著者
長野 宏一朗
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.2048-2054, 2016-10-10 (Released:2017-10-10)
参考文献数
7

・2025年,日本は超高齢社会を迎え,医療から介護への転換,病院完結型から地域完結型への転換が図られる.「地域包括ケアシステム」,「地域医療構想(ビジョン)」では機能分化と同時に医療連携の推進が重要である.ソーシャルワーカーは重要な役割を担うことから,人材の確保と教育,研修システムの構築が必要である.・退院支援は超高齢社会において重要性が高まり,施設間移動時における退院医療の意図的な取り組みが望まれる.・病院内の支援業務である退院支援・紹介受診・外来逆紹介・外来療養支援は相互に関連し,病院運営に欠かせない重要な役割を有している.・医療情報の共有にICTは有益なツールとなる.医療と介護の情報共有には必要な情報に差があることから障壁となっており,その対策が必要である.・国際医療連携では,言葉の壁や医療費,感染対策への対応が重要である.
著者
宮田 靖志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.2, pp.466-474, 2014-02-10 (Released:2015-02-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
丸山 貴也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3570-3577, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
21

高齢者にとって肺炎は,生命を脅かす重篤な疾患であり,肺炎球菌は最も頻度が高く,重症化しやすい原因微生物である.2009年のインフルエンザA(H1N1)の流行の際,肺炎球菌との混合感染による重症化が明らかとなった事や,近年,日本人を対象としたインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用による予防効果,経済効果が報告された事から,両ワクチンの重要性が広く認知されるようになってきている.しかしながら,肺炎球菌ワクチンの公費助成については,国は主導しておらず,各自治体が独自に行っているのが現状である.今後は国民が公平にサービスを受けられる様,国が主導してワクチンの接種費用を助成し,両ワクチンの接種率向上に努める必要がある.
著者
白日 高歩
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.6, pp.1255-1261, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
16

COPDの外科療法として,機能改善に最も優れているのは両肺移植であるが,我が国ではドナー提供者が限られる事から実施状況は極めて少ない.一方,20世紀後半に世界的に盛んであったLVRS(Lung Volume Reduction,気管支鏡的肺容量減量治療)は今後の治療手段として期待される.
著者
渡邊 卓
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.11, pp.3168-3174, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
15

検体検査においては,検査室での分析・測定の過程と同様,検体を採取し,これを検査室に搬入するまでの過程にも検査結果に影響を及ぼす可能性のあるさまざまな要因(preanalyticalな要因)が存在する.検体検査を適正に行いかつ評価するため,臨床医はpreanalyticalな要因について正しい認識を持つ必要がある.

1 0 0 0 OA 活性酸素

著者
青柳 一正
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.936-940, 1991-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
16

各種の疾患において活性酸素が組織障害の直接的な原因物質であることが判明してきた.原子や分子が不対電子を有するとフリーラジカルと呼ばれ,一般に高い反応性を持つ.酸素がその分子の場合,活性酸素と呼ぶ.高い反応性を持つ活性酸素は生体に重要な物質の合成反応に用いられるが,制御されない物質の酸化は物質の変性を起こし,さらなる傷害を起こす.腎疾患を例にとると尿毒症の発症に伴い生成が著しく増加するメチルグアニジンは活性酸素とクレアチニンの反応生成物である.また,ネフローゼを起こすピューロマイシンアミノヌクレオシドは細胞における活性酸素の産生を増加させ,その産生増加はアラキドン酸代謝やPAFと関連していることが示唆された.外因物質による生体内の活性酸素の増加は,発癌や老化との関連があり,また,細胞における活性酸素の産生調節は疾病の治療薬の開発にとって重要である.
著者
峰 隆直 福武 尚重 小亀 孝夫 鈴木 洋 小正 尚裕 大柳 光正 安冨 栄生 岩崎 忠昭 西山 利正 荒木 恒治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.293-295, 1995-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

症例. 59歳.男性.発熱にて発症.入院時白血球数23400/μl (peak 33800/μl),好酸球26% (max 78%),肝機能異常を認めた.血清学的沈降反応にてイヌ回虫抗原に沈降線を認め,イヌ回虫幼虫移行症と考えチアベンダゾール投与を行ったところ,白血球数,肝エコー所見,肝機能の改善を認めた.本症は牛レバーの生食により感染し,チアベンダゾールが有効であったイヌ回虫幼虫移行症の興味深い1例と考えられた.
著者
岡 慎一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.2809-2813, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10

新薬の開発により今後の治療法に新しい流れを生み出そうとしている.そんな中で,もっとも期待されているのが,新規プロテアーゼ阻害薬であるダルナビルとインテグラーゼ阻害薬であるラルテグラビルであろう.現在の併用療法は,必ず2種類の核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)が含まれている.しかし,治療の長期化に伴い,NRTIの慢性毒性が問題となっている.これら新薬を用いた,NRTIを含まない新しい併用療法への期待が高まる.
著者
内田 立身
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.6, pp.1194-1200, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
11

鉄の需要が供給を上回る状態が続くと,貧血のない鉄欠乏に陥り,さらに進行すると,鉄欠乏性貧血となる.鉄欠乏の進行により組織鉄欠乏を来し,舌乳頭萎縮や食道の襞形成,匙状爪などを呈するに至る.また異食症など特異な症状も見られる.鉄欠乏や鉄過剰にいたる経過をもっとも鋭敏にとらえる指標は,血清フェリチンである.日本人女性では約半数が何らかの鉄欠乏状態にあり,鉄欠乏性貧血は女性の10%程度の頻度でみられる.鉄欠乏克服の戦略として,鉄摂取への食事指導,鉄補助食品の使用,鉄添加食品の導入があげられる.
著者
岩崎 真樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.8, pp.1381-1387, 2016-08-10 (Released:2017-08-10)
参考文献数
6

