著者
田口 仁
出版者
日本映像学会
雑誌
映像学 (ISSN:02860279)
巻号頁・発行日
vol.109, pp.5-26, 2023-02-25 (Released:2023-03-25)
参考文献数
34

足立正生を中心に製作された映画『略称・連続射殺魔』(1969年)は、連続射殺事件の犯人として逮捕された少年永山則夫のドキュメンタリー映画である。『略称・連続射殺魔』は一般に松田政男を主唱者とする「風景論」と一対のものとして考えられ、同作を扱うほぼ全ての論考において、映画は「風景論」の絵解きとして解釈されてきた。だが、「風景論」は映画の製作について手法を指示するものではなく、映画にその理念が実現されていたとすれば、同作が製作から5年もの間封印されたことの理由にも疑問が残る。本稿では、この映画について作品の実態に即したカット分析と同時代の文化史的な文脈を参照した分析を行うことでその特質を明らかにし、60年代の制度批判的芸術表現総体との関連において位置づけ直すことを試みる。まず第一節では議論の前提となる「風景論」の左派運動的制度批判と永山則夫の人生物語との関係を整理し、次いで第二節では「風景論」を映画に反映的に読みこむ既存の解釈と対照してショット分析を示すことで、映画が実際には永山の個人性に寄り添うナラティヴを展開していたことを明らかにする。最後に第三節では、足立の実験映画作家としてのキャリアと赤瀬川原平を中心とした人的交流から、『略称・連続射殺魔』の封印の理由を分析し、同作をエクスパンデッド・シネマとして解釈することで、むしろこの封印の行為こそが「風景論」の左派芸術運動的な側面の表現であったことを示す。
著者
内藤 昌平 土屋 美恵 友澤 弘充 田口 仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.189-204, 2023 (Released:2023-11-14)
参考文献数
11

地震や台風の発災直後に撮影された高解像度光学衛星画像を用いて,インスタンスセグメンテーション手法であるMask R-CNNにより画像内の建物を自動抽出し,建物被害を無被害,損傷,倒壊,およびブルーシート被覆有無に自動分類するモデルを開発した.結果,建物抽出精度(IoU)については約35%,ピクセル毎の建物被害分類精度(F値)については約52%となり,建物抽出と被害分類を同時に実施可能なモデルとして一定の性能をもつことを確認した.また,3種の高解像度衛星画像を使用してモデルを構築したところ,IoUで約39%,F値については無被害が約92%,損傷が約69%,倒壊が約56%,被覆有が約85%であり,モデルの汎用性が一定程度あり,被害の早期把握に利用可能であることを確認した.
著者
酒井 直樹 田口 仁 六川 修一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
AI・データサイエンス論文集 (ISSN:24359262)
巻号頁・発行日
vol.4, no.L1, pp.9-18, 2023 (Released:2023-03-01)
参考文献数
6

災害時の最大のニーズは「どこで何が起きたのか」の把握である.その情報がすぐに災害対応者の意思決定に必要な情報として提供されるべきである.そのためには各種衛星に関して「いつ・どこのエリアをどの衛星で観測するか」をマネジメントする必要がある.特に,広範囲にわたる災害では必要不可欠な技術である.そのためには,各衛星の特性を知った上で,複数機体制の実現とその運用管理の一元化が求められる.緊急観測依頼から衛星データ入手までの時間を短縮する必要もある.観測の精度や手順を標準化することも求められる.SAR衛星や小型衛星を使い,AI解析技術の確立することが重要である.今後ユーザーのニーズに応じて衛星データの選択が可能となり,必要な時に入手できるようになることを踏まえ,平時はインフラのモニタリングをして情報を蓄積し,災害時にはその延長で対応できるようなフェーズフリーな利用が進むと考えられる.
著者
田口 仁久
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1972, no.25, pp.35-49, 1972-05-20 (Released:2009-09-04)
参考文献数
55

J. S. Mill, one of the representative English thinkers, is at the same time an important figure in the history of education. His ethical philosophy was formulated after a spiritual crisis. The system was based on the idea that theatimate sanction of morality consists in the sentiment of man, especially in his altruistic social sentiments, as a result of this theory and of his understanding of English society, Mill was forced eventually to attach great importance to the cultivation of sentiments.Furthermore, Mill believed that social sentiments pan be nourished through the medium of the imagination. While regarding art education in general and culture of the sentiments as an effective means to that end, he valued poetry as the “better part” or as the “queen”, and thus he regarded poetry education as the most effective means for the cultivation of the sentiments.
著者
田口 仁久
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1969, no.19, pp.31-46, 1969-05-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
93

