著者
楠本 真二 肥後 芳樹
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_29-3_38, 2012-07-25 (Released:2012-09-25)

本稿は,実証的アプローチに関するチュートリアルシリーズの一部として,ソフトウェアメトリクスの研究・実務における応用,特に研究成果の評価や組織におけるプロセス改善の評価での利用方法を中心に述べる.具体的には,評価目標に対してメトリクスを対応させるための枠組みの1つであるGQMパラダイム,評価対象のコンテキスト,著者等が過去に行った評価事例について紹介する.
著者
伏田 享平 飯田 元
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_61-1_74, 2012-01-26 (Released:2012-03-26)

ソフトウェア開発プロセスのモデリング(ソフトウェア開発に関する諸作業の実施に関する約束事等を明示的に記述すること)は,プロセス実行中の定量的なプロジェクト管理や,CMMI等に代表される定性的プロセス評価の枠組みにとって,とても重要である.本稿ではソフトウェアプロセスに関する最新の研究動向を踏まえつつ,ソフトウェアプロセスのモデリングと,プロジェクト管理やプロセス改善への応用について解説する.また,ライフサイクルプロセスやプロセスの評価・改善に関連する主要な標準規格や参照モデルについても紹介する.
著者
安永 憲司
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_81-1_92, 2017-01-25 (Released:2017-03-25)

暗号技術の設計にゲーム理論の手法を利用した研究が行われるようになっている.本稿では,暗号の研究においてゲーム理論がどのように関わっているかについて概説する.特に,暗号プロトコルにおける合理的なプレイヤー,均衡概念による安全性の特徴付け,報酬を利用した委託計算について解説する.
著者
誉田 直美 山田 茂
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_66-2_82, 2013-04-25 (Released:2013-08-25)

高品質ソフトウェア開発の実現は重要な課題であるものの,それを達成している開発組織は少ない.本論文では,ソフトウェア開発の品質問題を解決するために日本電気株式会社が考案した品質管理手法「ソフトウェア品質会計」を論述する.さらに,従来からの品質会計の適用方法を見直すことによって品質向上を実現した事例を紹介する.その改善事例に基づいて,品質会計の厳格な適用と品質会計を取り巻くソフトウェアプロセス全般に対する総合的な取り組みが,高品質ソフトウェア開発の実現に効果を発揮することを示す.
著者
井上 克巳 坂間 千秋
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.3_20-3_32, 2008-07-25 (Released:2008-09-30)
被引用文献数
1

Prologがベースとしているホーン節論理に基づく論理プログラミングでは,構文的制約があって確定的知識しか表現できないことが,現実的な知識表現のためには限界であるとされていた.この問題点を克服するために,論理プログラミングにおいて不完全・不確定な情報を扱うための拡張理論が1980年代後半から数多く提案された.1999年にはこれらに加えて制約プログラミングの概念を融合した解集合プログラミングの概念が確立され,現在では論理プログラミングの中心的な研究テーマの1つになっている.本稿では過去からのこうした研究の流れと新しい論理プログラミングの可能性について探る.
著者
藤井 秀明 原口 弘志 泥谷 誠 岩瀬 高博 岩爪 道昭
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_130-1_151, 2013-01-25 (Released:2013-03-05)

近年,ビッグデータと呼ばれる大量データの集積と戦略的な利活用に対する関心と期待が大きく高まっている.本論文では,その技術的背景として,大量データの集積化および並列分散処理を支える基盤ソフトウェア技術に焦点を当て,代表的な研究開発事例について紹介する.また,同分野全体の俯瞰化を試み,今後の技術動向について議論する.
著者
鵜川 始陽 信岡 孝佳 海野 弘成 湯淺 太一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.3_143-3_156, 2012-07-25 (Released:2012-08-20)

ロックやメモリバリア命令の実行には多くのCPUサイクルを消費するため,並行GC(ごみ集め)では,書込みバリアからロックやメモリバリア命令を排除することが容易なインクリメンタルアップデートGCが使われることが多い.しかし,インクリメンタルアップデートGCの通常の実装では,マークフェーズ後にミューテータを止めて多くのオブジェクトをマークする可能性があり,実時間アプリケーションには向かない.本論文では,この処理が必要のないスナップショットGCを使った並行GCを提案する.提案するGCでは,ロックやメモリバリア命令の頻繁な使用を避けるために,ミューテータは書込みの履歴を溜めておいて,GCとハンドシェイクすることで,履歴をまとめてGCに渡す.このGCをDalvik VMに実装し,評価を行った.
著者
畑 秀明 水野 修 菊野 亨
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_106-1_117, 2012-01-26 (Released:2012-02-26)

近年,ソフトウェアリポジトリのデータマイニングを利用した不具合予測の研究が活発に行われている.不具合予測に関連してどのようなメトリクスが研究されているかを明らかにするため,本稿では系統的レビューを行った.2つの論文誌と5つの国際会議において,2000年から2010年に発表された文献のうち63編を調査した.研究されたメトリクスを分析するため,測定対象と測定に必要な履歴情報に基づき8つの領域に分類した.レビューの結果,主に2005年以降コードやプロセスの履歴に基づくメトリクスが研究されるようになっており,また2008年以降には新たに開発組織や地理的位置関係に関連したメトリクスが提案されていることが明らかになった.
著者
片山 卓也
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.3_33-3_46, 2019

