著者
露久保 美夏 石井 克枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 サツマイモはβ―アミラーゼを含み、加熱により活性化しイモの澱粉をマルトースへと分解するため甘味が増すことが知られている。本研究では澱粉を多く含む米とサツマイモを共に加熱調理するサツマイモ飯に注目し、イモ飯の炊飯時にβ―アミラーゼがイモの澱粉に加えて米の澱粉も分解して飯の甘味増強につながるかどうかを検討した。【方法】 サツマイモ(ベニアズマ)20gを5mm角に切り、純水100mlに20分間浸漬し、イモを取り除き液体のみ遠心分離を行った後100mlに定容しサツマイモ粗酵素液とした。β―アミラーゼの活性温度の測定は0.5%可溶性澱粉液を用い、30、40、50、60、70、80℃で10分間反応後、ソモギ・ネルソン法を用いて還元糖量を測定した。また、炊飯中の米への影響についてはビーカーに米30gを入れ、粗酵素液45mlを、対照として純水45mlを加え炊飯器で炊飯し、飯の還元糖量を比較した。他に、サツマイモのあく抜きの有無による粗酵素液のβ―アミラーゼ活性を調べた。そして、それらの飯の味について官能検査を行った。【結果】 β―アミラーゼの至適温度は50℃付近であった。水および粗酵素液で米を炊飯すると、粗酵素液で炊飯した飯の方が還元糖量が多く、β―アミラーゼが飯の澱粉を分解していることが確認できた。また、イモのあく抜きの有無では、あく抜きによりβ―アミラーゼが流出し、炊飯後の飯の糖量はあく抜き無しのものに比べて、還元糖量が少なくなった。官能検査の結果、イモ粗酵素液で炊いた飯は対照の飯より甘く、あく抜き無しが最も甘いと評価され、β―アミラーゼによる飯の甘味増加は官能的にも違いが確認できた。また、甘い飯の方が好まれる傾向にあった。
著者
洪許 于絹 石井 克枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成15年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.9, 2003 (Released:2003-09-04)

【目的】台湾の家庭では薬膳スープを作り、食されている。四物湯はその中でもよく作られているスープである。本研究は台湾の家庭の調理方法により、加熱時間による呈味と呈味成分の変化を調べるともに、日本人を対象に嗜好調査を行った。【方法】生薬は台湾の漢方専門店で購入し、鶏肉は市販手羽元を用いた。四物湯の調製は鶏肉480gと生薬(当帰・熟地・川芎・芍薬)47gと純水1150ml(台湾ではこの1/3量を使用するのが一般的)を加えて加熱した。加熱時間は30、45、60、90分とした。加熱には「大同電鍋」(間接釜式の電気炊飯器)を用いた。スープは加熱終了後1000mlに定容した。呈味成分の測定試料は一定量のスープを同量のn-ヘキサンで脱脂し、終濃度80%のエタノールで除タンパク後、減圧蒸留した。呈味成分はIMP、イノシン、ヒポキサンチン(HPLC)、還元糖(ソモギ・ネルソン法)、乳酸(酵素法)、タンパク質(Lowry法)を測定し、さらに、スープの官能検査(2点識別・嗜好法変法)を行った。【結果】IMPは45分のスープにもっとも多く含まれ、タンパク 質や還元糖は90分のスープで多く、乳酸は60、90分で多い傾向がみられた。呈味成分全体としてみると、60分スープの量がもっとも多かった。官能検査では45分のスープを基本として比較した。30分はうま味やこくがなく、60分はうま味やこくが弱い傾向であったが有意差はなく、90分はうま味やこくが少なく好ましくないと評価された。官能検査では、45分のスープが最もおいしいと評価された。台湾の家庭では加熱時間を経験的におよそ1時間としており、その加熱時間の妥当性が明らかになった。
著者
谷澤 容子 松本 美鈴 宇都宮 由佳 福永 淑子 石井 克枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

