著者
羽賀 將衛 大谷 則史 清川 恵子 川上 敏晃
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.293-296, 1998-09-15
被引用文献数
6 4

過去3年間に当科において, 破裂性腹部大動脈瘤を除く, 腹部大動脈および腸骨動脈領域の血行再建術は, 全例, 腹膜外到達法により施行した. このうち36例を傍腹直筋切開, 41例を臍側方から肋骨弓に向かう横切開により行った. 両群とも, 良好な術野の展開を得るため, オクトパス<sup>®</sup>リトラクターを用いた. 術後の経口摂取開始までの日数, 鎮痛剤を使用した日数, および退院までの日数は, 傍腹直筋切開群よりも腹部横切開群において有意に短かった. 腹膜外到達法による腹部大動脈, 腸骨動脈領域の手術において, 腹部横切開は, 術後の早期離床と在院日数の短縮を図るうえで有用と考えられた.
著者
田淵 篤 正木 久男 稲田 洋 森田 一郎 石田 敦久 菊川 大樹 遠藤 浩一 村上 泰治 藤原 巍
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.260-263, 2000

症例は26歳, 男性. 3年前にアメリカンフットボールの競技中に左膝靱帯損傷をきたし, 保存的加療を受けた. 2カ月前から左足の冷感, 知覚障害を自覚し, 当科に入院した. 大腿動脈造影では左膝窩動脈の高度狭窄, 前脛骨および後脛骨動脈の閉塞が示された. CT, MRI検査では左膝窩動脈内腔に突出した腫瘤, 解離などが考えられた. 手術は後方到達法で施行, 左膝窩動脈外側からの圧排はなく, 切開を加えると狭窄部位は白色血栓であった. 血栓を摘除し, 膝窩動脈切開部は自家静脈にてパッチ閉鎖した. 狭窄性病変の病理組織学的所見は, フィブリンを主体とした器質化血栓および内膜からなり, 血栓および内膜内に肉芽組織の進入が観察された. 本症の成因として鈍的血管損傷後の治癒過程で壁肥厚, 血栓形成をきたし, 狭窄したと考えられた. 術後経過は順調であった.
著者
清水 篤 中島 博之 長田 裕明 長澤 淳 京極 方久
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.77-80, 2011

症例は73歳,男性.遠位弓部大動脈の最大径66 mmの嚢状瘤に対し全弓部置換術を施行した.胸骨正中切開,上行大動脈送血と上下大静脈脱血で人工心肺を確立し,中等度低体温循環停止,選択的順行性脳灌流を行いエレファントトランク,ステップワイズ法にて遠位側吻合を行った.その後頸部3分枝再建を先行し,最後に中枢側吻合を行った.手術時間515分,人工心肺時間305分,大動脈遮断時間213分,脳分離灌流時間143分,下半身循環停止時間97分であった.術後5日目に発熱と右側腹部痛,炎症反応上昇を生じ,翌日になっても症状は改善せず,CTで急性胆嚢炎および急性腹膜炎と診断し,術後6日目に緊急開腹胆嚢摘出術を施行した.胆嚢周囲に漏出した胆汁性腹水が存在したが,培養結果は陰性であった.病理所見は,胆嚢頸部に虚血による非細菌性非貫璧性の胆嚢壊死が存在するとの結果であった.胆嚢摘出術術後は経過良好であり,初回手術から16日目に独歩退院となった.全弓部置換術後は下半身循環停止やdebrisの飛散など消化管虚血のリスクは高く,術後の急性腹症の鑑別診断として稀ではあるが重篤化することもある胆嚢梗塞を考慮する必要があると考えた.

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出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Supplement, pp.S155-S192, 2008-01-31 (Released:2009-12-09)

[発行日:2008/01/31][公開日:2009/12/09]
著者
眞岸 克明 和泉 裕一 光部 啓治郎 中西 啓介 久保田 宏
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.83-85, 2003-03-15
被引用文献数
3

今回,われわれは,大動脈四尖弁に伴う大動脈弁閉鎖不全症の弁置換術を経験したので報告した.症例は,63歳男性で心原性ショック発症後の精査で大動脈弁閉鎖不全症の診断となり,経食道心エコーで大動脈四尖弁を認めた.手術所見では,大動脈弁左冠尖と無冠尖の間にやや小さなaccessory cuspを有する四尖弁を認めた.Hurwitzらの分類ではtype bに相当すると考えられた.手術は大動脈弁を切除し,Edward-MIRA21mm弁で置換した.術後経過に問題なく,元気に社会復帰した.大動脈四尖弁は希な疾患であるが閉認不全を伴うことが多く,文献的検討を加え報告した.
著者
石山 智敏 稲沢 慶太郎
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.371-373, 2002-09-15
参考文献数
17

症例は54歳の男性.1999年6月9日,ライトバンを運転中にガードレールに衝突し,ハンドルなどによる腹部打撲および胸椎圧迫骨折などの診断で当院整形外科に入院した.受傷後12日目の腹部CT検査で腹部大動脈狭窄と左総腸骨動脈閉塞を認めたため,外科紹介となった.7月12日に大動脈-両側総腸骨動脈バイパス術を施行した.左総腸骨動脈は血栓閉塞をきたしていた.比較的希な症例ではあるが,腹部鈍的外傷患者診察のさいには注意が必要と思われる.
著者
宮城 直人 大島 永久 白井 俊純 砂盛 誠
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.72-75, 2006-03-15

