- 著者
-
猪瀬優理
- 出版者
- 北海道社会学会
- 雑誌
- 現代社会学研究 (ISSN:09151214)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.21-38, 2004-06-18
本論文の目的は,信仰継承に関する知見を得ることである。分析には,札幌市在住の創価学会員を対象に行われた調査票調査から得られたデータを使用した。二世信者が信仰を継承する要因として,親の影響と本人の宗教的参加の程度に着目した。分析の結果,以下の知見が得られた。第一に,男性にとっては父親の信仰態度,女性にとっては母親の信仰態度が強いほど現在の信仰態度は強まる。第二に,親の教化態度が強いほど現在の信仰態度は弱まる。第三に,親子間の影響のあり方は,母親と娘,母親と息子,父親と娘,父親と息子の間で異なっている。第四に,子どものころから継続的に宗教活動を行うことは信仰継承する可能性を高める。第五に,信仰が同じ配偶者を持つ人は,信仰継承する可能性が高まる。第六に,女性の場合,家族関係が良好であることは宗教活動から離れることを抑止する。第七に,男性の場合,教育年数が増えるほど,現在の信仰態度が熱心になる。第八に,男性の場合,きょうだい数が多くなるほど宗教活動から離れる可能性が高まる。全体的な傾向として,男性よりも女性の方が活動から離れにくく,現在の信仰態度も熱心であった。男性と比べれば女性の方が信仰継承しやすい可能性がある。教団組織の発展や文化伝達のメカニズムを解くためにはジェンダーの視点が不可欠である。