- 著者
-
松田 直樹
- 出版者
- 一般社団法人 日本不整脈心電学会
- 雑誌
- 心電図 (ISSN:02851660)
- 巻号頁・発行日
- vol.24, no.Suppl2, pp.19-32, 2004-03-25 (Released:2010-12-10)
- 参考文献数
- 21
非持続性心室頻拍 (VT) 例に対する電気生理検査 (EPS) は, 心臓突然死の危険度を評価する方法として重要である.非持続性VTのなかでも, 基礎心疾患を有する, 心機能低下がある, Adams-Stokes発作が疑われる, VTの連発数が多い, 頻拍レートが速い, 加算平均心電図で遅延電位が陽性などの条件を複数満たす症例が, EPSの積極的な適応となる.プログラム刺激と呼ばれる誘発試験により, 容易に持続性VTや心室細動 (VF) が誘発されれば, 将来, 同様の致死性不整脈が発生する可能性があると判断するが, その突然死予測としての意義は, 誘発条件, 誘発された不整脈の種類, 基礎心疾患, 左室機能, 失神の既往の有無などにより大きく異なる.一般に, 単発~3連発早期刺激で誘発される持続性単形性VT, 単発または2連発早期刺激で誘発される持続性多形性VT/VFが有意な所見である, 当施設での基礎心疾患を有する非持続性VT症例155例における平均5.7年の追跡では, これらの不整脈が誘発された例の突然死, 不整脈事故発生率は, 非誘発例に比し有意に高く, これに左室駆出率の低下あるいは失神発作の既往が加わると, その発生率はさらに増加した.欧米での多くのエビデンスにより, 心筋梗塞慢性期におけるEPSの意義は確立している.欧米では, 拡張型心筋症におけるEPSの有用性は否定的な意見が多いが, 我々のデータは, 突然死の長期予測にEPSが有用であることを示している.一方, 無症候性肥大型心筋症におけるEPSの位置づけは明らかではない.