○谷澤容子1)松本美鈴2),宇都宮由佳2),福永淑子,3),石井克枝4)1)甲子園大,2)大妻女子大,3)川村学園女子大,4)千葉大【目的】、タンパク質を多く含む食品の調理に注目し、日本、タイ、台湾、フランス、イタリアなど各地域における食生活の国際比較を行うことにより、それぞれの食の伝統がどのように日常食に反映されているか浮き彫りにし、各地域の食生活の方向性を読み取ることを試みようとしている。本発表では、イタリアとフランスの特徴を把握することを目的とした。【方法】イタリアの調査は、2011年11月~2012年4月にイタリアに居住する19歳以上の男女35名を対象者とし、イタリア語による調査用紙にて留め置き自記式調査法により調査を実施した。内容は、対象者の属性、連続した平日2日間の食事の記録(料理名、食品名、調理方法、調達方法、食事場所など)とした。フランスは、2002年11月~2003年2月に実施した調査を参照した。アンケートの集計と解析には、統計用ソフトSPSSを用い、単純集計、クロス集計およびχ2検定などを行った。【結果】イタリアの食事の調査数は、朝食67件、昼食70件、夕食68件であり、フランスは、朝食210件、昼食214件、夕食214件であった。タンパク質を多く含む食品の出現数は両国とも朝食は夕食、昼食に比べ少なく、朝食の殆どが乳類で、昼食は、肉類、乳類、魚介類、卵類の順であった。夕食については、イタリアは昼食と同順であったが、フランスは乳類が最も多く、肉類、卵類、魚介類となった。(本研究は、2011年度~2013年度公益財団法人アサヒグループ学術振興財団からの助成を受けている。)
著者
石井 克枝 境 里美
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.21, 2005 (Released:2005-12-08)

【目的】食生活の洋風化に伴いわが国においてもさまざまなスパイスを使用する調理が多くなってきた。甘い香りのスパイスは味覚に影響を与え、甘味の増強効果が報告されている。しかし、具体的な調理では詳細には明らかにされていない。そこで本研究では、甘い香りを持つスパイスを対象にし、嗜好性と各種調理における甘味の増強効果を調べ、スパイスを利用による砂糖の使用量の減少程度を明らかにすることを目的とした。br>【方法】甘い香りを持つスパイスはアニス、フェネル、バニラ、シナモン、バジル、八角の6種類を対象にした。甘味の増強効果は、一定量の各種スパイスに熱湯を加え3分間抽出し、これに蔗糖5%加えスパイス添加蔗糖溶液とし、5%蔗糖溶液を対照とし、3段階で評価した。調理における増強効果は、ババロア(バニラ)、りんごジャム(シナモン)、クッキー(アニス、バジル)、ナイトーフ(八角)、りんごのコンポート(フェネル)を対象にスパイス無添加のものを対照とし、識別法変法で、3段階評価を行った。【結果】嗜好性はバニラ、シナモン、バジルで高く、八角、アニス、フェネルで低かった。嗜好性の低いスパイスに共通する成分はアネトールである。5%蔗糖溶液に対しての甘味の増強効果はバニラが最も高く、シナモン、アニス、八角、バジルでも高い傾向であり、フェネルでは認められなかった。甘味を感じる時間を測定した結果、スパイス添加により蔗糖溶液の1.5倍から3倍になり持続性が高められることがわかった。各種調理ではすべての調理で甘味増強効果が認められ、砂糖の使用量をバニラでは40%、その他では20%減少できた。
著者
内堀 佳子 正木 緑 本吉 杏奈 山田 晶世 平澤 マキ 石井 克枝 雀部 沙絵 桑原 節子 Yoshiko Uchibori Midori Masaki Anna Motoyoshi Akiyo Yamada Maki Hirasawa Katsue Ishii Sae Sasabe Setsuko Kuwahara
雑誌
淑徳大学看護栄養学部紀要 = Journal of the School of Nursing and Nutrition Shukutoku University (ISSN:21876789)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.19-27, 2020-03-16

