著者
石井 拓
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.29, no.Suppl, pp.188-199, 2015-03-31 (Released:2017-06-28)
被引用文献数
4

まず、シングルケース実験デザインの基本的な特徴や、その基本的な種類である反転デザイン、基準変更デザイン、多層ベースラインデザイン、処遇交替デザインを紹介した。次に、それらのデザインを用いて得られた実験結果がエビデンスとしていかなる資格をもつかを検討するために、研究の内的妥当性と外的妥当性の問題をどのように取扱うかを解説した。それらの取扱いを群間比較法の場合と比較すると、シングルケースデザインでは実験参加者の選択やその選択と処遇の交絡の影響、および処遇間の干渉に伴う各種の影響を外的妥当性の問題として反復実験で検討しなくてはならないことを指摘した。さらに、反復実験を通してある実験結果のエビデンスを強めていく方略に、現状では問題があることも指摘した。それらの問題に対処するために、今後はシングルケースデザインを用いた複数の研究結果を効率よくまとめることを可能にするようなガイドラインの整備や、実践に基づいた研究ネットワークの仕組みを活用できる可能性を提案した。
著者
石井 拓斗
出版者
電気通信大学
巻号頁・発行日
2019-03-25

近年,Virtual Reality(VR) 分野の発展が目覚ましいものがあり,特にエンターテインメント分野で顕著である.マウスやキーボード操作だけの古典的な 2D ゲームであっても VR 化することで面白さに繋がることが分かっており,麻雀ゲームのようなテーブルゲームも VR 化することで面白さが増す可能性がある. 現実の麻雀ゲームではイカサマ行為が可能であり,技術的に美しいという面や,ドラマチックなゲーム状況を演出可能であることから,ゲームがより面白くなるなど非常に関心が高い.しかし通常のコンピュータゲームではイカサマ行為は不可能なことが多い. 本研究では,VR で麻雀を行うために出来るだけ現実に近い手指の動作で麻雀牌を操作できるシステムを構築した.Leap Motion を用いた麻雀牌の操作方法やゲームに必要な他の操作を実装した.牌同士の物理演算をリアルにし過ぎると操作しにくい場面があることから,牌を手牌に持ってくる時,捨てる時,牌を積む時,など状況に応じて,手指のどの指を使うかや牌の回転を制限するなどの機能を組み合わせた.さらに,イカサマの一つであるすり替えに関し,現実よりも容易に行えるシステムを構築した.一般の人は現実ではイカサマが実現できないが,VR 空間でサポートすることによりイカサマを少し簡単に行うことが出来るようになり,結果的に緊張感を高めより面白くなることを目指した. Leap Motion による操作性とイカサマサポートシステムに関する評価実験を行った.麻雀牌の操作方法は,VRChat 内で既存の麻雀ゲームを模したものと比較した.この結果,操作時間や操作の快適性については本システムの方が優れていたが,操作の正確性は劣る結果となった.これは選択した牌を光らせるなどの補助的効果により改善可能であると考えられる.また,イカサマサポートシステムのバランスを探る評価実験では,位置精度を Easy, Normal, Hard の三つの難易度に分け,更に制限時間を三種類用意することで,熟練度と難易度によってどのような組み合わせがバランス良いかを検討した.この結果,位置精度は Normal 難易度,制限時間は 4 秒間程度が適していると判断した.友人同士で敢えてイカサマをやり合って楽しむような目的の際には,もう少し難易度を下げることで対応出来る.
著者
恒石 美登里 山本 龍生 石井 拓男 佐藤 保 山口 武之 牧野 利彦
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.349-356, 2017-12-31 (Released:2018-01-25)
参考文献数
22
被引用文献数
2

レセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて,高齢者における現在歯数および欠損歯数と誤嚥性肺炎による医科受診との関連を検討した。 2013年4月分の歯科の診療報酬明細書データに誤嚥性肺炎病名および医科点数のデータを結合し,65歳以上の歯周炎病名および欠損歯病名を有する1,662,158名および356,662名を対象とした。歯周炎病名の歯式から現在歯数,欠損歯病名の歯式から欠損歯数を算出して3群に分け,誤嚥性肺炎による医科受診の有無との関連を検討した。 誤嚥性肺炎の割合は,現在歯数が20~32,10~19および1~9の者でそれぞれ0.08,0.14および0.25%であった。また,欠損歯数が1~14,15~27および28~32の者ではそれぞれ0.09,0.18および0.43%であった。誤嚥性肺炎の有無を目的変数として性と年齢を調整したロジスティック回帰モデルにおいて,現在歯数が20~32の者を基準とした10~19および1~9の者のオッズ比はそれぞれ1.20および1.53で有意に高かった。また,欠損歯数が1~14を基準とした,15~27および28~32の者のオッズ比はそれぞれ1.67および3.14と有意に高かった。 歯周炎病名および欠損歯病名で歯科を受診した高齢者において,現在歯数の少ない者ほど,欠損歯数の多い者ほど医科医療機関で誤嚥性肺炎の治療を受けていたことが明らかとなった。
著者
石井 拓斗 成見 哲
雑誌
エンタテインメントコンピューティングシンポジウム2018論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, pp.28-30, 2018-09-06

VR技術を用いたゲーム等では、体全体を使って現実と同じ動作で操作をすることが多いが、テーブルゲームのような動作の小さいものでも現実と同じ動作で操作することは重要だと考えられる。本研究では手指の動きを検出できるLeapMotionを用いて現実と同じ動作で行える麻雀ゲームを開発した。VR空間ならではの機能として、牌のすり替え等の現実では熟練した技術が必要な技を容易に行えるようにしてより面白くしている。
著者
石井 拓男 加藤 一夫 榊原 悠紀田郎
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.78-102, 1982 (Released:2010-10-27)
参考文献数
333
被引用文献数
2

日本における歯牙フッ素症の疫学調査に関する文献338件を収集し, その中から歯牙フッ素症のフィールド調査に関する248件の報告について考察を行った。我国において, 歯牙フッ素症の調査報告は, 宮城県以外の46都道府県でみとめられたが, 長期間連続的に調査された地区は22県内の36地区であり, そのうち同一調査者, 研究機関によって追跡調査されたところは12県内15地区であった。さらに水質の改善から, 歯牙フッ素症の減少, 消滅まで追跡し報告のされた地区は, 熊本県阿蘇地区, 山口県船木地区, 岡山県笠岡地区, 愛知県池野地区の4地区のみであった。飲料水中のフッ素濃度の測定が一般的になったのは1950年頃からで, それ以前の報告52件中, 実際にフッ素の確認のあった7件以外はフッ素の裏づけの無いものであったが, 追跡調査及び結果の内容から歯牙フッ素症と認められるものが31件あった。1950年以降でフッ素濃度の記載のないもの20件とフッ濃度0.3ppm以下で歯牙フッ素症の発症を報告しているもの11件計31件のうち, 迫跡調査が無く, その結果の内容からも歯牙フッ素症との確認がむつかしいものが11件あった。今回収録した文献の中で, 最も高濃度のフッ素の報告は美濃口ら ('56) による滋賀県雄琴での23pgmであった。このほか10PPm以上の報告が3件あった。日本の歯牙フッ素症の報告は1925年福井によって発表されて以来およそ60年の歴史があるが, 1950年から1960年の10年間に, 全体の報告数の55%が発表されており, 1つの流行現象のあったことが認められた。またその調査報告は, 単に歯科領城に留まらず, 医科及びその他の研究機関で幅広く実施されていたことも認められた。
著者
石井 拓
出版者
日本基礎心理学会
雑誌
基礎心理学研究 (ISSN:02877651)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.175-181, 2013-03-30 (Released:2016-12-01)

Psychologists may think that positive reinforcement is already a well-known process and that studies on reinforcement are outdated. These beliefs are counterfactual in that behavioral researchers have not agreed on the exact articulation of the function of reinforcement. Historically, an articulation proposed by choice researchers was dominant: reinforcement determines the allocation of different behaviors, which is the manifestation of the relative strength of those behaviors. However, recent studies on the dynamics of choice revealed that the allocation could be determined not by the strengthening effect but by the signaling effect of reinforcement. Further, a study using a reinforcement-omission procedure with a fixed-interval schedule in a choice situation revealed that the presentation of a reinforcer had two simultaneous opposite effects on the short-term and long-term allocations of behaviors. These studies suggest that the repetition of reinforcement inevitably assigns signaling functions to reinforcing events, and therefore, reinforcement as a procedure has multiple effects on behavior. Behavioral studies clarifying these and other functions of reinforcement will provide an important basis for physiological and computational studies on reinforcement.