著者
奈良 信雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.12, pp.2523-2526, 2015-12-10 (Released:2016-12-10)
参考文献数
5
被引用文献数
4

国際基準に基づく医学教育の分野別認証評価制度が導入されつつある.その目的は,我が国の医学教育の質を保証し,国民の健康生活向上のために有能な医師を育成することにある.さらに,医学医療の国際化に対応する目的もある.医学教育質保証の観点から,学修成果基盤型教育の導入,診療参加型臨床実習の充実,統合型教育の実施,学生の自己学修促進などが課題となっている.
著者
黒沢 元博 五十嵐 康 宮地 良樹
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.82, no.10, pp.1620-1626, 1993

マスト細胞は生体内に広く分布するが,その形態,機能には臓器差と種属差が存在する.ヒトマスト細胞は,顆粒内エンドペプチターゼの種類により,トリプテース含有マスト細胞とトリプテース,カイメース含有マスト細胞に分類可能である.マスト細胞はIgEを介する特異的刺激の他,多彩な刺激因子により活性化され,多彩なメディエータを遊離する.活性化マスト細胞における細胞内生化学的機構は,刺激により異なる.
著者
吉田 正樹
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.101, no.11, pp.3134-3142, 2012 (Released:2013-11-10)
参考文献数
24

多剤耐性緑膿菌,多剤耐性アシネトバクター,基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生菌,ニューデリー・メタロβ-ラクタマーゼ1産生菌,KPC産生菌などの薬剤耐性グラム陰性桿菌が,世界中で発生し急速に拡大してきている.これらの菌に有効性が期待されるチゲサイクリンやコリスチンなどの薬剤は,国内では承認されていない.適切な治療薬がない現状では,これらの感染症を拡大させず,感染制御することが重要である.

1 0 0 0 OA 1.肥満の役割

著者
下村 伊一郎 船橋 徹 松澤 佑次
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.4, pp.655-661, 2004-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
6 3

肥満・脂肪蓄積が糖尿病,高脂血症,高血圧といった動脈硬化につながる疾患群の基盤病態であることが明らかとなり,診断・治療の両面より,肥満状態の評価・対応が重要となる.近年の研究により,これまで単なるエネルギーの貯蔵倉庫と考えられてきた脂肪組織が実はさまざまな生理活性分泌因子群(アディポサイトカイン)を内分泌し,生体の代謝・動脈壁の恒常性の維持に重要な役割をはたすこと,その産生バランスの異常が上記疾患群を引き起こすこと,崩れたバランスを正常化させることが疾患の治療につながることが示された.アディポネクチン,レプチン, PAI-1, TNF-αといったアディポサイトカイン制御は,今後metabolic syndrome治療の中心になってくる可能性が高い.
著者
江口 和男 苅尾 七臣 島田 和幸
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.202-207, 2003-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

これまで,白衣高血圧は無害な状態であるとされてきたが,正常血圧と比較して臓器障害が進み,予後が悪いという報告もある.我々は,白衣高血圧患者の臓器障害および予後について,特に脳卒中に焦点をあてて解析したところ無症候性脳梗塞および脳卒中予後とも正常血圧と差がないことを示した.ただし,既に臓器障害やインスリン抵抗性を合併している白衣高血圧は‘白衣高血圧症候群’として別個に扱う必要があることを提唱している.

1 0 0 0 OA 3.白衣高血圧

著者
桑島 巌
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.88, no.2, pp.241-246, 1999-02-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

本来,正常血圧の例が診断所や病院を受診した際に一過性に血圧が上昇する例は白衣高血圧またはisolated office hypertension (診察室のみの高血圧)と呼ばれるものである.その機序に関しては,心理的要因,防御反応などが絡み合った複合要因と考えられている.白衣高血圧が無害か否かは対象の年齢や臓器合併症の有無によっても異なるが,高血圧の前状態であるとの考え方が有力である.したがって,濃厚な降圧薬治療の必要性は全くないが,定期的な観察は必要であろう.
著者
伊藤 裕 宮下 和季 中尾 一和
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.4, pp.634-641, 2006-04-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7

