著者
早川 隆啓 三矢 英輔 小島 宗門 早瀬 喜正
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.450-456, 2002-03-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

(目的) 性感染症 (STD) としての男子尿道炎の臨床像について検討した.(対象・方法) 2000年1月より12月までの1年間に, STD性の男子尿道炎と診断した患者414例を対象に, 感染相手・感染経路・起因菌・淋菌の薬剤耐性や咽頭感染に対する認識などについて検討した.(結果) 年齢は16~60歳で平均31歳であった. 未婚者は305名 (73.7%) で, 感染相手は commercial sexual worker (以下CSW) が288名 (69.6%) であった. 感染経路は咽頭よりが199例 (48.1%), 膣からが42例 (10.1%), 両者が173例 (41.8%) であった. 起因菌は, 淋菌のみ206例 (49.8%), 淋菌, クラミジアの混合感染46例 (11.1%), クラミジアのみ47例 (11.3%), 非淋菌性非クラミジア性115例 (27.8%) であった. 淋菌の薬剤耐性はペニシリン耐性61例 (57.5%), ニューキノロン耐性22例 (20.8%), 耐性を認めなかったのが39例 (36.8%) であった. 咽頭感染の認識は, 301例中174例 (57.8%) はなかった.(結論) 男子尿道炎の蔓延の一因は, 咽頭感染の認識の低さと, 性行為におけるコンドームの非使用と考えられた. 広い年齢層に対して, 尿道炎の実態を啓蒙するとともに, 適切な薬剤選択についての検討が必要と思われる.
著者
古屋 聖児 横山 英二 熊本 悦明 塚本 泰司
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.15-24, 1983 (Released:2010-07-23)
参考文献数
18

正常対照群7例と神経因性膀胱患者20例を対象として, 球海綿体反射の伝導時間を測定した. この伝導時間は, 陰茎または陰核, および後部尿道を電気刺激した後, 肛門括約筋が収縮する迄の潜時として計算される.1. 正常対照群における伝導時間は, 陰茎または陰核を電気刺激したばあいは32-45msec (平均38.1msec), 後部尿道を刺激したばあいは60-84msec (平均71.1msec) であつた. 従つて, 前者のばあい50msec以上, 後者のばあい90msec以上の伝導時間は異常と考えられる.2. 核上型神経因性膀胱患者12例の伝導時間は, 正常対照群と差を認めなかつた. しかし, 核型神経因性膀胱患者1例および末梢型神経因性膀胱患者6例では, 球海綿体反射の伝導時間に延長が認められた.3. 球海綿体反射の伝導時間の測定は, 客観的, 定量的な臨床検査法として, 神経因性膀胱のタイプや障害部位の診断に有用であると考えられる.
著者
渡邊 紳一郎 木村 文宏 喜屋武 淳 鈴木 智史 中島 史雄 早川 正道 中村 宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1137-1141, 1995-06-20
被引用文献数
11 1

1991年から1994年の間に経験したFournier's gangrene患者5名について, 年齢, 基礎疾患, 誘因, 病変の範囲, 検出された細菌, 治療法及び予後について検討した.患者の平均年齢は47歳で, 基礎疾患として糖尿病2名, 全身性エリテマトーデス1名, 慢性アルコール中毒1名, 末期の多発性骨髄腫1名であった.発症の誘因は創感染が2名, 尿道留置カテーテルが2名であり, 1名では明らかなものはなかった.外科的処置として, 2名に広範囲のデブリードマンを施行し, 後に分割植皮術を要した.3名では, 最小限の壊死組織除去後に罹患部皮下に多数のペンローズ・ドレーンを留置し, 消毒液で洗浄した.このうち2名は病変の発赤, 腫脹が急速に軽減し, 皮膚欠損を残さずに治癒した.1名は末期の多発性骨髄腫患者で全身状態は極めて不良であり, ドレーン留置後, 炎症所見は軽減傾向にあったが, 敗血症, DICを併発して死亡した.外科的処置として広範囲のデブリードマンが一般的に施行されているが, 皮膚欠損を生じることが多く, 皮膚移植の必要性や二次的創感染等の欠点を有する.壊死組織の限局的な除去と皮下への多数のドレーンの留置の組み合わせは, 皮膚欠損も最小限で済み, 治療効果も広範囲のデブリドマンと比べて遜色がなかった.本法は, 広範囲デブリードマンに変えて選択しうる有効な治療法であると思われた.
著者
内田 豊昭 足立 功一 青 輝昭 藤野 淡人 横山 英二 小俣 二也 吉沢 一彦 黒川 純 門脇 和臣 庄司 清 真下 節夫 遠藤 忠雄 小柴 健
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.890-896, 1993-05-20
被引用文献数
4 6

