著者
富井 啓介 門脇 徹 北島 尚昌 福井 基成 永田 一真 堀江 健夫 阿部 博樹 奥田 みゆき 丞々 弥生 坪井 知正 仁多 寅彦 蝶名林 直彦
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.291-297, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
33

慢性呼吸不全に対する在宅長期ハイフローセラピーは,解剖学的死腔の洗い出し,相対湿度100%の加湿,呼気時陽圧換気,低侵襲のインターフェイス,高流量システムによる安定したFIO2供給などにより,COPD,気管支拡張症,拘束性換気障害などで有効性が期待される.特にCOPDに関しては夜間就寝中の使用で夜間及び日中のPaCO2低下,QOL改善,増悪抑制などがランダム化比較試験で示されており,PaCO2が 45 mmHg以上 55 mmHg未満,もしくは 45 mmHg未満でも夜間低換気を認めるような場合が適応と考えられる.臨床試験における長期ハイフローセラピーの有害事象は軽微なもののみであったが,導入にあたっては入院の上,動脈血ガスや経皮酸素飽和度,経皮CO2分圧,バイタルサインなどをモニターしながら適切な流量とFIO2,加湿温度を設定し,さらに鼻カニュラの装着や加湿用水,機器の管理教育などを十分に行う.
著者
小泉 美緒 玉木 彰 永田 一真 名和 厳 富井 啓介
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.262-265, 2019-11-30 (Released:2020-01-28)
参考文献数
14

症例は73歳男性,特発性肺線維症に気胸を合併していた.公営住宅3階に独居で,ポータブルタイプの酸素濃縮器を使用し,同調式 3 L吸入下で歩行と階段昇降を行っていた.理学療法開始時には下肢筋力低下および運動耐容能の低下を認め,同調式吸入下での階段昇段時に低酸素血症と著しい呼吸困難,呼吸数増加を認めていた.3週間の介入によって下肢筋力,運動耐容能は改善したものの,同調式吸入下では階段昇降時の呼吸困難,低酸素血症は改善しなかったため,同調式から連続式に切り換え可能な呼吸同調器付きの酸素ボンベへ変更した.その結果,連続式吸入下で20段の階段昇段と1回の立位休憩で目標であった階段昇段40段を獲得し,本症例は自宅退院に至った.本症例のような階段昇段時に低酸素血症,呼吸困難,呼吸数増加を呈する患者に対しては,一時的に連続式を使用する指導の検討が必要と考えられた.
著者
永田 一範 藤庭 由香里 森藤 武
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1342, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 骨格筋を構成する筋線維は遅筋線維と速筋線維に大別される。多くのヒトにおける研究では、骨格筋に対するスタティックストレッチングは、Ib抑制により伸張反射を抑制させ、最大筋力を低下させるといわれており、スポーツ競技のパフォーマンス直前には推奨されていない。しかし、動物モデルにおいて、遅筋線維では速筋線維と比較して、骨格筋の持続伸張によりCaイオン濃度が上昇し、筋張力は増大すると報告されており、筋線維タイプの違いによりストレッチング後の筋張力発揮に違いがあることが示唆されている。スタティックストレッチングは臨床場面、及びスポーツ現場で頻繁に使用される手技であり、遅筋線維と速筋線維に分けて、その影響を検証することは重要である。そこで、我々は、ヒトにおいて、遅筋線維優位のヒラメ筋と速筋線維優位の前脛骨筋に対してスタティックストレッチングを実施し、それぞれのストレッチング前後におけるピークトルクを体重で除したピークトルク値(%BW)とピークトルク値が検出されるまでのピーク時間(sec)の変化を検証した。【方法】 対象は、健常男性31名(年齢25.6±3.5歳)とし、除外基準は、下肢に整形外科疾患を有する者や腰部・下肢に痛みのある者とした。測定には、CYBEX NORM(Computer Sport Medicine社製)を使用した。測定肢位は背臥位とし、ヒラメ筋と前脛骨筋が主動作筋として関与する膝関節屈曲位での足関節底屈と背屈運動を、最大筋力にて3回反復させた。角速度は毎秒15°に設定し、ピークトルク値とピーク時間を測定し、3回中の最大値を採用した。そして、10分間の安静をとらした後、スタティックストレッチングを30秒行い、その直後に再び足関節底屈と背屈のピークトルク値とピーク時間を測定した。統計処理にはt検定を使用した。(p<0.05)【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の主旨および手順を説明し、参加の同意を得て実施した。【結果】 ストレッチング後の足関節底屈のピークトルク値は、ストレッチング前と比較して7%増大し有意に高い値を示した(p>0.05)。一方、足関節背屈のピークトルク値は、ストレッチ前後において有意差を示さなかった。また、足関節底屈と背屈のピーク時間においては、ストレッチング前と後の値では有意差を認めなかった。【考察】 本研究において、スタティックストレッチングは、ストレッチング前と比較して、足関節底屈のピークトルクを有意に増加させ、ヒラメ筋の様な遅筋線維の割合が多い骨格筋では、スタティックストレッチングは筋出力を増加させる可能性が示唆された。これは、ストレッチングにより遅筋線維の筋張力が増大したことによるものと考える。筋収縮は、筋小胞体から放出されたCaイオンが、トロポニンと結合するとアクチンフィラメントが活性化され、ミオシンフィラメント頭部と連結橋を形成し、筋張力の大きさは活動する連結橋の数に比例すると報告されている。また、遅筋線維は速筋線維に比べてCaイオンに対する感受性が高いと言われている。これらのことから、遅筋線維では、速筋線維と比べ、持続的筋伸張によりCaイオン濃度が上昇し、アクチンとミオシンの連結橋が増加した結果、筋張力が有意に増大したと予測される。本研究では、ストレッチングにおける効果をピークトルクにて評価したが、そのメカニズムを明らかにするため筋張力などの更なる検証が必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】 ヒトにおいても、ヒラメ筋の様な遅筋線維優位である骨格筋に対するスタティックストレッチングでは筋張力を増大させる可能性があると示唆された。このことはストレッチングを治療手技として用いる理学療法士にとって意義のあるもとと考える。
著者
真野 佳典 豊泉 長 藤井 和之 菊池 義公 永田 一郎 堂本 英治 寺畑 信太郎 玉井 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.239-243, 1999-05-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

