著者
渡邊 大門
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.19-34, 2013-03-01

本稿で取り上げるのは、かつて神戸市北区に所在した荘園の一つ摂津国山田荘である。本稿では、山田荘が登場する平安期を基点として、終焉を迎える織豊期までを取り上げ検討する。その中で、平安期から室町期については、山田荘と周辺の三荘園(淡河、押部、八多)との相論を踏まえ、材木資源が争点になったことに触れ、荘園間での紛争解決が困難になったことから、守護権力を必要としたことを論じた。戦国期以降、山田荘は別所氏の関係者が代官職を務めることによって、安定的な年貢の確保を可能にした。織田信長登場以後は、基本政策である寺社本所領安堵によって、年貢確保をいっそう安定的にした。しかし、別所氏が信長に叛旗を翻してから、年貢の確保は困難になったと考えられる。別所氏は信長の傘下に収まって以後、先述した信長の施政方針に従っていたが、やがてその方針に従えなくなり、叛旗を翻したと考えられる。
著者
渡邊 大貴 田村 晃裕 二宮 崇 Teguh Bharata Adji
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.207-230, 2019-03-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
40

本論文では,ニューラル機械翻訳 (NMT) の性能を改善するため,CKY アルゴリズムから着想を得た,畳み込みニューラルネットワーク (CNN) に基づく新しいアテンション構造を提案する.提案のアテンション構造は,CKY テーブルを模倣した CNN を使って,原言語文中の隣接する単語/句の全ての可能な組み合わせを表現する.提案のアテンション構造を組み込んだ NMT は,CKY テーブルの各セルに対応する CNN の隠れ状態に対するアテンションスコア(言い換えると,原言語文中の単語の組み合わせに対するアテンションスコア)に基づき目的言語の文を生成する.従来の文構造に基づく NMT は予め構文解析器で解析した文構造を活用するが,提案のアテンション構造を用いる NMT は,原言語文の構文解析を予め行うことなく,原言語の文に潜む構造に対するアライメントを考慮した翻訳を行うことができる.Asian Scientific Paper Excerpt Corpus (ASPEC) 英日翻訳タスクの評価実験により,提案のアテンション構造を用いることで,従来のアテンション構造付きのエンコーダデコーダモデルと比較して,1.43 ポイント BLEU スコアが上昇することを示す.さらに,FBIS コーパスにおける中英翻訳タスクにおいて,提案手法は,従来のアテンション構造付きのエンコーダデコーダモデルと同等かそれ以上の精度を達成できることを示す.
著者
佐藤 友範 渡邊 大記 林 和輝 近藤 賢郎 寺岡 文男
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP) (ISSN:21888647)
巻号頁・発行日
vol.2019-EIP-85, no.18, pp.1-8, 2019-09-12

第 5 世代移動通信方式 (5G) では超高信頼低遅延通信や大容量モバイル通信などの高機能な通信サービスが提供され,自動運転や高精細な拡張現実感 (AR) のようなサービスが普及すると考えられている.本稿はエッジサーバ,フォグサーバ,クラウドサーバを含むような 5G コアネットワークを 1 台の計算機のように見せる処理基盤として Application Function Chaining (AFC) を提案する.AFC は高精細 AR のようなアプリケーションを小機能(Application Function; AF) ごとに分割し,AF の連接によってアプリケーションを構成する.アプリケーションは Pub/Sub 方式または HTTP リクエストにより AFC を利用する.AFC 内ではアプリケーションメッセージ単位で AF が適用される.本稿では,プロトタイプ実装により AFC の基本性能を評価した.AFC の確立では AF の設置よりも AF の連接にかかる時間的オーバーヘッドが大きく,AFC 上でのデータ通信ではアプリケーションメッセージ長が10KB 以上の場合で 90% 以上の帯域使用率となった.
著者
日下部 俊吾 渡邊 大記 近藤 賢郎 寺岡 文男
雑誌
研究報告モバイルコンピューティングとパーベイシブシステム(MBL) (ISSN:21888817)
巻号頁・発行日
vol.2019-MBL-90, no.17, pp.1-6, 2019-02-25

