著者
甲斐 義浩 幸田 仁志 山田 悠司 三浦 雄一郎 福島 秀晃 竹島 稔 来田 宣幸 森原 徹
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.411-414, 2019 (Released:2019-09-18)
参考文献数
12

本研究では,肩関節の総合的な柔軟性を得点化できる肩複合柔軟性テストを考案し,そのテスト法の信頼性と妥当性について検討した.対象は,健常若年者43名,健常高齢者252名,肩病変を有する高齢者111名とした.肩複合柔軟性テストは,外転,内転,外旋,内旋,複合テストの5項目で構成される.各テストには,4段階(0, 1, 2, 3)の判定基準を設定し,5項目の合計得点を0~15点で算出した.分析の結果,本テストの判定一致度(k係数:0.81-1.00)および合計得点(ICC:0.91)ともに,優秀な検者間信頼性が確認された.また,合計得点と肩甲上腕関節可動域との間に有意な正相関が認められた.対象者の合計得点は,健常若年者:12.5 ± 1.7点,健常肩高齢者:10.4 ± 2.5点,病変肩高齢者:8.7 ± 2.8点であり,病変肩群の得点は他の2群と比べて有意に低かった(p < 0.01).これらの知見より,肩関節の総合的な柔軟性を得点化できる尺度として,本法の信頼性と妥当性が示された.
著者
松井 知之 幸田 仁志 甲斐 義浩 東 善一 平本 真知子 瀬尾 和弥 盛房 周平 森原 徹
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.219-221, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
13

背景:円背などの不良姿勢では,肩甲骨が偏位し,投球動作での肘下がりなど不良動作を来たす恐れがある.本研究では,中高生野球選手における肘関節痛と姿勢との関係を調査したので報告する. 対象・方法:中学生60例,高校生108例を対象に,スパイナルマウスを用いて,両上肢下垂・最大挙上における胸椎後弯角および腰椎前弯角,その変化量を測定した.理学所見で陽性と判断した選手を所見陽性群とし,対応のないt検定を用いて所見陽性群の特徴を検討した. 結果:中学生では,下垂時での腰椎前弯角が陽性群において有意に高値であった.高校生では,下垂時と挙上時の胸椎後弯角変化量が陽性群において有意に低値を示した.その他においては,有意差を認めなかった. 考察:不良姿勢では肘関節障害をきたす恐れがあることが示唆された.今後症例数を増やし,姿勢改善が障害予防につながるか前向きに検討する必要があると考えた.
著者
平本 真知子 森原 徹 松井 知之 東 善一 瀬尾 和弥 幸田 仁志 甲斐 義浩 盛房 周平
出版者
日本肘関節学会
雑誌
日本肘関節学会雑誌 (ISSN:13497324)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.216-218, 2018 (Released:2019-07-25)
参考文献数
12

投球障害の原因としてこれまでに体格や身体特性など様々な要因が検討されている.本研究では高校生野球投手を対象に,関節可動域と肘関節障害の関係および肩関節と股関節の関係について検討した.対象は京都府高等学校野球連盟に所属する選手164名とした.肩関節2nd外旋・内旋,3rd内旋,股関節屈曲・内旋・外旋・外転,頚部・体幹回旋の各角度を測定した.対応のないt検定を用い,肘関節障害の有無で各関節可動域を比較・検討した.肘関節障害の有無に関わらず,関節可動域に有意差をみとめなかった.投球障害の原因は多くの因子が関係し,関節可動域自体も様々な因子に影響を受けるため,今後は多因子での検討を進める必要があると考えた.
