- 著者
-
加藤 健二
都司 嘉宣
- 出版者
- 東京大学地震研究所
- 雑誌
- 東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.1-2, pp.39-66, 1994-09-30
本研究では,1993年7月12日に発生した北海道南西沖地震(MUMA7.8)の津波の挙動を調べた.まず最初に,津波の初期条件を求めるために断層要素の決定を行なった.断層要素の決定は,余震分布,奥尻島での鉛直,および水平の地殻変動量および江差と岩内の検潮記録に基づいて行なった.余震分布から,断層面を北側,南側の2つからなるとした.その結果,南側の断層では,低角な東下がりのものと,高角な西下がりのものがともに奥尻島の地殻変動の条件を満たすことがわかった.ここで求めた断層要素を使って,断層は南北とも西下がりであるとして,北海道周辺での津波の振舞いを調べた.津波は,奥尻海脚,奥尻海盆の影響を受けて複雑な振舞いをしたことがわかった.また,奥尻島の南西部について詳しく調べてみると,奥尻海脚によって曲げられた津波が第1波を形成し,同島南部の初松前地区に集中して,ここの集落の家屋を全滅させたことがわかった.また,奥尻海脚の東端と西端を節とするここにトラップされた固有振動が,島南端の青苗の居住地の主要部に大きな被害をもたらす第2波を形成することがわかった.