著者
永松 俊哉
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.240-247, 2013-07-15 (Released:2016-12-28)
参考文献数
28

先行研究を概観すると,運動が抑うつ改善に有効であることに一定の合意が得られつつある。海外では質の高い介入研究の実施と,そのエビデンスに基づいたガイドラインも提示されている。運動の種類としては有酸素運動が効果的であり,高齢者には筋力トレーニングも有効とされている。その他の運動様式の効果検証はきわめて少なく,運動の負荷強度ならびに1回の運動に要する時間についても不明の点が多い。運動に伴う疲労を少なくし,かつアドヒアランスを重視するならば,なるべく低強度・短時間が望ましいと考えられる。しかし,国内の研究成果は少なく,精神科診療における具体的な運動の活用策は未だ定まっていない。今後は,日本人を対象とした抑うつ改善ための運動効果の検証が急務であり,作用機序の解明とともにエビデンスに基づいた運動実施ガイドラインの策定が待たれる。
著者
小松 優紀 甲斐 裕子 永松 俊哉 志和 忠志 須山 靖男 杉本 正子
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.140-140, 2010 (Released:2010-06-02)
参考文献数
47
被引用文献数
5 10

職業性ストレスと抑うつの関係における職場のソーシャルサポートの緩衝効果の検討:小松優紀ほか.東邦大学医学部看護学科―目的:本研究は,職業性ストレスと抑うつの関連性における職場のソーシャルサポート(以下サポート)の緩衝効果について検証することを目的とした. 対象と方法:調査方法は無記名自記式質問紙を用いた横断的研究である.対象者は某精密機器製造工場に勤務する40歳以上の男性712名であった.調査項目は,年齢,職種等の属性,抑うつ,職業性ストレス(仕事の要求度・仕事のコントロール),職場のサポート(上司のサポート・同僚のサポート)等であった.職業性ストレスと職場のサポートの測定はJCQ職業性ストレス調査票(JCQ)を用いた.抑うつは抑うつ状態自己評価尺度(CES-D)を用い,得点が16点以上の者を抑うつ傾向とした.職業性ストレス,サポートについては各尺度の得点を中央値で二分し,得点の高い群を高群,低い群を低群とした.職業性ストレスおよびサポートの高低別のCES-D得点の平均値の比較をt検定にて行った.またCES-D得点を従属変数とし,対象者の属性,職業性ストレス,サポート,職業性ストレスとサポートの交互作用項を独立変数として階層的重回帰分析を行った.交互作用が有意であった場合には,年齢を共変量として共分散分析を行い,職業性ストレスの高低別にサポートの高低がCES-D得点に及ぼす効果を検討した. 結果:調査の結果,全対象者のうち抑うつ傾向者は23.2%であった.仕事の要求度の高低別のCES-D得点は,高群が低群よりも有意に高かった.仕事のコントロール,上司のサポート,同僚のサポートそれぞれにおけるCES-D得点は,各低群が高群よりも有意に高値であった.階層的重回帰分析を行った結果,仕事の要求度,仕事のコントロール,上司のサポート,同僚のサポートはそれぞれCES-D得点に対する有意な主効果が認められた.さらに仕事のコントロールと上司のサポートの要因間でCES-D得点に対する有意な交互作用が認められた.また,仕事のコントロールの低い状況でのみ,上司のサポート高群よりも低群のCES-D得点が有意に高値であった. 結論:これらのことから,上司によるサポートは仕事のコントロールの低さと関連する抑うつを緩衝する効果がある可能性が示唆された. (産衛誌2010; 52: 140-148)
著者
富田 知子 神山 資将 及川 麻衣子 木村 康一 永松 俊哉
出版者
学校法人 山野学苑 山野美容芸術短期大学
雑誌
山野研究紀要 (ISSN:09196323)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.11-18, 2022 (Released:2023-03-31)

美意識とは、「美」に対する感覚や判断力を意味するが、その概念は地域や風土、あるいは文化や歴史などによって、様相に違いがあると言われている。1)これまで富田らは日本での美容に関する「美意識」のあり方について調査を行い、年齢や立場によってその捉え方が違うことを示してきた。まず日常生活の中で自身の思う美意識と実生活の一致について、学生と高齢者を比較した場合、高齢者の「自身が思う美意識」と「実生活」との一致が強く示唆された。2)次に理美容師の「美意識」についての検討では、年代によってとらえ方に違いがみられた。このことから、教育や経験によって「美意識」を獲得していくことが推測できる。今回、山野美容芸術短期大学の美容教育の核となる授業「美道論」に注目し、その受講前後での「美意識」の捉え方を比較検討した。
著者
永松 俊哉 北畠 義典 泉水 宏臣
出版者
公益財団法人明治安田厚生事業団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

