著者
須子 善彦 小池 由理 村井 純
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.66-77, 2007-10-26

本システムは,イラストやアニメーション等のデジタルアート作品の流通を支援するWebベースのシステムである.本システムでは,世界中のブログを一種のセレクトショップと見なし,ブログを仲介にしたアート作品の流通モデルを実現することで,デジタルアート作品の流通の問題の一部である,1)デジタルアート作晶へのニーズが切迫していない点,2)検索におけるアート作品特有の困難さ,という問題を解決した.a)上記の課題の導出は要件定義段階からアーティストとの協働によるものである点,b)その解決モデルの実現のためのdesign choicesとして,各要素技術の難易度や新規性を求めず,しかしながら組み合わせが斬新で有用である点を重視,c)前述の結果として短期間に一般公開可能なシステム開発が可能となった点,が特徴である.本システムは,一般ユーザに気軽にデジタルアート作品に触れる機会を増大し,ユーザ個々人の趣味・嗜好によって異なった作品発見を可能にした.また,周囲の環境にマッチする必要性など,アート作品特有の検索要件に新たな解を与えた.
著者
椎尾 一郎 浜田 玲子 美馬 のゆり Itiro Siio Reiko Hamada Noyuri Mima お茶の水女子大学理学部情報科学科 東京大学情報理工学系研究科 公立はこだて未来大学システム情報科学部 Department of Information Sciences Ochanomizu University Graduate School of Information Science and Technology The University of Tokyo School of Systems Information Science Future University-Hakodate
出版者
Japan Society for Software Science and Technology
雑誌
コンピュータソフトウェア = Computer software (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.36-46, 2006-10-26
参考文献数
9
被引用文献数
10

キッチンは生産の場であり,調理を媒介とした教育とコミュニケーションの場でもある.このため,家庭環境の中でも,実用的なユビキタスコンピュータアプリケーションの可能性が高い場所と考えられる.そこで筆者らは,コンピュータ,ネットワーク,センサを組み込んだ未来のキッチン,Kitchen of the Futureを開発している.このコンピュータ強化されたキッチンにより,単に調理の効率を向上させるだけではなく,キッチンを学びとコミュニケーションの場として復活させることができると考えている.本論文では,Kitchen of the Futureを利用して実装した,調理の記録とネットワークでの公開と共有,調理過程の再生,遠隔地キッチンを接続しての調理支援,調理教材の効果的な提示を実現するアプリケーションについて報告する.A kitchen is a place of food production, education, and communication. As it is more active place than other parts of a house, there are lot of potential ubiquitous computing applications in a kitchen. We are developing a computer-augmented kitchen environment: the Kitchen of the Future that embeds various computing elements into a standard kitchen unit. In this paper, we will describe overview of the Kitchen of the Future system and its three applications, i.e, web-ready recipe pages generator, video conference system for cooking instruction, and interactive cooking navigation system.
著者
佐々木 貴宏 所 真理雄
出版者
一般社団法人日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.365-378, 1997-07-15
被引用文献数
6

マルチエージェント系におけるエージェントの環境への適応は,進化論からの類推に基づき,個体による生涯内での「学習」と集団による世代をまたいだ「進化」といった異なる2過程の相補的なものとして捉えられる.本稿では,ダーウィン型あるいはラマルク型の遺伝機構を持つ集団の進化の過程を再現し,特に動的な環境下でのそれぞれの集団の適応性について評価および議論する.その結果,ダーウィン型の集団の方が,静的環境下では効率的なラマルク型の集団よりも環境の変動に対して安定した挙動を示すばかりでなく,世代を通じて動的環境自体に適応していくことが可能であることを示す.
著者
戸田 貴久 斎藤 寿樹 岩下 洋哲 川原 純 湊 真一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.3_97-3_120, 2017-07-25 (Released:2017-08-09)

列挙問題とは,与えられた条件を満たす対象(解)をすべて求める問題であり,電力網解析など社会のさまざまな問題への応用がある.さまざまな組合せ列挙問題に対して,問題の解集合を表現するデータ構造ZDDを高速に求める方法(トップダウンZDD構築法)を通して元の問題を効率的に解く汎用的な手法の研究が近年盛んに行われている.本論文ではトップダウンZDD構築に焦点を絞り,基礎となるアルゴリズムから,複雑な問題制約に対処するための発展的手法,プログラミングツールTdZddの基本的な使い方,さらに,具体的な応用問題を例にしたプログラミングまで解説する.
著者
阿萬 裕久 野中 誠 水野 修
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.3_12-3_28, 2011-07-26 (Released:2011-09-26)

