著者
高橋 秀俊 石飛 信 原口 英之 野中 俊介 浅野 路子 小原 由香 山口 穂菜美 押山 千秋 荻野 和雄 望月 由紀子 三宅 篤子 神尾 陽子
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.103-108, 2015 (Released:2017-02-16)
参考文献数
42
被引用文献数
3

聴覚性驚愕反射(ASR)は,精神医学領域におけるトランスレーショナル・リサーチにおいて,国内外で広く研究されており,特にプレパルス・インヒビション(PPI)は,精神障害の有力なエンドフェノタイプ候補と考えられている。自閉症スペクトラム障害(ASD)では,知覚処理の非定型性についてよく知られているが,ASD の PPI に関しては一貫した結論は得られていない。最近我々は,ASD 児では ASR の潜時が延長しており,微弱な刺激に対する ASR が亢進していることを報告した。そして,いくつか異なる音圧のプレパルスを用いて PPI を評価したところ,ASR の制御機構である馴化や比較的小さなプレパルスにおける PPI は,一部の自閉症特性や情緒や行動の問題と関連するという結果を得た。ASR およびその制御機構のプロフィールを包括的に評価することで,ASD や他の情緒と行動上の問題にかかわる神経生理学的な病態解明につながることが期待される。
著者
境 泉洋 平川 沙織 野中 俊介 岡崎 剛 妹尾 香苗 横瀬 洋輔 稲畑 陽子 牛尾 恵 溝口 暁子
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.167-178, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ひきこもり状態にある人(以下、ひきこもり本人)の親を対象としたCRAFTプログラムの効果を検討することであった。本研究においては、CRAFT群7名、自助群7名が設定された。その効果測定として、ひきこもり状態の改善、相談機関利用の有無、否定的評価尺度、セルフ・エフィカシー尺度(以下、エフィカシー)、心理的ストレス反応尺度(以下、SRS-18)、ひきこもり家族機能尺度(以下、家族機能)について親に回答を求めた。その結果、自助群よりもCRAFT群において、ひきこもり状態の改善やひきこもり本人の相談機関の利用が多く認められた。また、CRAFT群、自助群のいずれにおいても、親の「エフィカシー」が向上し、SRS-18の「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、家族機能の「正の強化」、「負の強化」が改善された。考察においては、親の年齢、ひきこもり期間を統制したうえで無作為割り付けによる効果検証の必要性が指摘された。
著者
野中 俊介 大野 あき子 境 泉洋
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1-10, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ひきこもり状態における家族機能を検討することであった。ひきこもり状態が行動理論および幸福感の観点による家族機能に及ぼす影響を検討するために、ひきこもり状態にある人の親(以下、ひきこもり群)107名および、ひきこもり状態の経験がない人の親(以下、統制群)79名を対象にひきこもり関係機能尺度(HRFS)、およびRelationshipHappinessScale(RHS;Smith&Meyers,2004)に回答を求めた。共分散分析の結果、ひきこもり群は統制群よりもHRFSの「正の罰」、「負の罰」得点、およびRHS得点が低いことが示された。これらの結果を踏まえ、介入において親の関係幸福感および関係性の機能の改善の意義について考察が加えられた。
著者
境 泉洋 平川 沙織 野中 俊介 岡崎 剛 妹尾 香苗 横瀬 洋輔 稲畑 陽子 牛尾 恵 溝口 暁子
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.167-178, 2015-09-30

本研究の目的は、ひきこもり状態にある人(以下、ひきこもり本人)の親を対象としたCRAFTプログラムの効果を検討することであった。本研究においては、CRAFT群7名、自助群7名が設定された。その効果測定として、ひきこもり状態の改善、相談機関利用の有無、否定的評価尺度、セルフ・エフィカシー尺度(以下、エフィカシー)、心理的ストレス反応尺度(以下、SRS-18)、ひきこもり家族機能尺度(以下、家族機能)について親に回答を求めた。その結果、自助群よりもCRAFT群において、ひきこもり状態の改善やひきこもり本人の相談機関の利用が多く認められた。また、CRAFT群、自助群のいずれにおいても、親の「エフィカシー」が向上し、SRS-18の「抑うつ・不安」、「不機嫌・怒り」、家族機能の「正の強化」、「負の強化」が改善された。考察においては、親の年齢、ひきこもり期間を統制したうえで無作為割り付けによる効果検証の必要性が指摘された。
著者
野中 俊介 境 泉洋
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.179-191, 2015-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、物質乱用者やひきこもり状態にある人のconcerned significant others(CSO)を対象としたCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)による効果をメタ分析によって検討することであった。物質乱用者のCSOを対象とした8本の効果研究および、ひきこもり状態にある人のCSOを対象とした2本の効果研究を用いて、CRAFTによる効果を検討した結果、受療に至った割合は物質乱用ケースで64.9%、ひきこもりケースでは30.8%であった。ただし、ひきこもりケースでは、社会参加に至ったケースを含めた割合は61.5%であった。さらに、CSOの心理的機能の改善、関係性の改善のいずれにおいても、物質乱用ケース、ひきこもりケースともに一定の有効性が示された。これらの結果を踏まえ、CRAFTによる効果と今後の研究に関する課題について考察が加えられた。
著者
野中 俊介 境 泉洋
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.85.13315, (Released:2014-07-01)
参考文献数
22
被引用文献数
15 18

