- 著者
-
鈴森 康一
脇元 修一
安積 欣志
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2014-04-01
現在の人型ロボットと実際の人の身体の駆動機構は大きく異なっており,これが両者の運動特性に様々な違いを生んでいる.しなやかで「生き物らしい」運動特性を持ったロボットを実現するには,十分な収縮能力を持ち,集積して超多自由度機構を駆動できる「人工筋肉」の実現が鍵になる.本研究では,①「電気駆動」と「多繊維構造」を特徴とする「次世代マッキベン人工筋肉」を実現し,②「筋骨格ロボット機構」に適用してその可能性を実証することを目的としている.①マッキベン人工筋肉の電動化に関しては,本年度は,プロトン交換膜表面の電極形成の工夫により,1~2秒程度の速さで動作する「電動細径マッキベン筋肉」の動作に成功した.電気駆動に関しては,安定した製造方法と反応速度の向上については今後検討する必要があるものの,ほぼ当初の目的であった動作性能を実現することができた.多繊維化に関しては,紡錘状筋肉を対象に多繊維化に伴う筋肉間の干渉をモデル化し,細径人工筋肉単体の特性と多繊維化した場合の特性を理論と実験から検討し,多繊維化により収縮率が10%程度上昇することを示した.②筋骨格ロボット機構に関しては,一昨年度の脚,腕,昨年度の顎の動作実現に加え,首および脛骨へ適用,動作に成功し,超冗長駆動システムの駆動が本多繊維人工筋で行えることを実証した.以上のように,②については,研究が当初計画より約1年前倒しに当初目標を達成し,①の電動化については安定した製造方法と反応速度の向上については今後検討する必要があるものの,4年間でほぼ当初の目的を達することができた.今後はさらに高性能化を目指して油圧駆動に取り組みたい.