著者
幸田 仁志 甲斐 義浩 来田 宣幸 松井 知之 山田 悠司 森原 徹
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.143-146, 2019-10-15 (Released:2019-10-17)
参考文献数
15

〔目的〕本研究の目的は,高校生野球選手における上腕近位部周径と肩関節挙上筋力との関係性を検討することとした。〔方法〕硬式野球部に所属する高校生125名を対象とした。測定項目は,投球側の上腕近位部周径と肩関節挙上筋力,および投球肩障害の有無とした。統計解析には,ピアソンの相関係数を用いて,上腕近位位部周径と肩関節挙上筋力との関係性を,健常群と投球肩障害群のそれぞれで検討した。〔結果〕健常群では,上腕近位部周径と肩関節挙上筋力との間に有意な正の相関関係が認められた。一方,投球肩障害群では,上腕近位部周径と肩関節挙上筋力との間に有意な相関関係は認められなかった。〔結語〕上肢の筋力を積極的に強化している高校生野球選手においても,上腕近位部周径は肩関節挙上筋力を反映する指標となることが示された。また,肩関節に何等かの異常がある場合では,その関係が認められない可能性が示唆された。
著者
竹井 和人 甲斐 義浩 政所 和也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab1080, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 上肢挙上運動時の上腕骨と肩甲骨の規則的な運動は,腱板を代表とする肩関節周囲筋の協調的な活動によって成り立っている。従来の報告では,上肢挙上運動に外部負荷を加えることで,肩関節周囲筋の筋活動性を変化させても肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節の運動は変化しないことが示されている。すなわち,正常な関節運動は筋活動性の増減に依存せず,筋活動の至適調節によって再現される可能性がある。しかしながら,筋活動の至適調節能の破綻によって肩関節運動が変化するか否かは不明である。そこで本研究では,上肢挙上運動への関与がすでに確認されている肩外旋筋に焦点をあて,肩外旋筋疲労による活動調節能の破綻が肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動におよぼす影響について検討した。【対象と方法】 対象は,健常成人男性18名の利き手側18肩(平均年齢20.4±1.9歳)とした。被験者は,体重の約5%に相当するダンベルを用いて,側臥位にて反復外旋運動を可能なかぎり行った。外旋運動後,筋力測定(ハンドヘルドダイナモメーター)によって外旋運動前より70%以上の筋出力低下(筋疲労)を確認したのち,ただちに上肢挙上運動時(肩甲骨面挙上)の肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の運動学的データを計測した。測定には,磁気センサー式3次元空間計測装置(3SPACE-LIBERTY,Polhemus社製)および解析ソフトMotion Monitor(Innovative Sports Training社製)を用い,上肢挙上運動5°ごとの肩甲上腕関節挙上角(GHE),肩甲骨上方回旋角(SUR),肩甲骨後方傾斜角(SPT)を求めた。磁気センサーは,胸骨柄,肩峰,上腕骨三角筋粗面にそれぞれ工業用両面テープを用いて強固に貼付した。センサー貼付後,上腕骨,肩甲骨および胸郭における骨格ランドマークのデジタライズ処理によって,解剖学的な座標系を求めた。運動軸は,International Society Biomechanics推奨のISB Shoulder recommendationに従い定義し,上肢挙上角(胸郭と上腕骨のなす角)5°ごとのGHE,SUR,SPTを算出した。なお,測定は反復外旋運動前後にそれぞれ2回計測し,平均値を代表値として採用した。統計処理は,各測定値の再現性について,2回の測定値から級内相関係数(ICC)を求めた。また,各測定値(GHE,SUR,SPT)の外旋筋群疲労前後の比較には,二元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を採用し,危険率5%未満を有意差ありと判断した。【説明と同意】 対象者には研究の趣旨と内容,得られたデータは研究の目的以外には使用しないこと,および個人情報の漏洩に注意することについて説明し,同意を得た上で研究を開始した。【結果】 各測定値のICCは0.99(95%CI:0.96-0.99)で,極めて高い再現性が確認された。上肢最大挙上時の各測定値の平均は,GHEが疲労前84.5±8.2°,疲労後82.1±9.8°,SURが疲労前39.8±5.4°,疲労後39.9±5.4°,SPTが疲労前26.2±7.5°,疲労後24.4±6.3°であり,筋疲労前後での有意な差は認められなかった。