著者
伊藤 壽啓
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.1-7, 2013-09-25
参考文献数
8

この10年間にH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスは世界64カ国におよぶ大流行を引き起こし,今尚,中国,ベトナム,インドネシア,エジプトなど一部の国々においては,家禽や野鳥間のみならず,家禽から人への直接伝播をも含めた流行が繰り返されている。一方,2013年3月,中国本土において,H7N9亜型の低病原性鳥インフルエンザウイルスが人に感染し,これまでに感染者134名,うち43名の死亡が確認されている(2013年7月20日現在)。その他にも,メキシコにおけるH7N3亜型,台湾におけるH5N2亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスの出現や,以前からアジアを中心に蔓延を続けるH9N2亜型の鳥インフルエンザウイルス,さらには2013年6月の台湾におけるH6N1亜型鳥インフルエンザウイルスの人への感染など,海外における鳥インフルエンザの流行状況は,近年一段と多様化,複雑化の様相を呈している。
著者
村野 多可子
巻号頁・発行日
vol.43, pp.23-30, 2007 (Released:2011-11-25)

国内におけるワクモ(Dermanyssus gallinae)の浸潤率は、産卵鶏では85.2%と高い値を示した。ワクモによる被害は、潰れた飽血ワクモの血液や排泄物などの付着による汚卵の発生、人への被害、産卵率への影響、鶏の貧血・死亡がなどであった。また、ワクモ寄生鶏産出卵では卵重の減少、濃厚卵白・H.Uの低下などがみられた。市販されているワクモ駆除目的の殺虫剤の大半に抵抗性の出現が確認されたため、現時点でワクモ防除のために考えられるいくつかの方法を試みた。ワクモが瞬時に死亡する水温は65℃以上であった。24時間のホルマリン薫蒸によるワクモの死亡率は34.8〜62.2%であり、産出された卵の孵化率は90%以上を示した。環境制御資材によるワクモの駆除は資材により大きく効果が異なった。年々市販殺虫剤に対するワクモの抵抗性出現が増加してきている。早期に殺虫剤を含めた新しい駆除法の開発が切望される。
著者
木本 彩美
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, 2013-05-25

本症例では腫瘤と脛骨との分離が困難であり,組織学的に脛骨骨頭における腫瘍細胞の浸潤性増殖が認められた。また,不規則な形態の類骨が右膝関節の腫瘤のほか,肝臓や肺,および腎臓の腫瘤にも形成されていた。骨肉腫の特徴は腫瘍細胞が骨または類骨組織を直接形成することである。また,組織像はきわめて多彩で,同ーの症例でも部位によって種々の像を示すことが知られている。本症例においても正常筋組織との境界部から脛骨骨頭へ移行するにつれて,線維肉腫様の部分や鍍銀染色で箱入り像を示す部分など,様々な像が観察された。以上より,本症例を骨肉腫と診断した。わが国における鶏の骨肉腫の報告はきわめて少ない。不明な点が多々あるので,今後も症例数を重ね,検討を続けていくことが重要だと思われる。
著者
喜田 宏
巻号頁・発行日
vol.51, pp.7-12, 2015 (Released:2016-04-04)

H5およびH7高病原性鳥インフルエンザウイルスが世界各地で家禽と野鳥に感染し,甚大な被害を及ぼしている。少数の国において,鳥インフルエンザの制圧対策が適切に執られていないためである。「感染家禽の早期摘発・淘汰により,被害を家禽に封じ込め,人の健康と食の安全を守る」ことが鳥インフルエンザ対策の要である。H5N1およびH7N9ウイルスがパンデミックインフルエンザを起こすものと想定されている。私は,その可能性は低いと見ている。もしパンデミックインフルエンザが発生,流行したとしても,慌てることはない。新たなHA亜型のウイルスは,人集団に免疫がないので,伝播性は高いが,個々の人に対する病原性は低いからである。パンデミック第二波以後,すなわち,季節性インフルエンザを起こすウイルスの方が人の体内でよく増殖するので,病原性が高い。したがって,季節性インフルエンザ対策の改善・確立こそがパンデミックインフルエンザ対策の要である。
著者
喜田 宏
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 = Journal of the Japanese Society on Poultry Diseases (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.7-12, 2015-09

