著者
齋藤 靖弘 山下 友也 武田 清孝 増井 伸高 松田 知倫
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.39-46, 2017-02-28 (Released:2017-02-28)
参考文献数
15

救急隊員に急性薬物中毒の知識をアンケート調査し,薬剤に関する知識不足から搬送・病院選択に苦慮していることが明らかとなった。そこで,重症急性薬物中毒に陥りやすい薬剤の中で,致死性不整脈へ移行しやすく,PCPS等の補助循環可能な高次医療機関搬送が必要となる三環系抗うつ薬に関して,薬学的知識を補う簡単な手製のリーフレットを薬剤師が中心となって作成し,4消防本部の救急隊員へ配布・説明した。その後,調査票を配り,①薬剤リストから三環系抗うつ薬を選択,②三環系抗うつ薬過量内服患者の観察強化項目を選択する,という2つの項目の正答率ならびに回答率と自由記載コメントから,リーフレットによる教育効果を評価した。リーフレットを作成して救急隊員へ薬学的知識を支援することは,教育効果以外に搬送先選定などの救急対応を改善する効果も期待でき,プレホスピタルにおける薬学的支援の重要性を感じるものだった。
著者
齋藤 靖弘 成田 拓弥 徳留 章 早坂 敬明 松田 律史 民谷 健太郎 増井 伸高 松田 知倫 武田 清孝 瀧 健治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.493-498, 2019-06-30 (Released:2019-06-30)
参考文献数
11

救急外来(emergency room;ER)における薬剤師の業務報告は未だ少ない。この原因には診療報酬上の加算がない以上に,ERでの薬剤師業務が明確ではないことが考えられる。 今回,札幌東徳洲会病院(以下,当院)のER専従薬剤師が行っている業務として「持参薬鑑別」を取り上げ,その迅速性・内容・時間の観点から調査・検討を行った。結果として,ER専従薬剤師の施行した持参薬鑑別は救急搬入後2時間以内にほぼ終了していた。また薬剤起因性疾患の原因となり得る薬剤を常用している患者が一定数存在した。さらにER専従薬剤師は救急医の薬歴把握にかかる業務負担を1日当たり1.9時間軽減している可能性が示唆された。 以上の結果より,ERに薬剤師を専従配置することは,迅速な持参薬鑑別をER専従薬剤師が行うことでタスクシフティングによる救急医の負担軽減のみならず,薬剤起因性疾患の早期診断支援につながる可能性がある。
著者
古賀 靖啓 十川 英 齋藤 靖生 三浦 直樹 野口 亜季 藏元 智英 藤木 誠
出版者
Japanese Society of Veterinary Anesthesia and Surgery
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.53-58, 2023 (Released:2023-10-17)
参考文献数
16

体壁の悪性腫瘍は肋骨を含めた広範囲な切除が必要な場合がある。肋骨切除による主な合併症はフレイルチェストの発生であり、6本以上の肋骨切除は推奨されていない。犬の胸壁に発生した脂肪肉腫に対して6本の肋骨を含めた切除を行った後、チタンプレートで頭側2本の肋骨再建を実施した。術後フレイルチェストの発生はなく、呼吸状態も安定していた。プレートによる肋骨再建により機能的な胸壁再建を可能にすると考えられた。
著者
齋藤 靖弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.143, no.8, pp.623-628, 2023-08-01 (Released:2023-08-01)
参考文献数
23

It is difficult to say that pharmacist services in the emergency room (ER) are widespread nationwide. According to a survey of certified emergency pharmacists, the work area they are most commonly engaged in is the intensive care unit. This may be due to the lack of reimbursement for pharmacist services in ERs and the absence of operational guidelines. On the other hand, Sapporo Higashi Tokushukai Hospital has had ER specialized pharmacists (ESPs) since 2016 and has reported on the usefulness of pharmacist services in the ER at conferences and in papers. Among other things, it has been shown that the workload of emergency physicians is reduced by 1.9 h/d through the use of ESPs, and that also contributes to the increase in accurate diagnoses of drug-induced diseases and the treatment of infectious diseases. Reports on the benefits of ESP have also begun to emerge in Japan, including a significant decrease in the number of incident reports. Meanwhile, overseas reports indicate that ESPs have a significant impact on healthcare economics, such as “an annualized cost avoidance effect of more than 400 million yen.” Furthermore, reports of improvements in operational guidelines and patient outcomes that support these guidelines indicate that ESPs in other countries are well-established ahead of their counterparts in Japan. We strongly hope that ESPs will increase in number and distribution in Japan in the future through the evaluation of reimbursement and formulation of operational guidelines.
著者
齋藤 靖
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.56-65, 2004-09-20 (Released:2022-08-03)
参考文献数
26

本稿では,日米のセメント産業の比較を通じて,技術転換に対する既存企業の適応力に関する日米間の差を説明するためのメカニズムを提示する.既存企業が技術転換に適応できずに競争力を低下させる米国の事例と同じ産業に関して,日本の場合では既存企業が技術転換に適応し競争力を維持している.既存の議論とは異なる「創発的に形成される技術環境」という“産業レベルの視点”を用いることで,日米間のこのような差を説明する.
著者
加藤 昭 齋藤 靖二 松原 聰
出版者
国立科学博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

本邦各地の層状マンガン鉱床産の鉱石試料中に含まれるニッケル・コバルト鉱物の同定を行った。それらのうち、三種について化学組成を決定した。又一部のゲルスドルフ鉱・輝コバルト鉱については、購入のプリセションカメラにより晶系を決定(等軸)した。最も重要な事実は、栃木県鹿島鉱山産試料中の含ニッケル黄鉄鉱(最高Ni0.46重量%)の確認、ニッケルの分布状態の把握、その成因の推定で、そのニッケルは本来テフロ石(【Mn_2】Si【O_4】)中の微量成分として含まれていたものが、そのバラ輝石(〜MnSi【O_3】)化に伴なって濃集されたものであろうという結論に達した。この結論はバラ輝石の集合中に含まれるニッケル・コバルト鉱物の成因を説明することができる。またこれらが砒素を含む場合、その砒素の根源も恐らくテフロ石にあるであろうと考えることができる。また栃木県板荷産のバラ輝石を主とする鉱石中に見出されたシーゲン鉱(【(Co,Ni)_3】【S_4】)+輝コバルト鉱((Co,Ni)AsS)の組合せではCo/(Co+Ni)比は前者中で後者より小さいことを明らかにした。なお鹿島鉱山ではテフロ石(最高NiO 0.07重量%)以外にも、チロディ内石(〜$$Mn_2$$$$Mg_5$$$〔OH|Si_4O_11〕_2$$)中に最高NiO 0.18重量%が認められた。これらの鉱物中に含まれるニッケル・コバルトの根源については、現世の深海底に堆積しつつあるマンガンノジュール様のものの生成が過去の地質時代にもおこっており、これがそれに該当するとして説明される。まずこれを構成する二酸化マンガンの鉱物がニッケル・コバルトを取り込んで結晶化しその後の中間過程は不明であるが、最終的には上述のような含ニッケル・コバルトテフロ石となり、この中ではこれらはマンガンを置換しているが、テフロ石からバラ輝石の生成や硫黄の供給などによってニッケル・コバルトは硫化物等として結晶したものである。またこれらの過程を通じて、両元素の地球化学的挙動は似通っていた。