著者
田中 英夫 緒方 剛 森定 一稔 田中 伸治 吉田 隆典 仲西 博子 三沢 あき子 西田 敏秀 鉄 治 永田 愛美 中里 栄介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.20-145, (Released:2021-05-14)
参考文献数
18

目的 新型コロナウイルスの低蔓延期の日本において,無症候性病原体保有者から感染していたと考えられる事例を収集し,感染が成立した1次感染者と2次感染者との接触状況等の諸条件を確認する。方法 持続無症候性か,もしくは前発症期に2次感染させたと考えられる事例の匿名化された感染者の情報と,両者が最終接触した時の状況報告の提供を,2020年6月20日を期限として全国保健所長会のメーリングリストを通じて依頼した。2府6県の8保健所から,1次感染者9人,2次感染者17人の症例報告書が提出された。著者らの4人が独立して各症例について感染成立の確からしさを判定し,それを元に合同協議の上,対象症例を決定した。結果 2020年3月から5月に確定診断された7人と,この7人から2次感染したと考えられた,合計13人の陽性者の感染状況を以下のように見出した:①持続無症候性の20歳代女性が,70歳代の祖母と自宅で空間を共有,②ヘアーサロン店内で40歳代の美容師が,発症2日前に,客4人と客の子ども1人に接触,③50歳代の看護師が,発症2日前に,自分が勤務する病棟の入院患者2人に病室内で介護,④50歳代の女性が,発症2日前に,80歳代と90歳代の2人の親族に家事支援のため自宅で接触,⑤60歳代の男性が,発症1日前に,約8畳大の集会場で60歳代の男性と対話,⑥60歳代の男性が,発症1日前に,会社の同僚の40歳代男性に,喫茶店で対話,⑦50歳代の男性が,発症1日前に,会社の同僚の50歳代男性に,事務所内と乗用車内で約50分間接触があり,感染させた,と考えられる事例であった。各保健所が実施した13人の2次感染者に対する積極的疫学調査では,上記以外の感染源は見出せなかった。それぞれの2次感染が起きたとする日から潜伏期間に相当する6日後のその府県における感染罹患率は,100万人日あたり,0.00から6.54と,極めて低率であった。結論 新型コロナウイルス持続無症候性陽性者からの感染があったと考えられた事例をケースシリーズの一連として国内で初めて報告した。発症前の感染事例では,2次感染者との接触はすべて1次感染者の発症1~2日前であった。感染時の状況は,自宅,ヘアーサロン,病室,狭い集会場などの,いずれも換気が不十分な空間での接触を認め,飛沫感染が起きやすい状況にあったと考えられた。
著者
龍野 杏奈 松行 美帆子 田中 伸治 安部 遼祐
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.656-663, 2023-10-25 (Released:2023-10-25)
参考文献数
22

近年、鉄道の駅周辺では、超高層集合住宅を伴う都市再開発事業が多く実施されており、このような都市再開発事業は、コンパクトシティの形成に寄与すると考えられている。しかし、その影響について十分な評価がなされないまま承認されてきた。そこで、本研究では、超高層集合住宅を伴う都市再開発事業がコンパクトシティの形成に与える影響とその効果を検討し、鉄道駅周辺の都市再開発事業の今後のあり方を検討することを目的とする。指標を設定して、その指標に則り、首都圏郊外における超高層集合住宅を伴う都市再開発事業の29事例の評価と、駅周辺の超高層集合住宅居住者へのアンケート調査の結果による評価を実施した。その結果、超高層集合住宅を伴う市街地再開発事業自体のコンパクトシティ形成に対しての影響は、事業により直接もたらされる効果である歩行者環境や交通広場などの整備による効果は大きかったが、駅周辺への人口の集約、生活利便性の向上、地域経済の活性化などについては大きな効果があるとは言い難い結果となった。また、駅近くの超高層集合住宅への転居による効果についても、もとから駅近くに居住していた人が多く、大きな効果はなく、かつ効果があったものも、超高層集合住宅という住宅の形態ではなく、駅の近くという場所の特性による効果であったと考えられる。
著者
田中 英夫 緒方 剛 森定 一稔 田中 伸治 吉田 隆典 仲西 博子 三沢 あき子 西田 敏秀 鉄 治 永田 愛美 中里 栄介
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.8, pp.550-558, 2021-08-15 (Released:2021-08-11)
参考文献数
18