【目的】管理栄養士養成課程において、学生の臨地実習の事前事後の学修成果について到達度評価に適しているとされるルーブリックを用いて評価し、総合演習を含む事前事後指導の在り方を振り返る。【方法】本校において設定された管理栄養士養成課程におけるルーブリックによる自己評価を臨地実習の事前と事後に実施し学修成果を分析した。【結果及び考察】臨地実習前の評価では、3年生女性では、主体性及びコミュニケーション力を除いた4項目(課題設定・解決力、情報活用力、知識と情報の統合力、職業観)で評価規準3または4と評価した学生が少なく、知識と情報の統合力の評価規準を1と評価した学生が2割いた。3年生男性は、コミュニケーション力の評価は高いが、その他の5項目(主体性、課題設定・解決力、情報活用力、知識と情報の統合力、職業観)の評価が低かった。またコミュニケーション力以外の項目で3年生の女性と同様に評価規準4と評価した割合が低かった。4年生の女性は、知識と情報の統合力の項目を除いた5項目(主体性、コミュニケーション力、課題設定・解決力、情報活用力、職業観)について半数以上の学生が評価規準3または4と評価し3年生女性より評価規準が高かった。男性については、該当人数が4名と少ないが、すべての項目で評価規準2または3と評価し評価規準4と評価した学生はいなかった。臨地実習後の評価については、3年生女性は課題設定・解決力が若干低かったが、それ以外の5項目について評価規準3または4と評価した学生が多くなり、3年生の男性は、主体性及び情報活用力以外の4項目について評価規準3または4と評価した学生が多かった。4年生女性の事後評価では、評価基準の各項目において評価規準3と評価した割合が高くなり評価規準4と評価した割合が減少した。4年生の男性は主体性及び情報活用力を除いて全員が評価規準3または4と評価した。どの項目も実習後の評価は評価規準3または4に評価した学生が増加し、その割合は6割強以上となり、管理栄養士として備えたい必要な力についておおむね獲得できたこと、本大学の学生は社会における管理栄養士としての資質(知識、技術、態度)についての理解が臨地実習後におおむね獲得できたという評価となり、今回用いた「管理栄養士課程における臨地実習ルーブリック」により臨地実習の教育効果を可視化できたととらえることができた。
著者
石井 克枝 大林 景子
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.329-332, 2012-03

家庭科食教育教材を視野に入れ,手打ちうどん作りの捏ね回数や小麦粉の種類に注目し調理技術とおいしさの関係について以下のことを明らかにした。捏ね回数200回,400回,800回のうどんを官能検査により評価した結果,800回捏ねたうどんが最もおいしいことが認められた。捏ね時間は大学生で経験者が8分であったのに対し大学生,中学生の初心者が13~15分とほぼ同じで,小学生の初心者が16~17分と経験者に比べ約2倍であった。粉の種類は中力粉が適しているが,小学生で捏ねる力が弱い場合は強力粉:薄力粉が1:2の混合粉が捏ねやすく,中力粉に比べ大きな差はなくおいしいうどんができることがわかった。
著者
洪許 于絹 石井 克枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.15, pp.9, 2003

