著者
立岩 真也 西原 和久 永田 えり子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.168-171, 2004-12-31 (Released:2009-10-19)

本特集「差異/差別/起源/装置」は, 2003年日本社会学会大会 (中央大学) における同名のシンポジウム「差異/差別/起源/装置」をもとに企画されたものである.本シンポジウムは構築主義に対する下記のような, いわば「素朴な問い」に端を発する.「とくに社会学をする人は何かが社会的に構築されていることを言う.しかし, それはどんな行いなのか, よくわからないと思えることがある.まず, そこには多く, 批判の意味が明示的あるいは暗示的に含まれる.しかし社会的であることは, それ自体としてよいことでもわるいことでもないと言うしかないのではないか.そして脱することは, 与えられたものや作っていくこととどのように関わるのだろうか.そして, 性に関わる差別, 抑圧は何に由来するのだろうか.何がそれらを駆動しているのだろう」 (立岩真也「日本社会学会ニュース」179号 (2003年8月) より抜粋)
著者
矢澤 修次郎 伊藤 公雄 長谷川 公一 町村 敬志 篠原 千佳 油井 清光 野宮 大志郎 山本 英弘 細萱 伸子 陳 立行 金井 雅之 L.A Thompson 菊澤 佐江子 西原 和久 Pauline Kent
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

二つのこれまでに行われたことの無い質問紙調査を行い、世界における社会学の国際化に関する基礎データを取得することができた。そのデータを分析することによって、ヨーロッパ社会学と東アジア社会学の間には社会学の国際化に関してはそれほど大きな差は認められないこと、しかし社会学の国際化の形態に関しては、ヨーロッパの場合には国際化が研究者のキャリアにおいて通常のことになっているのに対して、東アジアでは最大限のコミットメントを要する出来事であること、また東アジア内部では、台湾・韓国タイプ(留学と研究者になることがセットである)と中国・日本タイプ(両者がセットではない)とが分かれることが明らかになった。
著者
首藤 明和 西原 和久
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.336-343, 2014 (Released:2015-12-31)

世界社会学会議の折に, チャイナ・デイが中国社会学会, 中国社会科学院, 日本社会学会, 日中社会学会の共催で2014年7月15日に開催された. 論題は中国の改革と社会転換. サブテーマは中国の改革とソーシャル・ガバナンス, 社会転換と構造変動・社会移動であった. 東アジア社会学に関する基調講演 (矢澤修次郎) の後, 12名の中国社会学者が中国におけるガバナンス, 不平等, 人口, 都市化, 女性, 世代間格差, 移動などを論じた. この集会で討論者 (首藤明和) が総括したように, 広く論じられている「公的」論点は社会学的に分析され, 聴衆は何が中国社会学の重要論題で, 何が課題かはよく理解できた. だが, 多様性, 民族, 宗教などの論争的論題は十分には論じられなかった. これらも, 中国の社会 (学) にとって重要であろう.とはいえ, 集会自体は成功したと評価できる. なぜなら, 国際学会に際して日中の社会学者が協働し, 研究の共同空間を創造できたからだ. グローバルレベルと東アジアというローカル・リージョナルレベルとの結合は, 国家を超えた交流, 協力に寄与する. もし日本の多数の社会学者が報告し, 議論したならば, さらに対話は進んだだろう. 一国内の知の枠組み――それはしばしば他者の疎外や排除に転化する――を超えることが社会学に要請されている. もちろん, この要請は現実には容易に達成できない. それゆえ, この現実自体も社会学で問われるべき課題だろう.
著者
西原 和久
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.666-686, 2007-03-31 (Released:2010-04-23)
参考文献数
58
被引用文献数
1

本論文ではまず, 理論の意味が考察され, 社会学における理論が, 基層理論, 中範囲理論, 理念理論からなることが提示される.ついで, (現象学的社会学の) 発生論的相互行為論の立場から相互行為と身体性ないし間身体性を含む問主観性論が論じられ, あわせて現代社会の基本構造, つまり科学技術社会, 知識情報社会, 高度消費社会, 国際競争社会が示される.さらにそこから筆者は主に, 「界」の概念に着目して国家の問題へと至る議論の道筋を提示する.そして本稿では最終的に, グローバル化時代における社会理論としての社会学理論において, 身体性および/あるいは間身体性の問題と脱国家的志向とが社会学的課題の主要なものとなるべきことが提示される.
著者
西原 和久
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.17-36, 1981-09-30 (Released:2010-04-23)
参考文献数
52

〈意味〉に着目することは、近年の社会学の一つの思潮となっている。そしてこの思潮は、M・ウェーバーやA・シュッツの流れをその源の一つとしている。だがこうした思潮内にいる諸論者において、〈意味〉の意味 (内容) やその視点はかなり自由に用いられているように思われる。本稿ではこの〈意味〉の多義性に論及する。その際、筆者は〈意味〉に着目する社会学の立場に立って、とりわけウェーバーとシュッツにおける〈意味〉の視角を検討する。そこでまず、〈意味〉の意味についての言語 (哲) 学の例示をみた上で、ウェーバーの〈意味〉概念の検討ないしはその若干の整序を試みる。そして次に、ウェーバーの「理解」を広義に解した場合の〈意味〉理解論における、〈意味〉の意味内容上の問題点を指摘する。筆者は、こうした考察の中から、主として〈意味〉付与の視角および「日常的理解の構造」解明の方向を析出する。そして、こうした点に着目したのがシュッツであり、合せてシュッツの〈意味〉に対する視角・方向も検討する。それは主に、行為者における行為の〈意味〉、「記号」とかかれる〈意味〉理解一般、そして〈意味〉の発生的な側面の問題などである。こうした〈意味〉の社会学の視角・方向は、人間意識へのかかわりを不可欠とするという点で一種の超越論的アプローチを前提とするであろう。
著者
首藤 明和 西原 和久
出版者
The Japan Sociological Society
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.336-343, 2014