目的 新型コロナウイルスの低蔓延期の日本において,無症候性病原体保有者から感染していたと考えられる事例を収集し,感染が成立した1次感染者と2次感染者との接触状況等の諸条件を確認する。方法 持続無症候性か,もしくは前発症期に2次感染させたと考えられる事例の匿名化された感染者の情報と,両者が最終接触した時の状況報告の提供を,2020年6月20日を期限として全国保健所長会のメーリングリストを通じて依頼した。2府6県の8保健所から,1次感染者9人,2次感染者17人の症例報告書が提出された。著者らの4人が独立して各症例について感染成立の確からしさを判定し,それを元に合同協議の上,対象症例を決定した。結果 2020年3月から5月に確定診断された7人と,この7人から2次感染したと考えられた,合計13人の陽性者の感染状況を以下のように見出した:①持続無症候性の20歳代女性が,70歳代の祖母と自宅で空間を共有,②ヘアーサロン店内で40歳代の美容師が,発症2日前に,客4人と客の子ども1人に接触,③50歳代の看護師が,発症2日前に,自分が勤務する病棟の入院患者2人に病室内で介護,④50歳代の女性が,発症2日前に,80歳代と90歳代の2人の親族に家事支援のため自宅で接触,⑤60歳代の男性が,発症1日前に,約8畳大の集会場で60歳代の男性と対話,⑥60歳代の男性が,発症1日前に,会社の同僚の40歳代男性に,喫茶店で対話,⑦50歳代の男性が,発症1日前に,会社の同僚の50歳代男性に,事務所内と乗用車内で約50分間接触があり,感染させた,と考えられる事例であった。各保健所が実施した13人の2次感染者に対する積極的疫学調査では,上記以外の感染源は見出せなかった。それぞれの2次感染が起きたとする日から潜伏期間に相当する6日後のその府県における感染罹患率は,100万人日あたり,0.00から6.54と,極めて低率であった。結論 新型コロナウイルス持続無症候性陽性者からの感染があったと考えられた事例をケースシリーズの一連として国内で初めて報告した。発症前の感染事例では,2次感染者との接触はすべて1次感染者の発症1~2日前であった。感染時の状況は,自宅,ヘアーサロン,病室,狭い集会場などの,いずれも換気が不十分な空間での接触を認め,飛沫感染が起きやすい状況にあったと考えられた。
著者
鈴木 渉 中村 文彦 有吉 亮 田中 伸治 松行 美帆子
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00169, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
12

鉄道駅での改札通過データには,乗車券単位で駅での入出場の情報が長期的に記録されており,利用頻度や利用時刻といった個人単位の交通行動データの取得が可能である.そこで本研究では,昨今の急速な社会情勢の変化に伴う,個人ごとの利用頻度や利用時刻の変化に着目し,習慣的な鉄道利用減少の特性を明らかにすることを目的とする.まず,各々の変化量と,年齢や性別,券種といった個人ごとの属性との関係性を整理した.そして,重回帰分析を用いて,習慣的な鉄道利用が減少した人の中でも,定期利用でなくなった若年層の利用習慣の変化がより大きい可能性があること,また定期利用でなくなった若年層であるほど乗車時刻が変化した一方,定期利用を続けており年齢の高い層ほど乗車時刻が変化していない可能性があることを,定量的に明らかにした.
著者
福山 大地 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.A_161-A_166, 2019-02-01 (Released:2019-02-06)
参考文献数
8