原発性アルドステロン症は高血圧患者全体の5%以上を占めると報告され, その中に画像検査では検出できないマイクロアデノーマが少なからず含まれている可能性が指摘されている. 高血圧患者全例において原発性アルドステロン症を疑い, スクリーニング検査として血漿レニン活性, 血漿アルドステロン濃度, 尿中アルドステロン一日排泄量の評価とスピロノラクトン負荷を行い, 原発性アルドステロン症が確定的であれば3mmスライス副腎CTを撮影し, さらには局在診断と病型鑑別のため入院下で副腎静脈サンプリングを含めた精査を行う. 原発性アルドステロン症の治療はアルドステロン過剰分泌が片側性か両側性かにより異なるので, 画像検査と副腎静脈サンプリングによる局在診断が重要である.
著者
大野 岩男
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.5, pp.931-937, 2015-05-10 (Released:2016-05-10)
参考文献数
10

高尿酸血症はCKD発症のリスクであるとされており,CKD患者に血清尿酸値を低下させるとCKDの進展が抑制される報告もある.高尿酸血症による高血圧・腎機能の悪化はレニン・アンジオテンシン(renin-angiotensin:RA)系の亢進を介していると考えられており,高尿酸血症はメタボリックシンドローム,CKD,CVDの発症とも関連している.その関連機序として,高尿酸血症による内皮細胞障害,炎症,酸化ストレス,RA系亢進などからくる動脈硬化が重要である.
著者
田坂 定智
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.7, pp.1611-1616, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

好中球エラスターゼ阻害薬のシベレスタットは,急性肺損傷の治療薬として本邦で開発された.国内第III相試験では,酸素化の改善,人工呼吸器離脱率の改善などの有効性が証明されたが,より重症の患者を組み入れた海外の臨床試験では有用性が示されなかった.しかし国内の市販後臨床試験で人工呼吸器装着期間の短縮に加え,生存率の改善も認めたことから,少なくとも発症早期で障害臓器数が少ない症例に対しては有効と考えられる.
著者
高林 克日己 末石 真 冨岡 玖夫 今泉 照恵 吉田 尚 杉山 隆夫 木村 亮 井坂 茂夫 島崎 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.1579-1585, 1985-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
3 10

全身性エリテマート一デス(SLE)にまれながら間質性膀胱炎を合併することが最近示され,これはlupus cystitis (ループス膀胱炎)と呼ばれている.今までにこのループス膀胱炎の本邦におけるまとまつた報告はなかつたが,われわれは最近4例のループス膀胱炎と思われる症例を経験した.いずれも中年女性で,頻尿などの膀胱症状を訴えて発症し,亜急性に進行して水腎症に至つている.これらの患者はまたいずれにも悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状を合併していた.うち1例はステロイド療法・腎瘻造設術後も腸管運動の低下からイレウスを繰り返し,消化管出血により死亡した. 1例は腎瘻造設後にネフローゼ症候群が出現しSLEと診断された.他の2例はループス膀胱炎と診断後,ステロイド療法により膀胱・消化器症状の改善をみた.本疾患はまれではあるが,膀胱の他消化器症状を合併するなど特有の臨床像をもつたSLEのsubgroupの一つと考えられる.しかし既知の特定の自己抗体との相関は認められなかつた.また1例で消化管粘膜下の血管にimmune depositsを認めたが,膀胱では明らかな血管炎はみられなかつた.この疾患は初期には他覚的所見に乏しく,診断が遅れる傾向があるが,早期治療により症状の改善が期待できることから,膠原病患者の膀胱症状に遭遇した際には,念頭におかなければならない疾患と考えられる.
著者
萩原 弘一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.95, no.6, pp.1036-1041, 2006-06-10 (Released:2009-03-27)
参考文献数
6

我々は, 効率的な疾患遺伝子同定法であるホモ接合指紋法 (homozygosity fingerprinting法) により, 肺胞微石症責任遺伝子を同定した. 責任遺伝子 (SLC34A2) はII型肺胞上皮細胞に発現するリンの運搬蛋白をコードしていた. 肺胞の表面は, リン脂質を主成分とする表面活性物質に覆われている. 古い表面活性物質は, 肺胞マクロファージによる消化後, II型肺胞上皮細胞上のSLC34A2により肺胞腔から除去される. 肺胞微石症では, SLC34A2機能喪失により, 肺胞腔内のリンイオン除去が障害された結果, 微石が生じると考えられる.
著者
谷本 和紀 入交 重雄 関 雅之 葛城 有希子 山田 豊 木下 真孝 三島 伸介 倭 正也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.5, pp.866-873, 2016-05-10 (Released:2017-05-10)
参考文献数
4

