著者
馬場 幸 寺本 信嗣 長谷川 浩 町田 綾子 秋下 雅弘 鳥羽 研二
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.323-327, 2005-05-15 (Released:2011-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
9 10

嚥下障害のスクリーニングのために, ベッドサイドで実施可能な簡便な検査法がいくつか提唱されてきている. しかしながら, 痴呆を持つ高齢患者においては, それらの検査法の臨床的な有用性や限界について十分に検証されているとはいえない. 今回, 37例の入院患者 (平均年齢81.8±12歳) を対象として, 嚥下機能評価を, 反復唾液嚥下テスト (repetitive saliva swallowing test, 以下RSSTと略す) および簡易嚥下誘発試験 (simple swallowing provocation test, 以下SSPTと略す) を用いて実施し, 同時に認知能と言語コミュニケーション能力について, 改訂長谷川式簡易知能評価スケール (以下HDS-Rと略す) およびミニコミュニケーションテスト (以下MCTと略す) を用いて評価した. RSSTが実施できたのは22例のみであり (59%), 一方, SSPTは全例に実施可能であった. HDS-RスコアおよびMCTスコアは, RSST実施不可能群において, 実施可能群に比べ有意に低値を示した(HDS-R: 7±1 vs 15±3, p<0.01; MCT: 47±8 vs 81±5, p<0.01). また, RSSTにて異常反応は14例 (64%) に, SSPTでの異常反応は5例 (14%) に認められた. 異常反応を示した患者では, 認知能 (p<0.05) および言語コミュニケーション能力 (p<0.05) は有意に低下していた. また, SSPTにおいてむせのあるなしは, 認知能の影響がみられた. この結果より, RSSTは高齢患者における嚥下障害の検出に有用であるが, その適応については患者の認知能と言語コミュニケーション能力に影響されることが示唆された. 高齢者の嚥下障害についてその検査法を選択するうえで, 老年医学的総合評価を行うことは有用であると考えられた.
著者
竹鼻 ゆかり 馬場 幸子 朝倉 隆司 伊藤 秀樹
出版者
一般社団法人 日本学校保健学会
雑誌
学校保健研究 (ISSN:03869598)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.351-361, 2021-02-20 (Released:2021-03-10)
参考文献数
24

Background: Female students with mild intellectual disability at special-needs high school and part-time high school are vulnerable to sex crimes. Nevertheless, their situation is not clarified well. How their teachers are involved in their problems remains unknown.Objective: This study was designed to use a teacher's narrative viewpoint to elucidate the state of high-risk sexual behavior of female students with mild intellectual disability at special-needs high school and part-time high schools and to explore how teachers should care for and support such students.Methods: Relevant data were obtained from a group interview and individual interviews of seven special-needs high school teachers and two part-time high school teachers. The interviewees responded to the following inquiries: “What are recognizable high-risk sexual behaviors of female students with mild intellectual disability?” “What are the backgrounds of female students' sexually high-risk behaviors?” and “How do teachers care for and support female students?” The responses were categorized.Results: High-risk sexual behaviors of female students with mild intellectual disability were categorized from a teacher's narrative viewpoint into three categories: “money-related dating and labor and sex industry,” “improper sexual activity,” and “dangerous sexual behavior.” Several factors were related to female students and their background. The personal characteristics were of two categories: “intellectual delay” and “low self-esteem.” Their background comprised two categories: “complex home environment” and “impact of the information society.” A teacher's care and support of female students included the following: “individual and polite education,” “sex education according to the current situation,” “education for independence,” and “cooperation.” When providing support to female students, the troubles which teachers often experienced were the following: “difficulty of sex education,” “necessity of support and guidance after graduation,” and “difficulty of surrounding social systems.”Conclusion: These results are expected to help prevent and support problem behaviors, giving advice from a professional viewpoint.
著者
馬場 幸栄
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

緯度観測所(岩手県奥州市水沢)の歴史を再構築するため、国立天文台や個人が所蔵する資料群を調査し、関係者への聴取調査を行った。ガラス乾板から復元した写真、簿冊『国有財産関係書類』から発見した図面、所員の証言から、眼視天頂儀室や歴代本館等の外観・構造および所員らの姿・担当業務を明らかにした。また、紙焼き写真、地域資料、所員の証言から、初代所長・木村栄が水沢宝生会を通して交流していた地域の名士を特定したほか、同観測所が大正時代から女性を積極的に雇用していたことも発見した。さらに、葉書、絵画、ビデオテープなど新たに発見した資料から、第2代・第3代所長や工作係長の人物像・業績も詳らかにした。
著者
馬場 幸大 西尾 正輝 山崎 裕治
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.61-66, 2016 (Released:2016-10-03)
参考文献数
34

要旨 国指定天然記念物であるイタセンパラについて小規模水槽飼育を実施し、飼育条件の違いが成長や生残に与える影響を調査した。実験条件として、1日あたりの給餌の頻度(1回、3回)、個体の密度(5匹、20匹)そして日当たり(日なた、日陰)の3つの項目に注目した。これらの条件を組み合わせた8通りの実験群を3組ずつ用意し、1か月ごとに生残率を算出し、標準体長および体重を計測した。さらに、本種の繁殖期とされる9月および10月における計測については、性成熟の判定を行った。飼育実験の結果、豊富な餌量の供給および低密度における飼育によって、良好な成長が期待できることが示唆された。一方で、残餌や高水温に起因する水質悪化が、摂餌活性および生残率の低下をもたらす可能性が示された。また、すべての実験群において性成熟する個体が出現した。これらのことから、保護池のような広大な土地が確保できない場所においても、効果的な条件を整えた小規模水槽において本種の飼育は可能であり、有効な保全方策の1つとなることが明らかとなった。