦教授・六車明教授退職記念号
著者
樋口 亮介
出版者
東京大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-28

責任能力について、日本の判例が形成された歴史的背景を調査することで、現在の裁判員裁判における説明の沿革を明らかにした。また、日本の判例に類似するドイツの学説について、意思自由という哲学問題も含めて検討することができた。アメリカにおける責任能力の抗弁の廃止論も含めて、責任非難という大きな枠組みの中においても、複数の問題解決基準が展開されていることを把握することができた。さらに、フランスの学説においても、社会を構成する判断能力ある人間に刑罰を科すという思想が主張されていることを把握できた。
著者
佐伯 仁志 大澤 裕 橋爪 隆 樋口 亮介 宇賀 克也 森田 宏樹 神作 裕之 白石 忠志 山本 隆司
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本件研究は、経済活動における違法行為に対する制裁手段の在り方について、刑事制裁と非刑事法的な規制手段とを比較しつつ、多角的な検討を加えるものである。具体的な研究成果としては、①刑事法上の過失概念と民事法上の過失概念の関係、②公務員の過失責任の限界、③銀行取引における違法行為の処理、④金融商品取引法における罰則の解釈、⑤独占禁止法におけるサンクションの在り方などの問題について、検討を加えることができた。
著者
樋口 亮 斎藤 秀之
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第131回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.463, 2020-05-25 (Released:2020-07-27)

葉緑体ゲノムは葉緑体内に局在するオルガネラゲノムの一つで、遺伝子の発現調節を介して光合成の恒常性維持(ホメオスタシス)を司る。遺伝子の発現調節メカニズムの一つにDNAメチル化によるエピジェネティック制御がある。DNAメチル化は塩基配列の変異をともなわずDNA修飾のみで遺伝子発現調節の情報を記録する機能である。モデル生物では老化とDNAメチル化の関係が報告されている。葉緑体ゲノムにおいてもDNAメチル化の現象は植物で知られており、老化と光合成機能低下の関係にDNAメチル化の関与が予想される。しかし野外環境下に生育する樹木におけるDNAメチル化の実態や樹勢の衰退との関係について明らかでない。本報告は、 葉緑体ゲノムのDNAメチル化の実態解明のために、バイサルファイト法と次世代シーケンス解析を組み合わせたバイサルファイトシーケンス解析を行い、一塩基の解像度でシトシン塩基のDNAメチル化の遺伝子地図を作成して、DNAメチル化の影響を受けやすい遺伝子を明らかにした。続いて、ブナ健全木と老化による衰退木の葉の葉緑体ゲノムを対象にDNAメチル化と遺伝子発現の関係を比較して、衰退にともなう遺伝子発現のエピジェネティクス制御を検討した。
著者
樋口 亮太 土屋 博紀 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 小杉 千弘 平野 敦史 植村 修一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.647-653, 2010
被引用文献数
2

近年,画像診断の進歩により膵腫瘍が偶然に発見される機会が増加している.今回,我々は術前診断しえたものの嚢胞成分の悪性を否定できず縮小手術を行った膵内副脾の1例を経験したので報告する.症例は55歳の女性で,急性虫垂炎のため行った腹部CTで膵尾部に径約3 cm大のcysticな領域を伴う充実性腫瘤を認めた.EUSで腫瘤の充実性領域は脾臓と同程度のエコー像を呈し膵内副脾を疑った.腫瘤はSPIO MRIで脾と同様の信号低下を,99mTc-スズコロイドシンチグラフィーで集積増加を示した.膵内副脾と診断したが,cysticな成分もあり悪性が完全に否定できないことを説明したところ,外科治療を希望され手術となった.膵尾部背側に3 cm大の軟らかい赤褐色腫瘍を認め,脾温存膵尾部切除術を行い術中ゲフリールにて膵内副脾を確認した.経過は良好で術後16日目に退院した.術前診断しえた膵内副脾の報告は少なく貴重な症例と思われ若干の文献学的考察を加え報告する.
著者
小杉 千弘 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 樋口 亮太 平野 敦史 植村 修一郎 土屋 博紀
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.632-639, 2009-06-01
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

鼠径ヘルニア根治手術は若い外科医が基本手技を鍛錬する場であり,外科手術の入門編として位置していた.現在,初期研修医制度が実施され,外科系診療科志望でない研修医も外科をローテーションするカリキュラムが組まれている.今回,我々は鼠径ヘルニア根治術を初期研修医に執刀させる是非を検討する.方法:2005年4月から2007年12月に根治手術を施行した139例を対象とした.134例にmesh plug法が,5例にPROLENE hernia system法が行われた.初期研修医執刀例は72例(R群),外科医執刀例は67例(S群)だった.R群とS群において,患者背景,術中,術後因子を検討した.結果:患者背景においてR群とS群で有意差はなかった.術中因子として手術時間においてR群:S群に有意差を認めた(88.0分:64.2分,p<0.001).術後因子は,入院期間(3.8±2.1日:4.9±8.3日,p=0.14),合併症(9.8%:6.6%,p=0.64)に統計学的に有意差はなかったが,再発はR群7例(9.7%),S群1例(1.5%)で有意にR群において高かった(p=0.04).考察:入院期間,合併症には有意差はなく,再発率は初期研修医術者が外科医と比較し有意に高かったが,助手として外科専門医が指導することで,再発率が抑えられる.よって,現在の研修医制度において外科系研修カリキュラムの手術執刀についての指導指診作成が望まれる.