著者
阿部 敏紀 相川 達也 赤羽 賢浩 新井 雅裕 朝比奈 靖浩 新敷 吉成 茶山 一彰 原田 英治 橋本 直明 堀 亜希子 市田 隆文 池田 広記 石川 晶久 伊藤 敬義 姜 貞憲 狩野 吉康 加藤 秀章 加藤 将 川上 万里 北嶋 直人 北村 庸雄 正木 尚彦 松林 圭二 松田 裕之 松井 淳 道堯 浩二郎 三原 弘 宮地 克彦 宮川 浩 水尾 仁志 持田 智 森山 光彦 西口 修平 岡田 克夫 齋藤 英胤 佐久川 廣 柴田 実 鈴木 一幸 高橋 和明 山田 剛太郎 山本 和秀 山中 太郎 大和 弘明 矢野 公士 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 = ACTA HEPATOLOGICA JAPONICA (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.384-391, 2006-08-25
被引用文献数
18 56

極く最近まで殆んど不明状態にあった我国のE型肝炎の実態を明らかにする目的で,我々は全国から総数254例のE型肝炎ウイルス(HEV)感染例を集め,統計学的・疫学的・ウイルス学的特徴を求めてこれを解析した.その結果,[i]HEV感染は北海道から沖縄まで全国津々浦々に浸透していること;[ii]感染者の多くは中高年(平均年齢約50歳)で,且つ男性優位(男女比約3.5対1)であること;[iii]我国に土着しているHEVはgenotype 3とgenotype 4であるが,後者は主に北海道に偏在していること;[iv]年齢と肝炎重症度との間に相関があること;[v]Genotype 3よりはgenotype 4による感染の方が顕性化率も重症化率も高いこと;[vi]発生時期が無季節性であること;[vii]集積症例全体の約30%は動物由来食感染,8%は輸入感染,2%は輸血を介する感染に帰せしめ得たものの,過半の症例(約60%)に於いては感染経路が不明のままであること;等の知見を得た.<br>
著者
市田 隆文 岩月 舜三郎 各務 伸一
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.1-7, 2001-01-05
参考文献数
2
被引用文献数
2

脳死肝移植適応評価委員会での脳死肝移植の選択基準に関しては,欧米のそれと異なり対象疾患に優先順位を与えた.このことより肝移植医療に必要な公平差を欠くとの指摘を受けてきた.健全なる肝移植医療を立ち上げるための善意の操作であったが,UNOSの基準と合わせてもはや実状に合わなくなってきていることも事実である.アルコール性肝硬変より圧倒的に多い肝炎ウイルスによる肝疾患を念頭に置き,UNOSの選択基準を本誌で簡潔に紹介し,わが国における脳死肝移植の選択基準の改訂の必要性を記した.
著者
佐藤 祐一 市田 隆文 原田 武 伊藤 信市 朝倉 均 加藤 仁 橋倉 泰彦 池上 俊彦 川崎 誠治 松波 英寿 幕内 雅敏
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.684-689, 1997-11-25
被引用文献数
2

症例は52歳の成人女性で, 1984年に皮膚掻痒感で発症し, Scheuer I期の原発性胆汁性肝硬変 (PBC) と診断され, 外来で経過観察されていた. 1992年頃より黄疸が出現し, 1993年3月に当科入院したが, 黄疸の高度進行, 腹水の増加, 肝性脳症の悪化, 肝腎症候群を認め, 血漿交換を含めた内科的治療も奏功しなかった. そこで本人と家族が肝移植を強く希望したため, 正式にインフォームド・コンセントを得て, 1993年10月20日信州大学第1外科へ移送し, 同年11月2日, 長男 (25歳) をドナー (グラフト肝重量402g) とする成人間生体部分肝移植を施行した. その後, 原病の再発とも思われる組織像と, 抗糸粒体抗体, 抗PDH抗体, IgM, ALPの上昇を認めた. 術後約3年半を経た現在, 上述のように血清学的には原疾患の再発が示唆されるが, QOLはよく, 日常生活に支障は生じていない. 一方, ドナーである長男も結婚し, 普通と全く変わらない生活を送っている. 以上PBCに対する治療として, 生体肝移植は我が国で選択されうるべき治療法の一つであり, 今後その推進に力を注ぐ必要があると思われた.