著者
西浦 友香 大野 善隆 藤谷 博人 後藤 勝正
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI2038, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】近年、スポーツ現場では筋損傷の回復を促すために、物理療法の1つである微弱電流刺激(microcurrent electrical neuromuscular stimulation:MENS)が行われている。肉離れ等の筋損傷時において、受傷直後からのMENSにより早期に競技復帰可能になるケースが報告されており、MENSには損傷した組織の修復を促進させる可能性のあることが指摘されている。我々はこれまで、MENSは骨格筋組織幹細胞である筋衛星細胞を活性化させることで損傷からの回復を促進することを確認した。しかし、損傷骨格筋回復過程には、筋タンパク合成系シグナルの活性化が必要あるものの、発生するシグナルに関しての報告はみられない。筋タンパク合成に係るシグナルは複数報告されているが、インスリンシグナル下流に位置するAkt-p70 S6 kinase系の関与が注目されている。そこで本研究では、MENSによる損傷骨格筋回復過程におけるAkt-p70 S6 kinase系の関与について検討した。MENSが損傷骨格筋の再生を促進する分子機構が明らかになれば、リハビリテーションをはじめとする広範分野にMENSの適応範囲が拡大すると考えられる。【方法】実験には生後10週齢の雄性マウス(C57BL/6J)のヒラメ筋を用いた。マウスを無作為に、1)筋損傷群、2)筋損傷+MENS群の2群に分類した。マウスに対して2週間の後肢懸垂を負荷した後、通常飼育に戻した。後肢懸垂により荷重が除去されたヒラメ筋では、その後の通常飼育による再荷重により軽微な部分的筋損傷が惹起される。マウスは室温23±1°C、明暗サイクル12時間の環境下で飼育され、餌および水は自由摂取とした。後肢懸垂終了1日後より、麻酔下にてMENS処置を施行した(Trio300、伊藤超短波社製)。MENS処置後、経時的にマウス両後肢よりヒラメ筋を摘出し、即座に結合組織を除去した後、筋湿重量を測定した。筋湿重量測定後、液体窒素を用いて急速凍結し、-80°Cで保存した。摘出したヒラメ筋はprotease inhibitor及びphospatase inhibitorを含むライセートバッファーを用いてホモジネートし、Bradford法により筋タンパク量を測定した。さらに、ウェスタンブロット法により、Akt、p70 S6 kinase、p38 MAPKの発現量ならびに各酵素のリン酸化レベルを評価した。【説明と同意】本研究は、豊橋創造大学が定める動物実験規定に従い、豊橋創造大学生命倫理委員会の審査・承認を経て実施された。【結果】MENSによる体重への影響は認められなかった。後肢懸垂により低下した筋湿重量および筋タンパク量は、懸垂後の通常飼育により徐々に回復した。懸垂解除1日後に、Aktおよびp70 S6 kinaseのリン酸化レベルの一時的な増加が認められた。懸垂後に観察される筋湿重量および筋タンパク量の回復は、MENSにより促進した。また、MENSによりAktおよびp70 S6 kinaseのリン酸化レベルの再度の増加、ならびにp38 MAPKの活性化を引き起こした。【考察】MENS処置は、損傷した骨格筋の再生を促進することが確認された。損傷筋の回復過程において、Aktおよびp70 S6 kinaseの一時的な活性化が生じるが、MENSにより回復後期にもAkt、p70 S6 kinaseおよびp38 MAPKの活性化を引き起こすことが明らかとなった。MENSはこれらの酵素の活性化が筋タンパク合成を促進することで、損傷した骨格筋の回復を促進することが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究において、MENSによる損傷筋の回復促進効果にはAkt-p70 S6 kinase系ならびにp38 MAPKが関与していることが示唆された。本研究の知見は、MENSによる損傷骨格筋回復の分子機構の解明につながり、今後種々の疾患や傷害による骨格筋損傷に対する効果的なリハビリテーション技術の開発、ひいては医療費の抑制に寄与できると考えている。さらに、物理療法の1つである電気刺激療法に対して貴重な科学的知見をもたらすことで、理学療法学の発展に貢献できると考えている。本研究の一部は、文部省科学研究費(B, 20300218; A, 22240071; S, 19100009)ならびに日本私立学校振興・共済事業団による学術振興資金を受けて実施された。
著者
福田 崇 宮川 俊平 小池 関也 藤谷 博人 山元 勇樹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

加速度計による頭部作用力の測定から、頭部衝突数において、1名の大学アメリカンフットボール選手で1回あたりの練習時と試合時の衝突数はそれぞれ14.3回と18.1回であった。また頭部衝突時の平均最大直線加速度は、練習時19.04±10.1G、試合時20.82±12.1Gであり、試合時は練習時よりも有意に高い頭部作用であることを本邦で初めて報告した。しかし、実際に脳振盪に至ったデータは収集できておらず、より多くのデータから衝突時の頭部作用を検討する必要がある。ひずみゲージを用いて衝突時の複数部位における頭部作用力を推定する手法を確立するにはヘルメットと模擬頭部の間の密着性を高めることが必要である。
著者
谷田部 かなか 武者 春樹 河野 照茂 田口 芳雄 大山 正 糟谷 里美 藤谷 博人 油井 直子 立石 圭祐 寺脇 史子
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

特性不安の高い競技特性では、あがり条件によって生化学指標変動に相違(p<0.05)がみられ、練習内容や測定時期による精神負荷や身体的疲労に特異的傾向が示された。また、情緒不安定特性別による弁別・判断・選択時間の遅延(p<0.05)については、発育期世代では更にパフォーマンスに対して影響を与えることが示唆された。一方で個々の就寝時間を含めた生活時間、対人関係の改善を行うだけでも、行動や感情を適切に調節する効果的な指導となり、外傷・障害の第一予防に繋がると考えられた。