2剤以上の適切な抗てんかん薬治療によっても発作がコントロールされない患者に対して,てんかんの外科治療が検討される.専門医による術前精査を経て適応を決めるが,①内側側頭葉てんかん(海馬硬化症),②限局する器質病変による難治てんかん,③半球性病変による乳幼児の難治てんかんは,特に外科治療が有効である.てんかん発作は,就労や運転免許など患者の生活の質(quality of life:QOL)に大きく影響するため,外科適応は早期に判断する.
著者
片桐 秀樹
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.5, pp.1127-1133, 2009-05-10
参考文献数
12

個体全身の代謝を調節するには,臓器間の代謝情報のやり取りが必須であり,肥満や糖尿病は,この臓器間連絡が破綻した状態とも言える.最近我々は,自律神経系,特に求心路がこの臓器間の代謝情報連絡に重要な役割を果たしていることを見出した.まず,脂肪組織からの求心性神経シグナルが,食欲を調節していること,次に,肝からの神経ネットワークが,過栄養時に基礎代謝を亢進させ,肥満を予防する機能を果たしていること,さらに,肝からの別の神経ネットワークが,膵β細胞増殖を惹起することを明らかにした.これらは食欲,エネルギー消費,インスリン分泌といった,エネルギー代謝・糖代謝の中心を制御するものであり,この機構に介入することにより,体重調節や膵β細胞再生といった肥満や糖尿病の治療につながる成果を得ている.またこのことは,末梢組織での代謝状況を,脳が随時把握し,全身の代謝を統御しているという新しい概念を示すものである.<br>
著者
小松 康宏 門田 美和子 福井 次矢
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2353-2357, 2016-12-10 (Released:2017-12-10)
参考文献数
16

エビデンスに基づく標準的な医療を安全,効率的に提供するためには医学的アプローチに加え,産業界で発展した品質管理学の手法を応用することが欠かせなくなってきた.Quality improvement(医療の質改善)と呼ばれる学際領域であり,日本の産業界で発展した各種の手法が用いられている.本稿では,質改善の考え方と主な手法(PDCAサイクル,リーン生産方式,six sigma(シックスシグマ)など)について解説する.
著者
阿南 英明
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.455-460, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
5
著者
本村 政勝
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1953-1958, 2015-09-10 (Released:2016-09-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1
著者
渡辺 彰
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.11, pp.2297-2300, 2015-11-10 (Released:2016-11-10)
参考文献数
8
被引用文献数
1
著者
今西 康二
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.7, pp.984-991, 1981

中枢神経感染症の髄液細胞の形態と機能について検索し,疾病の病態および鑑別診断に役立つか否かについて検討した.独自に考案した浮遊細胞収集法は細胞の回収率,形態保存ともに良好であつた.細胞組成では小リンパ球はウイルス性髄膜炎で,マクロファージは非感染性神経疾患で,多核球は化膿性髄膜炎で,髄膜剥離細胞は結核性髄膜炎でそれぞれ優位であつた. lysosomal enzyme (acid-phosphatase, β-galactosidase)はマクロファージ系細胞で活性がみられ,種々の疾患で陽性であつたが,特に化膿性および結核性髄膜炎で高活性を示し臨床経過とよく相関していて補助診断価値があつた.また非感染性神経疾患にも活性がみられ, lysosomal enzymeは感染症に特異的なものではなかつた. nitroblue tetrazolium還元はマクロファージ系細胞および多核球でみられた.髄液細胞ではむしろマクロファージ系細胞により還元能の亢進を認め,その還元能の程度は中枢神経感染症の病勢とよく相関していた.また髄液細胞のNBT還元能は定量的にも測定可能であつた.多核球よりマクロファージ系細胞にこより還元能があることから,多核球が多く出現する病態の少ない中枢神経疾患においてマクロファージ系細胞でのNBT還元能の解析は,疾病の病態を知る上で重要と思われた.

1 0 0 0 OA 2.肺癌の病因

著者
長谷川 好規
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.1261-1266, 2014-06-10 (Released:2015-06-10)
参考文献数
10
被引用文献数
3

肺癌の病因として最も発癌への寄与が高く重要であるのは,喫煙である.一方で,喫煙と関連のない非喫煙者の肺癌が存在し,職業や環境からの曝露と遺伝的要因が存在する.これまでの研究から,肺癌発症には環境要因と遺伝要因が複雑に絡み合ってリスク因子が形成されると考えられている.喫煙や大気汚染物質,アスベストをはじめとする発癌物質の曝露を社会全体でコントロールするとともに,遺伝要因を含めた病態解明を進める必要がある.
著者
松浦 秀夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.255-261, 1999-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5
被引用文献数
1

高血圧症治療におけるライフスタイルモディフィケーションの意義と実際について,それぞれの問題点,注意点を挙げながら概説した.いずれの項目も患者に理解されやすいものであるが,指導する上でいかに具体的にかつ分かり易く説明するかが重要である.また,生活習慣の改善による降圧効果発現には時間がかかること,効果の程度が薬物療法に比べ小さいことから,患者の努力が中断しないように治療計画を立てることが必要である.