著者
根津 雅彦 鈴木 達彦 平崎 能郎 並木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.420-451, 2021 (Released:2023-03-03)
参考文献数
80

スペイン風邪の際に漢方治療が多くの命を救ったことはよく知られる。古来よりインフルエンザを初めとした急性ウイルス性呼吸器感染症は傷寒などと呼ばれてきたが,本邦ではその治療にあたり,『傷寒論』『小品方』『太平恵民和剤局方』『万病回春』などから多くの処方が取り入れられてきた。江戸期には漢方治療は本邦独自の発展を遂げるものの,医療及び経済的な格差のため,その恩恵を受けた庶民は少数派であった。さらに傷寒治療のキードラッグである麻黄には,古来よりトクサ属植物と混同されるなど品質面に大きな問題を抱え,その薬効が過小評価されてきた可能性があることは,今後も留意すべきものと思われる。新型インフルエンザ・コロナウイルスパンデミックにも,漢方の有効性が期待されている。しかしその力を十分に引き出すには,十分なレベルの知識のもと方剤を適正に使用することの重要性が,今回歴史を振り返ったことにより再認識させられた。
著者
鈴木 達彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.289-298, 2010 (Released:2010-09-07)
参考文献数
29

『古今方彙』の各種版本における引用の傾向,甲賀通元の編纂の姿勢,および後代の影響について検討した。1.甲賀通元以前の『古今方彙』は,『万病回春』を初めとする龔廷賢の医書や,『医学入門』などの新方を中心とした処方集である。2.通元は,『刪補古今方彙』,『重訂古今方彙』において,2度考訂している。現在一般的な『重訂古今方彙』は,『万病回春』,『医学入門』,薛己医書等の新方が中心の処方集である。3.通元は処方の増補以外に,旧版の出典文献を訂正し,処方名や処方中の薬物や分量を訂正した。4.原『古今方彙』は,新方を選集する立場に立って成立した処方集であるが,通元の時代に良質の経験方を選集する見方が加わっている。後の日本漢方では経験方が重視されるが,『古今方彙』はその先駆けと見ることができる。5.『衆方規矩』は,基本処方と加減方という体系で治療を組み立てる処方集である。時代が下るとともに同書は『古今方彙』と同じ性格をもつようになる。
著者
鈴木 達彦 遠藤 次郎
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.50, no.257, pp.1-8, 2011 (Released:2021-07-22)

This paper reveals the dosages of decoctions in Shanghanlun(傷寒論) in relation of pills and powder formulations, and obtains following results. At the first examination of the system of weight, while Taohongjing(陶弘景) shows three kinds of system of weight: [(1) lliang(両) is equivalent to 14 g. (2) lliang = 7 g (3) lliang = 1.4 g], he describes the necessity of the corrective system of weight among the decoctions, the pills and the powder formulations. After Song(宋) dynasty. Zhusanfa(煮散法), which is the method of preparing the decoction by placing powder ingredients of prescriptions in water and simmer, have been mainly adopted. In the term of Zhusanfa, although the whole quantities of prescriptions are written with the ancient weight unit, the notation of the dosage is indicated by the current weight unit, Qian(銭). In Shanghanlun, since the dosage form seems to have been changed from the pills or the powders into the decoction, some of decoctions contain impractical dose for decoction.
著者
横手 裕 浦山 きか 内山 直樹 松岡 尚則 VIGOUROUX MATHIAS 鈴木 達彦 入口 敦志 並木 隆雄 長谷部 英一 井ノ口 哲也 森口 眞衣 菊谷 竜太 西村 直子 西田 文信 形井 秀一 大沼 由香 立石 和子 岡田 岳人 本村 昌文
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は、東アジアを中心とするアジアの伝統医学において、医療倫理や医師の心得がいかに想定されていたかを、その思想的な背景も含めて明らかにする。すなわち、日本をはじめとするアジア諸国の伝統的医学文献における医療倫理に関する記述、医療倫理の背景となっている思想や文化、現在のアジア諸国の伝統医学教育における倫理教育の実態、これら三点を軸に、全ての構成員によって共同研究を進める。そして最終的には諸国間における異同、相互の影響関係等を検討しつつ、アジア諸国に共通する伝統的な医療倫理について定義づけと明確化を行い、現代の医療に取り入れるべき内容を提案する。
著者
高橋 憲二 小島 健吾 中島 理恵 鈴木 達彦 渡邉 文之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
pp.22-00079, (Released:2022-07-05)
参考文献数
38

