著者
市原 浩司 舛森 直哉
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.107, no.2, pp.126-128, 2016-04-15 (Released:2017-04-21)
参考文献数
5
被引用文献数
1

40代male to female(MTF).2013年に性別適合手術(sex reassignment surgery:SRS)を施行した.SRSは両側精巣摘除,陰茎切断,陰核・外陰部形成および造膣を施行し,造膣には約20cmのS状結腸を腹腔鏡下に遊離して用いた.総手術時間8時間45分,出血量920ml,輸血は施行しなかった.術後8日目に合併症なく退院した.術後3カ月目の診察では外陰部所見に異常なく,膣は幅4cm,深さも10cm以上確保されていた.以上より,腹腔鏡下にS状結腸を遊離して造膣を施行したMTFに対するSRSは良好な経過であった.
著者
佐藤 真彦 坂井 孝成 祢津 晋久 黒本 暁人 菅野 秀典 沼畑 健司 星 宣次
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.64-68, 2017-04-20 (Released:2018-04-19)
参考文献数
9

(目的)当院で後腹膜脂肪肉腫に対して手術を施行した症例についてレトロスペクティブに検討したので報告する.(対象と方法)2002年2月から2015年8月までに当院で後腹膜腫瘍脂肪肉腫に対して切除術を施行した症例について検討した.症例は全部で15症例,平均観察期間は46.7カ月(1~126カ月)であった.(結果)男性7例,女性8例であり性差は認めなかった.年齢の中央値は67歳であった(33~78歳).腫瘍長径の中央値は24cmであり(7.5~45cm),腫瘍重量の中央値は1,959gであった(545~15,400g).初回手術で腫瘍が残存した症例は1例,断端陽性であった患者は2例であった.全症例における5年生存率は67%,10年生存率は50%であった.初回手術で腫瘍が残存もしくは切除断端陽性であった場合は完全切除の場合と比べて生存率に有意差を認めた.また切除断端陽性の場合は完全切除の場合と比べて無再発生存率に有意差を認めた.臓器合併切除の有無による生存率や無再発生存率には有意差を認めなかった.(結論)脂肪肉腫は高率に再発する疾患であり初回手術での完全切除が必要である.
著者
金子 茂男 水永 光博 宮田 昌伸 八竹 直 栗田 孝 Bradley William E.
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.81, no.12, pp.1889-1895, 1990
被引用文献数
6

勃起不全の精査のために受診した105名の患者について基礎疾患と Rigiscan による夜間陰茎硬度腫脹連続測定所見との関係について検討した. 夜間陰茎硬度腫脹連続測定所見 (以後 Rigiscan パターン) を正常, 硬度不均一, 硬度腫脹不一致, (硬度持続) 短時間, 低硬度, 平低の6型に分類した. 患者の基礎疾患は基礎疾患なし11名, 中枢神経系疾患15名, 循環器系疾患29名, 糖尿病35名 (インスリン依存14名, 非依存21名), アルコール依存5名, 悪性腫瘍7名, Peyronie 病3名であった. 基礎疾患なし群では Rigiscan パターン正常64%であり, 心因性勃起不全と考えられる症例が過半数を占めた. 循環器系疾患群では低硬度型41%, 平低型35%と硬度・腫脹が低下した症例が多いのにたいし, 中枢神経系疾患群では短時間型が60%と最も多く, 低硬度型47%, 平低型7名であり, 両者間に Rigiscan パターンの違いを認めた. 糖尿病群ではインスリン非依存患者がさまざまな Rigiscan パターンをとるのにたいし, インスリン依存患者では低硬度型, 平低型が多かった. 夜間陰茎硬度腹脹連続測定法はそのパターンの解析と他の検査結果との総合的な判定により, 器質性勃起不全と心因性勃起不全の鑑別診断のみならず器質性勃起不全の原因疾患の診断にも役立つことが期待される.
著者
高橋 正幸 木村 和哲 奈路田 拓史 松下 和弘 宮本 忠幸 川西 泰夫 沼田 明 湯浅 誠 田村 雅人 香川 征
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1563-1568, 1995-10-20
被引用文献数
1