【目的】台湾の家庭では薬膳スープを作り、食されている。四物湯はその中でもよく作られているスープである。本研究は台湾の家庭の調理方法により、加熱時間による呈味と呈味成分の変化を調べるともに、日本人を対象に嗜好調査を行った。<br>【方法】生薬は台湾の漢方専門店で購入し、鶏肉は市販手羽元を用いた。四物湯の調製は鶏肉480gと生薬(当帰・熟地・川芎・芍薬)47gと純水1150ml(台湾ではこの1/3量を使用するのが一般的)を加えて加熱した。加熱時間は30、45、60、90分とした。加熱には「大同電鍋」(間接釜式の電気炊飯器)を用いた。スープは加熱終了後1000mlに定容した。呈味成分の測定試料は一定量のスープを同量のn-ヘキサンで脱脂し、終濃度80%のエタノールで除タンパク後、減圧蒸留した。呈味成分はIMP、イノシン、ヒポキサンチン(HPLC)、還元糖(ソモギ・ネルソン法)、乳酸(酵素法)、タンパク質(Lowry法)を測定し、さらに、スープの官能検査(2点識別・嗜好法変法)を行った。<br>【結果】IMPは45分のスープにもっとも多く含まれ、タンパク 質や還元糖は90分のスープで多く、乳酸は60、90分で多い傾向がみられた。呈味成分全体としてみると、60分スープの量がもっとも多かった。官能検査では45分のスープを基本として比較した。30分はうま味やこくがなく、60分はうま味やこくが弱い傾向であったが有意差はなく、90分はうま味やこくが少なく好ましくないと評価された。官能検査では、45分のスープが最もおいしいと評価された。台湾の家庭では加熱時間を経験的におよそ1時間としており、その加熱時間の妥当性が明らかになった。
著者
露久保 美夏 石井 克枝
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.15-20, 2011 (Released:2014-08-08)
参考文献数
31
被引用文献数
1

サツマイモ飯やサツマイモ粥の調理において,サツマイモに含まれるβ-アミラーゼが米に及ぼす影響を調べるため,サツマイモ粗酵素液を用いて飯と粥を調理し,糖量測定,官能評価を行った。粗酵素液を用いて調理した飯と粥では,対照(水炊飯)に比して還元糖量およびマルトース量が顕著に多かったことから,粗酵素液中のβ-アミラーゼが米デンプンに作用し,マルトースにまで分解していることが明らかとなった。また,飯と粥の生成糖量について比較したところ,炊飯液の種類に関わらず,粥の還元糖量およびマルトース量が飯よりも多かった。これには,飯と粥の加熱温度履歴や米に対する加水量の違い等が,酵素活性や米デンプンの酵素作用の受けやすさに影響していることなどが考えられた。また,米デンプンの分解は米粒表層部に加えて内層部でも起きていることが示唆された。官能評価の結果から,粗酵素液炊飯を行った飯と粥は水炊飯と比較して有意に甘味が強いと評価された。
著者
渡邊 智子 梶谷 節子 中路 和子 柳沢 幸江 今井 悦子 石井 克枝 大竹 由美
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

<b>【</b>目的<b>】</b>『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じて聴き取り調査を行い,昭和35~45年頃までに残されて次世代に伝え継ぎたいと対象者が考えている家庭料理を収集した。ここでは,各地域のおやつについてその特徴を報告する。<br /><b>【方法】</b>千葉県の9地域(利根川流域,北総台地,東京湾奥,九十九里海岸,内房・館山地域,北総台地,房総湾奥部海岸地域,船橋地域)について聴き取り調査研究を行った。各地域のおやつついて,日常のおやつとハレのおやつに区分して検討した。<br /><b>【</b>結果<b>】</b> 日常のおやつは,食材の宝庫である千葉県の特徴を生かした生鮮果実(すいか,いちご,びわ,柿:房州海岸,柿,びわ,すいか:内房・館山地域,柿,りんご,みかん:北総台地),乾果実(柿:房州海岸・館山地域・北総台地)がみられた。幕張はさつまいも栽培が始まった地域であるが,さつまいももふかす,干しイモ,いも餅,芋羊羹として5地域で食べていた。米を用いたおやつには,おにぎり,ぼたもち,あられ,かきもち,すいとん,せんべい,もち草だんご,ポン菓子,性学(せいがく)もち(つきぬき餅:うるち米が原料)として全地域で食べられていた。てんもん糖(しょうが,ふき)は,北総台地や九十九里で食べていた。その他,パン,そばがき,うに,あけび,かき氷など多様なおやつを食べていた。<br /> はれのおやつは,ぼたもちが主で,重箱にごはん,あんこを順番に入れる作り方(北総台地・船橋地域)もあった。たまご寒天(九十九里海岸)は,寒天の中に黄色の卵が入り華やかなお菓子であった。他には,おしるこ,甘酒,赤飯,五目飯,餅菓子も食べた。<br />千葉県のおやつは,千葉県で採れる豊かな食材を家庭で料理したものがほとんどであった。
著者
宇都宮 由佳 谷澤 容子 松本 美鈴 福永 淑子 石井 克枝
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.26, 2014