我が国では自転車の信号制御に関して議論が少ない。車道を走行する自転車は車両用信号に従うものとされているが、車両用信号のクリアランス時間は自動車の速度で決められているため、自動車よりも速度の遅い自転車には十分な時間が確保されておらず、信号切り替え時に交差点に残存するおそれがある。本研究では、信号交差点観測調査を実施し、信号切り替え時の自転車のクリアランスに関する問題の把握を行った。その結果、交差点の信号制御や幾何構造等様々な要因によって残存の起こる割合が異なることがわかった。また、交差点ごとに観測した自転車の速度で算出したクリアランス時間は現在設定されている車両用信号の値より長く必要であることが示された。以上の観測調査の結果を踏まえ、自転車を考慮した信号制御の指針作成のための知見を述べた。
著者
瀬良 敦希 三浦 詩乃 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.258-265, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
39

近年米国では「公共交通の優先度が高い街路」を意味する「Transit Street」が提唱されている。公共交通と歩行者のみが通行可能なトランジットモールと違い、自家用車も通行可能であるが、様々な設備を導入し、自家用車の利便性を低下させることで公共交通や歩行者の有意性を保つものとされている。米国では既に整備ガイドラインの発行も見られる。一方日本にはTransit Streetやそれに近い概念は存在しないものの様々な整備が行われた結果、公共交通が優先されるような街づくり・街路づくりが行われた事例は存在する。そこで本研究は日米の事例を参照し、日本における今後の公共交通優先街路空間整備の指針を示すことを目的とする。このためにまずTransit Streetの歴史・定義・空間要素を示したあと、日本での類似事例として福岡市明治通りの整備経緯・内容を報告する。最後に日米の類似点・共通点を踏まえた日本での公共交通優先街路空間整備の指針を示す。
著者
松村 みち子 中村 文彦 田中 伸治 王 鋭
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.I_1107-I_1117, 2014

一般道路の路上に高齢者等の運転者が駐車できる「高齢運転者等専用駐車区間制度」が,わが国で2010年4月に導入された.本制度は日常生活に必要な施設の直近に,安全で快適な駐車環境を提供することで高齢運転者等を支援するものである.公共施設等の路外駐車場の移動制約者用駐車スペースとは異なり,対象車両が明確化され罰則もある.本研究では,事例として神奈川県における高齢運転者等専用駐車区間を取り上げ,利用実態,周辺施設の駐車場の整備状況,目的施設への公共交通によるアクセスのしやすさ等を併せて調査し,制度の導入効果を評価する.高齢者のモビリティを確保する上での課題や方策についても整理してみた.
著者
早内 玄 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.A_223-A_228, 2018-02-01 (Released:2018-02-01)
参考文献数
13

近年、都市内交通としての索道整備が複数報告され、新たな交通手段としての役割が期待されている。 そこで本研究ではトランスポーテーションギャップの考え方に基づき、所要時間の観点から索道の役割を定量的に明らかにすることを目的とする。はじめに、東京都市圏パーソントリップ調査から得られる手段別所要時間分布と人々が受容する所要時間との比較により、都市内交通において現在、既存交通手段では所要時間が受容されない、またはされにくいトリップ距離が複数存在することが明らかとなった。 次に、世界各都市の索道について、同様の比較によりその受容可能範囲が 0.3km~4.2km であることが明らかとなった。最後に両者を重ね合わせた結果、課題の残るトリップ距離のうちおよそ 2~4km の領域における課題を索道が改善しうることが明らかとなった。
著者
犬飼 望 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃 小根山 裕之 柳原 正実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1327-I_1338, 2018