上肢挙上角5°ごとのGHE,SUR,SPTを外旋筋群疲労前後で比較した結果,SURは挙上10°から60°の間で,疲労前と比べ疲労後で有意に高値を示した(p<0.01)。一方,GHEおよびSPTでは疲労前後で有意な差は認められなかった。【考察】 本研究の結果より,外旋筋疲労によって上肢挙上60°までの肩甲骨上方回旋角が有意に高値を示した。肩関節外旋筋の1つである棘下筋は,肩甲上腕関節の動的安定化に貢献する重要な筋である。また棘下筋の役割は,肩外旋運動や安定化作用のみならず,上肢挙上運動時の動作筋としての作用を合わせもつことが報告されている。さらに,上肢挙上運動における棘下筋の筋活動性を分析した先行研究では,挙上60°から90°の間でピークに達することを述べている。すなわち,肩甲上腕関節に作用する棘下筋の活動調節能の破綻は,上肢挙上運動に伴う肩甲骨運動の変化をまねくこと,また棘下筋が活動性を高める上肢挙上60°まで肩甲骨上方回旋を増加させることが示された。【理学療法学研究としての意義】 肩甲上腕関節に直接作用する外旋筋の筋疲労は,肩甲骨運動の変化を招くことに留意する必要がある。
著者
佐藤 洋介 村田 伸 甲斐 義浩 相馬 正之 中江 秀幸 村田 潤
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.37-41, 2014-04-01 (Released:2014-08-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

[目的]本研究は,等尺性肘関節屈曲筋力の発揮筋力を漸増した際の,上腕三頭筋の関与を明らかにすることを目的とした。[方法]健常成人女性15名を対象とした。平均年齢は20.5±0.9歳であった。被験筋は右上肢の上腕二頭筋・上腕三頭筋とし,各被験筋の最大随意等尺性収縮を算出した。最大肘関節屈曲筋力に対し10%から80%まで10%毎に随意的肘関節屈曲筋力を漸増させた際の各被験筋の筋活動を測定し,比較・検討した。[結果]上腕二頭筋の積分筋電図(IEMG)は最大肘関節屈曲筋力の40%発揮時で有意な増加が認められ,上腕三頭筋のIEMG は最大肘関節屈曲筋力の50%発揮時から有意な増加が認められた。また上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋活動は,それぞれ随意収縮力と有意な正の相関を認めた。[結論]肘関節屈曲における40%以上の負荷量では主動作筋である上腕二頭筋が活動し,50%以上の負荷量では上腕二頭筋だけでなく,上腕三頭筋も運動に関与することが示唆された。
著者
松尾 奈々 村田 伸 宮崎 純弥 甲斐 義浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.995-998, 2010 (Released:2011-01-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

〔目的〕本研究は,高さの異なるヒール靴を着用した安静立位時の胸椎後彎角および腰椎前彎角の変化について検討した。〔対象〕健常成人女性27名(平均年齢21.4±2.5歳,平均身長158.3±5.0 cm,平均足長23.8±0.5 cm)とした。〔方法〕測定は,視線を正面に向けた安静立位姿勢を基準に,裸足とヒール高3 cm,6 cm,9 cmのヒール靴を着用した姿勢の胸椎後彎角および腰椎前彎角の変化を比較した。〔結果〕胸椎後彎角および腰椎前彎角は,ヒールの高さを変えても,有意な変化は認められなかった。〔結語〕ヒール靴着用は,安静立位姿勢の保持において脊椎彎曲角に影響を与えるとは言い切れないことが示唆された。
著者
大杉 紘徳 横山 茂樹 甲斐 義浩 窓場 勝之 村田 伸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】現在,わが国のみならず世界中で実習施設の確保が教育運営上の課題となっており,新たな臨床実習形態の検討がなされている。その一つとして,一施設に対して二人の学生を配置する実習形態(複数型)がある。従来では,一施設に対して一名の臨床実習学生を配置し,一名の臨床実習指導者の指導を受ける(単独型)が,複数型では,一施設に対して二名の臨床実習学生を配置し,一施設内で二名がそれぞれに臨床実習指導者の指導を受ける。我々は先行研究において,単独型と複数型で,実習前後の気分・感情尺度の変化を比較した。その結果,単独型と比べて,複数型では実習中の精神的ストレスが高いことが明らかとなったが,その要因の検討までには至らなかった。そこで本研究では,単独型と複数型の臨床実習形態の違いが,臨床実習前後の学生の気分・感情状態に影響を与えた要因について,実習後に行った学生へのアンケート結果から検討した。