1971年8月から1991年7月までの20年間に北里大学病院泌尿器科において経験した経尿道的手術は3,215例であった.その内訳は,前立腺肥大症2,008例,膀胱腫瘍692例,前立腺癌258例,膀胱頸部硬化症167例,尿道狭窄38例,慢性前立腺炎20例,他の泌尿器疾患32例という順であった.このうち下部尿路通過障害を主訴としてTURPを施行した前立腺肥大症2,008例と前立腺癌258例の計2,266例について臨床統計的に検討した.2,266例の年齢は44歳から96歳(平均70.1歳)で,切除時間は最短9分から最長245分(平均73.0分)切除量は最小1gから最大177g(平均27.0g),使用灌流液量は最小4Lから92L(平均25.0L)であった.術後の膀胱カテーテルの留置日数は3日間から44聞間(平均4.1日間),入院日数は最短10日間から最長81日間(平均12.1日間),術中・術後合併症は合計308例(13.6%),輸血症例は305例(13.5%),死亡例は1例(0.04%)に認められた.それぞれの項目につき,疾患別,切除量別,切除時間別に検討したところ,疾患別では前立腺肥大症群が切除量,切除時間,灌流液量,術後カテーテル留置期問,合併症率が高く,前立腺癌群に入院期間と輸血例が多く認められた.また切除時間,切除量が増大するにつれ各項目とも比例増大した.
著者
秋山 昭人 大久保 雄平 高嶋 力彌 古堅 進亮 栃本 真人 土屋 哲
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.1269-1272, 1994-08-20
被引用文献数
4 1

骨盤内悪性腫瘍に対する放射線照射に起因する出血性膀胱炎はしばしば難治性であり,これまでのところ決定的な治療法が確立されていないのが現状である.今回我々は他の保存的治療が無効であった2例の重篤な放射線性出血性膀胱炎に対し高圧酸素療法による止血を試み,良好な成績を得た.治療は,症例1に対しては2絶対気圧下100%酸素吸入・120分間・計60回,症例2に対しては3絶対気圧下100%酸素吸入・90分間・計30回というスケジュールで行った.両症例とも血尿は消失し,膀胱鏡所見も著明に改善した.明らかな副作用は認められなかった.治療後3年(症例1),および4ヵ月(症例2)の現在まで,再発は認められていない.高圧酸素療法は他の分野においてその方法や効果についてはすでに確立されており,本疾患においてもそれらの方法にしたがって施行すれば患者の負担も少なく,根治的な治療効果が期待できることから,従来の治療法に代わって第一選択の治療となり得るものと考えられた.
著者
新美 文彩 久米 春喜 熊野 信太郎 石川 晃 西松 寛明 冨田 京一 高橋 悟 武内 巧 北村 唯一
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.713-717, 2007-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
22