我々は赤外線で高速列車内の Wi-Fi ネットワークに高速インターネット環境を提供する研究を続けている.列車走行時ハンドオーバにより周期的バーストパケットロスが発生する.そこで我々は 2014 年にバーストパケットロスが Streaming Application に与える影響について調査した.その後様々な環境が大きく変化した.トラフィックが増大し通信端末が多様化した.HTTP2 や QUIC 等の新たなプロトコルが台頭しプロトコル環境が変化した.それにより高速列車での Streaming Applicationに要求される通信品質が高まっている.本稿では高速列車でのハンドオーバを模擬したネットワークを構築し Streaming Application の特性を評価した.プラットフォーム毎に周期的バーストパケットロスのパラメータを変更し脆弱性を検証した.各 Streaming Application のプロトコルの違いや特徴を分析した.周期的バーストパケットロスヘの耐性は向上しており実環境でのハンドオーバの中で十分に QoE を満たす.
著者
勝木 将人 成田 徳雄 松森 保彦 石田 直也 渡邊 大海 蔡 嗣錡 冨永 悌二
出版者
The Japanese Society for Kampo Medicine and Neurological Surgery
雑誌
脳神経外科と漢方 (ISSN:21895562)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1-7, 2022-07-30 (Released:2022-09-26)
参考文献数
31

一次性頭痛に対する急性期治療薬としての漢方薬の有用性を,自験例をもとに検討した。緊張型頭痛223例には葛根湯を,前兆を伴うもしくは伴わない片頭痛93例には呉茱萸湯を,天候に関連するもしくは水毒を伴う片頭痛71例には五苓散をそれぞれ頓用で処方し,1週間後に症状の改善の有無を尋ねた。それぞれ約90%の患者において症状の改善を認めた。非ステロイド性消炎鎮痛剤を処方した162例と症状改善率に有意差はなかった。
著者
平田 輝満 永沼 宏太 渡邊 大樹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.22-00062, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
7

2019年の台風19号は首都圏においても過去最大級の強風が予報されていたことから,羽田空港や成田空港から全国の空港へ大規模な避難が実施され,その避難場所確保のための調整に一部困難が生じた.保有航空機材の増加と自然災害の激甚化・頻発化を想定すると,従来の航空機避難スキームでは適時の対応が困難で,新たな事前の避難調整スキーム検討と訓練の必要性が高まっていると考えられる.本研究では,2019年の台風19号の際の実際の航空機避難の状況について,ウェブ公開データおよび航空局等へのヒアリング調査から実態の分析を行い,航空機避難や臨時駐機に関わる制約や課題について明らかにした.それらを踏まえ,空港の臨時駐機方法を危機管理レベル別に検討し,複数の自然災害シナリオを対象に避難航空機需要と受け入れ容量についてシミュレーション分析を行い,我が国における大規模自然災害時の航空機避難の実行可能性と課題について考察を行った.
著者
渡邊 大賀 松村 昌典
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
流体工学部門講演会講演論文集 2021 (ISSN:24242896)
巻号頁・発行日
pp.OS03-03, 2021 (Released:2022-06-25)

Three-dimensional structures such as longitudinal vortex appear in the two-dimensional vortex street wake of a cylinder. These structures are very complex structures. It is important to understand the details of the three-dimensional structures in the two-dimensional vortex street wake. The purpose of this study is to construct the three-dimensional structures from layered cross-sectional images and to understand its structures. In the flow visualization, four cylinders with different diameter were used to change the Reynolds number. The 3D structure constructed in this study could be observed from any angles and the details of its structures were revealed.
著者
櫛田 宏幸 中内 崇夫 矢倉 裕輝 渡邊 大 上平 朝子 白阪 琢磨
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.319-323, 2021-05-20 (Released:2021-11-26)
参考文献数
15

