著者
船津 衛
出版者
放送大学
雑誌
放送大学研究年報 (ISSN:09114505)
巻号頁・発行日
no.27, pp.63-73, 2009

21世紀はリスク社会であり、そのリスクは内省(reflexivity)によって克服されるといわれる。内省とは人間が自己を振り返ることを表わし、内省によって「問題的状況」が乗り越えられるようになる。A・ギデンズによると、近代社会の内省は社会的実践がその実践に関する情報に照らして常に検討され、改善され、その性格を構成的に変容するという事実のうちに存在する。ハイ・モダニティの時代には「組み込み解消」によって人々が孤立化し、不安定化し、そこにリスクが生じる。そのリスクの解決のために内省が活性化するようになる。ギデンズの見解によれば、リスクの乗り越えのためには専門家システムが必要であり、専門家によるセラピーが大きな役割を果たすようになる。そこから純粋な関係性が生み出され、親密性の変容がもたらされることになる。 このようなギデンズの理論に対して、特殊西欧的であり、認知中心的であり、感情が無視されており、内省の構造的条件について十分な解明がなされていないという批判がある。現代のリスクはさまざまな不平等や格差が存在し、経済的、文化的、社会的なズレ・不一致・対立が広まり、深まってきており、リスクの克服には多くの困難が生じている。ここから、内省について経済的、文化的、社会的な多様性を理解することが必要となり、内省の社会性と創発性についてより具体的に明らかにすべきことになる。 内省は他者とのコミュニケーション過程において行われる。そこにおいて人間は「意味のあるシンボル」を通じて他者と会話するとともに、自己とも会話を行う。他者との会話という外的コミュニケーションが個人のなかに内在化することによって、内的会話としての内的コミュニケーションが発生するようになる。内的コミュニケーションの展開によって新たなものが創発されてくる。それが創発的内省である。 創発的内省の活性化によって、親密性が再構成される。新たに生み出される親密性は人々の間の完全一致や一元化ではなく、自由なネットワークからなる新たな親密性となっている。また、新しい親密性は産業や経済の目的合理性ではなく、コミュニケーション合理性にもとづく親密性となっている。コミュニケーション合理性にもとづく親密性において「本当の自分」を表現することが可能となる。そこにおいて、オルターナティブな親密性として現代的親密性が姿を現すことになる。
著者
船津 衛
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.179-182, 1983-09-30 (Released:2009-11-11)

2 0 0 0 OA 自我のゆくえ

著者
船津 衛
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.407-418, 1998-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
45

人間の自我は他の人間とのかかわりにおいて社会的に形成される。自我は, こんにち, 社会の分化・多様化, 変化・変動の進行などによって複雑なものとなっている。そして, 自我は自立的な「個体的自我」から, 依存的な「関係的自我」に変わっている。現代人の自我はいくつもの小さなアイデンティティからなる自我となる。いわゆる「自我の危機」といわれるものは合理的, 自立的, 統一的である「近代的自我」のイメージの消滅であり, 関係的, 多面的・多元的, 感情的, 断片的, 流動的な自我の出現であるといえる。他方, 現代社会に特徴的な「役割コンフリクト」に対して, 人々は「役割選択」, 「役割中和」ないし「役割調整」, 「役割コンパートメント化」によって乗り越えようとし, また, 「役割脱出」を試み, また「印象操作」や「役割距離」行動を行なって対処している。けれども, 「役割コンフリクト」の解決には, 他者の期待に働きかけ, それを修正し, 再構成する「役割形成」が必要とされる。人間は社会構造の現実を認識し, それに意味を付与し, それにもとついて自己をリフレクションする。そして, 「内的コミュニケーション」を活性化して, 「解釈」過程を展開することによって, 主体的な行為を形成し, 社会の変容を行なうことができるようになる。
著者
船津 衛
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.17-36, 1971-03-30 (Released:2009-11-11)
被引用文献数
1

“Reference Group”, which is the typical modern term in Sociology, Psychology and Anthoropology, has been known as a useful concept for investigations of Value-judgement, Polital Attitude, Mass Communication Process, Deviant Behavior and so on. But it is difficult to find there the theory of “Reference Group”. There is no “Reference Group Theory” to be worthy of the name. Some people, therefore, have been suspicious of its “true” scientific efficiency. And, being lack of the firm theory, there is a good deal of popular misunderstanding about it.So, we must confirm, first of all, its theoretical character for the sake of its better future development.Reference Group Theory, on the one hand, is theoretically based upon Symbolic Interactionism (T. Shibutani, R. Turner and others). This theory lays great stone on individual's subjectivity, his standpoint and his subjective reference. However, it does not relate these to the structural factors of social actuality, so that it can but treat abstract individual's free, voluntary and unrestricted subjectivity. It'll be nothing but “Idealism”.On the other hand, Reference Group Theory has actually its foundation on American Mass Society, especially the situation consisted of social change, social conflict and social mobility. But it has strongly pragmatic dispositions stressing “Adaptation to surroundings”, and becomes the social theory that urges “Conformity to a given society” (particularly in the case of Functionalists such as R.K. Merton and S.N. Eisenstadt).To devote these weakness and defects, we must have more Socio-Psychological concern in examihing this theory, above all in defining the term of “Reference Group”. And, beyond Symbolic Interactionists and Functionalists, we have to concentrate further our attentions upon the concrete individual's socio-psycho-logical subjectivity that means “Deviation” from a given society, “Solution” of its conflict situations and “Creation” for new social systsms.
著者
船津 衛
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.115-119, 1980-06-30 (Released:2009-10-19)
著者
船津 衛
雑誌
人文研究 (ISSN:04913329)
巻号頁・発行日
vol.26, no.10, pp.525-536, 1974
著者
船津 衛 桑原 司 山尾 貴則
出版者
東北社会学研究会
雑誌
社会学研究 (ISSN:05597099)
巻号頁・発行日
no.64, pp.25-48, 1997
被引用文献数
1