交差点の平面幾何構造と交通制御を工夫し,右折車と対向直進車の交錯を減らすAlternative Intersections(以下,AI)と呼ばれる新しい交差点概念が海外にて提案されている.本研究ではAIが我が国でも交通制御の選択肢の1つになり得るという仮説のもと,適用に向けた知見を得ることを目的とする.日本に存在する交差点からAIの適用可能性があると考えられる交差点を選定し,観測データを基本入力値としたシミュレーションを用いてAIを仮想再現し,交差点処理性能評価を行った.また,従来型交差点と構造が大きく異なるAIを日本人ドライバーが迷いや違和感なく運転できるかどうかドライビングシミュレータを用いて検証した.その結果,我が国におけるAIの適用領域の目安を示し,日本人ドライバーにとってAIは工夫次第で受容性があることを明らかにした.
著者
長野 高志 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1101-I_1109, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
15

近年の東京都市圏全体の鉄道輸送人員は増加しているが,個別に乗降客数を確認すると,地域の主要駅においても乗降客数が減少している鉄道駅を確認することが出来る.本研究においては乗降客数の減少した鉄道駅に着目し,その経緯と実態を明らかにする.その上で,乗降客数の減少した鉄道駅における今後の課題を明らかにすることを目的とする.結果として,乗降客数の減少している鉄道駅は他の鉄道駅に乗降客が利用転換することで減少し,周辺の商業施設の減少による生活水準の低下が課題になることが明らかになった.また,鉄道駅周辺と地域全体での商業施設集積量を比べることにより鉄道駅周辺において望ましい商業施設の集積量を示すことが出来た.ここから,今後の東京都市圏郊外における鉄道網整備の際に考慮すべき点について提案を行った.
著者
犬飼 望 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃 小根山 裕之 柳原 正実
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1327-I_1338, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
17

交差点の平面幾何構造と交通制御を工夫し,右折車と対向直進車の交錯を減らすAlternative Intersections(以下,AI)と呼ばれる新しい交差点概念が海外にて提案されている.本研究ではAIが我が国でも交通制御の選択肢の1つになり得るという仮説のもと,適用に向けた知見を得ることを目的とする.日本に存在する交差点からAIの適用可能性があると考えられる交差点を選定し,観測データを基本入力値としたシミュレーションを用いてAIを仮想再現し,交差点処理性能評価を行った.また,従来型交差点と構造が大きく異なるAIを日本人ドライバーが迷いや違和感なく運転できるかどうかドライビングシミュレータを用いて検証した.その結果,我が国におけるAIの適用領域の目安を示し,日本人ドライバーにとってAIは工夫次第で受容性があることを明らかにした.
著者
田中 伸治 藤原 直生 桑原 雅夫
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.67_I_617-67_I_624, 2011 (Released:2012-12-28)
参考文献数
10

近年歩行環境への関心の高まりに伴い,歩行者の経路選択モデルや流動シミュレーション等が活発に研究されているが,これらに大きな影響を与える経路選択肢集合を生成する手法は十分に確立していない.本研究では携帯電話端末からのGPSデータを利用して,歩行者の経路選択肢となるリンク集合を推定することを試みた.この手法は,追跡調査やアンケート調査では取得が難しい行動実績データを大量かつ継続的に得られるという利点がある.まず使用するデータの特性を考慮したマップマッチングを行い,それに基づき経路選択に利用されたリンク集合を,経路長と,接続性指標であるインテグレーション値を用いて推定する手法を提案した.その結果,後者を用いることで経路選択リンク集合をより精度よく推定できることが明らかとなった.
著者
吉田 昇平 中村 文彦 田中 伸治 有吉 亮
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.I_765-I_772, 2015 (Released:2015-12-21)
参考文献数
7

