- 著者
-
奥野 恭史
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬学会
- 雑誌
- ファルマシア (ISSN:00148601)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.5, pp.433-437, 2014 (Released:2016-06-21)
- 参考文献数
- 4
第1の科学的手法である「経験科学(実験)」,第2の科学的手法である「理論科学」に加え,近年新たな潮流として,第3の科学的手法である「計算科学(シミュレーション科学)」と第4の科学的手法である「データ科学(data centric science)」が注目を浴びている.実際,2013年のノーベル化学賞は,ハーバード大学のカープラス教授らが,創薬計算などにも貢献している計算化学の基盤研究で受賞するなど,生命科学分野における「シミュレーション科学」の重要性は高まる一方である.また,近年のハイスループット技術やオミクス計測技術の著しい進展に伴い,生命科学分野においてもデータ爆発が起こり,「ビッグデータ科学」の研究開発が急務とされている.スーパーコンピュータ「京」は,こうした時代の要請に応えるべく2012年9月末より共用利用が開始された.筆者は,製薬企業,IT企業と共にコンソーシアムを設立し,「京」を用いた創薬応用計算に取り組んできた.この約1年間の取り組みの中で見えてきた,モンスターマシン「京」の驚異的パフォーマンスとそれによる創薬計算の展望を紹介する.