Tenofovir disoproxil fumarate(TDF)is a prodrug of tenofovir(TFV), used in the treatment of hepatitis B(HBV)and HIV-1. TFV is a renally excreted drug;a weekly dose of 300mg is recommended for patients suffering from HIV/HBV co-infection and undergoing hemodialysis(HD)for renal failure. The pharmacokinetics of TFV in Japanese patients undergoing HD has not yet been thoroughly explored. Herein, we report a case of HD in which the plasma concentrations of TFV were measured serially after the start of treatment with TDF. An 80-year-old Japanese man with HIV-1 was undergoing HD thrice weekly for end-stage renal failure. Concomitantly, the patient was receiving treatment with darunavir ethanolate, ritonavir, and raltegravir potassium for HIV-1 infection. With the treatment, the blood HIV-RNA levels had decreased to below 20 copies/mL. However, the patient developed acute HBV while under follow-up as an outpatient. He was started on treatment with TDF/emtricitabine, administered once weekly after HD, as treatment for HBV. The 7-day TFV trough concentrations measured in two consecutive weeks were 54 and 45ng/mL. The values were comparable with those in the general Japanese population(non-HD subjects)and to other previous reports. The treatment resulted in suppression of both HIV-1 and HBV. However, based on the combination of drugs and HD conditions, the dialysis clearance and removal rates vary. In conclusion, measurement of the plasma drug concentrations is useful for appropriate and definitive treatment of HIV-1 and HBV in patients undergoing HD.
著者
渡邊 大門
出版者
皇学館大学人文学会
雑誌
皇学館論叢 = KOGAKKAN RONSO (ISSN:02870347)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.92-114, 2018-12
著者
渡邊 大門
出版者
赤松氏研究会
雑誌
年報赤松氏研究 (ISSN:18826733)
巻号頁・発行日
no.4, pp.62-80, 2011
著者
渡邊 大門
出版者
播磨学研究所
雑誌
播磨学紀要
巻号頁・発行日
no.16, pp.1-22, 2012-03
著者
渡邊 大輝
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.207-218, 2018-06-01 (Released:2018-05-16)
参考文献数
72

Ryanodine receptors (RyRs) are tetrameric Ca2+ release channels of sarcoplasmic reticulum (SR). This review attempts to detail the key mechanism of RyR channel gating and to discuss the hypothesis that skeletal muscle fatigue, defined as reduced force production, would result from functional changes in both individual RyR channel opening and coupling among RyR channels. Previous studies have shown that RyR channels in skeletal muscle open simultaneously, called coupled gating, because of physical interaction among channels. In this review, mechanisms underlying muscle fatigue are discussed with consideration of the coupling effect. Fatigue mechanisms are thought to be different between acute exercise and long-term exercise training. The impairments in individual channel opening and coupling between RyR channels can occur after acute exercise, leading to decreased SR Ca2+ release and force depression. On the contrary, during long-term exercise training, individual channel opening would be enhanced but coupling between channels would be impaired. If this were to continue for long periods, SR Ca2+ content would reduce, leading to less Ca2+ release and lower force production.
著者
渡邊 大門
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大學大學院紀要 (ISSN:13442422)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.71-84, 2006-03-01

宇喜多氏に関する研究については、直家期を中心にして、既にいくつかの論文が公表されてきた。それらの主要学説は、宇喜多氏が浦上氏の被官人であったか否かという問題をはじめ、宇喜多氏の大名権力がいかなる条件のもとで形成されたか等々、戦国大名論を検討するうえで重要な論点を提示している。近年では、地域権力論・戦国期国衆論に関しても活発な議論が展開されており、宇喜多氏の研究はその好素材であると言えよう。そこで、小稿では能家以前の宇喜多氏-文明-大永年間を中心に-について、発給文書およびその動向を改めて検討し、浦上氏との関係を論じたものである。その結果、宇喜多氏は金岡荘を基盤として領主権を確立しており、浦上氏とは軍事的なレベルなおいて従属にあったことを指摘した。つまり、宇喜多氏は、被官人あるいは家臣として浦上氏配下に組み込まれておらず、領主間の緩やかな提携関係にあったのである。
著者
渡邊 大門
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.167-182, 2011-03-01

美作国は古くから「境目の地域」と言われており、戦国期以降は尼子氏、毛利氏そして織豊期には織田氏などの大勢力の侵攻をたびたび受けていた。そして、何よりも美作国には、強大な領主権力が存在しなかったことが知られている。南北朝期以降、主に山名氏や赤松氏が守護として任命されたが、その関連史料はほとんど残っていないのが実状である。本稿で述べるとおり、美作国には中小領主が数多く存在し、各地で勢力を保持していた。彼らは判物を発給し、配下の者に知行地を給与するなど、一個の自立した領主であった。その勢力範囲は居城を中心としたごく狭い範囲に限られていたが、交通の要衝に本拠を構え、流通圏や経済圏を掌握したものと考えられる。近年における戦国期の領主権力の研究では、一国あるいは数ケ国を領する大名はもちろんであるが、一郡あるいは数郡程度を領する領主にも注目が集まっている。しかし、美作国ではそれらを下回る一郡以下を領する例が豊富である。そこで、本稿では斎藤氏、芦田氏の事例を中心とし、その所領構成や在地支配また地域社会との関わりを分析することにより、戦国期美作国における中小領主の特質を明らかにすることを目的とする。