- 著者
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赤堀 雅幸
- 出版者
- 日本文化人類学会
- 雑誌
- 民族學研究 (ISSN:24240508)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.4, pp.307-333, 1994-03-30 (Released:2018-03-27)
エジプトの西部砂漠地中海沿岸に居住するベドウィンは,祖先との関係が現在生きている人々の関係に反映され,それを整序すると見なす。父と子の間にたどられるアスル(起源)という概念に結集する祖先との関係性は,これまではしばしば「部族」組織と関連づけてとらえられてきた。しかしながら,父系出自集団への帰属は,祖先と自己を結び付ける仕方の一つにすぎず,ベドウィンたちがアスルを社会関係に繁栄する多様な方法の一部としてある。本稿はそうしたアスルの表現の形式を四つに分け,個人の名前への埋め込みと系図化,介在する祖先の網羅と特定の祖先の選出という観点から,たがいを対比して紹介する。それらが全体としてベドウィンの社会的な位置の認識にどのように関わっていくかを論じ,最終的にはベドウィンが自分たちを「ベドウィンである」あるいは「アラブである」と見なす認識も,そうした祖先との関連付けの延長上にあることを指摘する。