【目的】本研究は,タンパク質を多く含む食品の調理に注目して,日本,台湾,タイ,フランス,イタリアの食生活の国際比較をし,それぞれの食の伝統がどのように日常食に反映されているか解明することを試みるものである.本発表では,タンパク質を多く含む食品の日常食における利用状況を麺類との組み合わせについて国際比較をする.<br>【方法】調査は,2011年5~12月に関東地域の136名,2011年11~12月に台北居住の163名,2011年5月~2013年3月にタイ王国ラジャパートチェンマイ大学生100名,2002年11月~2003年2月および2014年1~2月にフランスストラスブール居住の107名+34名,2011年11月~2012年4月に北イタリア居住の35名を対象に,自記式法により実施した.内容は,属性,連続した平日2日間の食事の記録とした.解析には,統計用ソフトSPSSを用い,クロス集計,カイ二乗検定などを行った.<br>【結果】麺類と組み合わせたタンパク質を多く含む食品の料理の出現率は,日本9.2%,台湾15.0%,タイ27.9%,フランス+イタリア(欧州)14.3%であり,タイが最も高かった.麺類は,各地域共通して肉類との組み合わせ比率が高い.次いで日本では魚介類,台湾・タイでは卵類との組み合わせが見られた.欧州は,乳製品「加熱無」との組み合わせ高く,他の地域比べ有意に高かった.日本,タイでは,ちゃんぽん,ラーメン,クエティオ(米麺)など汁物として,台湾は和え麺,牛肉麺など汁無麺で茹でる調理法で摂取されていた.(本研究は2011~2013年度公益財団法人アサヒグループ学術振興財団からの助成を受けている)
著者
石井 克枝 土田 美登世 西村 敏英 沖谷 明紘 中川 敦子 畑江 敬子 島田 淳子
出版者
日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.229-234, 1995
参考文献数
25
被引用文献数
7

本研究は牛肉の低温加熱による呈味物質と呈味性の変化についてみたものである.牛肉を薄切りにし,真空パックしたものを40,60,80℃で,10分,1,3,6時間加熱した.遊離アミノ酸は40℃,6時間加熱したときにもっとも多く生成し,酸可溶性ペプチドは60℃,6時間加熱したときにもっとも多く生成した.60℃,6時間加熱した牛肉エキスと,60℃,10分加熱した牛肉エキスの呈味を官能検査により比較すると,60℃,6時間加熱した牛肉エキスの方がまろやかだった.二つの牛肉エキス中の遊離アミノ酸,5'-IMPはほとんど同量であったので,まろやかさは加熱によって増加したペプチドによるものではないかと考えられた.
著者
石井 克枝 竹之内 美香
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.24, 2012