症例は27歳女性. 気胸の既往があり他院にて加療されていた. 2回目の左気胸発症時に肺生検にて肺リンパ管筋腫症 (LAM) と診断された. その後の精査目的のCTで右腎前面に径10cmの脂肪濃度を含む腫瘤を認め, 腎血管筋脂肪腫 (AML) と診断され, 当科に紹介された. 当科にて腎部分切除術が施行された. 腫瘍は腎実質と5cm程度の部分で連緯しており, 有茎状に発育していた. LAMは病理学的に肺の気道, 血管, リンパ管周囲の平滑筋の異常増生を示し, 気道閉塞による多数の肺嚢胞状病変形成が特徴とされ, 殆どの症例で経過中に気胸を発生する予後不良の疾患である. また47~60%の症例にAMLを合併することが知られている. LAMを合併したAML患者の特徴としては20代から30代の生殖可能な女性に好発しており, 結節性硬化症に合併するAMLと比較すると片側単発傾向ではあるが, 両側例が25~62%と比較的多く, また多発例も報告されている. LAMは予後不良のため, AMLに対しては出血などの症状が出現するまで無治療で経過することが多く, 治療としては腎摘除術が多い. しかしながら, 最近の報告ではLAMの予後はやや改善してきており, AMLの再発例も認められることから, 可能な限り腎温存を図るべきである. 本症例は本邦10例目である.
著者
荒木 博孝
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.1477-1491, 1981-11-20
被引用文献数
2

前立腺肥大症患者100例と年齢および居住地を一致させた正常対照者100例を対象に,独自の質問用紙を用いて,インタビュー方式による疫学的調査を行い,matched pair analysisを用いたcase control studyを行った.この結果,前立腺肥大症患者における疫学上重要な特徴は,つぎのごとくであると考えられた.すなわち,社会経済的にはより学歴が高く,年収もそこそこ多く,環境汚染のない職場で働いている.結婚状況や性生活においては,多くの子供を持ち,より早く第1回射精を経験し,1ヵ月以上のインポテンツの経験を持たない.すなわち,精力的な性生活のパターンを有している.また,淋疾,尿道炎,前立腺炎,および梅毒といった慢性尿路感染症に,より多く罹患している.食生活においては,毎日肉類を食べ,牛乳または山羊乳を飲み,緑黄色野菜や漬物の摂取量がより少ない,すなわち,西欧風の食生活のパターンを有している.
著者
梶川 恒雄 野沢 立 尾張 幸久 藤澤 宏光 金子 卓司 野呂 一夫 高田 耕
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.586-588, 2001-07-20
被引用文献数
2 2

左尿管結石に対するESWLにより,腸管穿孔を起こした症例を経験したので報告する.症例は69歳,男性で,1996年3月に両側総腸骨動脈瘤に対してグラフト置換術を受けていた.1999年2月,左側腹部痛が出現,レントゲン検査で左尿管結石の診断となった(lt.U1,14×8mm).結石は骨盤部まで下降後,下降しなくなったため,入院の上,3月30日,腹臥位でESWLを施行した.終了直後より左下腹部痛を訴え,鎮痛剤で治まらないため,3月31日,CTを施行した.明らかな異常所見を認めなかったが,その後も痛みが続き,4月2日には,筋性防御も認めるようになった.再度CTを施行したところ,free air,イレウス所見を認めたため,緊急手術を施行した.トライツ靭帯から130cmの空腸に,2mm大の穿孔を2カ所認め,ESWLによる腸管穿孔と診断した.術後経過は良好で,4月23日,退院となった.ESWLによる腸管穿孔は,極めて稀な合併症であるが,腸管の癒着の可能性のある既往歴,腹臥位でのESWLは,リスクファクターと考えられた.
著者
鈴木 伸和 熊本 悦明
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1088-1097, 1995-06-20
被引用文献数
6