(背景と目的) 夜間陰茎勃起現象の記録は勃起機能検査法として早くから行われてきた検査であるが, 現在でもその.重要惟、は変っていない.特に器質性インポテンスと心因性インポテンスの鑑別には必須の検査であり, 陰茎周径を測定するため活性炭や水銀を用いたストレインゲージが使用されてきた. (対象と方法) われわれは今回, 水銀ストレインゲージにかわるインジウムとガリウムの合金製のストレインゲージを使用した新しい装置を開発しこのストレインゲージを用いた新しい夜間陰茎勃起現象記録システムが臨床に使用可能かどうかを正常ボランティアを対象に検討した. (結果) インジウム-ガリウムストレインゲージは, 伸展-抵抗の特性が直線的でしかも再現性が高く夜間陰茎勃起現象の記録に充分な性能を有していた.測定データの保存, グラフ化のためのソフトウェアは簡潔で, しかもすべて日本語表示であるため操作が容易である.またこの新しいストレインゲージはディスポーザブルなのでメインテナンスが不要であり, 清潔である. (結論) 本システムは夜間陰茎勃起現象の記録の目的で臨床使用が可能であると考えられる.
著者
劉 自覚
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.158-180, 1974 (Released:2010-07-23)
参考文献数
86

The bacterial flora of the normal urethra, especially anaerobic flora, has been poorly documented. In this paper the aerobic and anaerobic flora of the normal urethra was studied.Aerobes were isolated in 100% of 178 urethras. 21% of the aerobes were gram negative bacilli.Anaerobes were isolated in 48% of 100 male urethras and 45% of 78 female urethras. Multiple strains of anaerobes were found. Peptococcus (32%) (P. anaerobius, P. asaccharolyticus), Corynebacterium (19%) (C. avidum, C. liquefaciens), Bacteroides (17%) (B. fragilis) and Peptostreptococcus (16%) (P. magnus) were the most predominant anaerobes.When examined immediately after micturition, the bacterial count was found to be reduced fairly, but this reduction was recovered in 2hrs. almost completely.The bacterial cultivation carried out on consecutive days showed spontaneous variations in the count and species of aerobic as well as anaerobic bacterial flora of the urethra.The antibiotics susceptibility test of these anaerobic strains was also performed.It is the author's opinion that the studies on anaerobic urinary infections should be based on the studies of normal anaerobic flora.
著者
清水 保夫
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.69, no.12, pp.1562-1577, 1978-12-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
46

To ascertain anaerobic urinary tract infection, a total of 615 urine specimens from 97 male and 117 female patients were cultured. Most of them have chronic urological disease, such as cancer of the bladder, benign prostatic hypertrophy and urinary calculus. Urinary bacteriological exminations were investigated to serially dilute the urine specimens obtained by two methods. Clean midstream catch technique was applied for the samples of male subjects and sterile catheterization for famele.112 strains of anaerobes were recovered from 27 per cent of 214 patients (78 of 615 specimens). Peptococcus anaerobius and Peptococcus variabilis were most frequent and isolated 18 times and also 7 strains of Bacteroides fragilis could be found in this study. This result seems similar to that obtained for the anterior urethral flora by other investigators.Among 30 urine samples with anaerobes of more than 105 viable cells counts per ml., anaerobes were isolated in 5. There is less significnat association between viable cell count and pyuria when anaerobic bacteria were cultured in large quantities of mine sample than when aerobic bacteria were cultured in similar conditions.The bacterial count and species of yielded anaerobes from urine samples are not the decisive factor for diagnosing anaerobic urinary tract infection. Additional factors, such as clinical findings and predisposing or underlying conditions of the patient, must always be considered. Now criterion for diagnosis of anaerobic urinary tract infection sholud be established.
著者
金子 茂男 八竹 直 宮田 昌伸 水永 光博 渡部 嘉彦 谷口 成美 井内 裕満 松田 久雄 栗田 孝
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.955-960, 1991-06-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