【方法】対象は,検査・測定実習(3月上旬実施,実習期間10日間)を実施した理学療法学科2年次生45名(平均年齢19.3±0.5歳,男性23名,女性22名)とした。実習施設配置は,臨床実習施設として登録されている施設に対して複数型臨床実習の実施を依頼し,承諾の得られた11施設(22名)を複数型実施施設とし,その他23施設(23名)を単独型実施施設とした。測定項目は,気分・感情状態の評価指標であるProfile of Mood States短縮版(POMS-SF)と,筆者らが作成した臨床実習についてのアンケートとした。POMS-SFの回答から緊張,抑うつ,怒り,活気,疲労,混乱の下位尺度得点を算出し,さらに下位尺度得点を用いて全体的気分を算出した。POMS-SFの測定は,臨床実習開始1週間前(pre)と,終了翌週の初登校日(post)に,「過去1週間の気分」について回答させた。臨床実習についてのアンケートは,先行研究を参考に作成し,15の質問項目に対して,5件法にて回答させた。アンケート得点は負の感情ほど低得点となるように設定した。アンケートはPOMS-SFのpost測定と同日に行った。統計学的解析は全て有意水準を5%とした。POMS-SFの下位尺度得点ごとに,preとpostおよび単独型と複数型について,二元配置分散分析とLSD法による事後検定で比較した。また,アンケートの各質問項目およびアンケート合計点について,単独型と複数型でMann-WhitneyのU検定を行った。【結果】二元配置分散分析の結果,緊張(F(1,42)=31.0,<i>p</i><0.01),疲労(F(1,42)=4.4,<i>p</i><0.05),混乱(F(1,42)=6.9,<i>p</i><0.05),全体的気分(F(1,42)=6.2,<i>p</i><0.05)に交互作用を認め,事後検定の結果,全てにおいて,複数型のpostの値が単独型のpostの値よりも有意に高値を示した(全て<i>p</i><0.05)。アンケート結果の比較では,「施設スタッフとの関係」およびアンケートの合計点で,複数群が単独群よりも有意に低値を示した(ともに<i>p</i><0.05)。【考察】一施設に一名を配置する単独型と,一施設に二名を配置する複数型で,実習前と実習中の気分・感情状態の変化を比較するとともに,実習に関するアンケートの差異について検討した。結果,複数型の方が単独型よりも実習によって緊張,疲労,混乱の気分・感情が高まるとともに,施設スタッフとの関係が良くなかったと回答する学生が多かった。我々は,臨床実習を複数型で行う利点として同級生とともに実習を行うことによる安心感や精神的ストレスの軽減を見込んでいたが,本研究の結果はこの仮説を支持しなかった。単独型の実習では,同級生がいないため,情報収集や相談の相手が必然的に実習施設のスタッフとなる。一方,複数型の実習では,同級生とともに過ごす時間が長くなることにより,実習施設のスタッフとのコミュニケーションの時間が減ったと推察される。そのため,単独型と複数型では実習施設のスタッフとのコミュニケーションに差があったことにより,信頼関係の構築に差が示されたと考えられる。臨床実習におけるストレスの原因として対人関係の問題が最も影響を与えると報告されていることから,施設スタッフと良好な関係を築けなかった複数型の実習では,実習中の学生の緊張や疲労といった負の感情が高まったと考えられる。【理学療法学研究としての意義】臨床実習は理学療法士養成課程における重要なカリキュラムである。臨床実習中に受ける学生のストレスは非常に強く,その対応についてはこれまでに数多く検討されてきた。本研究結果は,今後の理学療法養成課程における臨床実習形態について検証した有意義なものと考える。
著者
永松 隆 甲斐 義浩 政所 和也 河上 淳一 後藤 昌史
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1240, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】上肢挙上位での肘伸展筋力は,投球障害肩に対する機能評価であるElbow Extension Testとして有用性が報告されている。挙上位での肘伸展筋力には上腕三頭筋の筋力のみならず,肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節,および体幹の固定力が複合的に関与していると考えられるが,これらの関与の詳細は明らかとなっていない。そこで今回は,肩甲上腕関節の安定性を担う回旋筋腱板の1つである棘下筋の機能が上肢挙上位での肘伸展筋力に及ぼす影響を調査した。【方法】対象は健常成人男性10名の利き手側10肩(21.1±0.7歳)とした。実験①棘下筋の選択的疲労運動(ISFP)による肩外旋筋力減少率の確認:Kai,若林の報告に準じ,側臥位にて3kgのダンベル負荷のもと1st外旋運動を1Hzのスピードが維持できなくなるまで行わせた。