著者
田尻 久雄 丹羽 寛文
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.617-621, 1992-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

胃ポリープのなかで最も多く代表的なものは過形成性ポリープであり,内視鏡的ポリペクトミーの成績では83%を占める.そのなかで局在癌の頻度は3%であった.一方,胃腺腫の場合は発生頻度が低いものの,腺腫内の癌共存率が10%と高率にみられた.胃集検の意義は,無症状の有所見群を拾い上げることにあり,内視鏡による精密検査によってはじめて微細な変化を確診し得る.今後は,内視鏡胃集検がより普及していくことが望まれる.
著者
三宅 一徳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.94, no.12, pp.2467-2472, 2005-12-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

臨床検査値の判別指標としては,基準値(基準範囲)とカットオフ値(病態識別値)という2種の数値が提供されている.基準値は健康な集団における検査値変動(生理的変動)に設定根拠を置く.近年,生理的変動を解析する手法の理論的整備が進み,各検査項目の基準範囲が病態判定上どのような意義を有するかを明確化できるようになった.また,近年では診療ガイドラインなどで基準値とは別に病態識別値が設定される項目も多くなってきている.
著者
西谷 美智恵 森野 豊之 松岡 直輝 野村 栄一 宮地 隆史 丸山 博文 郡山 達男 三森 康世 松本 昌泰 仲 博満 梶川 博
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.93, no.11, pp.2424-2426, 2004-11-10
被引用文献数
3 4

症例は26歳,女性. 2年前より左方への頸部回旋時に失神様めまい発作が出現した.頸部血管超音波検査にて右椎骨動脈が左方への頸部回旋時に狭窄または閉塞を生じていることが明らかとなり,頭部MRAの検査結果と併せてbow hunter's syndromeと診断した.頸部血管超音波検査による脳循環病態のダイナミックな評価が,スクリーニングおよび補助診断として有用であったと考えられた.
著者
吉松 博信 坂田 利家
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.90, no.5, pp.902-913, 2001-05-10
被引用文献数
9 3

肥満症や肥満2型糖尿病の治療に食事療法と運動療法は欠かせない.しかし,継続して実行するとなると,多くの患者は治療から脱落し失敗する,肥満症患者特有の認知能,食行動,ライフスタイルと言った壁に阻まれ,患者はそれを凌駕出来ないからである.なかでも,その主体をなすのが食行動の「ずれ」と「くせ」である.栄養学的な知識だけで患者教育をしたり,それで効果がなければ疾患の怖さを武器に説得したり,言い換えると知識量による防御だったり,患者の恐怖感を煽るといった操作では,これらの障害を克服することは難しい.治療者に授けた知識そのものが「ずれ」と「くせ」に取り込まれ,患者の行動変容には結びつかないからである.治療者の役割として大切なことは,自分の食行動の問題点,具体的には「ずれ」と「くせ」に患者が自ら気付き,しかも治療経過の中でそれらを修復できるような治療的枠組みをどのように創っていくか,この一点にある.このような目的のために編み出された治療技法,その一つが「グラフ化体重日記」である.問題になる食行動の抽出,その修復,波形化されて描出される体重減少という報酬,この繰り返しが治療動機の向上とその長期的維持を可能にする.「咀嚼法」は満腹感の形成を促す.その結果,お腹がはち切れる程食べないと満腹出来ないと思い込んでいた患者に,摂取量は少なくても満腹できるのだと実感させることが出来る.つまり,肥満症患者の満腹感覚の「ずれ」を修復するのに有効な手段である.知識量の増加ではなく,患者自身が感じ取る感覚の修復,これこそが逸脱した脳機能を修復する最短距離なのである.
著者
古賀 道明 神田 隆
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.8, pp.1958-1964, 2013-08-10 (Released:2014-08-10)
参考文献数
12

脳炎の代表格であるヘルペス脳炎は,脳炎の一般的な特徴(発熱や髄膜刺激徴候,脳脊髄液異常)に加え,辺縁系脳炎としての臨床像(記憶障害や精神症状,大脳辺縁系にみられるCT・MRI病変分布)が特徴的である.本症を疑った時点でアシクロビル投与を開始するが,同時に他の辺縁系脳炎(HHV-6脳炎や自己抗体介在性脳炎)の可能性を想定しておくべきである.プリオン病はいまだに有効な治療法はなく感染予防が重要で,厚生労働省研究班の感染予防ガイドラインに基づき診療することが推奨される.
著者
加地 正英 庄司 紘史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.85, no.5, pp.693-698, 1996-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
7