<p>国民年金法の述語論理による記述と定理自動証明システムZ3Pyによる検証に関するケーススタディついて述べた.法令の作成は伝統的に人手により行われて来たが,近年法令が大量に作られるようになり,その品質の維持には計算機科学,特にソフトウェア工学や人工知能で培われた技術を応用することが有効であると考えられる.本稿では,法令を意図した通りに正しく作る上で,法令の形式的記述と自動検証技術が有効であることを確認する目的で,国民年金法の基本的条文の述語論理による記述と,そのSMTソルバーZ3Pyによる検証を試行した結果を報告する.法令の文章上の複雑さは別にすると,その論理的深度は深くなく,このような方法が誤りの無い法令を作る上で有効な方法になり得ることが分かった.</p>
著者
高田 広章
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.3_45-3_66, 2020-07-22 (Released:2020-09-22)

使用するOSオブジェクトをシステム構築時に生成する静的OSにおいては,OSオブジェクトの生成に必要なコンフィギュレーション情報を,何らかの方法で記述する必要がある.静的APIは,リアルタイムOSのコンフィギュレーション情報を記述するための記述言語である.μITRON4.0仕様においてはじめて導入し,TOPPERS新世代カーネル仕様において改善を行った.本論文では,静的APIに求められる要件と,それらの仕様における静的APIの具体的な仕様について述べる.また,静的APIを処理するコンフィギュレータの設計と実装について,TOPPERSプロジェクトにおける約20年間の開発の歴史に沿って述べる.
著者
登 大遊 新城 靖 佐藤 聡
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.4_3-4_30, 2015-10-26 (Released:2015-12-26)

SoftEther VPN Serverはマルチプロトコル対応のクロスプラットフォームなオープンソースVPNサーバソフトウェアであり,既存のVPNサーバプログラムにない2つの特徴がある.1つ目は,単一VPNサーバインスタンスで複数のVPNプロトコルをサポートしている点にある.管理者は,複数のVPNプロトコルによる多種類のVPNデバイスからのリモートアクセスおよび拠点間接続を受付けるVPNサーバを容易に管理することができる.そのために,SoftEther VPN Server内にL2アダプタと呼ばれるモジュールを実装し,レイヤ2 VPNプロトコルとレイヤ3 VPNプロトコルとの間の通信を,共通のバスである仮想L2スイッチを経由させ,シームレスに実現にした.2つ目は,ユーザ管理やネットワークの機能を仮想化するマルチテナント機能である.これは,仮想ホスティングサービスのために必須である.本プログラムは複数のOS間の移植性を有する.本プログラムは2013年3月から2014年9月までの間に,世界中で242,000回インストールされた実績を有する.また,異なるVPNプロトコル間での通信速度実験では,従来のVPNプロトコルのネイティブなVPNサーバプログラムを組み合わせて用いた場合と比較して高速な結果が得られた.
著者
宋 剛秀 番原 睦則 田村 直之
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.1_67-1_80, 2017-01-25 (Released:2017-03-25)

近年SATソルバーの求解性能が飛躍的に向上しており,様々な分野で応用が進んでいる.しかし,SATソルバーは連言標準形の命題論理式を入力としており,実用的な応用が多くある算術制約を含むような問題を直接記述して解くことには向いていない.このため,より表現力のある入力形式に対応できるようにSATソルバーを利用・拡張したシステムが研究されている.本解説では,そのような利用・拡張の1つとしてSATソルバーの求解性能と制約プログラミングシステムの表現力を融合させたSAT型制約プログラミングシステム(SAT型CPシステム)について説明し,その周辺技術についても概説する.
著者
沢田 篤史 野呂 昌満
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1_35-1_46, 2015-01-26 (Released:2015-03-26)

ソフトウェアアーキテクチャの設計結果は,開発対象であるソフトウェアシステムの完成時における機能や非機能に関する様々な特徴だけでなく,実装や検証,保守など,他の開発プロセスに多大な影響を及ぼす.高品質のシステムを開発するために,アーキテクチャ設計を支援する技術は重要である.また,システムの品質を適切に予測し,管理を可能とするためには,設計結果としてのアーキテクチャと,その設計過程において行われた判断を文書化することも重要である.長期間にわたって運用されるシステムにおいては,アーキテクチャ設計に関連する文書と,要求仕様,設計,実装などの他のソフトウェア構成要素との間の追跡可能性が求められる.本稿ではまず,高品質のソフトウェアシステム開発におけるソフトウェアアーキテクチャの重要性について解説する.アーキテクチャ設計と文書化に関連し,アーキテクチャスタイル,パターン,関心事,ビューなどの諸概念についてそれらの意味的関連も含めて説明する.さらに,アーキテクチャに関する設計判断の文書化技術,追跡性管理と知識管理の技術,それらを支援するツールの動向を解説する.