著者
多田 隼人 川尻 剛照 山岸 正和
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.711-717, 2017-04-10 (Released:2018-04-10)
参考文献数
10

家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)に代表される遺伝性疾患の研究や,近年の次世代シークエンサーの発展などに伴うゲノムワイド解析による高頻度遺伝子変異と脂質・冠動脈疾患との関連解析により,LDL(low density lipoprotein)コレステロールと冠動脈疾患との因果関係はさらにゆるぎないものとして示されてきた.一方で,HDL(high density lipoprotein)コレステロールと冠動脈疾患との因果関係には疑問符がつけられるに至った.このようなゲノム情報は脂質管理のみならず,新たな創薬にも貢献しつつある.
著者
鎌谷 直之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日内会誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.12, pp.2367-2373, 2016

<p>ゲノム検査が急速に医療に入ってきた.一部は高額であり,保険の対象外であるが,重要なゲノム検査もある.ゲノムの分野は微生物,遺伝病,多因子病,がんなど多方面にわたっており,統一的な理解は容易ではない.筆者はゲノムに関する分野を生命,種,集団,家族,個体,細胞の六層の階層構造に整理し(六層構造),ゲノム検査はそれぞれの層で要素をゲノム配列により区別する手法である,という統一的定義により理解することを勧める.</p>
著者
斎田 恭子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.2, pp.222-227, 1992-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
3

慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー, dysglobulinemiaに伴うニューロパシーおよび血管炎に伴うニューロパシーに対して副腎皮質ステロイド治療を行う.他にサルコイドーシスにも使用する.経験的に使用されている量,期間,及びその副作用について述べた.使用期間が長期にわたることが多いので,投与開始前に神経生検をふくめた正確な診断,副作用の予防を講じた投与計画を必要とする.
著者
黒田 淳哉 北園 孝成
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.2, pp.289-296, 2013 (Released:2014-02-10)
参考文献数
20

脳卒中,特に非心原性脳梗塞は,脳・頸動脈の動脈硬化進展の結果引き起こされる疾患として重要である.脳卒中の最大の危険因子は高血圧であるが,近年,糖代謝異常,脂質異常症,メタボリックシンドロームといった代謝性疾患が増加し,危険因子としての重要性が増している.慢性腎臓病(CKD)も最近,動脈硬化促進因子として注目されている.喫煙などの生活習慣も含めて,危険因子を重複して有している場合も多く,リスクを適切に評価して個々の症例に応じた対策を積極的に行っていくべきである.

1 0 0 0 OA 1.肝切除

著者
長谷川 潔 青木 琢 山本 訓史 竹村 信行 阪本 良弘 菅原 寧彦 國土 典宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.1, pp.70-77, 2014-01-10 (Released:2015-01-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

肝細胞がんに対する肝切除は局所コントロールに優れており,肝機能が許す限り,治療の第一選択である.微小転移巣も系統的切除により除去可能であり,再発率を抑制しうる.脈管浸潤を伴う進行例でも肝切除により,予後改善が期待できる.ただし,術後の肝不全は致死的で,いったん発症すると回復困難なため,肝不全に至らないような厳密な術前評価と入念な準備,術中の工夫,綿密な術後管理が必須である.
著者
近藤 英明 神林 崇 清水 徹男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.748-755, 2006-04-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

覚醒機構と摂食行動とは密接に関わっている. オレキシンは両者に関わる神経ペプチドである. 1998年桜井らにより発見され食欲を増進させることよりorexinと命名された. ほぼ同時期にde Leceaらは視床下部に特異的に産生されるペプチドとして同じペプチドを発見しhypocretinと命名した. 2000年にはオレキシン神経系の脱落がヒトのナルコレプシーで確認され, ナルコレプシーに特徴的なREM関連症状とオレキシン神経系との関わりについて明らかにされてきた. その後ナルコレプシー以外の神経疾患でも視床下部の障害によりナルコレプシー類似の症状をきたす症例が報告されるようになった. オレキシンがエネルギーバランス, ストレスと関連することより内分泌代謝, ストレス関連領域でもオレキシンに注目した研究がすすめられてきている. 本稿ではオレキシン神経系の生理的な役割とナルコレプシーの病態への関わりについて概説する.
著者
加藤 可奈子 寺山 靖夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.8, pp.1869-1875, 2014-08-10 (Released:2015-08-10)
参考文献数
10

高齢者におけるめまいも一般的なめまいの診断手順を踏むことに変わりはないが,加齢のためにさまざまな入力機能の低下があり,その不均衡によるめまい感を来たしやすい.高齢者のめまいでは,頻度の高い末梢性めまいの他に,脳血管障害を中心とした危険なめまいを診断していくとともに,脱水や貧血,肝,腎機能低下による全身状態悪化に伴うものも疑う必要がある.また,薬物代謝機能が低下しているために,薬剤の影響が出やすいことに注意する必要がある.
著者
岡安 大仁
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2005-2009, 1996-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
4