最も代表的な日本脳炎は近年本邦での患者は数人の発生を認めるのみとなったが,単純ヘルペス脳炎ではMRIやPCR法などにより,早期に診断が可能となり年間300~400例前後の発症を認め,また多彩な臨床病型が認められる様になってきた.その他国際交流の活発化に伴いHIV感染症の増加が懸念され, HIV脳症,非定型的無菌性髓膜炎等の神経障害が問題となってきている.本稿ではこれらの代表的神経系感染症の疫学についてのべた.
著者
楠本 茂 田中 靖人
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.7, pp.1645-1653, 2014-07-10 (Released:2015-07-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

免疫抑制療法後のB型肝炎ウイルス(HBV)再活性化は,ときに致死的となる合併症であり,その対策のポイントはあらかじめリスク評価(スクリーニング検査)を行うことである.再活性化リスクに応じて,抗ウイルス薬の予防投与あるいはHBV-DNAモニタリングによるpreemptive therapyを行うことで,劇症肝炎予防が期待できる.C型肝炎ウイルス再活性化による劇症肝炎はまれであるが,肝硬変,肝がんについて長期フォローアップが重要である.
著者
瀬川 亜希子 大下 智彦 三好 美智恵 越智 一秀 大槻 俊輔 郡山 達男 松本 昌泰
出版者
The Japanese Society of Internal Medicine
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.2794-2796, 2008-11-10

ムコ多糖症は,通常ほとんどが乳幼児~青年期に肝脾腫,ガーゴイル様顔貌,臍ヘルニア,関節拘縮,巨舌等の所見により診断される.今回,50歳代で初めて撮像した頭部MRIで,多数の血管周囲腔拡大像などの特徴的な所見によりムコ多糖症を疑われScheie病の診断に至った姉妹例につき,鑑別診断上の意義を含め報告する.<br>
著者
渋江 公尊 原島 伸一 中本 裕士 浜崎 暁洋 稲垣 暢也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.7, pp.1794-1796, 2013-07-10 (Released:2014-07-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1

水様下痢と嘔吐を繰り返し,膵尾部原発ガストリノーマの診断にて膵体尾部・脾臓・肝外側区域切除術および胆嚢摘出術を受けた.術後2年を経過した頃から低血糖発作が頻発.血清インスリン値高値でありインスリノーマの併発が疑われた.局在診断に68Ga標識DOTATOCを用いたPET/CTを施行し,アログリセムによる治療を試みた症例を経験したので報告する.
著者
瀬川 文徳 黒岩 義之
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.89, no.4, pp.608-616, 2000-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

不随意運動は,主にその運動の出現が安静時か動作・姿勢時か,律動性の有無,運動の速さ,律動性があれば動きの周波数に注目し分類していくことが有用である.近年,基底核の神経回路への知見の集積とともに,錐体外路性の不随意運動に対する新たな理解が深まり,不随意運動などの運動異常に対して,定位脳手衛や電気刺激療法も行われるようになってきた.近年の基底核回路への考え方を図示し,不随意運動の病態,分類について解説する.

1 0 0 0 OA 3.HIV感染症

著者
今村 顕史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.2816-2822, 2013-11-10 (Released:2014-11-10)
参考文献数
12

HIV感染症の予後は,抗HIV薬による治療(ART)によって劇的に改善した.その一方で,近年は様々な長期合併症が問題となってきている.長期合併症の回避,ARTによる感染予防効果などによって,より早期の治療開始も推奨されるようになった.今後は,さらなる早期診断への努力や,長期療養へ向けた医療体制の整備なども求められている.
著者
味澤 篤
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.98, no.11, pp.2767-2773, 2009 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1 12

HIV感染症は,抗体+抗原による第4世代のスクリーニングキットが使用されるようになって,感染後2~3週間で陽性が判明するようになった.しかしスクリーニング検査では必ず偽陽性が生じるので,確認検査としては,WB法+RT-PCR法が用いられている.WB法は急性感染期には陰性となってしまうために,RT-PCR法でのHIV-RNA量測定が必要となる.一方AIDSは,HIV感染者が,エイズ動向委員会で定められた23の疾患もしくは状態と判定された場合に診断される.