著者
小泉 清明 柴田 喜久雄
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.91-100, 1964-06-25
被引用文献数
1 5

1. 一生(卵から成虫の産卵まで)を通じての発育有効積算温度数は,ウリミバエ(Dc)は650日度,ミカンコミバエ(Dd)は610日度で,それらの値は15∼30°の範囲で一定である(第1表)。<br>2. 積算温度から東洋温帯地の高温季節に何回世代を重ねるかを推定すれば,韓国,中国本土北部,同東北部,日本の奥羽地方は1∼2回,関東と中部以南の日本は2∼3回となる(第2表)。<br>3. 前成虫を台湾の自然温度から急に8°以下の恒定低温に接触すると40∼55日以内に(第3表),日本の温暖地の冬の平均最高最低を組み合わせた変動低温に接触すると,最低が8°以下で平均示度が11°以下の時は40∼50日以内に低温死する(第4表)。台湾の自然温度から,15→5°に2∼6日なれさせるか,台湾日本間の船艙温度を経て日本の秋から始まる漸降温度を経験させて0∼9°に接触する時は,耐寒性は多少増大して,発育零点は恒温急激接触より1°,変温のそれより2∼3°低くなり,最終温度9°以上で発育し,8°以下では50∼60日で死ぬ(第5表)。<br>4. 成虫は9°以上24∼25°までは100日内外の寿命を保つが,8°以下では30日以内に死ぬ(第6表)。<br>日本温暖地の冬の昼間夜間,平均最高最低,日中の直射日光下の推定体温と夜間温度を組み合わせた変動低温に,成虫を急に接触させると,平均示度が成虫の摂食可能の9°以上の時は天然寿命が保持される。夜間が摂食不能の8°以下の時は,昼間温度に無関係に変温の平均示度に等しい恒温よりも寿命は非常に短く,とくに夜間が0°以下の時は,昼間温度如何にかかわらず,寿命は夜間温度のみによって支配される(第7表)。<br>9∼12月の各月台湾の自然温度から出発して,日本の西部地方のその頃の漸降温(恒温,昼夜間温度を組み合わせた変温)に順次接触すると,成虫は9∼11月出発の場合は,Dc 100∼160日,Dd 80∼125日の寿命を保って1∼2月に死ぬ。急接触にくらべて耐寒性は3∼5倍に増大する。12月に出発すると寿命は40∼55日で1月中まで生存し耐寒性は1.5倍に増大する。しかし漸進接触によって生存を最大2月下旬まで延長することはできない(第8表)。<br>交尾産卵限界温度は漸進接触によっても低下することはなかった。<br>5. 最大の耐寒性を示す漸降温の実験結果から,平均気温にてらして日本の代表的温暖地30ヶ所における越冬の可否を推定すると(第9表),前成虫は琉球,小笠原,伊豆諸島を除けば,いずれの地でも越冬は不可能で,12∼1月から2∼3月にいたる期間に低温死を免れない。<br>成虫も夜間の平均気温0°以下の関東および中部地方の一部,奥羽,北海道,サハリン,朝鮮,中国本土東北部では越冬できないが,夜間0°以上昼間9°以上のその他の地方では,昼間日射下の成虫体温を考慮にいれれば,越冬は必ずしも不可能ではないかもしれない。<br>6. 幼虫の飢餓寿命は,恒温0∼36°で30日以内,最長は10∼12°で,これより温度上るも下るも短縮し,9∼10°の発育零点下の低温では15日以内。摂食可能の限界は8∼10°である(第10表)。<br>成虫の飢餓寿命も,恒温-6∼36°で30日以内,最長は10∼12°,8°以下は20日以内,摂食は9°以上で可能。水だけを与えると寿命の最大は70日に延び,最長は14°,8°以下では20日以内,18°以上の寿命は完全飢餓と差がない(第11表)。<br>変温で水を与えた成虫の寿命は,変温の平均示度に等しい恒温の寿命と大差ない(第12表)。<br>7. 日本の代表的温暖地30ヶ所において,11月から4月にかけ,食物の摂取が不可能の場合の,幼虫と成虫の寿命と越冬の可否を推定すると,幼虫と成虫は,11月と4月には各地とも30日,12月と3月には15∼30日,1月と2月には琉球,小笠原,伊豆諸島(15∼30日)を除けばいずれも10∼15日の寿命で,したがって食物の摂取が完全に不可能の場合は,幼虫成虫とも日本本土では越冬はできない(第13表)。<br>成虫は水の摂取ができれば,11月と4月は琉球,小笠原,伊豆諸島(20日)を除けば,40∼70日,12月から2月にかけて南九州,南四国,紀南,3月の南九州,南四国,紀南,東海がともに30∼60日のほかは,いずれも20日以内の寿命で,したがって成虫も日本本土では越冬は困難と考えられる(第14表)。
著者
山本 俊雄 間瀬 啓介 長坂 幸吉 岡田 英二 伊坪 友子 宮島 たか子 榎島 守利 熊井 敏夫 和泉 清二
出版者
(社)日本蚕糸学会
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.125-132, 1999-04-30 (Released:2010-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
7 7