近年導入が盛んなコミュニティバスについて,住宅地区内の狭隘な道路において大型車両は通行するべきでないとする問題点が存在することによって,一部の地域ではコミュニティバスの運行ルートの設定に難航している事例が存在している.本研究は,コミュニティバスの運行ルート計画において,幅員基準を満たす運行ルートを設定することが最も困難であることを示し,また一方で幅員基準に満たない場合でも運行ルートとして登録された道路も少なからず存在していることを明らかにした.幅員基準を満たさない道路においても登録された要因について,待避所などの整備状況や自動車交通量が影響していると考えられることを示した上で,幅員のみによって判断されないコミュニティバスの運行ルートに考慮できる道路の新たな指標の考え方について提案している.
著者
岩柳 智之 田中 伸治 中村 文彦 有吉 亮 三浦 詩乃
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_1069-I_1079, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
12

わが国では道路橋の急速な老朽化を迎え,またその損傷が深刻なために修繕・更新費は莫大であり,その全てを予防保全型で維持管理することにも限界がある.そのため廃橋を維持管理の選択肢として取り入れる必要があるが,地域の理解を得るために廃橋の効果や影響を客観的に示す方法が必要となる.そこで本研究では廃橋による費用対効果計算として将来の維持管理・更新費用の縮減効果と地域の効用の低下による損失を比較する方法を提示した.そして実地域を対象とした計算を行い,廃橋が受け入れられる余地を検討し,廃橋を含めた維持管理のあり方を議論した.計算の結果,廃橋の効果がある橋梁はなかった.しかし,他の橋梁と比較し,維持管理・更新を続ける効果の低い橋梁が見られ,廃橋にする場合,しない場合それぞれの望ましい管理方針を示した.
著者
岩柳 智之 中村 文彦 田中 伸治 三浦 詩乃 有吉 亮
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.A_223-A_229, 2017

<p>2011 年 3 月11 日に発生した東北地方太平洋沖地震により、千葉県浦安市では液状化現象が発生し、交通障害や断水の被害が生じ、応急給水活動が行われた。本研究では浦安市での応急給水活動に着目し、最短経路探索を用いて水の運搬による身体的負担について評価し、また給水支援が不足した場合の備えを給水の待ち行列計算から推定した。その結果、前者について現況では全体として運搬時間 6 分以上の無理な負担が存在し、対策として耐震化した受水槽等の整備により運搬時間 10 分以上の過大な負担が大きく減少することが明らかになった。後者について 8000 人程度の断水人口を受け持つ応急給水拠点では給水車が不在となる時間や給水所開設時間内に水を受け取れない人が発生し、これを避けるには 1L/人・日の備蓄が必要であることが明らかになった。</p>
著者
三浦 久 洪 性俊 田中 伸治 桑原 雅夫
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.I_1143-I_1148, 2012
被引用文献数
1

本稿では首都高速道路3号上り線の六本木付近を対象に追突事故直前における交通流特性について分析した結果を報告する.大橋JCT供用前後の日交通量の変化に比べて事故発生率が大きく変化したことは,追突事故が発生しやすい特定の交通流状態が存在し,その状態が減少したことが要因と考えられる.パルスデータを利用して個別車両の速度等を分析した結果,研究対象区間の下流側から上流側への減速波の伝播の有無が大きく影響することが確認され,追突事故リスクの高い交通流状態となる条件を抽出した.また,判別分析を行い,ある交通状況において減速波が上流側に伝播するかを精度高く予測することができた.
著者
田中 伸治 白石 智良 小宮 粋史 花房 比佐友 林 誠司 平井 洋 桑原 雅夫
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.259-262, 2012 (Released:2012-04-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

交通シミュレーションを利用してCO2排出量等を推計する際には, 国内外で異なるモデルが使用される可能性が高いため, モデル検証の手続きを国際的に共通化することが重要である.そこで本プロジェクトでは, 交通シミュレーションモデルおよびCO2排出量モデルの検証の枠組みを提案し, 国際ワークショップを通じた合意形成のための議論を行っている.また, この検証に利用可能な実交通データを取得するため現地観測調査を行い, 得られたデータを利用して検証の枠組みの妥当性を確認するための試行検証を実施している.