著者
飯田 高
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.242-256, 2017 (Released:2018-03-27)
参考文献数
53

本稿の目的は,社会現象としての法が数理モデルのなかでどのように表現されうるかについて,社会規範研究と対比させる形で検討することである.まず,社会規範と法をめぐる近年の議論を概観しながら法の位置づけを整理し,経済モデルを含む数理モデルにおける法の捉え方の問題点を指摘する.そこでは,公的機関は法が成立するための必要条件ではなく,実際の法制度は多数のアクターの行動が調整されてはじめて作動する,という点が強調される.次いで,集合的なサンクションによって規範が実効化される様子を描写した簡単なモデルを提示し,社会規範と法の違いを表す方法について述べる.社会規範と法はどちらも,他者の行為に関するプレーヤーの信念を形成してサンクションという集合的行動を容易にするという機能をもっており,その点で連続性を有する.この連続性を考慮した法の定式化を示すとともに,人々の信念の変更によってのみ法は行動に影響を及ぼしうるということを論じる.
著者
飯田 高
出版者
東京大学社会科学研究所
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.23-48, 2016-03-31

特集 社会規範と世論の形成
著者
高橋 晃周 飯田 高大 佐藤 克文 佐藤 克文 森 貴久 坂本 健太郎
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

南極海におけるペンギン類の個体数変動の種間・地域間の違いをもたらすメカニズムを明らかにするために、最新の動物装着型記録計による採餌行動の研究を行った。ペンギンの採餌行動とその環境要因(特に海氷分布)との関係は、同所的に生息する種間および同種の地域間で異なることが明らかになった。採餌行動の種間・地域間の違いにより、海洋環境変化がペンギンの繁殖に与える影響は異なり、それによって個体数変動の違いが生じていることが示唆された。
著者
工藤 栄 田邊 優貴子 飯田 高大 辻本 惠 小川 麻里 伊村 智
出版者
国立極地研究所
雑誌
南極資料 (ISSN:00857289)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.421-436, 2008-11-28

第49次日本南極地域観測隊(第49次)夏隊において,湖沼観測として湖沼環境観測,生物・生態学的研究試料としての湖水と湖底の生物群集採取,及び現場実験を宗谷海岸露岩域にある複数の湖沼で実施した.この湖沼観測報告は南極観測事業第VII期計画の一般プロジェクト研究(P3)「極域環境変動と生態系変動に関する研究」及びモニタリング研究観測(M4)「生態系変動のモニタリング」の両課題にかかわる観測を記録したものである.野外観測は2007年12月22日から2008年2月13日の期間,砕氷船「しらせ」が昭和基地沖近傍に滞在中に実施した.今回は夏季の湖沼環境変動と湖底の生物(藻類群集)の応答を集中的に観測すべく,スカルブスネスの長池にて観測とサンプリング・現場実験を繰り返し実施する一方,きざはし浜生物観測小屋から徒歩日帰り圏内にある周辺の14湖沼,及びヘリコプターを利用した日帰り観測にてスカルブスネス東部の4湖沼,及び他の露岩,スカーレンにあるスカーレン大池,ラングホブデ域の雪鳥池・東雪鳥池,ぬるめ池にて湖沼水質環境観測と試料採集を適宜実施した.このうち,スカルブスネス東部のなまず池 (仮称)では潜水による水中設置ビデオ装置の回収と,湖底のコケ類・藻類が作り上げている「とさか・筍状」の群落の採集,ラングホブデぬるめ池では湖底から小型カイアシ類の定量サンプリングを実施,これらを研究試料として日本に持ち帰ることができた.また,第47次隊により雪の堤防の決壊の発見(第46次越冬期間中に決壊したとみられる)が報告されたラングホブデ南部の平頭氷河末端にあった「氷河池」(仮称)の現状視察も実施,決壊前後での3m以上と思われる大幅な水位変動痕からフィルム状の生物試料を採集し持ち帰った.