- 著者
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白幡 洋三郎
- 出版者
- 京都大学農学部附属演習林
- 雑誌
- 京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, pp.190-208, 1982-11-20
横浜公園造成案として, 明治5年, 6年, 7年の各年に神奈川県の手で作成された「費用調書」が現存する。このうち, 明治5年, 6年の二つには, 詳細な植栽案が付されている。これに従って公園の植栽が行なわれはしなかったが, 公園造成に対する明治初年当時の関係者の姿勢をうかがうことができる貴重な資料であると言うことができる。どのような知識をもった人びとが, 当時この植栽案作成にかかわったのか。その人びとのいだいた公園観は, どのようなものか。それらを考察するため, この植栽案を, 費用, 植物数, 植物名などから検討した。その結果, 植栽案は神奈川県名で作成されているが, 実際の植物の選釈には園芸・植木業にたずさわる者がかかわったことが推察できる。また, 最初日本側当事者の強くいだいた公園イメージは, 花木と草花が豊かに植えられた花壇と芝生で構成される庭であったと思われる。そこにみられるのは, 欧米に生まれた公園が, 独自の築庭術と高度な園芸を有する風土に移しうえられたようとした時の, 最初の公園理解であろう。資料として, 三つの「費用調書」および植栽案全文を掲げ, 特に植物名には, 現在の植物略称, 学名等を判明するかぎり書き添え, 注を付した。