ISFP前後で1st外旋筋力(ER)を測定し,ER減少率を確認した。ERは座位,回旋中間位での等尺性筋力とした。実験② ISFP前後の挙上位肘伸展トルク(EET)の比較:EETにおける棘下筋の影響を調査した。EETは座位にて肩・肘関節90°屈曲位,前腕90°回外位,前腕長軸が重力線に一致した肢位での等尺性肘伸展筋力とした。また,EET測定中の筋活動量を表面筋電図にて計測した。被験筋は上腕三頭筋長頭,棘下筋,前鋸筋,僧帽筋上部および下部線維とし,電極位置はPerottoの記述を参考に各筋に貼付した。筋電計はテレメトリー筋電計MQ8を使用し,データはVital Recorder2にて収録した。実験①②におけるER,EETはプルセンサー型徒手筋力計MT-100を用い,抵抗部位を前腕遠位端にて測定。測定は5秒間の最大随意収縮を2回計測し,その平均値を採用した。得られたデータは各被験者の前腕長を乗じ,体重で除し正規化した。実験②において収録した筋電図データは,全波整流後,5秒間のデータの中間3秒間の積分筋電を求めた。求めた積分筋電は各筋のMVCで除し,%MVCを算出した。統計処理は,ERおよびEETの測定再現性を確認するため,2回の測定値から級内相関係数ICC(1,1)を求めた。次に実験①②におけるISFP前後のER,EETおよび各筋の%MVCをWilcoxonの符号付順位検定にて比較検討した。有意水準は5%未満とした。【結果】測定再現性はERがICC(1,1)=0.890,EETがICC(1,1)=0.934であり,良好な再現性が得られた。実験①におけるISFP前後のERの比較では,ISFP後のERが有意に低値を示し(P<0.01),平均で40%減少した。実験②におけるISFP前後のEETの比較では,ISFP後のEETが有意に低値を示し(P<0.01),平均で約20%減少した。積分筋電は,棘下筋と僧帽筋上部線維において,ISFP後の値が有意に低値を示した(P<0.01)。【結論】本研究の結果,棘下筋機能低下により挙上位肘伸展トルクは約20%減少することが明らかとなった。Elbow Extension Testは棘下筋の肩甲上腕関節安定化としての機能が密接に関連し,またその機能を評価し得るテストであることが示唆された。
著者
八谷 瑞紀 村田 伸 大田尾 浩 久保 温子 松尾 奈々 甲斐 義浩 溝田 勝彦 浅見 豊子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】歩行能力の評価は,5mや10mの短距離における歩行時間を計測することが多い。しかし,元気高齢者では天井効果のために適切に身体機能を把握できない可能性がある。そこで我々は,高齢者のための新たな歩行能力評価法として,多くの施設で確保されている10m歩行路を利用した50m歩行時間を考案した。本研究では,50m歩行時間の有用性について,男性元気高齢者を対象に50m歩行時間中のlap間の所要時間の変化を検討し,つぎに50m歩行時間および5m歩行時間を測定し,下肢筋力,持久力,バランス能力との関連について検討した。【方法】対象は,地域在住の高齢者用フィットネスジムを利用している男性13名(年齢71±3歳)とした。なお,対象者は,自宅生活が自立しており,自家用車などで自ら調査に参加できる者であった。歩行能力の評価は,50m歩行時間のほか5m歩行時間を実施した。身体機能の測定項目は,大腿四頭筋筋力,30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30),開眼片足立ちテスト,Timed Up & Go Test(TUG)を実施した。50m歩行時間は,10mの歩行路間に配置したコーンを3往復折り返して合計60mを歩き,開始からの50mにかかる所要時間を計測する。準備するものは,10mの歩行路,方向転換時の目印(コーン),ラップ機能付きのストップウォッチである。測定方法は,開始前の姿勢は静止立位とし,コーンの横に立つ。被験者への説明として,検査者の合図で歩き出すこと,目印の外側を3往復することを伝えた。その際の歩行条件は最速歩行とした。10mの歩行路を直進し,コーンの外周で方向転換を行い,再び直進歩行を行う。3往復する間は休憩を入れず連続して歩行を行う。ストップウォッチの操作は,歩行開始から40m(2往復目)までは10mごとにラップ計測を行い,50m終了時にストップを押す。記録する評価項目は,50m歩行の所要時間(秒),およびラップ機能で計測したlap1~lap 5の10mごとの所要時間(秒)である。実施する上での注意点として,下記の3点を説明した。第一に,最初に立つ位置は,コーンの左右どちらでもよいこと。第二に,歩行補助具の使用を認めた。しかし,方向転換時に杖をコーンの内側についたり,触れたりすることがないように配慮した。このほか,歩行補助具を使用しない場合であっても,コーンに触れないように事前に説明を行った。