男性透析患者に性機能障害が起こることはよく知られている.透析患者の性機能障害を詳細に検討するため, われわれは札幌医大式性機能質問紙を用いて性機能調査を行った.対象は外来透析をうけている男性205例であり, 糖尿病症例および重度貧血症例 (ヘモグロビン濃度8g/dl未満の症例) は今回の検討から除外した.質問紙の性機能評価にあたって, 当教室ですでに同質問紙を施行していた, 3462例の健康男性のデータをコントロール群として比較検討した.男性透析症例のうち, 性欲は33.7%が健康男性の下方10%領域に, 勃起能は44.4%が健康男性の下方10%領域に含まれており, いずれも加齢とともに著しい低下を認めた.射精能は自覚的勃起機能と連動した動きをみせており, 加齢とともに低下する傾向を認めた.性交頻度を透析症例と健康男性とで比較したが, 性交渉を有していないものが, 30歳代では透析症例12.9%に対して健康男性3.5%, 同様に40歳代では22.4%に対して3.0%, 50歳代では52.2%に対して7.5%, 60歳代では89.3%に対して18.0%と, 透析症例では, 各年代とも健康男性に比べて性交頻度が低下しており, しかも加齢に伴う低下が著しかった.
著者
片岡 喜代徳 梅川 徹 片山 孔一 石川 泰章 児玉 光正 高村 知諭 高田 昌彦 加藤 良成 郡 健二郎 井口 正典 栗田 学
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.82, no.5, pp.799-803, 1991-05-20
被引用文献数
1

上部尿路結石患者と健常人の尿中の蓚酸カルシウム結晶量と尿中諸物質濃度を測定し,重回帰分析することによりそれらの影響力を検討した.1.結石患者の尿では説明変数としては蓚酸,ナトリウム, カルシウム,尿酸,マグネシウムが採択されそれぞれの偏相関係数は0.67,0.28,0.18,0.18,-0.10であった.CaOx結晶量の回帰式はCaOx Crystal量(×10^6μm^3/ml)=3.59×10^2Ox(mM/ι)+4.72×10^<-3> Ca(mM/ι)+4.52x10^<-3>Na(mM/ι)+2.51×10^<-4>UA(mM/ι)-2.39x10^<-2>Mg(mM/ι)-1.65で,重相関係数は0.759であった.結石患者の尿では結晶形成は蓚酸濃度に最も依存し,ナトリウム,カルシウム,尿酸が結晶形成促進因子として働き,マグネシウムが阻止因子として作用していた.2.健常人の尿では説明変数として蓚酸と無機燐が採択されそれぞれの偏相関係数はO.51,-0.24であった.CaOx結晶量の回帰式はCaOx Crystal量 (×10^6μm^3/ml)=1.91×10^<-2>Ox(mM/ι)-3,43x10^<-4>P(mM/ι)+0.29で,重相関係数は0.525であった健常人の尿でも結晶形成は蔭酸濃度に依存していたが,他に促進因子 は明らかではなかった.阻止因子としての作用は無機燐に認められた.健常人では結石愚老に比べ重相関係数も低く,結晶形成に他の不明の多くの諸物質の関与が推察された.
著者
河村 信夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.986-988, 1979-09-20

大型の人体寄生虫は今日の日本に於いてはまれになり,小型の寄生虫でも生命に影響を及ぼすようなものはめったに見られない. また泌尿生殖器は消化器等にくらべて,寄生虫感染の起こりにくい臓器でもある. しかし一旦,低開発国に目をむけると,アフリカのピルハルツ住血吸虫,ヨーロッパのエキノコックス等,生命に危険を及ぼすものがあり,アフリカ,中近東,東南アジア,中南米の寄生虫疾患罹患率は,考えられぬ程高い. また今迄あまり問題にされなかった寄生虫が,免疫不全症候群,担癌患者,移植患者などでは重篤な感染を起こす例もみられるようになった. さらに,多くの人には生命に影響を与えず,症状も起こさぬので放置されているような寄生虫の感染は,文明国でも拡がり,一部の人だけが発症するという状態を作っている. さらに最近の交通の発達,海外へ往来する日本人の増加は,想像しなかったような外国の寄生虫が急速に日本に持ち込まれる状態をもたらすようになった. 一方に於いて抗寄生虫薬は副作用の強いものが多く,薬害訴訟などが広く行われはじめると,メーカーも製造を中止てしまったり,国内での発売を停止されたりということがおこってきている. 例えばキニーネ,塩酸クロロキンが国内で使えなくなったことは,海外でマラリアに罹患した日本人の治療に非常に不便をもたらしている. 外国で作った薬品の持ち込みがみとめられぬとしたら,罹患した日本人は外国へ行って治療Lてもらうとか,または国内でしずかに死ぬのを持つということになる. このような現状の下で,泌尿器科医が稀に遭遇する寄生虫疾患についての知識をまとめ,かつ,演者の数年来の研究の結果もあわせて発表することにした.
著者
皆川 倫範 加藤 晴朗 杵渕 芳明 山口 建二 古畑 誠之 矢ヶ崎 宏紀 石塚 修 井川 靖彦 西沢 理
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.646-649, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
9