陰茎硬度周径連続測定法を本邦において臨床応用するにあたり, 正常人における夜間陰茎勃起現象の解析とその安全性について検討した.本邦正常成人16名 (年齢24~44歳, 平均31.1歳) を対象とし, 陰茎硬度周径連続測定にはRigiScan™を用いた. 測定部位は環状溝から約5mm陰茎根部寄り (遠位側) と根部 (近位側) の2箇所である. 陰茎の平均最小周径は遠位側で62.7mm, 近位側で65.4mmであり, 勃起時の平均最大周径は遠位側で102.5mm, 近位側で108.6mmであった. 周径が10mm以上のびたときを勃起とすると約1時間20分に1回の頻度で勃起が生じており, この勃起の平均持続時間は遠位側で23.0分, 近位側で38.3分であった. 10分以上持続した硬度の最大値は遠位側で82.9%, 近位側で85.4%であった. 1例に測定部位の一部に発赤を認めたが処置を必要とするような副作用はなかった. RigiScanによる陰茎硬度周径連続測定は簡便, 安全かつ客観的に夜間陰茎勃起現象をとらえることができ, 今後勃起不全の診断, 治療効果の判定に役立つものとおもわれる.
著者
角谷 秀典 始関 吉生 小竹 忠 高原 正信 島崎 淳
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.7, pp.1091-1096, 1991-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
15

内分泌異常による性機能障害19例について臨床的検討をおこなた. 性腺機能低下症によるものは, 低ゴナドトロピン性13例, 高ゴナドトロピン性3例の16例であり, 高プロラクチン血症6例 (うち3例は, 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症合併) であった. 主訴は, 性欲低下11例, 勃起不全12例, 射精障害14例であった. 性腺機能低下症では射精の障害されている例が多く, 一方高プロラクチン血症では射精の保たれているものが比較的多かった. 性腺不全症における血清テストステロン値は200ng/dl以下であり, 100ng/dl以下になると, 性欲低下を高率にみとめ, 勃起は保たれている例をみたが, 1例を除く全例で射精障害をみた. 低ゴナドトロピン性性腺機能低下症例のゴナドトロピン療法の効果は, hCG負荷試験の反応良好なもの, 精巣容積の保たれている例では, 良好であった.
著者
堀田 浩貴 熊本 悦明
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.10, pp.1511-1520, 1994-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
5

3歳から84歳までの健康男子123例を対象として夜間睡眠時勃起現象 (nocturnal penile tumescence: NPT) と血中 free testosterone (以下FT) を測定し, その関連性を検討した. また6例の原発性低ゴナドトロピン性類宦官症例にも治療前後で同様の検討を行った.全年齢を通じ, 血中FT値と相関を認めたNPTの指標はNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間, 陰茎周最大増加値そして陰茎周最大増加率であった.NPTの各指標毎にピークとなる年代で対象例を2群に分け検討すると, ピークとなるまでに血中FT値との相関を認めたのは, NPT時間, NPTの回数, 一回あたりのNPT持続時間, 弛緩時の陰茎周値, 陰茎周最大増加値, 陰茎周最大増加率の6項目全てであった.また6例の類宦官症例では, 治療後にNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間, 陰茎周最大増加値, 陰茎周最大増加率が有意に増加した. これらのNPTの指標の増加に血中FT値の増加が重要なことがわかった.ピーク後もNPT時間, 一回あたりのNPT持続時間そして陰茎周最大増加値, 陰茎周最大増加率は血中FT値と相関を認め, これまで陰茎血管系の加齢性変化が主な原因とされた陰茎周最大増加値の減少傾向に, 血中FT値の低下も関与していることがわかった.今回の検討から, 勃起能を表すNPTが androgen の影響を強く受けていることがわかった.
著者
河内 明宏 渡辺 泱 中川 修一 三好 邦雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1811-1820, 1993-10-20
被引用文献数
1 7