第三に,安全確保を最優先に考慮し転倒などの事故には十分に注意した。統計学的分析方法は,対象者の50m歩行時間の方向転換を含まないlap1を除く,lap2からlap 5までの各ラップから得られた所要時間を一元配置分散分析にて比較した。また,50m歩行時間および5m歩行時間の測定値と,身体機能の測定値との関連をピアソンの相関係数を用いて検討した。なお,統計解析にはSPSS19.0(IBM社製)を用い,有意水準は5%未満とした。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づいて行われた。対象者に研究の趣旨と内容を十分に説明し,同意を得たうえで測定を開始した。また,研究の参加は自由意思であること,参加しない場合に不利益がないことを説明した。本研究は,事前に施設の施設長の承認を得て実施した。【結果】50m歩行時間のlap2からlap5までに得られた所要時間を比較した結果,すべてのラップ間に有意な差は認められなかった(F=0.16,r=0.92)。歩行能力と身体機能との関連をみたところ,50m歩行時間と有意な相関が認められたのは,大腿四頭筋筋力(r=-0.62,p<0.05),CS-30(r=-0.90,p<0.01),開眼片足立ちテスト(r=-0.70,p<0.05),TUG(r=0.89,p<0.01)であった。一方,5m歩行時間と有意な相関が認められたのは,大腿四頭筋筋力(r=-0.57,p<0.05),TUG(r=0.58,p<0.05)であり,CS-30,開眼片足立ちテストとは有意な相関が認められなかった。【考察】本研究の結果から,50m歩行時間のlap2からlap5の所要時間において有意な差が認められなかったことより,男性元気高齢者では最速歩行を50m行っても,lap間による所要時間の落ち込みはないことが確認された。一方,50m歩行時間は,今回測定を行ったすべての身体機能と有意な相関が認められ,5m歩行時間は,大腿四頭筋筋力,TUGと有意な相関が認められた。以上のことから,5m歩行時間は男性元気高齢者の歩行能力を適切に表すことが困難である可能性が示めされた。また,50m歩行時間は,下肢筋力,持久力,バランス能力と関連が認められたことから,男性元気高齢者の歩行能力を適切に表す歩行能力評価法である可能性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】身体機能の評価は,対象者の現状を正確に表せる指標であることが求められる。50m歩行時間は,高齢者の歩行能力を適切に評価する指標として期待できる。
著者
村田 伸 甲斐 義浩 大田尾 浩 松永 秀俊 冨永 浩一 松本 武士 吉浦 勇次 北嶋 秀一 角 典洋
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.499-503, 2009 (Released:2009-09-24)
参考文献数
35
被引用文献数
3 1

〔目的〕女性高齢者の膝関節痛の有無と大腿四頭筋筋力との関連について検討した。〔対象〕整形外科医院に通院加療中の女性高齢者47名(平均年齢77.9±6.2歳),94肢とした。〔方法〕膝関節痛の有無,大腿四頭筋筋力,筋組織厚,大腿部周径を評価し,膝関節痛の有無別にそれぞれの測定値を比較した。〔結果〕膝関節に痛みがない群(45肢)の大腿四頭筋筋力は大腿部周径(r=0.56),筋組織厚(r=0.64)との間に有意な正相関が認められたが,膝関節痛有り群(49肢)の大腿四頭筋筋力は,大腿部周径や筋組織厚との間に有意な相関は認められなかった。〔結語〕今回の結果から,膝関節痛を有する高齢者の大腿四頭筋筋力の測定は,現在報告されている測定法では,潜在的に有する最大筋力を測定できない可能性があること,また,彼らの最大筋力を測定するための工夫や新たな測定方法を開発する必要性が示唆された。
著者
竹井 和人 村田 伸 大田尾 浩 安田 直史 甲斐 義浩
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.89-92, 2012 (Released:2013-04-02)
参考文献数
20

[目的]下肢荷重力および臀部荷重力を端座位で計測可能な装置を作成し,その測定器から得られる測定値の臨床的意義について検討した。[対象]要介護女性高齢者23名(要介護認定:要支援1~要介護1,平均年齢83.8±8.5歳,平均体重44.0±8.6?)とした。 [方法]下肢荷重力および臀部荷重力測定値と身体機能(座位保持能力,歩行能力,下肢筋力)との関連を,ピアソンの相関係数を用いて分析した。[結果]下肢および臀部荷重力は各身体機能との間に有意な正相関が認められた。また,下肢荷重力と臀部荷重力との間に有意な正相関が認められた。[結語]本測定器は,下肢機能の評価に加え,体幹機能を含めた総合的な身体機能評価としての活用が期待できる。