高付加価値化・差別化できる絹の新素材開発を目的として, 極細繊度蚕品種「中514号×中515号, 愛称: はくぎん」を育成した。中514号は2化, 広食性の斑紋限性品種であり, 繊度は1.8~1.9dである。中515号は1化性で繊度は1.5d以下になる。また, 両原種とも支25号の血縁度が高く, 近交係数は中514号が47%, 中515号が100%である。「はくぎん」は1998年1月に特徴ある蚕品種として指定された。幼虫の体色は青系, 斑紋は形蚕, 繭色は白色, 繭形は楕円形であり, ちぢらは普通である。「しんあけぼの」に比べて飼育日数は全齢で約1日短く, 収繭量, 繭重, 繭層重などの計量形質は約8割の水準にある。繊度は1.65dと極細で4眠蚕品種としては初めての2d以下の品種である。繊度偏差も著しく小さいので, 極細の高級生糸の生産が可能となり, 新しい絹製品の開発に利用されることが期待される。
著者
岩田 久敬 小林 邦彦 中谷 哲郎 林田 卓也 泉 清
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.172-175, 1958 (Released:2010-02-22)
参考文献数
8

1. 小麦胚芽は生でも炒つたものでも, 還元型グルタチオン (G) 約100mg%と, 総G約250mg%を含んでいた。これを37℃で16日間貯えた場合に生胚芽では還元型G 40%以上を損失したが, 炒つたものでは少く, 20%以下を損失するに過ぎなかつた。これを更に30℃で80日間貯えた場合にGの損失は多かつた。然し炒つたものでは常に損失がやや少かつた。2. 小麦胚芽の炒つたものを約2年間室温に貯えた場合の損失は, 還元型Gは約93%で, 総Gは約68%であつた。3. 米胚芽は還元型G 40mg%, 全G 150mg%余を含んでいた。大麦胚芽は前者を20mg%, 後者を40mg%位含んでいた。そして貯蔵中の還元型Gの損失は大麦胚芽の方が少かつたが, 総Gの損失は両胚芽共に少かつた。4. 小麦粉のGは強力粉・普通粉・新鮮粉・未漂白粉に多くて, 還元型G約7mg%, 総G約30mg%であつた。その他の粉は前者3mg%, 後者20mg%位であつたが, 多くの場合に貯蔵した粉はこの値をほぼ最低値として保つていた。5. 一般に還元型Gは貯蔵中に速かに減少し, 総Gは減少がおくれ, 小麦粉の場合には数ヵ月間不変のこともあつた。
著者
荒巻 吏志 野上 裕子 服部 寛士 泉 清徳 古賀 さとみ 堤 千代
出版者
一般社団法人 日本地域理学療法学会
雑誌
地域理学療法学 (ISSN:27580318)
巻号頁・発行日
pp.JJCCPT22007, (Released:2023-10-13)
参考文献数
31

【目的】訪問リハビリテーション利用者に対する転倒リスク評価の一助とするために,居宅で行える身体機能評価と転倒との関連を明らかにすることを目的とした.【方法】訪問リハビリテーション利用者88名を横断的に調査した.過去1年間における転倒歴の有無で2群に分け,カルテ情報および身体機能評価(握力,SS-5,開眼片脚立位),FRI-21を群間で比較し,関連を分析した.身体機能評価は,転倒歴を判別するカットオフ値を求め,オッズ比と95%信頼区間を算出した.【結果】転倒歴有り群は,無し群より身体機能が有意に低く,FRI-21は高い結果であった.身体機能評価のカットオフ値とオッズ比は,握力は17.50 kg,3.95(95%CI: 1.56~10.00).SS-5は18.38秒,8.17(95%CI: 2.74~24.38).開眼片脚立位は5.58秒,4.60(95%CI: 0.88~23.94)であった.【結論】訪問リハビリテーション利用者に対する居宅で行える身体機能評価は,転倒歴との関連が認められ,転倒リスクを評価する指標となる可能性が示唆された.
著者
河内 まき子 小泉 清隆
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.405-416, 1992 (Released:2008-02-26)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