一般の小学生と幼稚園児2,033名を対象として,正常児および夜尿児の膀胱容量,夜間尿量と夜尿を含む夜間の排尿行動を,質問紙法により調査した.正常児の朝,昼の膀胱容量と夜間尿量は,年齢との間で直線回帰式にて表せる,有意な相関関係を示した.また体の成長との関係においては,身長,体重および体表面積の3者の内で,体重との間で最も良い相関関係を示した.夜間尿意覚醒時の膀胱容量と朝,昼の膀胱容量を比較すると,朝の膀胱容量が夜間の膀胱容量に近い値を示し,夜尿を論じる際の膀胱容量は朝起床時の膀胱容量を重視すべきであると思われた.夜尿児の朝の膀胱容量は,正常児と比較して,6歳までは小さいが,7歳以上では逆に大きいと考えられた.正常児の間でも10〜15%に夜間多尿であると思われる児童が存在し,これらは覚醒機能が正常で,夜間尿意覚醒するために夜尿とならないと考えられた.夜尿児の頻度は全体で14%であり,9歳までは男が多かったが,10歳以上ではほぼ同じ頻度であった.過去に夜尿があった児童の調査結果より,夜尿の平均自然消失年齢は7.3歳であり,このことより8歳以降持続する夜尿は積極的治療の対象になると考えられた.
著者
諸角 誠人 小川 由英
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.1022-1027, 1995-05-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

蓚酸前駆物質であるグリコール酸およびグリオキシル酸を Wistar 系雄性ラットに急性単回投与あるいは慢性投与することにより, 蓚酸排泄および結石形成に及ぼす影響について検討を加えた. グリコール酸200mgあるいはグリオキシル酸200mgの急性投与後, 尿中蓚酸濃度は上昇し8時間以内に最高値に達していた. また, 3%グリコール酸添加食あるいは3%グリオキシル酸添加食により飼育されたラットは全実験期間を通して過蓚酸尿症を呈し, 実験開始1週後において組織学的に腎尿細管内に好酸性物質の沈着が認められた. グリコール酸およびグリオキシル酸投与群ともに投与2週後より結晶形成を尿細管内に認め, 時間の経過とともに数, 大きさとも増していた.以上より, グリコール酸あるいはグリオキシル酸の経口投与により数時間以内に尿中蓚酸濃度は上昇し, 2~3週のうちに尿細管内に結晶形成が認められることから, グリコール酸およびグリオキシル酸は蓚酸カルシウム結石症の発生機序に深く関与していることが示唆された.
著者
関戸 哲利 樋之津 史郎 河合 弘二 赤座 英之 小磯 謙吉
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1177-1180, 1995-06-20
被引用文献数
3 1

患者は68歳女性で13年前に広汎子宮摘出術と放射線治療を施行された.1992年と1993年に腹膜炎で入院し, 2回目の入院時の腹水の生化学所見が尿の組成に近かったため尿路系からの溢流を疑われ泌尿器科を受診した.IVP上, 上部尿路に異常はなく, 膀胱造影, 膀胱鏡上も明らかな膀胱破裂は認められなかったが, 尿流動態検査上, 多量の残尿と尿意の異常, 低コンプライアンスが認められた.これらの結果から, 広汎子宮摘出術による神経因性膀胱と放射線照射による膀胱障害を基盤とした自然膀胱破裂が腹膜炎の原因として強く疑われた.
著者
伊藤 克弘 上戸 賢 砂田 拓郎 加藤 敬司 植月 祐次 川西 博晃 奥村 和弘
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.105, no.4, pp.202-206, 2014-10-20 (Released:2015-10-21)
参考文献数
15
被引用文献数
1

傍糸球体細胞腫により二次性高血圧を来し,腹腔鏡下腎部分切除術により治癒した症例を経験したので報告する.症例は22歳,男性.学校検診で高血圧を指摘され近医受診,精査にてレニン高値,左腎腫瘍を認め当科紹介受診した.CTにて左腎上極に17 mmの腫瘤を認め,カプトプリル負荷試験でレニンの自律性分泌を認めたため,レニン産生腫瘍と診断した.腹腔鏡下左腎部分切除術を施行し,病理組織では電子顕微鏡検査にて菱形のプロレニン顆粒を認め,傍糸球体細胞腫と診断した.術翌日より血圧,レニン活性ともに正常化し,術後半年の現在まで腫瘍,高血圧ともに再発を認めていない.傍糸球体細胞腫は稀ではあるが,手術により治癒が可能であり,若年性高血圧の鑑別診断として重要であると考えられた.