Saunders Cが1967年にロンドン郊外に近代ホスピスを創設したことによって,ホスピス運動は,火の如く世界に広がりつつある.ここでは,ホスピスの具体例から解説するとともに,近代ホスピスの由来と働きの目標を述べ,さらに5つのタイプについても簡述した.さらにホスピスの教育が,今後の医学,看護教育に果たす役割りについてもふれ,また,ホスピスの研究が単に症状緩和にとどまらないことを強調した.
著者
太田 保世
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.1-3, 1999-01-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1
著者
山下 静也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.2, pp.306-315, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
10
被引用文献数
1

欧米に比し冠動脈疾患の発症頻度が低い我が国でも,HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)投与の有効性のエビデンスが出てきている.特に,MEGAスタデイーでは食事療法単独よりも食事療法に加えてプラバスタチンを投与し,LDLコレステロール(LDL-C)を低下させた方が冠動脈イベントの発症を抑制させることが多数例で証明された.有名なJ-LIT研究でも約5万人規模の高コレステロール血症患者にシンバスタチンを投与し,投与中のLDL-Cレベルが高いと冠動脈イベントリスクが増加した.多価不飽和脂肪酸EPAをスタチンに追加投与したJELISではスタチン単独群に比し,LDL-C値とは無関係に冠動脈イベント抑制が認められた.このように欧米と同様に我が国でも脂質異常症治療の独自のエビデンスが得られてきており,脂質異常症治療の重要性が証明された.
著者
古市 賢吾 和田 隆志
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.1088-1093, 2014-05-10 (Released:2015-05-10)
参考文献数
11
被引用文献数
1

薬剤性急性腎障害は日常臨床のなかで常に発症する可能性のある病態である.軽微な急性腎障害であっても長期腎予後に影響がある事が明らかになり,急性腎障害を起こし得る薬剤の使用には十分な注意が必要である.また,それら薬剤の使用の際には,急性腎障害発症の有無に注意して経過を確認する必要がある.さらに,主要な薬剤の障害機序や急性腎障害が発症しやすい状況を理解し,発症を未然に防ぐことが重要である.
著者
野村 文夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.12, pp.3096-3102, 2013-12-10 (Released:2014-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

質量分析技術の臨床検査応用は急速に進んでいる.ステロイドホルモン,ビタミンD代謝物などの定量測定においてLC-MS/MSはイムノアッセイに比して特異性に優れ,高感度である.また,多項目の同時測定も可能であり,今後臨床化学領域において重要な地位を占めると予想される.一方,細菌検査室におけるMALDI-TOF MSによる細菌・真菌の迅速同定はすでにルーチン検査として行われている.
著者
田村 恵理 谷口 義典 西山 充 矢田部 智昭 井上 紘輔 荒川 悠 森 正和 池添 隆之 寺田 典生 藤本 新平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.1041-1050, 2016-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
10

65歳,女性.高血圧,肥満症で加療中であったが,全身倦怠感,尿閉のため当院受診した.両側水腎症を認め,腎後性腎不全に対し経皮的腎瘻造設術を施行したが,腎障害改善なく,原因不明の遷延性乳酸アシドーシス,無症候性低血糖も認められた.持続的血液濾過透析を施行下に腹部造影CT検査を施行し,腹壁皮下結節および腹直筋の不整肥厚などを確認した.皮下結節およびリンパ節の生検にて形質芽球性リンパ腫と診断した.化学療法を開始し,乳酸アシドーシスや低血糖は速やかに改善した.悪性腫瘍,特に血液系腫瘍ではWarburg効果がみられることがあり,原因不明の乳酸アシドーシスでは,原因として悪性腫瘍の可能性を念頭に精査する必要がある.
著者
浅川 明弘 乾 明夫
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.1, pp.11-16, 2013 (Released:2014-01-10)
参考文献数
10
被引用文献数
2

機能性消化管障害は,遺伝・環境を含んだ生育歴を背景に,心理社会的ストレスが心身相関,特に脳腸相関における神経内分泌系の異常などをもたらし,閾値を越えた時に,消化管運動機能異常,内臓知覚過敏などが顕在化して発症する.診療においては,胃腸症状に焦点をあてた対症療法のみならず,原因となる要因,病態の上流に位置する心理社会的背景などを把握した根治治療,全人医療,個別化医療が要求されている.
著者
満田 年宏
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.11, pp.2748-2753, 2014

医療関連感染対策は日々改善されている.しかし,毎年新たな感染症(新興感染症:emerging infectious diseases)や再興感染症(re-emerging infectious diseases)も発生し,人類の脅威となっている.本稿では,多剤耐性菌関係以外の領域での新興感染症を含めた医療関連感染対策の最新事情について解説した.

1 0 0 0 OA 3.職業性喘息

著者
田中 裕士 田中 宣之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3096-3102, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
15

職業性喘息の診断は疑って問診することから始まる.欧米では成人発症喘息の5~15%と言われているが本邦でのまとまった報告はない.職場での原因物質が高分子量の蛋白である場合はIgE依存性反応であるが,低分子量である化学物質である場合では必ずしもIgE依存性ではない.またこれらの感作期間のあるものとは別に,reactive airway dysfunction syndromeやirritant-induced asthmaがある.本稿ではきのこ栽培工場就労者にみられた検討をモデルとして,主に診断の複雑さについて述べる.