ソフトウェアメトリクスは,ソフトウェアの品質マネジメントを実践する上で必要不可欠な存在である.しかしながら,実際のところ広く積極的に活用されているとまでは言い難い.その背景には“何を測り,どう活用するのか?”というシンプルではあるが容易でない問題がある.本論文はそのための一助として,ソフトウェアメトリクスとそこでのデータ分析の基礎,特に,どういったソフトウェアメトリクスや数理モデルがあり,分析で何に気を付けるべきかを中心に解説を行っている.また,ソフトウェアメトリクスの円滑な活用に役立つツールもいくつか紹介している.
著者
横尾 真 岩崎 敦 櫻井 祐子 岡本 吉央
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.2_33-2_51, 2013-04-25 (Released:2013-08-25)

本稿では,ゲーム理論の主要領域の1つである協力ゲームについて解説する.協力ゲームは,主に2つの研究領域からなる.1つは,提携内のプレイヤ間で,協力によって得られた利益をどのように分配するかである.本編では,解概念と呼ばれる,協力的なエージェント間で利得を配分する望ましい方法について概説する.古典的な協力ゲーム理論では,コア,シャプレイ値,仁など,さまざまな解概念が提案されている.これらの解概念によって与えられる利得の配分を求めるアルゴリズムと計算量について考察する.2つ目は,全体提携が最適ではない場合,プレイヤがどのような協力関係(提携)を形成するかである.これは,提携構造形成問題(CSG)と呼ばれる.本編では,CSGを効率的に解く制約付き最適化アルゴリズムを紹介する.また,本編ではゲームの簡潔表現法を利用することで解概念やCSGに関する問題を効率的に解くことができるため,協力ゲームの簡潔な記述方法を概説する.
著者
妻木 俊彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.2_43-2_64, 2012-04-25 (Released:2012-06-25)

要求工学は,ソフトウェアシステムの外部仕様である振る舞いや制約を定義するための技術の集合である.そして,そこで定義された要求は,われわれが実際に生存している現実世界における意味や価値を反映したものでなければならない.極めて多岐にわたる要求工学の技術を,本稿では,正確な要求を定義するための技術,変動する要求に対処するための技術,および,視点の多様性に対応するための技術という3つの観点から概観する.
著者
高橋 和也 南出 靖彦
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.2_53-2_70, 2021-04-23 (Released:2021-06-23)

文字列の検索等に広く用いられる正規表現マッチングはその多くがバックトラックに基づくアルゴリズムで実装されており,対象文字列の長さに対して線形時間でマッチングを完了できない場合がある.これを事前に検知するために,マッチングに要する計算量を静的解析する手法が複数の先行研究によって提案されている.本研究では先行研究を拡張し,先読みや後方参照など,現実のソフトウェアで使用されている拡張された正規表現に対しても解析が行える手法を提案する.さらに,既存の解析アルゴリズムを高速化し,より実用的な速度で解析を行える手法を提案する.そして,これらの改良を施した計算量解析のツールをScalaで実装し,Weidemanらによる既存のツールよりも多くの正規表現が解析できることを実験により確認した.
著者
逢坂 美冬 上野 雄大 大堀 淳
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.3_79-3_95, 2018-07-25 (Released:2018-09-25)

一般にWebアプリケーションにおけるWebページの動的生成は,テンプレートエンジンを用い,事前に用意されたテンプレートに対して動的に値を埋め込むことで行う.テンプレートはテキストファイルとして用意され,実行時に読み込まれる.そのため,テンプレートに対する操作は一般に型無しの文字列操作となる.従って,たとえホスト言語が強い型付けを持つ関数型言語であったとしても,実際のテンプレート構造とプログラムの想定の間の不整合は静的に検出されない.本論文では,動的に読み込まれるテンプレートに対して,部分動的レコードに基づく動的型検査を行うことで,型付きのテンプレート操作を実現する言語機構を提案する.この機構は,テンプレートにホール名をラベルとするMLの部分動的レコード型を与え,テンプレートに値を埋め込む操作をレコードの更新演算と同様に型付けする.テンプレートに存在しないホールへの値の埋め込みは型エラーとなる.プログラムが想定するテンプレートの型と実際のテンプレートの構造の整合性は,テンプレートファイル読み込み時に動的に検査する.本論文ではさらに,この機構をML系関数型言語SML#のコンパイラを拡張することで実装し,実例を通じて実用性を検証するとともに,実用上の課題について議論する.
著者
叢 悠悠 浅井 健一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.2_47-2_60, 2019-04-26 (Released:2019-06-25)

