著者
野村 晴夫
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.109-121, 2005-08-10

本研究では, 高齢者の人生転機の語りに基づき, 構造的一貫性に着目したナラティヴ分析の方法論的検討を目的とした。一高齢女性の転機の語りを材料として, まず, Habermas & Bluck (2000)の提起した, ライフストーリーにおける時間的・因果的・主題的一貫性の分析枠組みに依拠し, 高齢者の語りを分析するための下位カテゴリーを抽出した。その後, 理論的な推測を考慮しつつ, 当初の分析枠組みを検討することによって, 新たに語りの状況要因を加味した状況的一貫性の分析枠組みを付加し, 同様にその下位カテゴリーを抽出した。その結果, 故人や神仏等の超越的他者に起因する因果的一貫性や, 聞き手との相互性を考慮した状況的一貫性等, 物語様のさまざまな構造を把捉し得る分析カテゴリーが, 見出された。そして, 最終的に得た分析カテゴリーを用いて, 調査対象者の転機の語りを分析し, 転機に付与された意味づけを考察した。本研究の試みから, 仮説的分析枠組みに基づく分析カテゴリーを用いることによって, 高齢者の転機の語りの構造的一貫性を具体的に分析する方途が示唆された。
著者
中山 満子 野村 晴夫 池田 曜子 東村 知子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

ママ友関係について調査検討を行った。ママ友への役割期待では、自律性、類似性、支援性の因子が得られた。特に支援性への期待が高く、女子大生の友人関係と似ていることも示唆された。同時に自律性への期待が女子大生より有意に高いことも特徴であった。悩みの類型では、子ども関連群、ママ友パーソナリティ関連群、多様群が得られ、この類型により関係のとらえ方傾向、対処方略に差異が認められた。
著者
野村 晴夫
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.99-113, 2008 (Released:2019-04-12)
被引用文献数
1
著者
野村 晴夫
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.355-366, 2002-09-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
33
被引用文献数
1

本研究では, 高齢者が自らの過去を回想して述べる自己語りの構造的特質と, 自我同一性の様態との関連を明らかにすることを目的とした。65歳以上の健常高齢者30人を対象に, エリクソン心理社会的段階目録の日本版 (中西・佐方, 1993) の一部を施行して, 自我同一性達成度を測定した。また, 性格特性語の自己への帰属を過去の経験から例証する課題により, 自己語りを得た。そして, 構造的な整合. 一貫性の観点から, 根拠として語られた経験の信憑性を表す特定性, 情報量の多寡を表す情報性, 主題である性格特性に則していることを表す関連性の3次元に基づき, 語りを分析した。その結果, 情報性, 関連性の2次元において, 語りの構造的特質が自我同一性達成度により異なることを見出し, 自己語りの構造的特質が自我同一性の様態に関連することが示唆された。なかでも, 自我同一性達成度が低い一群の高齢者は, 自己の否定的な性格特性について語るに際して, 情緒的な明細化が顕著になり, 主題との関連性が低い自己語りを構成することが明らかとなつた。しかし, 自我同一性達成度と, 語りの特定性とは関連を見出さず, また, 情報性・関連性との間に見出した関連も直線的ではなかった。