【目的】わが国においては飯を主食として位置付けてきた。米の摂取量は1962(S37)年をピークに減少している。そこで本研究では大学生を対象に食意識と実態を把握し、現代の食生活において米飯を主食としてどのようにとらえているのかを明らかにすることを目的とした。【方法】1)主食に注目した食事実態調査は千葉大学の学生19名を対象として、連続した7日間の食事の写真を対象とした。2)千葉大学の学生100名を対象とし、米の摂取に関する意識及び実態、複数の主食からなる食事に関するアンケート調査を行った。【結果】7日間の食事調査(19名)結果から、主食は米飯、パン類、麺類の順に多かった。朝食ではパン、昼食では、米飯、夕食では、米飯が多かった。一食あたりの品数を主食別にみると、米飯食では平均3.46品と最も多く、パン食では2.33品、麺食では1.57品であった。米飯の摂取量は、一食当たりの平均は160.3gであった。一週間の米飯摂取量はおよそ600~2675gと、個人差が大きくみられた。米飯摂取のアンケート調査結果では、80.0%の者が毎日米飯を食べたいと回答し、86.0%の者が主食として最もよく食べるもの、75.0%の者が主食として米飯を最も好むと回答した。複数の主食の組み合わせ15種類について、摂食の実態と主食意識の結果では、多くの者が食べると回答したラーメンとチャーハン等は外食の割合が高く、複数の主食からなる食事は外食を通して普及、定着していると考えられた。複数の主食の食事をよく食べる者は主食を副食として捉えるなど、主食に対する意識が低いと考えられた。
著者
石井 克枝 金子 崇恵 Ishii Katsue 金子 崇恵 カネコ タカエ Kaneko Takae
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:13482084)
巻号頁・発行日
vol.61, pp.299-304, 2013-03

シフォンケーキはスポンジケーキの中で最も軟らかいものである。その材料の特徴として卵白を多く用い,卵白泡を支える小麦粉の量を少なくし,他のスポンジケーキに比べて多量のサラダ油を用いている。本研究ではシフォンケーキに油脂としてサラダ油が使用され,バターが使用されない理由を明らかにすることを目的とした。その結果サラダ油は,シフォンケーキ特有の軟らかさをつくるために大変重要な役割をしていることが分かった。シフォンケーキでサラダ油が使用されていることは調理操作の上でも,室温における操作で生地の比重を上昇させず,膨化を助けていることが分かった。またサラダ油の量は使用する卵白の40%まで可能であった。サラダ油に代わってバターのような融点の高い固形の油脂を使用する場合は,生地温度を融点以上に,すなわち30℃に管理する必要があり,室温での操作では膨化が不十分になることが分かった。A chiffon cake is the softest in a sponge cake. The features of the material of a chiffon cake were that there were many egg white bubbles, that there was little flour, and that there was much oil. In this research, the reason for using not butter but oil for a chiffon cake is clarified. The chiffon cake which added oil was soft and which added butter was hard. The chiffon cake which added many oil was softer. The specific gravity of the batter of a chiffon cake which added butter was larger than what added oil. It turned out that the chiffon cake which added butter did not swell because butter becomes hard in batter and specific gravity becomes large. Since butter did not become hard when batter was warmed at 30degrees, the chiffon cake swelled greatly. The quantity of oil was possible to 40% of the egg whites.
著者
川嶋 かほる 小西 史子 石井 克枝 河村 美穂 武田 紀久子 武藤 八恵子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.216-225, 2003-10-01
被引用文献数
4

小中高の家庭科担当教師に調理実習の学習目標について質問紙調査をした結果,以下の点が明らかになった。1.実習の学習目標を「基本的な調理法や調理器具の扱いができる」や「安全衛生に気をつけて調理する」などにおく教師が多く,技能技術の習得を中心において調理実習観が根強いと考えられる。しかし,授業時間や子どもの生活体験の低下等の制約の中で,技能技術の習得達成を期待していない教師も多く、また技能技術の習得を確実にするための工夫は積極的におこなわれているとは言いがたかった。2.調理実習の学習目標には,社会的認識の目標設定が少なく,食生活教育の総合の場ととらえる視点は弱かった。3.調理実習を「楽しければよい」とする考えが一部に強くみられた。調理実習の楽しさを友達との共同的な学びとすることや技能技術の上達ととらえる回答は少なかった。4.食生活状況や子どもの問題状況の把握が学習目標にいかされているとはいえない結果だった。