The purpose of the present study was to examine the effect of hikikomori, a Japanese term denoting “prolonged social withdrawal”, on quality of life (QOL). Individuals with hikikomori at present (n = 26) and in the past (n = 31), as well as mildly depressed individuals without hikikomori (n = 114) and highly depressed individuals without hikikomori (n = 27) were requested to complete the WHO Quality of Life 26 (QOL26).The results of MANOVA indicated that the present hikikomori group’s scores on the social relationships domains of the QOL26 were significantly lower than the scores of the highly depressed group.The results of this study suggest that it might be important to intervene to improve QOL in individuals with hikikomori.
著者
野中 俊介 尾棹 万純 嶋田 洋徳
出版者
日本カウンセリング学会
雑誌
カウンセリング研究 (ISSN:09148337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.87-98, 2019-10-31 (Released:2022-02-19)
参考文献数
49

ひきこもり支援の初期段階においては,家族を介して間接的に支援せざるを得ないことが多い。 しかしながら,家族を対象とした心理的支援のどのような要因がひきこもり状態の改善に影響を及ぼすのかは明らかにされているとはいいがたい。本論考の目的は,ひきこもり者の家族を対象とした心理的支援を系統的に展望し,どのようなアプローチがひきこもり状態の改善に影響を及ぼすのかを予備的に検討することであった。文献収集においては,心理的支援の前後でひきこもり状態の改善を検討しており,日本語または英語でピアレビュージャーナルに公刊されていること,ひきこもり者の家族を対象としていること,という条件を満たす心理的支援の10本の研究を分析対象とした。χ2分析の結果,家族を対象とした心理的支援手続きのうち,「対応レパートリーの拡充」または「家族内相互作用の変容」を含む場合は含まない場合よりも,ひきこもり改善を示す者が多いことが明らかにされた。今後は,対応レパートリーや家族内相互作用に焦点を当てたアセスメントおよび介入研究を実施して知見を蓄積し,改善プロセスを明らかにする必要がある。
著者
野中 俊介 境 泉洋
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.179-191, 2015

本研究の目的は、物質乱用者やひきこもり状態にある人のconcerned significant others(CSO)を対象としたCommunity Reinforcement and Family Training(CRAFT)による効果をメタ分析によって検討することであった。物質乱用者のCSOを対象とした8本の効果研究および、ひきこもり状態にある人のCSOを対象とした2本の効果研究を用いて、CRAFTによる効果を検討した結果、受療に至った割合は物質乱用ケースで64.9%、ひきこもりケースでは30.8%であった。ただし、ひきこもりケースでは、社会参加に至ったケースを含めた割合は61.5%であった。さらに、CSOの心理的機能の改善、関係性の改善のいずれにおいても、物質乱用ケース、ひきこもりケースともに一定の有効性が示された。これらの結果を踏まえ、CRAFTによる効果と今後の研究に関する課題について考察が加えられた。
著者
野中 俊介 境 泉洋
出版者
The Japanese Psychological Association
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.313-318, 2014
被引用文献数
18

The purpose of the present study was to examine the effect of hikikomori, a Japanese term denoting "prolonged social withdrawal", on quality of life (QOL). Individuals with hikikomori at present (<i>n</i> = 26) and in the past (<i>n</i> = 31), as well as mildly depressed individuals without hikikomori (<i>n</i> = 114) and highly depressed individuals without hikikomori (<i>n</i> = 27) were requested to complete the WHO Quality of Life 26 (QOL26).The results of MANOVA indicated that the present hikikomori group's scores on the social relationships domains of the QOL26 were significantly lower than the scores of the highly depressed group.The results of this study suggest that it might be important to intervene to improve QOL in individuals with hikikomori.