- 著者
-
石田 賢示
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.94, pp.325-344, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
- 参考文献数
- 26
- 被引用文献数
-
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本稿では,「制度的連結論」の理論的枠組みに関するこれまでの論点を整理したうえで,学校経由の就職が若年者の初職離職リスクに与えた影響の趨勢を分析した。日本における学校から職業への移行過程において,若年者と労働市場を媒介する役割を学校が果たし,制度的連結の仕組みが日本の若年労働市場の成功の重要な要因だと考えられてきた。一方,1990年代以降の労働市場の構造変動期に,制度的連結が機能不全をきたしたという議論がなされるようになった。 制度的連結について対立する2つの立場はいずれも一般化されたものであるといえる。しかし,学校経由の就職とジョブ・マッチングの関係のトレンドを直接に明らかにした研究はそれほど多くない。そのため,本稿では1995,2005年SSM 調査の合併データを用いたイベントヒストリー分析によって,制度的連結効果の趨勢を検討した。 分析の結果,高卒者については1990年代以降に初職を開始した場合,制度的連結論の仮説が支持された。また,学校経由の就職の利用にはメリトクラティックな基準が作用していることも明らかになった。労働市場全体が不安定である時期に制度的連結は高卒就職を保護するようになったが,学校経由の就職の規模の縮小も同時に進んでいる。制度的連結は,それを利用できない層を生み出しながらその機能を維持しているといえる。また,中卒,大卒就職では仮説が支持されず,制度的連結概念自体の検討も必要である。