著者
近藤 恵介
出版者
一般社団法人 日本統計学会
雑誌
日本統計学会誌 (ISSN:03895602)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.69-98, 2015-09-30 (Released:2016-05-30)
参考文献数
32
被引用文献数
1

先行研究において日本の失業率の地域間格差は徐々に減少していることが指摘されている.そこで,本論文では,人口移動が地域労働市場間の調整としてどのように機能しているのかを1980年から2010年までの市区町村データを用いて実証的に明らかにする.本研究の特徴は,空間計量経済モデルを用いることで,人口移動の地域間の相互従属性を同時に考慮している点である.分析結果より,高失業率が人口移動のプッシュ要因として機能していたこと,また人口流出率と人口流入率がそれぞれ正の有意な空間従属性を示すことを明らかにしている.さらに,相対失業率の変化率と人口流出率の間には負の相関関係があることも明らかにしている.以上の分析結果から,失業率の高かった地域から失業者が流出することで翌期には失業率が低下し,一方で,失業率の低かった地域では失業者の流出が十分ではなく翌期には失業率が上昇していたことが失業率の地域間格差縮小の背景として示唆される.
著者
松本 博 増田 幸宏 源城 かほり 近藤 恵美
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,観葉植物のもつグリーンアメニティ効果に着目し,植物の熱・湿気環境調整効果及び化学物質除去効果を定量的に評価し,模擬オフィスと実オフィスを対象とした被験者実験により,観葉植物がオフィスワーカーの心理・生理反応及びプロフダクティビティに及ぼす影響を定量的に解明し,その経済性評価法及び室内環境デザイン手法の開発を行った。その結果,室内植物の種類や量がオフィスワーカーのメンタルストレスの軽減やプロダクティビティの向上に与える影響を明らかにし,また,その経済性評価モデル及び室内環境デザイン手法の妥当性を検証した。
著者
近藤 恵子 佐藤理史 奥村 学
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.11, pp.4064-4074, 1999-11-15

本稿では,「サ変名詞+する+接尾辞」からより平易な動詞相当句への言い換えを機械的に実現する方法を提案する.この方法は,5つの言い換え規則と4つの辞書とアルゴリズムから成っている.もし与えられた入力に特別な接尾辞がなければ,最も基本的な置換の規則が適用され,そのために,サ変名詞?動詞相当句対応辞書と動詞活用辞書が使用される.もし,テイル形,使役表現,受動表現,可能表現を表す接尾辞があれば,アルゴリズムにより最も適切な規則が適用される.その規則は,自動詞?他動詞対応辞書と有情/非情名詞辞書から得られる構文と意味の情報によって選択される.我々はこの方法に基づいた言い換えシステムを作成し,その有効性を確認した.
著者
近藤 恵美 藏澄 美仁 堀越 哲美
出版者
人間-生活環境系学会
雑誌
人間と生活環境 (ISSN:13407694)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.75-84, 2014-11

本研究は、暑熱環境における温度変化による体温調節負荷を与える顕著な温度差のある温熱環境を移動させる実験を通して、更年期女性と青年女性を比較検討し、更年期女性の生理的心理的反応の特性を明らかとすることを目的とした。実験は屋外と空調された室内を出入りすることを想定し、屋外想定気温35.0℃の前室から18.0、22.0、26.0、30.0℃の実験室へ移動させ、生理的心理的反応を測定した。結果として、更年期女性は青年女性に比べ、末梢部皮膚温の低下が小さいことが観察された。全身温冷感についても、更年期女性の感覚の鈍さが観察された。末梢部の温冷感は、末梢部皮膚温の変化量の大小に対応しており、更年期女性は末梢部皮膚温が青年女性に比べて変化量が小さいことから、末梢部温冷感の鈍さに影響していると考えられる。
著者
石橋 敏光 安田 是和 落合 聖二 中田 雅敏 秋元 明彦 岡田 創 近藤 恵 服部 照夫 柏井 昭良 金澤 暁太郎
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.2124-2128, 1990-08-01
被引用文献数
5