Matthew Arnold (1822-1888) believed that man and man's history should develop as a system of balance and mutual restraint between Hebraism and Hellenism. Convinced that 19th century Europe should be ruled by Hellenism, he judged that as a result of the assault on the natural order during his day England would face a catastrophy. To save England he made an effort to propagate hellenistic culture in his country. To spread this type of culture the state, he thought, was an effective organ and education the means to accomplish this end. Many points in Arnold's educational theory can be understood from this theory of culture.
著者
美馬 正彦 今西 敏博 田口 仁士
出版者
医学書院
雑誌
呼吸と循環 (ISSN:04523458)
巻号頁・発行日
vol.29, no.9, pp.949-955, 1981-09-15

タイムコンスタントの違う肺胞モデルに対して,吸気相の後半に圧のプラトーを備えたincreasing flowgeneratorを用いて換気を行うと,constant flowgeneratorを用いた時よりも不均等換気を生じにくいことを最初に報告したのは,Herzog1)であった。同じ年に,Norlander2)も,調節呼吸を行った臨床患者について,吸気相の圧の後半にプラトーを有している人工呼吸器を用いた場合には,患者の肺ダイナミックコンプライアンスの低下がみとめられなかったことを報告した。 その後,Lyager3),Jansson4)等は,閉塞された気管支にみちびかれた肺の換気にはdecelerating flow patternにend-inspiratory pressure plateauを併用すると,他のflow patternを設定するよりも,よりよく換気が行われることを,主として理論的に説明し,また,Knelson5),Lyager,6)Nordström7)なども,end-inspira—tory pressure (以後EIPと略す)の,循環 呼吸に及ぼす影響について,好意的な実験結果を発表している。
著者
遠藤 貴宏 田口 仁 バルア プラナブ ジォティ 沢田 治雄
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.769-772, 2009

LiDARデータを用いてスギ人工林のベクター形式による単木抽出手法を開発した.本手法は, 樹冠形状に基づいた抽出手法であり, ラスタライズ処理を必要としないことが特徴である.また, 林木内の異なった大きさの樹冠を持つ樹木に適用できるよう, 本手法は, はじめに, 孤立木のような樹冠形状を有する樹木を抽出し, 次に被圧木のような樹冠形状を有する樹木を抽出する2段階の抽出処理で構成されている.現地調査による単木位置と本手法を用いた樹頂点位置とを比較したところ, 位置精度は1m以内であった.[本要旨はPDFには含まれない]
著者
内山 庄一郎 堀田 弥生 折中 新 半田 信之 田口 仁 鈴木 比奈子 臼田 裕一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

クライシスレスポンスWebサイトの目指すところは、自然災害発生時における、あらゆる災害情報の自動アーカイブと、これらのオンデマンドな災害情報・災害資料の提供である。しかしながら、技術的にも著作権的にも多数の課題があることは自明である。そこで、現在は多様で広範、かつ動きの早い災害情報のアーカイブに関する実証実験として実施している。具体的には、1)迅速対応の実践として、災害発生後ゼロ日以内に第一報を提供すること。また発災からしばらくの期間、継続的に更新を行うこと、2)情報の整理として、災害発生直後から泡のように現れては消えてゆく災害情報の検索と整理を行い、3)情報の提供として、それら災害情報への簡便な一元的アクセスの提供を目指している。並行して4)これらをドライブするシステム開発を推進している。
著者
佐野 浩彬 田口 仁 花島 誠人 伊勢 正 佐藤 良太 高橋 拓也 池田 真幸 鈴木 比奈子 李 泰榮 臼田 裕一郎
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2016, 2016