Collaborations between hospital and community pharmacists play a key role in ensuring consistent continuation of pharmacotherapy within official medical care plans designed to promote community-based healthcare. A previous study conducted by the authors clarified the constructs of collaboration between the hospital and community pharmacists from the hospital pharmacist's perspective. In this study, a similar questionnaire was used to survey a group of pharmacies with 424 outlets nationwide, and 244 responses were collected. Factor analysis from the community pharmacists’ perspective extracted five latent factors comprising 18 variables, and structural equation modeling yielded a model with a high goodness-of-fit. In the latter model, variables representing “Organizational climate” and “Basic policy on collaboration” formed the foundation of the collaboration between hospital and community pharmacists, while variables representing “Understanding of healthcare policy,” “Resources for collaboration,” and “Community support systems” represented concepts that flexibly compensated for fluctuations in medical policy. These trends were similar to those of the constructs previously indicated by hospital pharmacists. We performed multiple regression analysis and structural equation modeling to confirm the impact of the inclusion of “Need for collaboration” as a dependent variable on the proposed constructs of hospital-community pharmacist collaboration using different analytical methods. Our results indicated that “Organizational climate,” “Basic policy on collaboration,” and “Community support systems” affected the “Need for collaboration”. Our findings indicate that future studies are needed to confirm and clarify the causal relationships demonstrated by the constructs of hospital-community pharmacist collaboration seen within the current study.
著者
鈴木 達彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.15-24, 2012 (Released:2012-08-24)
参考文献数
25

吉益東洞は臨床経験を積んでいく過程の中で,『傷寒論』や『金匱要略』に収載される湯液方と,丸散方を組み合わせる兼用法による治療体系を確立していった。東洞の丸散方の処方集には古来の楽律である十二律の名称を採って整理した十二律方という独自の丸散方がある。東洞は身体の様々な症状は,飲食の留滞に起因する毒によってもたらされるという万病一毒説を唱え,十二律方は毒である飲食の留滞を取り除く目的で用いられた。また,毒を診断する方法に腹診を,毒によって表れる症状を『傷寒論』の証と対応させ,腹診—毒—丸散,見証—病状—湯液方という東洞の医学体系の枠組みを明らかにした。
著者
鈴木 達彦 遠藤 次郎
出版者
日本医史学会
雑誌
日本醫史學雜誌 (ISSN:05493323)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.51-61, 2011-03-20
被引用文献数
3
著者
鈴木 達彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.609-615, 2008-07-20
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

『古今方彙』は甲賀通元により編纂され,江戸時代に最も広く流布した処方集である。著者は,『古今方彙』の各版本を検討し,以下の結果を得た。1.甲賀通元は,『刪補古今方彙』の底本となる『古今方彙』を書肆(書店,出版社)梅村から受け取り,それを編纂した。2.原『古今方彙』は1692年頃に書肆梅村が出版した。本書は縦型の版本で,調査中もっとも処方数が少なく,1263処方を収載している。3.1696年頃に梅村が,原『古今方彙』の増補版を出版した。本書は横型の版本で,本書には原『古今方彙』の処方がほぼ含まれていて,さらに273処方が増補されている。4.梅村の依頼により甲賀通元が,348処方を増補して,1733年に『刪補古今方彙』を出版,さらに,43処方を増補して,1747年に『重訂古今方彙』を出版した。『重訂古今方彙』は,1780,1808,1862年に重版された。