著者
江刺 香苗 菊池 雅彦 下西 充 岩松 正明
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.308-318, 2011 (Released:2012-04-10)
参考文献数
38
被引用文献数
2

高齢者における口腔内カンジダ菌と口腔衛生に関する各種要因との関連について検討することを目的に, 本研究を実施した。対象者は, 訪問診療を含む歯科診療を受診した70歳以上の高齢患者200名 (平均79.1±6.6歳, 男性82名, 女性118名) とした。カンジダ菌の検出には, カンジダ菌検出用簡易試験液·ストマスタットを使用した。頬粘膜を滅菌綿棒で擦過して採取した検体を37°Cで24時間培養後, 培地の色から陰性, 疑陽性, 陽性のいずれかに判定した。一方, 口腔衛生に関する要因として, 年齢, 性別, 住居および仕事の状況, 口腔に関する要因, 通院·歩行に関する要因, 全身疾患に関する要因の各項目について調査を行った。結果として, 口腔内カンジダ菌の検出に, 年齢や性別の影響は認められなかった。カンジダ菌は, 施設入所者, 仕事や身の回りのことをしない人, 口腔清掃不良者, 義歯装着者や現在歯数が少ない人, 通院·歩行が困難な人, 認知症や他の全身疾患がある人で多く検出された。しかし, 多変量解析によりカンジダ菌の検出に特に影響を及ぼす有意な要因として抽出されたのは, 口腔清掃状態, および仕事や身の回りのことを行う自立度と歩行能力であった。一方, カンジダ菌の重要なリスクファクターと考えられてきた義歯装着や, 認知症をはじめとする全身疾患は, カンジダ菌検出との間に強い関連が認められなかった。
著者
大野 浩史 菊池 雅彦 久保田 尚 小嶋 文 加藤 哲平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.22-00064, 2023 (Released:2023-02-20)
参考文献数
10

東京一極集中緩和のため,地域との繋がりを構築する取り組みが重視されている.地域との繋がりの構築において注目される「関係人口」は,人々の地縁・血縁との関連があり,その地域との所縁がある住民意識を表す際に「故郷」がよく用いられる.しかし,「故郷」に対する住民意識の実態は十分には明らかになっていない.以上から本研究では,埼玉県在住者を対象にアンケート調査を実施し,居住履歴の分類から,「故郷」に関する意識,「故郷」のまちづくりへの参加意欲等を検証した. その結果,埼玉県で生まれ育った人々は,自身が生まれ育った埼玉県を「故郷」と意識する傾向があり,「明確な「故郷」を持たない」という人は少数であった.また,地方出身の1代目は現住所以外を「故郷」と意識し,まちづくりへの参加意欲が高い傾向が確認できた.
著者
峰嵜 悠 菊池 雅彦 土川 豊 大沢 昌玄
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.918-924, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

東日本大震災の被災地域における防災集団移転促進事業の移転元地を含む低平地では、土地活用が課題となっており、市町村が土地利活用促進に向けた土地情報の提供を行っているが、その提供方法や留意点については明らかになっていない。本研究では、防災集団移転促進事業を実施する岩手県、宮城県、福島県の移転促進区域を対象に、土地情報の提供の取り組みの分析を行った。その結果、1)対象地は公有地・民有地が混在している地区が存在するが、土地情報を積極的に公開し、特に、周辺の民有地も一体的に、売却、貸し出しの候補として公募するという工夫が見られたこと、2)土地情報の公開にあたり、情報の調査、整理を行うため費用や時間を要すること、民有地の情報の整理、公開に向けては意向調査を行う必要があり、これらに作業時間、人員、費用を要することが明らかとなった。これらのことから、今後の災害復興においても早期に土地情報を整理していくこと、事前復興として、地籍調査や土地利活用の方向性を調査していくことが重要であること、空き地が増加する地方都市においてもこの取り組みが参考になる可能性があることを示すことができた。
著者
片山 茜 菊池 雅彦 岡野 圭吾 谷口 守
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.370-376, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
19

2000年代から「目標管理型事後評価システム」が日本の公共部門に導入された。ここには都市計画分野も含まれている。この評価システムは短期的なものであるが、他分野の研究では、この評価システムの長期的な問題を示しているものもある。本研究では、都市計画分野における目標管理型事後評価システムの問題を明らかにするために、過去の評価を題材として、長期的な観点から再評価することにより問題を検討する。そこで、ケーススタディとしてまちづくり交付金の過去の評価を用いて、長期的な観点から評価指標の計測を実施した。その結果、長期的な評価の結果は短期的な評価システムと同様の傾向を示さず、長期的な計画マネジメントが必要であることを明らかにした。
著者
荒木 吉馬 川上 道夫 菊池 雅彦
出版者
一般社団法人 日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.299-306, 1985
被引用文献数
3