71歳,男性.前腕および下腿の皮膚硬化を自覚し,近医を受診した.全身性強皮症を疑われて当院を紹介された.皮膚硬化を認めたが,四肢末梢の皮膚は保たれ,抗核抗体や各種自己抗体は陰性であり,全身性強皮症(systemic sclerosis:SSc)と合致しない点も認められた.皮膚生検を施行し,病理組織学的にはSScと矛盾しない結果であった.経過中に皮膚のgroove signを認め筋膜炎脂肪織炎症候群(fasciitis-panniculitis syndrome:FPS)を疑い,皮膚から筋まで一塊(en bloc)に生検を施行し,FPSの確定診断に至った.非典型的なSSc疑似症例では,FPSも鑑別診断に挙げる必要がある.
著者
塩崎 宏子 星野 茂 押味 和夫 溝口 秀昭 続木 千春 肥田野 信 森 茂郎
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.374-378, 1984
被引用文献数
7 12

Neoplastic angioendotheliosisは血管内控に異常細胞が栓塞し,主に皮膚および中枢神経系の症状をきたすまれな疾患である,現在,本邦の3例を含め, 20例足らずの報告があるにすぎず,生前の診断が困難で有効な治療法が確立されていない.われわれは,皮膚症状を呈した本疾患に,多薬併用療法を行ない,寛解を得た症例を経験したので報告する.症例は64才,女性.主訴は発熱,下肢の紅斑および浮腫.現病歴は入院6ヵ月前より,めまい,悪心,意識消失発作,下腿の紅斑.浮腫,汎血球減少症,レイノ-現象が徐々に進行し,全身状態の悪化を伴つた.入院時現症では,眼底の出血および白斑,甲状腺腫大, 1横指の脾腫,腋窩リンパ節腫大を認めた.入院時検査成績では,汎血球減少症,単球の増加および単球類似の異型リンパ球増加, LDHの増加, CRP陽性, T<sub>3</sub>の減少とrT<sub>3</sub>の増加, BMGの増加が認められた.皮膚病変部の生検からneoplastic angioendotheliosisと診断した.本疾患では,従来試みられてきたステロイドホルモンや抗生物質が無効であることが多く,生検にて認められた血管内異常細胞が,悪性リンパ腫の腫瘍細胞に類似したものであることより,悪性リンパ腫に用いられるサイクロホスファミド,アドリアマイシン,ビンクリスチン,プレドニゾロンの多薬併用療法すなわちCHOP療法を施行したところ,寛解を得た.本報告では特にneoplastc angioendotheliosisの治療に関して文献的考察を加えた.
著者
谷本 安 高橋 清
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.12, pp.3103-3113, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

重症難治性喘息は,ステロイド薬等でも制御しがたい強い気道炎症や,不十分・不適切な治療によりリモデリングを起こして治療に反応しにくい場合,合併症による修飾で喘息症状が管理しにくい場合等,複雑な病態の重複がある.近年吸入ステロイド薬(ICS)等の改善・普及により重度の難治性喘息は著減したが,各ガイドラインの定義によっては1%から10%程度を占める.その治療は,ICSの早期導入と十分量の使用,各種合併症への対策が大切であり,近年開発された抗IgE抗体療法の併用がかかる患者への福音として期待される.
著者
松村 みなこ 田中 信治 玉木 憲治 隅井 雅晴 三重野 寛 吉原 正治 春間 賢 隅井 浩治 梶山 悟朗 井上 正規
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.7, pp.1150-1153, 1996-07-10
被引用文献数
4 2

症例は34歳,女性.主訴は上腹部不快感.胸腹水貯留,低アルブミン血症を認め, α<sub>1</sub>-アンチトリプシンクリアランステスト, <sup>99m</sup>Tcアルブミンシンチにより蛋白漏出性胃腸症と診断した。また,抗核抗体陽性,浸出性胸腹水,関節炎,汎血球減少を伴い,活動性の全身性エリテマトーデス(SLE)の併存を認めた.ステロイドパルス療法により血清アルブミン値の上昇,蛋白漏出の改善を認め,本症例はSLEを基礎疾患とし蛋白漏出性胃腸症を呈したものと考えられた.