これまで我々は,睡眠改善にストレッチが一部寄与する可能性を報告したが、どのような運動様式が有効なのか、あるいは運動の効果が発現する機序については依然不明の点が多い。そこで本研究では、まず実用性を重視した短時間のストレッチ運動プログラムを作成し、睡眠ならびに精神的健康に関連する生理的・心理的要因に及ぼす本プログラムの影響を検討した。その結果、本プログラムの実施は、体温変動、ストレス反応軽減、および気分の改善をもたらすことが示された。続いて、本プログラムが睡眠改善に寄与するのか否か、軽度睡眠障害者を対象に睡眠脳波の変動および睡眠前後のストレスマーカーをもとに検証した結果、本プログラムは睡眠中にストレスを緩和する作用を有する可能性が示唆された。
著者
永松 俊哉 北畠 義典 泉水 宏臣
出版者
公益財団法人 明治安田厚生事業団 体力医学研究所
雑誌
体力研究 (ISSN:03899071)
巻号頁・発行日
vol.110, pp.1-7, 2012 (Released:2017-07-26)
参考文献数
25
被引用文献数
4

We have previously reported that stretch training is effective in promoting improvement of sleep-related problems. However, the mechanisms underlying this effect remain unclear. This study aimed to investigate the effects of brief and low-intensity stretching exercises on physiological and psychological responses in relation to sleep and mental health. We examined changes in core temperature, stress, and mood states in response to acute exercise. Eight women (mean age, 49.4 ± 5.8 years) who were not taking any medications affecting sleep volunteered to participate in this study. The exercise program required 10 min of stretching using yoga techniques and poses. Exercise and control programs were randomly performed in a cross-over trial in each subject. Each trial was started at 1:00 pm; stretching began at approximately 2:00 pm. Rectal temperature, salivary cortisol levels, and mood states( pleasantness, relaxation, anxiety) were measured before and after stretching. Significant interactions in two factors( trial and time progress) were identified for rectal temperature, cortisol levels, and pleasantness score. A greater degree of change in rectal temperature was seen with the exercise program than with the control program. Cortisol levels increased slightly in the control program and decreased in the exercise program. Pleasantness scores increased over time in both programs, but the degree of change was greater in the exercise program than in the control program. Peripheral heat dissipation at bedtime after a rise in core temperature of less than 0.5℃ has been reported to facilitate sleep onset. The present study found that a suitable rise in core temperature was achieved after stretching. Stress response and pleasantness also improved with stretching. These changes after exercise seem to contribute to improved emotional condition. In conclusion, performance of brief and low-intensity stretching exercises may promote improvement of sleep-related problems by causing a suitable rise in core temperature, and may contribute to mental health by reducing stress and improving mood status in middle-aged women.
著者
永松 俊哉 荒尾 孝
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.39-47, 1997-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
20

運動前多食型 (BE) および運動後多食型 (AE) の食物摂取パターンが持久性の向上に有効か否かを明らかにすることを目的に, ラットを用いて低強度および高強度の急性運動を負荷した際の糖脂質代謝について検討した.(1) 運動前安静および対照安静のいずれの時点でも, 血漿FFAは自由摂食 (AD) 群に比較しBE群およびAE群で有意な低値を示し, 肝臓グリコーゲンはAD群およびBE群に比べてAE群で有意な高値を示した.(2) 低強度運動時には, 血漿FFAおよびグリセロールがAD群において運動前安静群に比較して運動群で有意な高値を示した.肝臓グリコーゲンは, AD群では運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示し, BE群では運動前安静群に比べて運動群で有意な高値を示した.一方, 肝臓グリコーゲンは運動後, AD群に比較してBE群およびAE群で有意な高値を示し, BE群に比較してAE群で有意な高値を示した.腓腹筋グリコーゲンは, AD群では運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示し, 運動後には, AD群およびBE群に比較してAE群で有意な高値を示した.(3) 高強度運動時には, AD群, BE群, およびAE群のいずれも血漿FFAおよびグリセロールが運動前安静群に比較して運動群で有意な高値を示した.運動負荷後の血漿FFAにおいては, AD群に比較してBE群およびAE群で有意な低値を示した.肝臓グリコーゲンは, AD群では運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示した.運動負荷後は, AD群に比較してBE群で有意な高値を示し, BE群に比較してAE群で有意な高値を示した.腓腹筋グリコーゲンに関しては, AD群, BE群, およびAE群のいずれも運動前安静群に比較して運動群で有意な低値を示した.以上より, 運動後多食型は, 運動開始時には自由摂食および運動前多食型に比較して, 肝臓グリコーゲン含量を高めることに極めて有効であるので持久的運動時の肝臓グリコーゲン消費節約が可能であり, 持久性の向上に有効であるものと推察された.