H5およびH7高病原性鳥インフルエンザウイルスが世界各地で家禽と野鳥に感染し,甚大な被害を及ぼしている。少数の国において,鳥インフルエンザの制圧対策が適切に執られていないためである。「感染家禽の早期摘発・淘汰により,被害を家禽に封じ込め,人の健康と食の安全を守る」ことが鳥インフルエンザ対策の要である。H5N1およびH7N9ウイルスがパンデミックインフルエンザを起こすものと想定されている。私は,その可能性は低いと見ている。もしパンデミックインフルエンザが発生,流行したとしても,慌てることはない。新たなHA亜型のウイルスは,人集団に免疫がないので,伝播性は高いが,個々の人に対する病原性は低いからである。パンデミック第二波以後,すなわち,季節性インフルエンザを起こすウイルスの方が人の体内でよく増殖するので,病原性が高い。したがって,季節性インフルエンザ対策の改善・確立こそがパンデミックインフルエンザ対策の要である。
著者
唐澤 豊
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.61-66, 2002 (Released:2011-03-05)

1988年にイスラエルから沖縄にダチョウが導入されて以来、日本における産業的なダチョウ飼育が始まり、その飼養羽数は1996年の566羽から急激に増加して2001年の夏には9300羽を越えた。このようにダチョウ飼育が日本で注目された社会的背景には、バブル経済の崩壊に伴う新規事業対象として、あるいは農山村の農業の停滞に伴う過疎化と荒廃農地の増加などが主な要因としてあると思われる。もちろんその前提として、ダチョウの動物資源としての有用性があったからに他ならない。ダチョウは、雑食性ではあるが牧草を好みよく利用することができること、皮、肉など余すところなく利用できることに加えてそれらの生産物の付加価値が高いこと、繁殖技術や管理技術の向上によってさらに生産性の飛躍的な向上が期待できること等々,きわめて優れた動物資源といえる。私たちには、この優れた動物資源をどのように社会の中で活用し利用できるか、関連分野の力量を問われている課題であるともいえる。
著者
大槻 公一
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.63-71, 1997-08-25
参考文献数
64
被引用文献数
5
著者
村野 多可子 青木 ふき乃 脇 雅之 椎名 幸一 石原 克己 小俣 友紀子
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.171-180, 2001-02-25
被引用文献数
6

市販Salmonella Enteritidis(SE)不活化油性アジュバントワクチン(SEワクチン)の生産性に及ぼす影響と有効性について検討した。採卵鶏5銘柄を各々100羽づつ供試し,各銘柄の50羽に104日齢でSEワクチンを肩部皮下接種した。その後,474日齢まで体重,飼料摂取量,産卵諸性能,抗体価を経時的に調査した。生産性に及ぼす悪影響は各銘柄とも接種後1週以内に最も顕著に認められたが,回復状況は銘柄により異なり,銘柄4のように初期産卵まで影響が継続するものもあった。抗体の産生性と持続性は銘柄により大きく異なり,銘柄1はピークも低く,持続性も悪かったが,銘柄3は調査終了時でも高い値を示した。さらに475日齢に各銘柄のワクチン接種群と無接種対照群の各々8羽にSE ZK-2a株のリファンピシン耐性株を経口接種により攻撃した。その結果,拝菌数は銘柄2,3,5で,調査日によりワクチン接種群と無接種対照群の間で有意な差が認められたが,肝臓,脾臓,卵巣,卵管における生菌数は各銘柄とも明らかな差はみられなかった。以上の成績からSEワクチンの使用にあたっては,鶏の銘柄によってワクチン接種に対する応答の異なることを考慮する必要のあることが示唆された。
著者
山田 果林 竹原 一明 中村 政幸
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.13-21, 1999-05-25
被引用文献数
22
著者
白石忠明
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.162-167, 1989-09
被引用文献数
3
著者
塚本 健司
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.43-45, 2003-05-25
被引用文献数
2

オランダとベルギーで発生した高病原性鳥インフルエンザについてProMed情報を基にまとめた。ProMed情報によれば、2003年2月28日にオランダ南東部、ドイツ国境に面したGelderland州において、高病原性鳥インフルエンザが発生し、4月26日現在までに、可能性の高いものを含めて240農場が被害を受けた。4月末日の段階で、発生地域はオランダ南東部の3州(Gelderland、Utrecht、Noord-Brabant)に広まっており、終息の目処はたっていない。死亡鶏には典型的な病変(頭部・鶏冠・肉水の水腫と全身の出血斑など)が観察され、養鶏場での死亡率(80%)も高い。発生農場の半径1km(後に3km)の円内の家禽は全て殺処分の対象であり、これまでに2400万羽が処分された(5月2日現在全鶏の24%)。また、移動禁止は当初発生農場の半径10km以内とされていたが、その後オランダ全土に拡大されており、移動禁止の対象は家禽ばかりでなく馬・牛・羊・豚も含まれている。
著者
浦本京也
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.247-253, 1990-12
被引用文献数
17
著者
伊藤 壽啓
出版者
鶏病研究会
雑誌
鶏病研究会報 (ISSN:0285709X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.90-95, 2004-08-25