17歳男性.空手の練習中に右側腹部を蹴られたのち肉眼的血尿を認めた.CTで右腎被膜下出血を認めた.出血は軽微であり, 経過観察とした.1カ月後のCTで, 右腎周囲に腎実質を圧迫する嚢胞性病変を認めた.このころから血圧が徐々に上昇し, 160/80mmHgとなった.超音波ガイド下経皮的嚢胞穿刺を施行し, 茶褐色透明な液体を吸引した.内容液はリンパ液で, 穿刺後に血圧は低下したが, 嚢胞内容は再貯留し, 血圧が再上昇した.以上の経過から, 外傷性腎被膜下リンパ嚢腫に伴うPage kidneyと診断した.腹腔鏡下リンパ嚢腫開窓術を施行した.術後, 血圧は低下した.しかし, 手術1カ月後のCTで液体の再貯留を認め, 血圧の上昇を認めた.再手術を薦めたが, 本人の希望がなく, 現在降圧剤内服で保存的に加療中である.
著者
坂本 昭彦 金子 智之 金谷 淳志 木村 将貴 高橋 さゆり 山田 幸央 三宅 康史 坂本 哲也 中川 徹
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.65-69, 2021-04-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1

(目的) 帝京大学附属病院において,過去10年間にフルニエ壊疽と診断・加療された15例の患者背景,臨床的指標および予後に影響を与える因子を明らかにすること. (対象と方法) 2009年5月から2019年4月までの10年間に,帝京大学医学部附属病院においてフルニエ壊疽と診断・加療された15症例を対象とした.患者背景およびFournier Gangrene Severity Indexを含めた臨床的指標を記述した.生存例と死亡例における臨床的指標の比較を行い,予後に影響を与える因子について検討した. (結果) 15例の年齢中央値は67才,全例が男性であった.糖尿病合併例は9例(60%)であった.14例(93%)に対して外科的デブリドマンが施行された.精巣摘出術を要したのは5例(33%),膀胱瘻造設術を要したのは3例(20%),人工肛門造設術を要したのは3例(20%)であった.死亡例は3例(20%)であった.生存例と比較して,死亡例は有意に高齢であり(p=0.043),BMI低値であった(p=0.038).Fournier Gangrene Severity Index等の予後予測指標は死亡例で高い傾向を認めた. (結論) 当院における過去10年間のフルニエ壊疽15例の死亡率は20%であった.2010年代においても,フルニエ壊疽は死亡率の高い疾患であった.
著者
木下 茜 山田 大介 本多 一貴 團野 哲也 徳永 まゆ子 宮川 仁平 田口 慧 秋山 佳之 山田 雄太 佐藤 悠佑 久米 春喜
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.113, no.4, pp.147-151, 2022-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
17

48歳女性.前医婦人科にて子宮筋腫,子宮内膜症に対し子宮全摘術と両側卵巣囊胞切除術を施行された.術後に腎機能の増悪を認め,病理組織検査で尿管組織を指摘され,左尿管損傷修復について当科紹介受診した.腎瘻からの順行性腎盂造影検査にて尿管欠損部は9.5cmであった.尿管損傷修復として尿管膀胱吻合は困難と考えられ,右腸骨窩の癒着が強くなく血管が確保できれば自家腎移植術の方針とした.術中操作で骨盤内の血管を確保できたため,左腎の右腸骨窩への自家腎移植術を施行した.術6カ月後の腎機能は保たれ,エコーで水腎を認めず腎血流も良好であった.尿管損傷の再建法を苦慮し文献検索をした経験から,尿管損傷長によるアルゴリズムを作成した.
著者
西澤 恒二 八田原 広大 大西 裕之 吉田 徹
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.112, no.2, pp.53-57, 2021-04-20 (Released:2022-04-20)
参考文献数
10