子宮頸部扁平上皮癌のまれな一亜型である子宮頸部乳頭状扁平上皮癌の1例を経験したので, その細胞学的特徴を, ヒト乳頭腫ウイルス (HPV) の検索結果を含め報告する. 症例は36歳女性. 肉眼的には, 子宮頸部からカリフラワー状に外向性発育を示す, 易出血性な腫瘍がみられ, 強く悪性が疑われた. しかしながら細胞学的には, 高度異型成から上皮内癌程度の細胞所見で, 浸潤癌を示唆する細胞所見は得られなかった.摘出標本による組織学的検討では, 狭細な血管線維性間質を伴い, 乳頭状に外向性発育を示すとともに, 一部に間質浸潤がみられ, 乳頭状扁平上皮癌 (FIGO Stage Ib 2) と診断された. またPCR法によりHPVの検索を行ったところHPV 16型 (High-risk type) が検出された. 同症例では細胞診および生検で, 浸潤癌の術前診断が困難な例が多く, 上皮内癌とunderdiagnosisされる可能性が想定される. しかしながら肉眼像およびコルポスコピー所見で, 子宮頸部乳頭状扁平上皮癌を鑑別にあげることができれば, 細胞診における豊富な腫瘍細胞量, 細胞集塊, 個々の細胞異型などの所見と生検を併用することで, 術前に確診に至ることも可能と思われる.
著者
永田 一清
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.670-679, 1973

最近, 低次元磁性体のスピン相関がかんしんをもたれている. この低次元化の魅力は, もちろん統計理論上における有利さにあるが, その真のねらいは, むしろスピン系の"次元数"を実験的なパラメータとして積極的に導入することにある. それによってスピン相関の距離及び時間依存性を, 温度とはまた別なかたちで変えることができ, スピン相関の問題を新しい視野から把らえることが期待されている. 本稿では最近の低次元磁性体の常磁性共鳴の研究を中心に, スピン相関と常磁性共鳴吸収の位置, 線形, 線幅などとのかかわりを探る.
著者
永田 一清
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.838-847, 1979

最近, 磁気共鳴が, スピン系の遅い変動を探る有力なプローブとして見直されている. 本稿では, 久保・富田の理論を基礎にして, 磁性体の次元数, スピン相関関数の長時間的なふるまい, 常磁性共鳴吸収スペクトル等の相互の関係を統一的に扱ってみる.
著者
永田 一郎 加藤 宏一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-38, 1986-01-01
被引用文献数
2

子宮脱の修復にあたり,十分な長さの腟を保存し,しかもつねに確実な修復効果を得ることはなかなか難しい.この目的のために,腟上端を仙棘靱帯に固定する手法を従来の腟式手術に組み合わせてみた.対象は1983年4月から1984年4月までの間に,当科で行つた手術例11例(腟式子宮全摘術+前後腟壁整形術9例,Manchester手術1例,前後腟壁整形術のみ1例)であつた.仙棘靱帯固定術は前方操作,子宮操作終了後に行う.後腟壁を逆丁字切開し,通常右の直腸側腔を展開し,坐骨棘を指標として仙棘靱帯を露出する.2本の糸をこれに通し,後腟壁右上端に結合させて腟を挙上固定する.ついで肛門挙筋縫合などを含む後腟壁整形術をかるく行う.術前術後の腟の脱垂状況の評価に部位別の腟scoreを用いた.すなわち尿道脱,膀胱脱,子宮または腟上端の脱,小腸脱,直腸脱の5部位について,脱垂の程度を0〜4点で表し,この順に並べて記載する.術前すべての部位で4点を示した高度子宮脱も本法施行後のscoreは全て良好で,とくに腟上方から後方にかけての修復状況は全例0点を示していた.また術後の腟の変位と移動方向をみるために,subtraction腟重複造影法を試みた.腟に造影剤をつめ,腹圧の前後で側面像を2枚撮り,1枚のフィルムの白黒を逆転し2枚重ね合わせてプリントする方法である.仙棘靱帯固定術を行つた例では腟が背足方に変位しており,腹圧にて腟はその長軸に平行に足方に移動した.一方仙棘靱帯固定術を行わない例では,腟の位置は正常例と同じであつたが,腹圧にて腟は長軸に沿つて前足方に移動した.