転移性肝腫瘍ではまれな門脈内腫瘍塞栓の2例を経験し,これに対し肝切除術を行ったので報告する.症例1は28歳の女性で卵巣のembryonal carcinomaの肝転移であった.肝右葉に巨大な多発肝転移があり,右門脈起始部より1次分枝に及ぶ腫瘍塞栓を認めた.拡大肝右葉切除術を行ったが術後2か月で残肝再発を来し死亡した.症例2は61歳の男性でS状結腸癌の肝転移であった.肝左葉に孤立性肝転移があり,左門脈起始部より1次分枝に及ぶ腫瘍塞栓を認めた.肝左葉切除術を行ったが術後11か月で残肝再発を来し死亡した.門脈内腫瘍塞栓を伴った転移性肝腫瘍は,腫瘍塞栓を含めた肝切除術にもかかわらず予後不良で,肝切除に加え残肝再発に備えた術前,術後の積極的な集学的治療が必要と考えられた.
著者
大澤 真木子 近藤 恵里 鈴木 暢子 平山 義人 原田 淳子 鈴木 典子 斎藤 加代子 福山 幸夫 石原 傳幸
出版者
東京女子医科大学
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.95-109, 1996-03-25

先天性筋ジストロフィー(CMD)という語は,生下時または生後数ヵ月以内に筋力低下を示し,筋生検ではジストロフィー変化を示す乳児に対し広く用いられてきた.本邦では知能障害を伴う福山型CMDが知られ症例も多い.欧米例は,一般に知能障害は伴わず,筋症状だけを示すと考えられてきた.Nogenが知能は正常であるがCT上白質の瀰漫性の低吸収域を呈するCMD例を報告し,続いて同様の症例が報告され,知能障害は伴わないが中枢神経系に異常のあるCMDの存在が注目を浴びるようになった.1994年にこれらと臨床像が一致する例でメロシンの欠損が認められ,遺伝子座は6q2に存在することが判明した.我々は,生下時より著明な筋力低下を呈し,知能正常,瀰漫性白質低吸収域を呈するCMD例を経験し1981年CMDII型として報告した.さらに,知能正常,生後まもなく筋力低下を示し,筋生検ではジストロフィー変化を呈する同様な例を3例経験した.いずれも生後3ヵ月以前に発症し,定頚が7ヵ月以降と遅れていた.しかしながら,1例を除き坐位保持は1歳未満で獲得しており,いざり這いも可能となった.仮性肥大を認めず,顔筋罹患は軽度に止まり,年長時には顔が細長く見える.1例は, 22歳まで経過観察したが,4歳時および19歳時の頭部CTではいずれも瀰漫性白質低吸収域を認め,両所見に差は認めなかった.最高運動機能はいざり這いで,2歳6ヵ月より11歳まで可能であった.同様の本邦報告例は散見されるが,16年間という長期経過を観察可能であった例は他になく,本邦および欧米例の文献展望を加え,本症の位置付け,分類上の今後の問題点などを検討報告した.
著者
落合 謙太郎 近藤 恵太郎 北村 晃
出版者
独立行政法人日本原子力研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

核融合炉のプラズマ対向壁内のトリチウムは、その多くが表面付近に存在する。この様な表面のトリチウム密度分布を知ることは核融合トリチウムの安全評価の観点から重要である。それゆえ、固体表面のトリチウム保持量の絶対測定法が必要である。核融合炉のプラズマ対向壁表面のトリチウム保持密度深さ分布の高精度な測定法の開発として、DT核反応を利用した核反応分析法(DT-NRA)高精度化を実施した。昨年度課題であった実験室壁等から発生する散乱中性子成分の測定除去としてベリリウム体系による散乱中性子抑制法を検討し、抑制効果の検証実験を原子力機構核融合中性子源施設FNSで実施した。その結果、上記ベリリウム体系を用いることで、核反応分析法をDT核反応の放出粒子である3.5MeVアルファ粒子と14MeV中性子のコインシデンス測定に高精度に行うことが可能となり、NRAの中性子散乱抑制法としてベリリウム等の減速材抑制体系が必要であることが分かった。