前報において, トレー内の圧力分布は, 用いるトレーの形態に強く依存するものであることを指摘したが, 今回これをさらに具体的に実証するため, 3種の円形トレー, すなわち平板状のFタイプ, 同心円状のV字形溝を付したVタイプおよびVタイプの周縁にふちどりを付したRタイプにおいて内部圧力分布を測定するとともに, そのトレー形態による効果を流体力学的に検討した.<br> 各点の圧力は, Rタイプ, Vタイプ, Fタイプの順に大きかった.VタイプとRタイプのV字形溝より内側の圧力分布はほぼ平坦な形であり, 溝の部分で急激な圧力降下を示した.また, Rタイプのふちどり部分においても著明な圧力降下がみられた.<br> これらの特徴は解析結果とよく対応している.つまり溝およびふちどり部分では, 試料のせん断速度が高くなり, さらに溝の部分では流動路も長くなるので, それぞれの部分において特に圧力降下が著しくあらわれることになる.<br> 以上の結果から, トレー形態や筋圧形成が圧力分布に及ぼす影響はかなり明確に把握できるものと思われる.
著者
髙田 朝 金髙 弘恭 布目 祥子 加藤 裕光 菊池 雅彦
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.242-250, 2017 (Released:2017-07-23)
参考文献数
45

目的:液槽光重合方式の3Dプリンターを利用した新しいロストワックス鋳造法の臨床的有用性を評価することを目的とし,鋳造体の寸法変化率および表面粗さを測定し,従来法との比較検討を行った.方法:原型サンプルは3Dプリンターを利用して2種の3Dプリンター用レジンで製作した.また,インレーワックスとパターン用レジンでも同形状の原型サンプルを製作した.鋳型の製作条件は,埋没材と加熱条件を組み合わせて6条件とした.鋳造体の寸法変化率は,円柱の直径を鋳造前後に測定して評価した.鋳造体の表面粗さは,鋳造体表面を表面粗さ計およびSEMを使用して定性的,定量的に評価した.結果:鋳造体の寸法変化率および表面粗さともに,3Dプリンターを利用した新しいロストワックス鋳造法による製作物は従来法のものと比較し,条件により大きな値をとることもあったものの,一定の条件下においては,同等の優れた値を示すことが確認された.結論:液槽光重合方式の3Dプリンターを利用した新しいロストワックス鋳造法は,適切な条件選択により,寸法変化率と表面粗さともに従来法とほぼ同等とすることが可能であり,臨床上有用であることが示唆された.
著者
西村 一将 大井 孝 高津 匡樹 服部 佳功 坪井 明人 菊池 雅彦 大森 芳 寶澤 篤 辻 一郎 渡邉 誠
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.126-134, 2011-04-10 (Released:2011-04-21)
参考文献数
39
被引用文献数
2

目的:地域高齢者を対象に,20歯以上の保有と1年間での軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)発現との関連を検討した.方法:70歳以上の地域高齢者に対して心身の総合機能評価を2年にわたり実施し,1年目のベースライン調査時にMCIを認めず,かつ2年目の追跡調査が可能であった557名(女性310名)を分析対象とした.認知機能の評価にはMini-Mental State Examination(MMSE)を用い,スコアが26点以上を正常,25点以下をMCIとした.現在歯数については歯冠を残す20本以上の歯の有無について調査した.MCI発現との関連が疑われるその他の項目として,年齢,Body Mass Index,脳卒中既往,心疾患既往,高血圧,糖尿病,喫煙,飲酒,抑うつ傾向,学歴,配偶者の有無,ソーシャルサポートの状態,身体活動度,主観的健康感について調査した.結果:多重ロジスティック回帰分析を用いてベースライン調査から1年後のMCI発現の規定因子を検索した結果,男性において20歯以上の保有が,他の因子と独立して認知機能低下発現に対し有意なオッズ比の低値(オッズ比:0.19,95%信頼区間:0.04-0.82)を示した.結論:現在歯を20歯以上保有することは,咀嚼機能の維持のみならず,高齢期における認知機能の維持においても優位性を持つ可能性が示唆された.
著者
菊池 雅彦 坪井 明人 岩松 正明 玉澤 佳純 木之村 重男 下西 充 高津 匡樹 伊藤 進太郎 駒井 伸也
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

脳MAI検査による画像から得られた大脳虚血性病変に関するFazekasスコアと口腔内状況との偏相関分析(年齢調整)を行ったところ、上顎歯数および上下顎合計歯数と、一部の病変のFazekasスコアとの間に有意(p< 0.05)な負の相関が認められた。大脳虚血性病変は認知機能障害と関連することが報告されており、今回の結果から、歯の保有数、とりわけ上顎の歯数が少ないほど、認知症のリスクが高くなる可能性があることが示唆された。