現代日本人頭骨計測値の地域性に影響を与える要因として,計測誤差,標本のサンプリングによる偏り,時代変化がある.計測誤差およびサンプリングにより生じる差をコントロールとして集団間差の大きさを評価し,現代日本人頭骨にみられる地域差と時代差の関連を検討することを目的として,現代日本人頭骨研究班による近世アイヌをふくむ日本人15集団間の差を分析した.計測誤差とサンプリングによる差のためのコントロールとして東京都出土の江戸時代後期の男性頭骨延べ13集団を用いた.また,江戸時代以後における頭骨計測値の時代変化を調べるために,江戸時代および現代日本人頭骨を比較した.計測誤差が小さい項目を用いた多変量解析の結果,現代日本人頭骨の集団間差は計測誤差よりはるかに大きく,全体としてみればサンプリングによる差に比べても大きい.資料の収集年度を検討すると,クラスター分析の結果に基づくアイヌを除く現代日本人14集団のグループ分けは時代変化の影響をかなり強く受けていると考えられる.判別分析の結果によれば,このグループ分けに最も大きな影響をもつ項目は頭骨最大幅である.統計的に有意な集団問差を示す項目の多くは時代変化をも示すたあ,明治から昭和時代にかけて集められた頭骨資料に基づいて,時代変化の影響をとり除いた地域差を分析することは難しいであろう.
著者
豊泉 清浩 トヨイズミ セイコウ Seiko Toyoizumi
雑誌
浦和論叢
巻号頁・発行日
no.33, pp.155-176, 2004-12

Morita therapy which means an original psychotherapy in Japan was established by Shoma Morita around 1920. He became the first proffesor of Department of Psychiatry Jikei University School of Medicine. Morita therapy is particularly effective with a kind of neurosis called shinkeishitsu. Morita therapy has two major therapeutic techniques "Gajoku" which means resting in bed and "Sagyo" which means work or daily activities for living, and has style of family therapy. In this paper I refer to Morita's experience which is related to his idea of principles of treatment when he contrives a special therapy for shinkeishitsu. And then I study "the hypochondriacal basic tone" that is the basis of Morita theory, and "the psychic interaction" and "the contradiction of thinking" that mean the psychological mechanism for activating symptoms. Further I study the principles of feelings and residential Morita therapy. The basis of principles of Morita therapy has Morita's way of thinking that shinkeishitsu patient surmounts symptoms and grows into an active person through educating the hypochondriacal basic tone. Accordingly, the purpose of this paper is to study mainly the hypochondriacal basic tone and the psychic interaction in Morita therapy, and to explain the significance of educating the hypochondriacal basic tone.
著者
泉 清高 厳 鋼 辻村 健
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
ロボティクス・メカトロニクス講演会講演概要集
巻号頁・発行日
vol.2012, pp._2P1-O03_1-_2P1-O03_2, 2012

This paper discussed the input interface of aerial hand written characters using Kinect which is the sensor device for Xbox 360. The proposed recognition algorithm of hiragana is based on simplified glyph data composed of a stroke count and a series of writing direction. The effectiveness of our approach is demonstrated by some experiments.
著者
豊泉 清浩
出版者
文教大学
雑誌
教育学部紀要 = Annual Report of The Faculty of Education (ISSN:03882144)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.27-38, 2015-12-20

「特別の教科道徳」に対する期待とともに批判もある現状を踏まえ、改めてわが国の道徳教育の歴史について考察し、学校における道徳教育の意義について検討するのが、本稿の目的である。本稿では、明治期の修身科の成立から、第二次世界大戦が終結するまでの期間の道徳教育の歴史を、教科書の歴史と関連づけて考察する。戦前の修身教科書は、翻訳教科書の時代から、検定教科書の時代を経て、国定教科書の時代へと変遷していった。国定修身書にも、近代的社会倫理、基本的な自由の権利、市民的連帯、近代的職業倫理、国際協調、国際平和など、戦後の民主主義や平和主義につながる内容が見られる時期もあったが、一貫してその根底にあったのは、国体重視を基調とする国家主義であった。明治期を経て、大正デモクラシーの時代が過ぎ、やがて軍国主義・超国家主義の時期を迎える歴史の流れを、修身科に焦点を当てて概観する。
著者
緒方 博司 林 泰夫 上村 光治 泉 清治 外園 不二夫 小糸 博文 伊達 徹 田中 宏明 高木 茂
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.1197-1202, 1991-03-25 (Released:2010-02-25)
参考文献数
8

Since 1984, we have performed osteosynthesis for intertrochanteric fracture of the femur using CHS method.79 Compression Hip Screws and 12 Captured Hip Screws were used for 46 stable and 45 unstable intertrochanteric fractures of the femur.The mean age was 77.9, ranging from 61 to 96 years.Among 91 patients, 8 patients could not walk even before the injury. 62 patients out of the remaining 83 patients (74.7%) were discharged with one cane gait.The major symptoms of 62 patients who could walk postoperatively were knee pain (25.8%) and thigh pain (9.7%).The major radiographic findings of those 62 patients were shortening of the neck more than 5mm (25.8%). But the shortening of the neck and the knee pain don't seem to correlate to each other.21 patients out of 83 patients (25.3%) were not able to walk on one cane. But systemic complications seemed to be the main causes in more than half of those 21 patients.
著者
泉 清
出版者
中村学園大学
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.92-93, 1960-09-30

Grey shore crabs were boiled or steamed and then dried to be prepared as a protein resource. Chemical analysis of the dried crab was also caried out. It was found that the protein of dried crab has the same nutritive value as that of the standard chicken food.