著者
佐々木 毅
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.10, pp.2484-2489, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
7

関節は無菌状態にある.感染性関節炎は関節の損傷あるいは血行性など関節外より病原微生物が直接的に関節部に進入して生じる.細菌性関節炎は急速に進行し関節破壊を生じるので早急な対応を必須とする.真菌,マイコプラズマ,ウイルス,スピロヘータ等いずれでも関節炎は起こしうる.特に老齢やステロイド,免疫抑制薬使用状態を含む免疫不全状態の例では本疾患に留意する必要がある.
著者
長 純一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1985-1990, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
5
著者
太田 啓介 久野 伸夫 衛藤 理砂 大野 誠 日吉 徹 吉次 通泰
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5, pp.1601-1603, 2002-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

症例は44歳,女性.月経中にタンポンを使用していた所,嘔気,嘔吐,下痢,高熱,紅斑を来たし,短時間にショックに陥ると共に多臓器不全の様相を呈した.急性期に施行した咽頭,血液,尿培養は全て陰性であったが,月経血培養にて黄色ブドウ球菌が検出され,またエンテロトキシンB抗原が陽性であった.エンテロトキシンBが起因毒素と考えられるトキシックショック症候群の症例は稀であるため報告した.
著者
永井 将弘
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.75-80, 2015-01-10 (Released:2016-01-10)
参考文献数
8
被引用文献数
2

腸内細菌と脳神経疾患は一見すると関係ないようにみえるが,近年,免疫性神経疾患を中心としてその関連性が明らかになってきている.多発性硬化症の発症機序にTh17細胞の関与が注目されているが,Th17細胞の腸管での誘導のためには腸内細菌叢構成細菌の1つであるセグメント細菌が必要である.Guillain-Barré症候群(Guillain-Barré syndrome:GBS)の中で軸索障害型であるacute motor axonal neuropathy(AMAN)の発症機序はカンピロバクター腸炎の原因菌であるCampylobacter jejuni菌体表面のリポオリゴ糖と神経構成成分のガングリオシドの分子相同性が関与している.Parkinson病(Parkinson’s disease:PD)患者においては小腸内細菌異常増殖が症状のオフ時間を延長し,経口抗生物質による治療で症状の改善が認められている.
著者
小池 和彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.3-9, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1

ウイルス性慢性肝炎はB型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスの感染によって引き起こされ,慢性肝炎,肝硬変,肝細胞癌の連鎖が患者を苦しめている.B型肝炎ではウイルスの遺伝子型によって病像が異なることが次第に明らかになっている.有効な抗ウイルス療法が開発されてきたが,C型肝炎ウイルスキャリアの高齢化,B型肝炎治療薬の限界などの問題があり,ワクチンによる予防適用拡大など議論すべき点も多く残されている.
著者
三井 良之 楠 進
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.8, pp.1771-1777, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
16
被引用文献数
2 2

末梢神経障害を来す傍腫瘍性神経症候群は,臨床病型に基づいて,亜急性感覚性ニューロノパチー,感覚運動性ニューロパチー,自律神経性ニューロパチーに分類され,一部の症例では,抗Hu抗体,抗CV2抗体など自己抗体が証明される.原因腫瘍としては,肺小細胞癌の頻度が高いが,乳癌,前立腺癌,消化器系癌などの報告もある.また,造血器腫瘍に関連したものでは,腫瘍細胞による免疫グロブリンの異常な産生を特徴とするCrow-Fukase症候群,抗MAG抗体や抗SGPG抗体に関連したニューロパチー,抗ガングリオシド抗体に関連したニューロパチーなどがあり,様々な免疫調整療法,抗腫瘍療法が試みられている.
著者
和田 淳 勅使川原 早苗 中司 敦子 槇野 博史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.996-1001, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

バスピン(vaspin)は肥満ラットの内臓脂肪から発見されたアディポサイトカインである.肥満マウスへのリコンビナント蛋白の投与実験から肥満症におけるインスリン抵抗性を改善する代償因子であると考えている.バスピンはヒトの血中にも存在し,肥満症においては体格指数,インスリン抵抗性指数と正相関を認めるとの報告が多い.また2型糖尿病でも血中濃度が増加し,女性で高値である.アディポネクチンやレプチンとは異なった血中濃度動態を示しており肥満症治療の新たな分子ターゲットである.
著者
井石 哲哉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.76-83, 1966-05-10 (Released:2011-02-22)
参考文献数
20
被引用文献数
3 3

最近放射線による染色体異常が多数報告されているが, 被爆後20年を経過した原爆被爆生存者についての検討はまだ充分とはいえない. 著者はこれら被爆者になお原爆放射線の影響が残存しているかどうかを確かめ, 晩発障害として注目されている白血病の発生機序を解明する一手段として, 25例の被爆者につき末梢白血球培養法による染色体分析を行なつた. その結果を要約すれば被爆者群は正常群に比しaneuploid cells, polyploid cells, fragmentsの増加や, 正常人にみられなかつたdicentrics, rings, abnormal monocentric chromosomes等, chromosome-type aberrationsの出現が認められた. また被爆者群中被爆当時急性放射線症状のあつた群の方が, なかつた群より異常染色体の出現頻度が高かつた. 以上の成績は原爆放射線による染色体異常が長期にわたり存続する可能性と, その異常の頻度が被爆線量の多少に関係することを示すものであつて, かゝる観点から白血病発生に対する意義等につき種々考察を加えた.
著者
田尻 淳一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.4, pp.862-869, 2014-04-10 (Released:2015-04-10)
参考文献数
10

