- 著者
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成瀬 敏郎
柳 精司
河野 日出夫
池谷 元伺
- 出版者
- 日本第四紀学会
- 雑誌
- 第四紀研究 (ISSN:04182642)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.1, pp.25-34, 1996-02-29 (Released:2009-08-21)
- 参考文献数
- 38
- 被引用文献数
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風成塵の給源地を明らかにするために,電子スピン共鳴(Electron Spin Resonance, ESR)による微細石英(≤20μm)の酸素空格子信号量を測定した.分析試料は中国黄土高原~北京の馬蘭黄土,韓国の低位段丘上の土壌,山地斜面土壌,USAのPeoriaレス,日本の福井県黒田のボーリングコア,網野・鳥取両砂丘地の古土壌で,いずれも最終氷期の風成塵堆積層と完新世土壌から採取したものである.分析結果は,馬蘭黄土の酸素空格子信号量(任意単位)が5.8~8.3であり,韓国の最終氷期・完新世両土壌が6.0~7.7であった.両国の先カンブリア紀基盤岩の赤色風化土壌は11.2~12.4であり,カナダの先カンブリア紀岩石分布地域に由来するisotope stage2のPeoriaレスの分析値も11.0~14.0であった.黒田低地では,最終氷期に古生層山地から流水によって運ばれて堆積した>63μm石英は3.6~4.0であり,同じく20~63μm石英,≤20μm石英も3.3~4.7であった.いっぽう,広域風成塵起源の微細石英(≤20μm)は5.8~8.5であり,中国黄土および韓国土壌の数値と一致した.網野・鳥取両砂丘地の古土壌中の微細石英は3.7~4.8と低く,アジア大陸起源だけではなく,最終氷期に陸化した海底からの風成塵が多くを占めるためと考えられた.鳥取砂丘地のisotope stage 4に相当する層準の微細石英には,中国黄土の数値域に属する5.8を示すものや,AT上の古土壌層のように1.9と低い数値を示すものがある.それはisotope stage 4が風成塵堆積量の多い時期にあたっており,同層準中に大陸起源の広域風成塵が多く混入したためであり,逆に数値が低いのは大山新期火山灰起源の石英が多量に混入したためと考えた.