著者
小野 真理 中川 幹子 大家 辰彦 一瀬 正志 米持 英俊 犀川 哲典
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 = Electrocardiology (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.143-148, 2004-05-25
参考文献数
14
被引用文献数
1

先天性QT延長症候群のLQT2患者では夜間睡眠中に目覚まし時計で覚醒した際に心事故が頻発する, 我々は健常者を対象とし, 目覚まし時計覚醒時に起こる循環動態の経時的変化, 特に心室再分極過程の変化を検討した.対象は健常成人16名 (平均年齢22.6歳) である.ベッド上安静臥床し仮眠をとらせ, 約30分後に目覚まし時計を鳴らし, その後安静を維持した.安静睡眠中, 覚醒直後, 10秒, 20秒, 30秒, 1分, 2分後の各時間における血圧, 心拍数, QT (QTc) 時間, T波およびU波高を測定した.収縮期・拡張期血圧, 心拍数とも目覚まし刺激直後に有意に上昇した.QTc時間は刺激直後より有意に延長し, 直後~10秒後にピークを呈した, T波高は有意に減少し, U波高は有意に増大した.症例によっては, QT延長症候群患者の心電図に類似した複雑なT-U complexを形成する例もあった.いずれの指標も1分後には前値に復した.健常人において, 目覚まし時計による覚醒時に交感神経活性が急激に短時間亢進し, 心室再分極過程の異常を呈した.
著者
高橋 淳
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 = Electrocardiology (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.242-244, 2009-06-04
参考文献数
7

心房細動(AF)の根治を目的としたカテーテルアブレーション治療は,AFの多くが肺静脈内心筋起源の心房期外収縮を契機に発生するという発見以降,めざましい進歩を遂げてきた.肺静脈隔離アブレーションは,各肺静脈を個別に隔離する方法から始まったが,施行例増加とともに再発や合併症の問題が浮上してきた.そこでわれわれは,同側上下肺静脈の広範囲同時隔離法を考案し,良好な成績を収めた.その後,画像システムの進歩により左房や肺静脈の解剖的把握が可能となり,発作性AFに対するアブレーションは一般的な治療法となりつつある.一方,慢性AFに対しては各種アブレーション法が考案されており,成績も徐々に向上してきた.しかし,慢性AFでは焼灼範囲が広くなるため合併症リスクも高く,より安全性の高い手技の開発が望まれる.
著者
栗田 隆志 野田 崇 岡村 英夫 里見 和浩 清水 渉 須山 和弘 相原 直彦 鎌倉 史郎 安田 聡
出版者
The Japanese Society of Electrocardiology
雑誌
心電図 = Electrocardiology (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.10-17, 2009-02-05
参考文献数
23
被引用文献数
1

ニフェカラント静注薬は我が国で開発された唯一の純粋なI<SUB>Kr</SUB>チャネル遮断薬であり,重症心室不整脈に対する高い抑制効果が示されている.特に急性冠症候群など冠動脈疾患に合併した難治性の心室頻拍・心室細動(VT/VF)に対しては,8割を超える患者において有効性が示された.また,拡張型心筋症など慢性的な病変によるVT/VFに対する効果は若干劣るものの,6割を超える効果が確認された.ニフェカラントに残された最大の問題は,過剰なQT延長によるtorsade de pointesの誘発であろう.この合併症を避けるためには推奨されているよりも少ない量(loadingは0.15~0.2mg/kg,維持量は0.2mg/kg/時)から投与を開始し,モニター心電図による継続した監視と12誘導心電図でのQT時間の観察が必須である.同薬剤の中止または減量の目安はQTc時間が550msecを超えた場合と考えられる.また,アミオダロン静注薬との使い分けや,経口薬への移行などについては今後に残された課題である.
著者
金子 睦雄 米山 達哉 山来 貴 磯部 律元 中沢 潔 南家 俊彦 岸 良示 三宅 良彦 桜井 庸晴 松本 直樹 西崎 光弘 岡本 登 渡邉 佳彦
出版者
The Japanese Society of Electrocardiology
雑誌
心電図 = Electrocardiology (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.59-68, 2009-02-05

開発した合成心電図法を用い,標準12誘導心電図(St-ECG)から高位右側胸部誘導の波形を求め,Brugada型心電図自動検出に有用であるか検討を行った.対象はBrugada症候群と診断された19症例66件のSt-ECG,V<SUB>1</SUB>~V<SUB>3</SUB>誘導の一肋間上心電図(Hi-ECG),合成心電図法より求めた合成心電図(Syn-ECG)である.Hi-ECGとSyn-ECGではQRS-T部分の相関は0.74以上と高かった.循環器専門医がcoved型(A:J≧0.2mV),saddleback型(B),軽度coved型(C:J≧0.1mV)と判読したのはSt-ECGではそれぞれ29件,24件,0件で,Hi-ECGを加えると47件,19件,0件であった.Brugada型と判読された66件をSt-ECGのみで自動解析すると検出感度は68%(A:24件,B:20件,C:1件),Syn-ECGを加えると検出感度は85%(A:44件,B:11件,C:1件)に向上した.一肋間上の心電図と合成心電図は相関も高く,本法が臨床および検診でBrugada型心電図の自動検出に有用であることを確認した.