最近は検診をする医療機関が増えている.甲状腺に対して超音波検診を行い,甲状腺結節が偶然に発見される.また,頸動脈超音波,胸部CT,PET/CTで偶然に甲状腺結節が見つかる.偶然,画像診断で発見された甲状腺結節は偶発腫と呼ばれる.偶発腫は特別のものではなく,サイズが同じであれば触診で見つかる結節と同じ頻度で甲状腺癌が存在するので,対応は通常の甲状腺結節と同じである.本稿では,偶発腫の対応について述べる.
著者
平井 愛山
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.1, pp.13-20, 1985-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
6 8

魚脂中に多く含まれるω-3系の多価不飽和脂肪酸,ことにエイコサペンタエン酸(C20: 5,以下EPAと略)には抗血栓,抗動脈硬化作用のあることがグリーンランドエスキモーにおける疫学調査,あるいは一連のEPAに富む魚肉や魚油濃縮物の摂食実験より明らかにされている.そこで魚を多食する食事習慣が血漿脂肪酸構成や,血小板機能あるいは血栓性疾患の発症頻度にいかなる影響を及ぼすかを明らかにする目的で,千葉県下の沿岸漁村と内陸部の都市近郊農村において3年間にわたり疫学調査を行なつた.漁村住民における1日平均魚肉摂取量およびEPA摂取量は農村住民と比較して明らかに高値で,血漿総脂質のEPA含量およびEPA/アラキドン酸(AA)比も間様に漁村住民で有意に高値であつた.一方漁村住民の血小板凝集能は農村住民と比較して明らかに低下していた.漁村住民の3年間にわたる調査の結果,魚肉摂取量(EPA摂取量),血漿EPA/AA比および血小板凝集能が密接な関係を持つて変動することが認められ,漁村住民において農村住民と比較して,血小板凝集能が有意に低下している理由の一つとして,漁村住民が魚を多食し, EPAの摂取量が農村住民より明らかに多いことが考えられた.漁村地域(勝浦市)の虚血性心疾患および脳血管障害による訂正死亡率は,近郊農村地域(柏市)と比較して低値の傾向が認められた.
著者
一山 智
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.9, pp.1761-1772, 2015-09-10 (Released:2016-09-10)
参考文献数
6
著者
河野 修興
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.9, pp.2163-2168, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
15
著者
野田 俊之 藤原 久義
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.196-200, 1997-02-10
参考文献数
4

狭心症は,一過性心筋虚血に起因する胸部絞扼感・圧迫感などの発作を生ずる症候性疾患である.症状に関する問診は診断上重要な役割を果たす.痛みの性状,部位および放散,広がり,持続時間,始まり方,頻度,誘因,寛解のしかたなどを詳しく聞き取ることにより,かなりの症例で胸痛が狭心症によるものか否かを鑑別できる.胸痛がSAVES(突然発症,前胸部,漠然とした不快感,労作による発症,短い持続)という5つの特徴をもっていれば労作狭心症が強く疑われる.ニトログリセリンが有効であれば更に確実である.一方,胸痛発作が安静時,特に夜間から早朝にかけて起こりやすい場合は冠れん縮性狭心症が強く疑われる.発作時間はしばしば長く,全身症状を伴うこともある.鑑別すべき胸痛をきたす疾患としては,心筋症,不整脈などの心血管疾患,心臓神経症,食道けいれんなどの消化器疾患,頸椎疾患などがある.
著者
久保 千春
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.589-594, 2004-03-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
著者
平野 勉
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.96, no.12, pp.2812-2818, 2007 (Released:2012-08-02)
参考文献数
26

多くの慢性腎臓病(CKD)には脂質異常症が続発するが,その成因にはアルブミン尿と腎機能低下の要因が複雑に関連する.CKDにおける脂質代謝異常が腎疾患を悪化させるリスクとなることのみならず冠動脈疾患のリスクであることが指摘されている.強力なLDLコレステロール低下薬であるスタチンは腎機能低下を抑制し,タンパク尿を軽減させることがメタ解析で示されている.強力なトリグリセリド低下とHDLコレステロール増加作用を有するフィブラートはタンパク尿を低下させる可能性があるが,腎機能低下症例では排泄が遅延するため慎重に投与すべきである.様々な脂質代謝改善薬の腎機能に対する影響をみたも小規模の臨床研究はあるが,脂質低下療法がどの程度タンパク尿を改善し,どの程度腎機能の保持に寄与するかについては大規模で長期的な介入試験の集積が必要である.