<b>報告の背景と目的</b> <br>2016年4月14日21時26分に発生した震度7の地震(Mj6.5)と,4月16日1時35分に発生した地震(Mj7.3)およびそれ以降に続く余震(2016年熊本地震)に対して,防災科学技術研究所(防災科研)では災害対応の一環として,地図情報の作成・集約・共有による情報支援を実施した.防災科研が独自に行っている地震や液状化,降雨,火山,土砂災害などの観測・予測データや,熊本県庁から提供された道路規制情報や避難所情報,通水復旧のインフラ情報などをWeb-GISに統合し,俯瞰的な被害状況を把握できる仕組みを構築した.各種情報が集約された地図は,防災科研が構築した熊本地震のクライシスレスポンスサイト(http://ecom-plat.jp/nied-cr/index.php?gid=10153)において公開したほか,避難所情報などの公開が難しい一部の情報については,熊本地震災害対応にあたる特定機関向け地図を構築して提供した. 本報告では,熊本地震における地図情報の作成・集約・共有における災害対応支援のなかで,熊本県庁をはじめとする各種機関が集約・発信する情報が,どのように地図情報として一つの地理空間情報基盤上に整理されたのかについて報告する. <b><br>熊本地震における地図情報支援</b> <br>4月14日に発生した震度7の地震を受けて,防災科研では地震による被害状況把握ならびに情報集約のためのWeb-GISを構築した.当初は防災科研が観測した震度分布や推定全壊棟数分布のデータをWeb-GISに統合した.また,地震発生翌日の4月15日には,熊本県庁に防災科研研究員が派遣され,熊本県や中央省庁などと連携し,各機関から提供される災害情報を,構築したWeb-GIS上に統合した.直接Web-GIS上に取り込める形で提供された情報には,国土地理院の「被災後空中写真」やITSジャパンの「通れた道マップ」,地震推進本部の「活断層図」などが挙げられる.また,熊本県庁から提供された道路被害情報や避難所情報などはテキスト形式やExcelで整理されたもの,独自の地図で描画されたものなど,Web-GISに直接地図情報として取り込むことができなかったものもあり,それらは住所情報などを頼りにして位置情報を付与することでWeb-GIS上に統合した.各機関から集約・整備したデータは約45種類,データ数として424を数える(6月27日時点).Web-GIS上で集約されたデータは,利用者がニーズに応じて必要な情報を適宜選択して表示することができる.例えば,通水復旧状況のレイヤと避難所情報のレイヤを組み合わせることで,給水支援が必要な避難所を分析できたり,避難所と推定全壊棟数分布,道路規制情報の3レイヤを重ね合わせることで,生活支援が必要な地域と,支援に向かうためにたどり着くための最適ルートを事前に検討することが可能となる. <b><br>地図情報作成・集約・共有における課題</b> <br>被害情報をWeb-GIS上に統合することで、災害対応支援への活用が可能となるが、情報の統合化においては様々な課題が明らかとなった。例えば、避難所情報については国土交通省があらかじめ国土数値情報のなかで整備している避難所情報もあれば、DMATが独自に収集し整理している広域災害救急医療情報システム(EMIS)の避難所情報、また熊本県庁で集約されたものや熊本市で集約されたものなど、災害発生直後に各種機関が独自に情報収集を始めてしまったため、一つの情報として集約することが困難な状態だった。また、避難所情報の統合にあたっては、各機関が整理する情報の避難所名称に差異があったり、本来は指定されていない避難所が開設されているなど、単純な統合化・集約化が難しいという課題があった。こうした各種機関が独自に情報を収集、集約すると、その後の情報統合化が難しくなるため、あらかじめ共有情報の標準化(COP,Common Operational Picture)を検討しておくことが重要となる。今後の課題としては、地図情報の作成・集約・共有における自動化や高度化、災害情報におけるCOP実現に向けた検討が挙げられる。 &nbsp; <br> <b>謝辞:</b>本報告の一部には、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(先着的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:科学技術振興機構)の予算を活用した。
著者
田口 仁久
出版者
The Japanese Society for the Philosophy of Education
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
no.25, pp.35-49, 1972

J. S. Mill, one of the representative English thinkers, is at the same time an important figure in the history of education. His ethical philosophy was formulated after a spiritual crisis. The system was based on the idea that theatimate sanction of morality consists in the sentiment of man, especially in his altruistic social sentiments, as a result of this theory and of his understanding of English society, Mill was forced eventually to attach great importance to the cultivation of sentiments.<BR>Furthermore, Mill believed that social sentiments pan be nourished through the medium of the imagination. While regarding art education in general and culture of the sentiments as an effective means to that end, he valued poetry as the "better part" or as the "queen", and thus he regarded poetry education as the most effective means for the cultivation of the sentiments.
著者
田口 仁 李 泰榮 臼田 裕一郎 長坂 俊成
出版者
公益社団法人 日本地震工学会
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1_101-1_115, 2015 (Released:2015-02-25)
参考文献数
34
被引用文献数
4

地理情報システム(GIS)は災害対応の際に有効なツールであるが、災害対応者自らがGIS を活用するために備えるべき要件について検討した研究はこれまで無かった。そこで本研究では、災害対応者が自らGISを利用して効果的に災害対応を行うために、1)地理情報の共有および流通のための標準インタフェース(Web Map Service)を有すること、2)Web-GIS を用いることの2つを満たすGISを提案した。2011年東北地方太平洋沖地震において、災害ボランティアセンターおよび地方自治体に対して、提案した要件を満たしたGIS(eコミマップ)による被災地支援を行った事例を示し、提案した2つの要件の有効性を確認した。