- 著者
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澤 一誠
- 出版者
- 紙パルプ技術協会
- 雑誌
- 紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.11, pp.1190-1197, 2012
IEAによればバイオ燃料は2010年輸送用燃料の3%を超え6兆円規模に達しポートフォリオの一角を占めるに至ったが,2035年に8%,2050年27%になると予想され,今後は航空機,船舶でも普及する見込み。一昨年Shell,BP等オイルメジャーがブラジルエタノール産業に本格進出。同分野で先行すするADM等穀物メジャーに続きビッグプレーヤーが出揃った。<BR>バイオ燃料は,エネルギー・農業・環境の3つの政策と産業政策の観点から人為的に市場が形成された欧米主導の新戦略産業であり,世界規模で普及・拡大している。<BR>世界一のエタノール国家米国では政府主導で石油・自動車両業界に誘導的規制を課して市場を作り2011年には140億ガロン(53百万kl)3.2兆円の産業となった。トウモロコシには150億ガロンのキャップを設け,それ以上はセルロースエタノール等を導入し2020年360億ガロン(1.3億kl)8兆円超の産業迄拡大する計画。<BR>この様に本格大規模グローバル市場が形成されつつあるバイオマスエネルギー分野で,日本は現在後発ポジションで3.11以降注目される再生可能エネルギーの中での注目度も低い。<BR>今後,日本が取るべき方向は,バイオマスエネルギーを将来有望なグローバル産業と捉え,資源ポテンシャルの高いアジア・大洋州地域で官民連携で製造事業展開を図ることである。また,G―Gベースで事業推進の土台となるインフラ・環境を整備し,日本企業が現地企業とWin―Winの関係を構築して共同でバイオマスリファイナリー(エネルギー/ケミカル/マテリアル製造)を推進。開発輸入+地産地消型産業を展開して持続可能なサプライチェーンを構築することである。