世界社会学会議の折に, チャイナ・デイが中国社会学会, 中国社会科学院, 日本社会学会, 日中社会学会の共催で2014年7月15日に開催された. 論題は中国の改革と社会転換. サブテーマは中国の改革とソーシャル・ガバナンス, 社会転換と構造変動・社会移動であった. 東アジア社会学に関する基調講演 (矢澤修次郎) の後, 12名の中国社会学者が中国におけるガバナンス, 不平等, 人口, 都市化, 女性, 世代間格差, 移動などを論じた. この集会で討論者 (首藤明和) が総括したように, 広く論じられている「公的」論点は社会学的に分析され, 聴衆は何が中国社会学の重要論題で, 何が課題かはよく理解できた. だが, 多様性, 民族, 宗教などの論争的論題は十分には論じられなかった. これらも, 中国の社会 (学) にとって重要であろう.<br>とはいえ, 集会自体は成功したと評価できる. なぜなら, 国際学会に際して日中の社会学者が協働し, 研究の共同空間を創造できたからだ. グローバルレベルと東アジアというローカル・リージョナルレベルとの結合は, 国家を超えた交流, 協力に寄与する. もし日本の多数の社会学者が報告し, 議論したならば, さらに対話は進んだだろう. 一国内の知の枠組み――それはしばしば他者の疎外や排除に転化する――を超えることが社会学に要請されている. もちろん, この要請は現実には容易に達成できない. それゆえ, この現実自体も社会学で問われるべき課題だろう.
著者
首藤 明和 西原 和久
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.336-343, 2014

世界社会学会議の折に, チャイナ・デイが中国社会学会, 中国社会科学院, 日本社会学会, 日中社会学会の共催で2014年7月15日に開催された. 論題は中国の改革と社会転換. サブテーマは中国の改革とソーシャル・ガバナンス, 社会転換と構造変動・社会移動であった. 東アジア社会学に関する基調講演 (矢澤修次郎) の後, 12名の中国社会学者が中国におけるガバナンス, 不平等, 人口, 都市化, 女性, 世代間格差, 移動などを論じた. この集会で討論者 (首藤明和) が総括したように, 広く論じられている「公的」論点は社会学的に分析され, 聴衆は何が中国社会学の重要論題で, 何が課題かはよく理解できた. だが, 多様性, 民族, 宗教などの論争的論題は十分には論じられなかった. これらも, 中国の社会 (学) にとって重要であろう.<br>とはいえ, 集会自体は成功したと評価できる. なぜなら, 国際学会に際して日中の社会学者が協働し, 研究の共同空間を創造できたからだ. グローバルレベルと東アジアというローカル・リージョナルレベルとの結合は, 国家を超えた交流, 協力に寄与する. もし日本の多数の社会学者が報告し, 議論したならば, さらに対話は進んだだろう. 一国内の知の枠組み――それはしばしば他者の疎外や排除に転化する――を超えることが社会学に要請されている. もちろん, この要請は現実には容易に達成できない. それゆえ, この現実自体も社会学で問われるべき課題だろう.
著者
西原 和久
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

平成18年度は、本科研費研究の国家意識に関する研究課題の遂行のために、海外には、1)中国の南京大学、2)マレーシアのマレーシア国立大学、3)オーストリアのインスブルック大学に赴いた。とりわけ、中国およびオーストリアにおいては、それぞれの機関で学生・研究者に対して複数の講演を実施し、また当地の関係社会学者とかなり突っ込んだ社会学的国家論の議論ができた。すなわちそれは、グローバル化を価値中立的な概念として提出する意義、グローバル化時代に対応した脱国家的な方向性をもった社会学的な近代国民国家論の展開、そしてそのための現象学に影響を受けた問主観性論をもとにした人際(にんさい)関係構築へ向けた土台作り、の意義を持った。またシンガポール国立大学のブライアン・S・ターナー教授などを名古屋大学に招聘し、講演を中心として情報提供いただいた。彼の『被傷性(傷つきやすさ)と人権(Vulnerability and Human Rights)』に関する理論志向性は、申請者の間身体性論を基盤とする間主観性論の社会学的展開に非常に近く、今後の研究協力を約束できた。なお、直接的には今年度の研究実施計画とは関わらないが、今回の科研費の成果を十分にふまえて、フィリピンにおける国際社会科学連盟の大会での講演、および韓国・慶尚大学における倫理教育学会での招待講演を行うことができた。以上が研究成果であるが、これらを基にして各種の論文作成、著書作成,学会報告などをおこなったことを合わせて記しておきたい。