著者
石田 佐恵子
出版者
関西社会学会
雑誌
フォーラム現代社会学 (ISSN:13474057)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-44, 2007-05-26 (Released:2017-09-22)

メディア文化が高度に細分化・多様化する現代において、年齢層(世代)ごとに明瞭に区分可能な文化を同定することははたして可能なのだろうか。若者文化論、対抗文化論など、かつて世代ごとに区分可能な文化が観察可能であったとして、それらはまさしくマス(=大量)文化を形成するメディア商品とその市場が可能にしていた現象に過ぎなかったのではないか。本報告では、文化研究における差異の問題、世代文化論の困難(問題点)を考察する。世代論の困難は、(1)俗流若者論、(2)世代主義、(3)女の系譜の忘却、の3つの論点にまとめられる。また、1970年代から2000年代までの、世代論のマーケット的意味を概括する。さらに、時代ごとの共通経験や時間感覚を文化研究に反映させるための方法論的な可能性について、メディアの共通経験をキーワードに論ずる。
著者
石田 佐恵子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.7-24, 2009-06-30 (Released:2010-08-01)
参考文献数
61
被引用文献数
3

今日の人びとの暮らしは,圧倒的なビジュアル文化に埋め尽くされている.ムービング・イメージ,すなわち「移動する〈仮想〉の視線」を扱う社会学を,ここでは「映像社会学」と位置づける.映像社会学とは,方法・対象・実践としての映像を総合的に考える領域と定義される.映像社会学への関心は1980年代から次第に高まってきたが,より注目されるようになったのは,文化論的転回以降の知的潮流と,デジタル化時代の新しい研究ツールとが合流する90年代後半のことである.この転回を受けて,映像や図像の意味は本質化を疑われ,徹底的に文化的な構築物として捉え直されることになった.本論では,文化論的転回以降の映像社会学の研究課題が示される.すなわち,映像制作と映像解読の双方の実践の場に研究する主体を置き,両者を連続的なものとして捉え直す,という課題である.こうした課題に近づくために,まず,社会学的な映像制作における諸条件が考察される.そこでは,撮影する主体と映像の移動性・流動性が強調される.さらに,社会学的な映像解読の手法について検討する.あわせて,グローバル時代の映像流通と受容とが議論される.これらの作業を通じて,視覚性の優位に特化した社会学的人間観を修正し,多様なオーディエンス,ジェンダー化された身体や規格化されない身体にとっての「見ること+聞くこと」の経験を,より広い身体の領域へと拓いていくことが,本論の目標点である.
著者
小川 博司 石田 佐恵子 長谷 正人 川崎 賢一 河原 和枝 遠藤 知巳 岡田 朋之
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

近年、現代メディアを取り巻く文化は、世界的な広がりを見せ、急速に変化している。だが、日本においては、その文化の具体的なありようや展開、日常生活に及ぼす影響などは十分に明らかになってはいない。本研究は、「クイズ形式の文化とその歴史的な変化から見る現代生活の諸相」に焦点を当て、メディア社会における文化のありようを明らかにしようとしたものである。本研究の目的は大きく分けて3つある。第1に、歴史社会学的観点からクイズ形式の文化が社会の中にどのように出現し、広がっていったかを明らかにすることである。第2に、歴史的な観点から描き出されたクイズ番組の変遷、クイズ文化の浸透に並行して、人々の日常生活における知識や情報のあり方の変化を明らかにすることである。第3に、アメリカ文化の強い影響を受けて導入されたクイズ形式の文化が、当初の輸入物の文化のありようを越えて、日本文化の一部として定着する際に、どのような形で加工され、「日本文化」化されたのか、明らかにすることである。具体的な作業としては、ラジオ時代のクイズ番組、テレビ時代のクイズ番組のデータを収集しデータベース化するとともに、クイズ番組関係者からのヒヤリングを行った。それらと並行して、アメリカ合衆国における「クイズショー・スキャンダル」についての検討、日本のクイズ文化について専門家からのヒヤリングなど、クイズ文化の歴史をどのように見るかの検討を積み重ねた。ここから、「高度情報社会」と呼ばれる現代の日常生活における知識や情報のおかれた意味について明らかにする、さまざまな知見が得られた。
著者
石田 佐恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

当研究は、グローバル化時代においてメディア環境に生じた新しい研究課題を明確にしつつ、同時に、映像データの会析手法のいくつかの流れを統合する手法を確立することを目的とするものであった。具体的には、データ収集とアーカイブ構築、映像データの分析を実施しつつ、従来の映像分析手法の再検討を行い、統合的な手法を模索した。【1】本調査の実施特定期問の地上波6局、全放送時間の番組を記録し、DVD化・データベース化していく方法を模索した。また。1980年代から保管されてき番組録画全資料のデータベース化作業を行った。これは、家庭用ビデオデッキの普及が個人のテレビ視聴にもたらした影響を考えるための資料であると同時に、国内外のテレビ番組サンプルの資料としても活用可能である。【2】調査結果の分析、及び、研究のまとめ映像データ分析についての統合的方法を確立するための考察作業を実施した。【3】研究成果の発表、刊行明らかにされた発見と結果は、論文やミニレポート、研究会報告や報告書などの形式で報告・発表した。本報告書は、それらの資料のうち、映像資料のDVD化・データベース化の方法についての考察、国内外の番組録画資料のデータベースを中心としている。
著者
石田 佐恵子
出版者
大阪市立大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1997

近年急速に映像メディアの文化、インターネットをはじめとする現代メディアの文化が、世界的な規模で共有されつつある。その状況は急速に変化しているが、個別の文化の具体的なありようや展開、人びとの日常生活に及ぼす影響については十分に明らかではない。本研究では、現代メディアが日常生活に占める位置とそれがどのような形で諸個人の日常生活に現れてくるのかという観点から、現代メディア文化のさまざまな諸相についてクロス・カルチュラルな研究を試みた。平成9年度は、世界規模で共有されつつある現代文化のグローバリゼーションの成立過程について考察した。特に受け手の意味構造と社会全体の変容とに着目した。平成10年度の研究は、その継続研究に当たる。西洋的な脈絡との比較で考える観点と、アジア・アフリカ諸国との比較から考える観点の2つを併用して行われた。その考察の結果、「現代メディアの文化」と呼ばれるものには、インターネットや携帯電話のように「無国籍文化」としてとらえられるものと、マンガやアニメ、コンピュータ・ゲームのように特に「〈日本〉文化」と関連づけられて語られるものとがあることが明らかになった。クロス・カルチャー、グローバリゼーションという視点から見た現代メディアの文化は、それぞれの国々の日常生活のレベルで個別に生きられるものであると同時に、国際的な文化商品の輸出入・翻訳という観点から考察されるべきであるとの結論に達した。