(背景) 近年去勢抵抗性前立腺癌治療薬が複数登場し,予後の延長が期待される一方,治療は高額になる可能性がある.そこで,当院で行われた去勢抵抗性前立腺癌治療薬の費用を検討した. (対象と方法) 2014年から2017年に当院で診断された前立腺癌のうち,転移ありか前立腺特異抗原(PSA)が100ng/ml以上の進行性癌症例を中心に,手術か薬剤で去勢治療を行った.去勢抵抗性が確認されたのちはドセタキセル,カバジタキセル,アビラテロン,エンザルタミドによる治療を行い,治療経過と費用を検討した. (結果) 257例に前立腺癌が検出され,進行性癌は56例(21.8%)だった.81例(31.6%)に去勢治療が行われ,進行性前立腺癌の30例が中央値10カ月(範囲3~39)で去勢抵抗性癌となった.去勢抵抗性癌治療薬は,25例に中央値20カ月間(範囲3~50)投与された.診断からの観察期間中央値48カ月(範囲13~75)で,15例が前立腺癌で死亡した.薬剤による去勢治療のみの症例では,治療費は中央値で年間23.4万円(範囲5.0~31.5)だった.一方,去勢抵抗性癌症例では,去勢抵抗性癌治療のみでも中央値で年間204.1万円(範囲34.6~501.7)に達した. (結論) 去勢抵抗性癌治療の費用は非常に高額で,医療費抑制の観点から,去勢抵抗性癌に至りやすい進行性前立腺癌を減らすことは重要と考えられた.
著者
和田 一郎
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.368-388, 1971 (Released:2010-07-23)
参考文献数
91

A morphological study of the colliculus seminalis has been made by means of retrograde urethrography in 654 cases, including 107 normal cases, 160 cases of benign prostatic hypertrophy, 22 cases of prostatic cancer, 47 cases of prostatism, 107 cases of seminal vesiculitis and prostatitis, 67 cases of neurogenic bladder, 45 cases of urethral stricture, 36 cases of male sterility, 17 cases of nervous urgency and 46 cases of enuresis. In addition. 80 other different cases have been subjected to a comparative study utilizing radiographic and endoscopic examination.Radiographic pictures of the colliculus seminalis were classified into 7 types (Type I: club-shaped, Type II: tadpole-shaped, Type III: spindle-shaped, Type IV: belt-shaped, Type V: egg-shaped, Type VI: negative contour, Type VII: irregular deformation).In normal cases, Type I was observed in 58%, Type II 24.3%, Type III, IV and V of a few percent. Type VI was observed in about 50% of benign prostatic hypertrophy and prostatic cancer. Type VII was frequently observed in prostatic cancer, in 13.6%, and followed by vesiculitis, prostatitis and neurogenic bladder.The radiographic size of the colliculus seminalis was determined by the transverse diameter. By statistical analysis, above 6mm of the transverse diameter was indicated as an enlargement of the colliculus seminalis. In patients with seminal vesiculitis, prostatitis and male sterility, the transverse diameter showed a significantly larger size than normal cases with a wide distribution. This enlargement would be due to the inflammation or congestion of the colliculus seminalis. Moreover, radiographic pictures of the colliculus seminalis were unable to confirm by endoscopic observation.The first 5 types based on the radiographic study were considered to be formed by the difference in prominence of the colliculus seminalis and urethral crista to the lumen of the urethra.To obtain clear picture of the prostatic urethra, the author prefer to use the contrast medium with a low viscosity, and if high viscous contrast medium was used, diminishing the oblique angle of the body against the X-ray beam would be necessary.