症例は74歳,女性.57歳時に心房中隔欠損症でパッチ閉鎖術を施行している.2001年7月,僧帽弁閉鎖不全症(MR),三尖弁閉鎖不全症(TR)に対し僧帽弁置換術(CEP 29mm),三尖弁形成術(Cosgrove ring 32mm)を施行した.術後徐脈性心房細動となりペースメーカーを挿入した.同年12月,人工弁感染性心内膜炎(PVE)を発症したが投薬治療で軽快した.2002年3月8日発熱,背部痛出現,Streptococcus agalactiaeによるPVE,化膿性脊椎炎の診断で入院となった.抗生剤にて炎症反応が沈静化したのち,5月16日再僧帽弁置換術(CEP 27mm),ペースメーカーリード抜去,心筋電極植え込み術を施行した.1カ月のペニシリンG,ゲンタマイシン点滴静注ののち,経口薬に変更,術後第104病日に軽快退院した.感染性心内膜炎と化膿性脊椎炎の合併は,本邦では報告例は少ないが,念頭に入れ,診断・治療を行う必要がある.
著者
山本 宜孝 富田 重之 永峯 洋 山口 聖次郎 東谷 浩一 飯野 賢治 渡邊 剛
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.230-233, 2008-07-15
被引用文献数
2

症例は66歳,女性.9年前抗リン脂質抗体症候群,特発性血小板減少性紫斑病を指摘され,以後血液内科で通院治療を継続していた.今回心不全症状が出現,精査の結果III/IV度の大動脈弁閉鎖不全症と診断された.血液内科医師と連携をとり十分な準備と計画をたて心臓外科手術:大動脈弁置換術を施行した.術前には血漿交換とステロイドパルス療法を施行,また腎機能障害の増悪に対し透析をおこなった.術後は早期より抗凝固療法とステロイドの内服を行い,抗リン脂質抗体症候群の増悪を認めることが無く順調に経過した.
著者
高橋 昌一 高谷 俊一 一関 一行 畠山 正治 大徳 和之 久我 俊彦 棟方 護 福井 康三 福田 幾夫
出版者
特定非営利活動法人日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.224-229, 2003-07-15
参考文献数
18
被引用文献数
5

1996年から2002年3月までの約5年間(前期:1998年6月まで,後期:1998年7月以降),39例の腹部大動脈瘤に対してステントグラフト(SG)挿入による治療を行ってきた.そのうち80歳以上の症例は前期3人,後期8人で,感染性動脈瘤を2人認め,また併存症として後期に虚血性心疾患5例,COPD1例,胸部大動脈瘤合併4例などhigh risk症例が含まれていた.前期の3例が外科手術に移行したが,残り36例(92%)がSG留置に成功した.36例中6例にendoleakを認め,5例に腸骨動脈解離(全例ステント留置)を認めた.SG留置に成功しendoleakを認めない症例は,前期50%,後期89%であった.経過観察中に追加治療や手術を受けたのはそれぞれ3例と4例であった.在院死は前期に4例認め,遠隔死亡は3例認めた.全体の生存率は術後3年で82%であった.腹部大動脈瘤に対するSG治療は,high riskな症例に対して有効と考えられ,今後さらに治療成績は向上すると考えられた.
著者
冨澤 康子
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.11-16, 2009-01-15 (Released:2010-02-08)
参考文献数
27

オンラインの学術データベースにはPubMed, Scopus, Web of Science(WoS),他がある.Impact Factor(IF)や,論文数と被引用回数を一つの数字で示すh-indexを用いて雑誌の評価を行うことが可能である.国内外の胸部心臓血管外科系雑誌の評価および投稿雑誌の選択方法を検討した.現在,日本発でPubMedに収載されている外科雑誌は6誌,WoSにはSurgery Today(ST)と脳神経外科の2誌,ScopusのAnalyticsでSurgeryのリストに収載されていた胸部心臓血管外科系ではST, Ann. Thorac. Cardiovasc. Surg.(ATCVS), Gen. Thorac. Cardiovasc. Surg.,胸部外科の4誌で,h-indexが最も高かったのはSTの27で,被引用回数が増加しており,しかもトレンドが上昇傾向であった.IFのある国内外の胸部心臓血管外科系雑誌は8誌あり,IFとh-indexには相関関係があった(p=0.0002).J. Thorac. Cardiovasc. Surg., Ann. Thorac. Surg., J. Vasc. Surg.の3誌のh-indexは近似しており119以上あったが,Eur. J. Cardiothorac. Surg.は59であった.J. Cardiovasc. Surg.(JCVS), Thorac. Cardiovasc. Surg., J. Card. Surg., Heart Surg. ForumおよびSTの中ではJCVSに勢いがあった.ATCVSのh-index 17から仮想のIFを計算すると0.3であった.投稿時には雑誌のIFばかりでなく分析機能を活用し勢いがあり将来に期待できる雑誌を選択することが肝要である.