CoqやAgdaなどの定理証明支援系では,依存型を使ってプログラムの性質を正確に記述することができる.一方,依存型付き言語の多くは,副作用を許さないという制約もつ.これは,副作用の動的な振る舞いによって型が静的に定まらなくなることによるが,副作用の欠如は実用的なプログラムの実装の妨げとなるため,適切な制約を設けながら,依存型付き言語に副作用を導入する試みがなされてきた.本研究では,限定継続命令 shift/resetをもつ依存型付き言語を考える.shift/resetはさまざまな副作用の模倣を可能にするが,その応用例や型システムは単純型付き言語で考えられてきた.本稿では,shift/reset と依存型を組み合わせるために必要な制約を明らかにし,健全な型システムを定義する.また,設計した言語に対するCPS変換を与え,変換が型を保存することを証明する.
著者
松原 克弥 髙川 雄平
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.1_18-1_32, 2022-01-25 (Released:2022-03-25)

コンピュータ技術進歩の過程において,基盤ソフトウェアであるオペレーティングシステム(OS)の研究開発が盛んに行われ,数多くのOS実装が利用可能となった.デスクトップPCやスマートフォン,エンタープライズサーバなどの一部のプラットフォーム向けでは,WindowsやLinuxなどの少数のOSが寡占状態にあるが,すべてのシステムにおいて特定のOSが独占して採用されることはなく,現在でも,システムの目的や用途,プラットフォームの特性などに応じて複数のOSを使い分けている.著者らは,特性の異なる複数のOSを状況の変化に応じて動的に切り替えることで,OS上で稼働するサービスの負荷耐性や性能の改善を試みる手法を提案している.本論文では,LinuxとFreeBSDを対象として,サービス稼働中にそのシステム基盤であるOSの動的な切り替えを可能とすることを目的として,FreeBSDにおけるLinux互換プロセスのマイグレーション機構の実現手法についてまとめる.Linuxにおけるプロセスマイグレーション機構の標準ツールであるCRIUとのチェックポイントデータの相互互換性を維持することで,LinuxとFreeBSD間で同一のプロセスをマイグレーションする仕組みを実現する.本実現法では,FreeBSDカーネルとLinuxカーネルのOS機能の違いだけでなく,内部構造やインタフェース仕様の違いにも着目し,CRIUの各機能と同等の機能をFreeBSD上で実現する際の課題や実装の詳細を述べる.
著者
宋 剛秀 番原 睦則 田村 直之 鍋島 英知
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.72-92, 2018-10-25 (Released:2018-12-26)

命題論理式の充足可能性判定(SAT)問題を解くプログラムであるSATソルバーは,2000年以降その性能面において飛躍的に進化した.それに伴い,解きたい問題をSAT符号化によりSAT問題へと変換し,SATソルバーを用いて解くSAT型システムが,プランニング,ソフトウェア・ハードウェア検証,スケジューリング問題など様々な分野で成功を収めるようになった.本稿では,まずSATソルバーの最新動向として,性能面と機能面における進化をその要因の1つであるSATソルバーの国際競技会の視点から説明を行う.次に SAT ソルバーの利用技術の視点から,SAT ソルバーの機能面の進化と符号化技術を組み合わせることで,複雑な問題を解くことが可能になることの説明を行う.そのような例として多目的最適化問題のパレート解をSATソルバーを利用して求める方法を説明する.
著者
萩原 早紀 栗原 一貴
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1_52-1_62, 2016-01-26 (Released:2016-03-26)

本論文では,俗に“コミュ障”と呼ばれている人間の性質に注目し,その中で他人と視線を合わせられない症状をもつ人々を社会福祉学的な観点から支援するためのシースルー型HMD を使用したシステムの提案を行う.この“コミュ障”支援システムは,彼ら/彼女らが他人と視線を合わせられないというコミュニケーション上の問題を緩和・改善するために,顔検出技術と視覚情報提示により相手の顔を隠したり,視線をそらす癖を改善するように指示したり,視線の挙動の客観的なデータを提示したり,コミュニケーション上の危険状態が発生した場合その場から脱出する手段を与えてくれる.このシステムのプロトタイプを実装し,評価した結果,いくつかの機能は有効に働き,今後の改善点が得られた.